個別に対応する口腔ケアシステムの ガイドライン作成 原 巖1)、喜久田利弘2) 1)医療法人恵光会 原病院 歯科・口腔外科 2)福岡大学 医学部 歯科・口腔外科学講座 第6回日本口腔ケア学会 総会・学術大会(於 宇都宮) はじめに 口腔ケアは、 高齢者の口腔環境の把握が非常に重要!! 患者個々の口腔環境は千差万別 → 個々においてケアが異なることが理想 しかし、 私が、現病院に赴任したときは、 口腔ケアは画一化され、機械的に行われる傾向にあった。 ↓ ケアの程度は施行者任せで、無法地帯!! そこで ケアの標準化に取り組んだ → 標準化が図れ、質は向上した (2005 摂食・嚥下リハ学会で発表) しかし、 時間の経過と共に、ケアの質は徐々に落ちてきた! なぜ、質の高い口腔ケアは維持ができないのか? 日常業務の中で 下記の中で口腔ケアの優先順位は? 医療行為、食事介助、排泄処理、 体位交換、清拭、口腔ケア 口腔ケアにかける時間? 口腔ケアが苦手な理由 口腔ケア難易度と口腔環境に基づいたケアシステムの概念 本ガイドラインの概念 1)患者の口腔内環境を施行者が客観的に診断 施行者自身が診査・診断し、施行方法を決定し行うため、施行者に責 任がかかる。 2)状態に応じた必要なケアを選択 3)施行者の観点から難易度を考慮し必要なスキルを提示し、実践 4)口腔ケアに対する意識が上がり、意欲に繋がることを期待 5)病棟業務における口腔ケアは、効率化により時間の短縮が期待 口腔ケア難易度と口腔環境に基づいたケアシステムの概念 ケア手順 施行者がフローチャートに沿って客観的に診査・診断し、ケア 方法を選拓 基本的な口腔ケア方法を軸に問題となる種々の問題事象に 対するケア方法を含め、幾通りかの方法を提示し、選択可能 にしている。 問題事象とは、下記の点に主眼をおいて抽出された。 1)アンケート調査に基づく施行者から診た難易事象 ①閉口群 2)医学的に判断した重症度事象 ② 乾燥群 ③出血群 ④呼吸機能低下群 基本的口腔ケアの手順 方法 1.口腔内が、乾いているか、湿り気があるかを確認する。 2.マウスウオッシュで湿らせて歯磨きを行う。この場合、乾いて いる患者は、はぐきが弱っているため出血しやすいので、デント エラックES(extra soft)を用いて歯磨きを行う。 湿っている時はS(soft)でも可。 3.磨き方は、臼歯部より歯ブラシを歯面に当てて、軽く振動させ て磨く。これを全歯面に対して行う。 前歯部(前歯から八重歯)は主に表・裏の二面、 臼歯部(小臼歯・大臼歯)は、咬合面を含めて3面 4.この後、歯肉、頬粘膜、舌に対しても軽く歯ブラシを当ててマッ サージを行う。 基本的口腔ケアの手順 5.口蓋に対しては、歯ブラシが使えるときはマッサージを兼ね て磨くが、口腔内が乾燥していて、痰が口蓋に乾燥して固 まっている時は取れにくいので、指にガーゼを巻いてマウ スウオッシュで湿らせて、優しく口蓋を拭って取るようにす る。他の部位でも、乾燥している時には本方法が有効であ る。 この一連のケアが終わったら、適度の湿り気を残すようにして 終了する。(オーラルバランスで保湿をはかることもある) *:口が開かない症例には、k-ポイント刺激後に バイトブロックを用いること No 痰の付着がある yes 口が開かない yes yes 痰の付着がある No 乾燥がある No No A D D A’ No yes 出血がある yes No B yes C A:方法: 基本的口腔ケアのみ 時間:2分以内 使用器具: 歯ブラシ(デントエラックS) うがい薬(マウスウオッシュ) ガーゼ 乾燥がある B’ No 出血がある yes 誤嚥と全身状態に注意を!! B:方法: 1.マウスウオッシュを口腔内 全体に噴霧 2.基本的口腔ケアを行う 時間:2~3分 使用器具: 歯ブラシ(デントエラックS) うがい薬(マウスウオッシュ) ガーゼ C:方法: 1.マウスウオッシュを口腔内全体 に噴霧 2.基本的口腔ケアを行う *歯ブラシを細かく振動し磨くこと 3.オーラルバランスを塗布 時間:3~5分 使用器具: 歯ブラシ(デントエラックESかUS) うがい薬(マウスウオッシュ) ガーゼ。オーラルバランス C’ D:方法 1.バイトブロックなどを用いて、開 口させ、オーラルバランスを塗布後 15~30分程度放置 2.基本的口腔ケアを行う 3.マウスウオッシュ後、オーラル バランスを塗布 時間:5~7分 使用器具: 歯ブラシ、うがい薬、ガーゼ、 オーラルバランス 本システムの特徴 1)施行者の自学・自習型システム 本システムは、施行者が、自分で患者の口腔内を観察し、施行方法を選択する。そ の後、選択した方法で1週間行った後、施行者が自ら まず、 ①口腔ケア評価シートで評価 これは、1週間の口腔内の状態を他者と客観的に評価する ついで、 ②全身状態評価シートで評価 本シートは、1回/1月に全身状態に関する項目を評価する 以上により、自分の行ったケアを、自己分析でき、次のケアに繋げる 2)オンブズマンシステム(看護師、ヘルパーから選出) 本方法は、施行者の口腔ケアへの高い意識が要求される。よって監視体制を執る ことで施行者のケアに対する意識の低下を防ぐ 本メンバーは、1回 /1月オンブズマン会議を開き、症例検討、ケアシステムの改良な どについて討議している システムを動かしてみて 現在までの進捗状況 オ ン ブ ズ マ ン 教 育 オ教オ ン育ン ブ用ブ ズスズ マラマ ンイン のドの 選の研 定作修 成 1ヶ月 病 棟 ス タ 1ヶ月 ッ フ 教 育 オ病 ン棟 ブス ズタ マッ ンフ がへ 行の う教 育 を 患 者 ・ 家 族 へ の 説 明 物 品 購 入 の 説 明 2~3週間 シ ス テ ム の 稼 動 ( 試 行 期 間 ) シ ス テ ム 稼 動 ( 本 稼 動 ) システムを動かしてみて システムの問題点 1)家族への説明 物品購入に対して、家族の反対があることもあった 2)病棟間の違い 病棟の質によって、細かい方法が異なる 具体的には、急性期病棟とリハビリ病棟では患者の質が異なるため、対象患 者や評価法が異なってきた 3)施行者の意識の向上 いかにして、意識向上を図るかが最も難しい
© Copyright 2024 ExpyDoc