2012年度冬学期「刑事訴訟法」11-1 公訴の提起(1) ポイント ○公訴提起の基本原理 ○公訴権濫用論 ○公訴提起の要件 ・犯罪の嫌疑は公訴提起の要件か ・公訴時効 ○起訴状の記載ー予断防止(排除)の原則 ・文書内容の引用 ・余事記載 捜査から公訴の提起へ ○司法警察職員による捜査の場合 ・事件の送致(告訴・告発事件の場合は「送付」) ・・・§246(§242) ・身柄事件の場合⇒身柄の送致(§203) ・・・実務上は一緒に行われるのが通例。書類・証拠物はさみだれ式。 ・全件検察官送致が原則 但書 微罪処分 少年被疑者の家裁送致(少年法41条・・・罰金以下の刑に当たる罪) ○検察官による起訴・不起訴の決定 ・被疑者,主要な参考人の取調べ (場合により補充捜査) ・起訴・不起訴の決定 ・確信 ・調書作成 §321①2号後段 公訴提起の原理 私人訴追主義 ○国家訴追主義 (イギリス) (刑訴法§247) 親告罪 ○起訴独占主義 検察審査会 一定の議決に法的拘束力 (検察審査会法2004年改正) 付審判手続(刑訴法§265以下) ○起訴裁量主義 (起訴便宜主義 刑訴法§248) 起訴法定主義 (ドイツ) 検察官の起訴・不起訴の決定 起訴 ・公判請求 ・略式命令請求(§461以下。50万円以下の罰金ま たは科料に処するのが相当な場合であって,被疑者 に異議がないとき) 不起訴 ・狭義の不起訴(嫌疑なし・不十分等) ・起訴猶予(§248) 起訴猶予処分の沿革 ○旧々刑事訴訟法(明治23〔1890〕年)時代の実務運用から生成 ・飢饉等による貧困者の増加⇒窃盗等の激増 ⇒被拘禁者の増加⇒国家財政への影響の懸念 ⇒軽微事犯の不起訴処理・・・・・微罪処分的性格 ○20世紀初頭の新派刑法学(教育刑思想)の影響 ・刑事政策的考慮(犯人の更正)による起訴猶予処分 ・・・・・一種のdiversion(犯罪の非刑罰的処理) ○旧派(古典派)刑法学からの批判 ⇒1948年刑訴法(現行法)において「犯罪の軽重」という文言を追加 起訴猶予の判断要素(§248) ○被疑者に関する事情 「犯人の性格,年齢及び境遇」 ○被疑事実に関する事情 「犯罪の軽重及び情状」 ○「犯罪後の情況」 ・反省・改悛の有無,程度 ・被害弁済・示談等 ・被害者の感情 ・社会的影響の大小 罪名別検察庁終局処理人員(1)(2009年) 起 訴 家庭裁判所 送致 不起訴 全事件 1,151,377 225,769 19.6% 798,436 69.3% 127,172 10.5% 刑法犯 319,314 96,541 30.2% 123,184 38.6% 99,589 31.2% 特別法犯 113,369 61,597 54.3% 48,629 42.9% 3,143 2.8% *検察統計年報に拠る。 8 罪名別検察庁終局処理人員(2)(2009年) 公判請求 略式命令請 求 起訴猶予 嫌疑なし・ 不十分等 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 家庭裁判所 送致 9 罪名別検察庁終局処理人員(3)(2009年) 59.1% 40.9% 56.8% 43.2% 起訴率 23.7% 76.3% 起訴猶 予率 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 10 罪名別検察庁終局処理人員(4)(2009年) 100.0% 90.0% 80.0% 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 起訴率 30.0% 20.0% 起訴猶 予率 10.0% 0.0% 11 検察官の起訴裁量権行使の規制方法 ○不起訴の決定 ◇検察審査会の審査(検察審査会法§30以下) 議決に法的拘束力なし ⇒(2004年改正・2009年施行後)一定の議決に法的拘束力 ◇付審判請求手続(§262) 付審判の決定(§§266,267) ・公訴提起と同等の効力⇒指定弁護士による公訴の維持 ・対象は職権乱用罪等に限定 ○起訴の決定 ・公訴権濫用論
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