アルカリ骨材反応 コンクリート工学研究室 岩城 一郎 アルカリ骨材反応とは? 劣化現象:反応性シリカ鉱物や炭酸塩岩(ドロマ イト)を有する骨材がコンクリート中のアルカリ性 溶液と反応して,コンクリートに異常膨張やひび 割れを発生させる現象.アルカリシリカ反応 (ASR)とアルカリ炭酸塩岩反応に大別.(我が 国ではASRの被害実績が多い.以降ASRを中 心に説明) 劣化指標:膨張量 ASRのメカニズム 骨材中に含まれる反応性シリカと細孔溶液中の(主と して水酸化)アルカリNa,Kが反応し,吸水膨張性のゲ ルを生成→ゲルの吸水膨張により,コンクリートにひび 割れを発生 ASRの要因:コンクリート中のアルカリ量,骨材中の反 応性シリカ,水分(3条件が揃った時ASRが進行) コンクリート中のアルカリ量:主にセメントから供給(外 部からも供給)→総アルカリ量の規制,コンクリート中 の等価アルカリ量Na2O+0.652K2O≦3kg/m3 骨材中の反応性シリカ:代表例 オパール,クリストバ ライト,トリジマイト,火山ガラス,および石英の一部等, これらを含む安山岩,流紋岩類等 水(細孔中に存在する水,外部から供給される水) ASRの特徴 ペシマム(極値)の存在:反応性骨材と非反応 性骨材との混合比がある特定の値の場合,膨 張量が最大→アルカリ量一定の条件下では, 骨材量が多いほど,ゲルの生成量 増大,コン クリート(モルタル)中の水酸化アルカリ濃度 急 速に低減→シリカを解離する反応が活発でなく なる.(P.P.でメカニズムチェック) (ペシマム量は反応性鉱物の種類によって異な り,中にはペシマムが存在しないものもある.) その他のペシマム現象:水セメント比(空隙が 粗:アルカリイオンの移動容易,膨張圧は作用 しにくいという現象の相互作用) ASRの対策 反応の進行に必要な条件(アルカリ,骨材,水)をそろえない 安全と認められる骨材の使用 ポルトランドセメントのうち低アルカリ形の使用 抑制効果のある混合セメント等(高炉セメント,フライアッシュセ メント等)の使用 コンクリート中のアルカリ総量の規制 建設省のアルカリ骨材反応対策(H14改正) 土木構造物は3,4を優先 (その他構造物は1,3,4のいずれか一つを確認) ポゾランおよび高炉スラグ微粉末の使用(水酸化カルシウム量 の低下,アルカリイオン濃度の低下:スラグでは見られない,組 織の緻密化等により説明) フライアッシュ:置換率15%以上において十分な抑制効果 シリカフューム:5%程度の添加により膨張量が大幅低下 高炉スラグ微粉末:置換率40%以上で効果確認 アルカリ骨材反応 「コンクリート名人養成講座」日経コンストラクションより 小林一輔他共編「コンクリート辞典」オーム社より Sankei Web(産経新聞社)の記事より コンクリ内の化学反応で鉄筋破断 山陽新幹線橋脚 広島県大野町内の山陽新幹線の高架橋や橋りょうの橋脚計6基で、コンクリー ト内部の化学反応によって鉄筋が破断していたことが8日、JR西日本の調べで 分かった。セメントのアルカリ成分と骨材中の鉱物が反応して化学物質を生成 し、これが水を含んで膨張する「アルカリ骨材反応」が原因とみられる。 鉄筋破断があったのは高架橋、橋りょう各2カ所で、いずれも橋脚上方の先端 部。主鉄筋が10-36本破断し、コンクリートのひび割れが生じていた。 同社は2000年7月に発見、強度を高めるためコンクリートを充てんして補修 を終えている。 アルカリ骨材反応をめぐっては、全国の国道や高速道路の橋脚など計約150 0基が損傷している疑いがあることが3月、国土交通省の調査で判明している。 (2003年4月8日) http://www.sankei.co.jp/news/ NHKクローズアップ現代 放送記録より 2003年4月10日(木)放送 鉄筋破断の衝撃 ~問われるコンクリートの安全性~ 鉄筋コンクリートの安全性を脅かす現象「鉄筋の 破断」が、近畿や北陸の道路橋脚15カ所で見つ かった。原因は、アルカリ骨材反応というコンクリ ート内部の膨張によって、鉄筋が引きちぎられた ためと考えられる。 砂などに含まれる鉱物とセメントが化学反応を起 こし、膨張する現象である。従来は鉄筋があるか ら構造上は問題ないとされてきたが、今回の調査 結果を受け「建築物が条件によっては崩壊してし まう危険性もある」と専門家は語る。今回の発見は、 別目的の補修作業中の偶然にすぎない。事態を重く見た国土交通省は3月、緊 急調査を指示した。しかし外見からの破断発見は難しく、その補強法も模索中だ。 社会インフラ全体の見直しに繋がりかねない「鉄筋破断」について考える。 ス タジオ出演:斎藤 宏保(NHK解説委員) http://www.nhk.or.jp/gendai/ ASRによる劣化の種類とその特徴 コンクリート ・ひび割れ ・変位・変形 ・ゲルの滲出 ・変色 ・ポップアウト ・はく離・はく落 ・強度低下 これまで構造物の耐力低下に 直結することはないと考えられ ていた。 鉄筋 鉄筋腐食 鉄筋の降伏・破断 構造物の耐力そのものに直接 影響を及ぼす。 国、学会での対応 国土交通省 ・2003年3月19日記者発表:「アルカリ骨材反応が生じた橋梁に対 する対応について」 ・近畿地方整備局に「アルカリ骨材反応橋脚等に関する対策検 討委員会」(委員長:宮川豊章京都大学教授)を設置→道路橋 のアルカリ骨材反応に対する対応要領取りまとめ→全国の橋 梁に対して、調査、補修等を実施するよう通知 土木学会コンクリート委員会 ・4月に「アルカリ骨材反応対策小委員会」 (委員長:宮川豊章 京都大学教授)を設置 ・メカニズムの解明、鉄筋破断による構造耐力への影響度、必要 な対策の検討→2003年9月に土木学会誌において中間報告 膨張率(%) 高炉スラグ微粉末の混和によるASR対策効果 0.4 0% 40% 0.3 50% 60% 0.2 70% 80% 0.1 モルタルバー法 W /B =50% 粉末度4000cm 2/g 20%N aC l環境下 0 -0.1 全塩分含有量(%) 0 5 10 15 20 25 試験期間(週) 0% 40% 50% 60% スラグ置換率 スラグ置換率40%以上で 顕著な膨張抑制効果 30 W /B =50% 粉末度4000cm 2/g 試験期間26週 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 NaCl環境下でASR促進 70% 80% 塩分浸透性が顕著に 改善
© Copyright 2024 ExpyDoc