コンクリート構造物を 長持ちさせるには

コンクリート構造維持管理工学特論
概説
コンクリート構造物を長持ちさせるには?
コンクリート工学研究室
岩城 一郎
コンクリートに求められるもの
丈夫
長持ち
美しい
コンクリート
環境に
優しい
安い
コンクリートに求められるもの
新設構造物
(これから造るもの)
安全性
長寿命化
耐久性
美観
既設構造物
コンクリート
(いまあるもの)
低環境
負荷
経済性
延命化
コンクリート構造物を長持ちさせ
るには?


コンクリート技術者の使命「いいコンクリート
構造物をつくるためには,親切に,丁寧に」
by 吉田徳次郎先生
コンクリート技術者としての誇り・責任感
小樽北防波堤




広井勇博士の指揮の下,
1897年より施工開始
火山灰使用,W/C40%相当,
W=120-140kg/m3
締固めと水量を厳しく管理
完成から100年以上にわた
る強度試験の実施
土木学会ホームページより

現在もほとんど劣化すること
なく供用
コンクリート構造物の寿命は?

1980年頃まで,コンクリート構造物の寿命は半永久的(100
年以上)であると考えられていた.(メインテナンスフリー)

高度経済成長期(1970年前後)の建設ラッシュ(新幹線,高
速道路等)
1983-84年NHK報道特集「コンクリートクライシス」
1999年岩波新書「コンクリートが危ない」(小林一輔著)
同年山陽新幹線トンネルコンクリート崩落事故
2002年アルカリ骨材反応による鉄筋の判断等々

コンクリート構造物は一体,何年もつのか???




コンクリート構造物の耐久性とは?

劣化とは?
性能
時間の経過と共に性能が
低下すること

要求性能
耐久性とは?
要求されている性能を下
回るまでの期間により評
価される性質
耐用年数
設計耐用年数
時間
補修・補強とは?


補修
耐久性を回復もしくは向上
させること,第三者影響度
を改善することを目的とし
た維持管理対策
補強
部材,構造物の耐荷性や
剛性などの力学的な性能
を回復,もしくは,向上さ
せることを目的とした対策
RC示方書〔維持管理編〕より抜粋
コンクリート構造物の劣化要因






中性化
塩害
凍害
アルカリ骨材反応
化学的侵食
(疲労)
および,これらの複合作用
による劣化:複合劣化
中性化
疲労
塩害
化学的
侵食
アル骨
凍害
コンクリート構造物はなぜ劣化
するか?
中性化,塩害,凍害,アルカリ骨材反応,
化学的侵食に起因(物理的,化学的,生物学
的作用)
→コンクリートがぼろぼろになる,鋼材がさびる.
→安全上,使用上,美観上の問題から構造物
が使えなくなる.
 構造物の計画→設計→施工→検査→維持
管理の過程におけるミス
 手抜き(犯罪!!)

中性化

二酸化炭素(CO2)の作用により,コンクリートのアルカリ性
が失われて鋼材がさびる(酸化する)現象,
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O,鋼材の腐食による膨張圧が
コンクリートに作用し,コンクリートが剥落
資料提供 横浜国立大学 細田 暁 先生
塩害

塩(NaCl)の侵入により,コンクリート中の鋼材がさびる(酸化
する)現象
海洋構造物や融雪剤として塩を撒く構造物で顕在化
安治川鉄工建設㈱
パンフレットより
凍害

コンクリート中の水分が凍ると体積膨張し,この作用が繰り
返し起こることにより,コンクリートがぼろぼろになる現象.
ひび割れ
スケーリング
ポップアウト
資料提供 八戸工業大学 阿波 稔 先生
アルカリ骨材反応

コンクリート中のアルカリ(Na+,K+)とある種の骨材が反応す
ることにより,吸水膨張性の物質が生成し,コンクリートに大
きなひび割れを発生させたり,鉄筋を破断させる現象.
小林一輔他共編「コンクリート辞典」オーム社より
NHKクローズアップ現代放送記録より
化学的腐食

下水道施設では,生物学的作用により硫酸が発生し,こ
れがコンクリートを侵食したり,鉄筋をさびさせる現象
その他の不具合
材料分離(ジャンカ)の例
コールドジョイントの例
写真:「コンクリート名人養成講座」
日経コンストラクションより
温度ひび割れの例
長持ちするコンクリート構造物を
つくるためには?(新設構造物)




劣化メカニズムの解明→劣化を抑制する
対策の提案
設計→施工→検査→維持管理(→解体・
撤去)の各段階における適切な計画
合理的なコンクリート構造物を構築するた
めの新技術の開発
手抜きは厳禁!!
今ある構造物を長持ちさせるに
は?(既設構造物)

適切なメインテナンス技術の確立
点検→診断→補修・補強→解体→再利用
土木構造物のこれまでとこれから
土木工事の変遷
年代
1889(明治22)
1908(明治41)
1929(昭和4)
1931(昭和6)
1936(昭和11)
1937(昭和12)
1938(昭和13)
1945(昭和20)
1963(昭和38)
1964(昭和39)
1965(昭和40)
1970年代
1988(昭和63)
1990年前後
1997(平成9)
1998(平成10)
我が国の土木工事
外国の動向および一般主要事項
エッフェル塔完成
小樽港防波堤完成
世界恐慌始まる
エンパイア・ステートビル完成
フーバーダム完成
ゴールデンゲートブリッジ完成
青葉大橋完成
終戦
黒四ダム完成
東海道新幹線開通
名神高速道路開通
東京オリンピック
高度経済成長時代(大阪万博)
青函トンネル開通
瀬戸大橋開通
バブル経済
東京湾横断道路開通
明石海峡大橋開通
コンクリート橋の推移
供用年数50年未満
供用年数50年以上
250000
40
35
架設橋数割合(%)
200000
150000
100000
30
25
20
15
10
5
50000
(年)
80-89
70-79
60-69
50-59
30-49
01-29
2051
2046
2041
2036
2031
2026
2021
2016
2011
2006
2001
1996
0
-1900
0
1991
(橋数)
日本
米国
架橋年次(年)
(独)土木研究所データより
建設投資額の推移
600,000
土木
建築
建設投資額(億円)
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
1960
1970
1980
1990
2000
年
これらの図表から言えること・・・
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

高度経済成長時代:作らなければいけな
いものを夢中で作った時代
現在:落ち着きを取り戻し,将来を見据え
る時代(不要なものは作らない→必要なも
のを腰を据えて作る.メインテナンス技術
の蓄積)
未来:厳しい財政下で,増え続け,老朽化
し続ける社会基盤施設を効率的に維持し
ていく時代
歴史を振り返る
ローマ帝国の滅亡
「すべての道はローマに通ず」(道路,上下水
道の整備)→計画・設計・施工までは良かった
が・・・→メインテナンス??→社会基盤施設を
放棄→首都移転
荒廃するアメリカ
1930年代のニューディール政策(社会基盤施
設の建設ラッシュ)→1970年代のオイルショッ
ク→1980年代道路構造物の劣化により道路機
能の著しい低下→経済的・社会的な大損失

歴史を繰り返さないために



土木技術者としての英知を結集させる.
誰の仕事?
幸か不幸か,我々の仕事
どうせやるなら,魅力ある仕事として発
展させたい.
我が国の特殊性
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
限られた財源下での集中的なメインテナンス
少子高齢化時代のメインテナンス
複雑な地形・厳しい自然環境(島国,北海道~沖縄,
地震・台風)→過酷で多様な条件
我が国独自のメインテナンス技術の体系化
メインテナンス技術を通した国際貢献
耐震技術,長大トンネル・長大橋の設計・施工技術
に続く,国際競争力のある看板として発展
これからのメインテナンスに求め
られるもの
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
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
少ない予算で合理的な維持管理
ニーズにあった技術開発
メインテナンスに携わるトップエンジニアの育
成
総合工学としての体系化:臨床だけでも病理
だけでもだめ!
メインテナンスの最新技術
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

新材料(繊維補強材料)・新工法(電気化学
的防食)
構造物の劣化予測モデル(Computer
Simulation)
マネジメントシステム(データベース)
構造物の非破壊検査技術(欠陥再構成)
将来のメインテナンス像
人工衛星,成層圏プラットフォーム
解析結果
計測
本部メインフレーム
計測結果
計測結果
解析結果
計測結果
計測
解析結果
レーザ・画像計測,通信機器