日本のこれからの教育 - 神戸大学大学院国際

日本のこれからの教育
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佐々木梨恵
• 学習指導要領と学力観
• 教育問題
―学力低下
• 教育改革
―学校選択性
―学校評価
―少人数学級
→習熟別少人数制
―小学校の英語導入
• 外国の例(フィンランド)
• 論点
学習指導要領と学力観
1946年
日本国憲法発布(第26条 教育を受ける権利)
1947年
教育基本法・学校教育法 公布
学習指導要領(試案)発行
1958年
1968年
学習指導要領の改訂 経験主義から系統主義への大転換
1977年
学習指導要領の改訂 文部省「ゆとり充実」路線へ
1998年
学習指導要領の改訂 「生きる力」重視の方針
総合的な学習の時間導入、教育内容の3割削減
2002年
「学力低下」の声が広まる
文部科学省「ゆとり」路線を維持しながらも、基礎学力重視へ
2007年
学校教育法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律な
どが一部改定
2008年
学習指導要領の改訂 教育内容・授業時数が増加に転じる
学習指導要領の改訂 理数系の重視、内容の高度化
教育問題
• 学力低下論
1999年あたりに火が付き、マスコミで
取り上げられるようになった。
3つのグループが三極構造をなす。
→「教育改革推進側の論者」、「学力
低下論者」、「もう一つの学力低下論
者」
• 学力低下論の論点
①学力低下の実態把握
②学力低下で何を問題視するか
③その解決方法
④教育議論の扱い方
学力は低下している?
実施年
教科
参加国(地域)数
日本の順位
第一回
1964年
1970年
数学
理科
12
18
2位
1位
第二回
1981年
1983年
数学
理科
20
24
1位
2位
第三回
1995年
数学
理科
41
41
3位
3位
第三回
1999年
数学
理科
38
38
5位
4位
出典:IEA調査
→やや順位が落ちているように見えるが、「世界のトップレベル」と言える順位
学力低下の決定的な数字にはならない
学力低下による問題
• 大学教員
―授業のレベルダウン
• 国際
―科学技術立国としての立場
―国際競争力が失われる
• 資源
―資源の少ない国では人こそ資源
ゆとり教育
• 日本において、知識重視型の教育方
針を詰め込み教育であるとして学習
時間と内容を減らし、経験重視型の教
育方針をもって、ゆとりある学校をめ
ざした教育
→1980年度、1992年度、2002年度
の学習指導要領に沿ったもの
ゆとり教育実施の理由
1960年、1970年代 日本の教育は詰め
込みすぎと非難→校内暴力など
「ゆとりの時間」→かえってゆとりがなく
なる
ゆとりのためには内容を減らさざるをえ
ない
内容を一律で削減
総合的学力
• 教科などで培った学力を踏まえながら、
教科の枠を超えて、現実の社会課題
(環境劣悪化、少子高齢化、国際化な
ど)や自らの生き方に関わる課題(進
路選択、自分探しなど)を発見し、解決
しようとする際に身につく学力
→「生きる力」
↓
ゆとり教育のシンボル
教育改革
1.学校選択性
2.学校評価
3.少人数学級
―習熟度別少人数制
4.小学校の英語導入
教育改革
出典:内閣府ホームページ:「学校制度に関する保護者アンケート」平成17年
学校選択性
• 教育委員会が指定する学校(指定校)
に就学する以外に保護者が希望する
公立小・中学校を選ぶことができる仕
組み。
学校選択性が望ましい理由
子供が自分の個性にあった学校で学ぶことができる
教職員の質が変わると思う
21.3
62.7
30.2
選択や評価を通じて特色ある学校づくりが推進される学校に就学
できる
42.4
学校同士が競い合うことにより教育の質が向上する
57.6
45.1
保護者の学校教育への関心が高まる
54.9
学校を選ぶにあたって保護者と子供の十分な話し合いが行われ
る
指定校変更申立よりも簡単な手続きで児童の希望に沿った学校
へ就学させることができる
出典:内閣府「学校教育に関する保護者アンケート」2009年
学校選択性が必要ない理由
学校間の格差が大きくなった
19.8
23.3
学校間の序列化が生じた
45.3
児童生徒の人数によって学校間の教育内容に差が出るようになっ
た
入学者が減少し、適正な学校規模が維持できない学校が生じた
24.4
36
29.1
学校と地域の連携が希薄になった
通学距離が長くなり、安全確保が難しくなった
出典:内閣府「学校教育に関する保護者アンケート」2009年
学校評価
学校関係者評価
第三者評価
自己評価
教職員による評価
学校関係者
による評価
(保護者・
地域住民)
第三者
(当事者・
関係者でない者)
による評価
少人数学級
• 公立学校の1学級の上限人数は、国
の基準では40人
• 2007年現在、OECD(Organisation
for Economic Co-operation and
Development)平均が小学校21.4人、
中学校23.9人であるのに対し、日本
の平均は小学校28.2人、中学校33.2
人→中学校では10人程度の差
少人数学級の利点
• 世界の公立学校の教育環境整備に
追いつく
→日本は主要先進国のなかで圧倒的
に遅れているといわれてきた
• 一人ひとりにきめ細やかな指導を行う
→子供の学力低下などの対策
少人数学級の欠点
• 小中学校の学級定員の上限を35人ま
で引き下げる
→教員の給与だけで年間3300億円、
30人の場合では年間7800億円
→さらに教室の増設などに500億円程
度かかる
• もし学級編制基準を各地方に任せた
場合、今以上に子供の教育水準に大
きな差
→少人数学級をやるなら国で一律に
するべき
習熟度別少人数制
同一年齢学級制
習熟度別少人数制
能力の多様な子が学習に取り組む。こ
この多様性に対応するための工夫。
習熟度に応じてグループが編成。能力
に応じた指導が可能。学力格差を広げ
る可能性。
集団の規模が大きい
集団の規模が小さい
学習目標が同じ
学習目標がグループによって違う
統一された評価基準
習熟度によって異なる評価基準
一斉平等な進度
習熟度に応じた進度
個々人で達成度が違ってくる
グループごとに達成度が違ってくる
人数が多く能力が多様なので発言しに 人数が少なく能力が近いので発言しや
くい
すい
能力差が明瞭でない集団編制
能力差が明瞭な集団編制
人間関係に配慮できる
人間関係への配慮が難しい
小学校の英語教育
• 小学校からの英語教育を必修にする
という動き
• ばらつきはあるがなんらかの形で
90%以上の小学校で英語教育を取り
入れている
• 英語教育を行うこと自体は概ね賛成
の意見だが、小学校で英語を必修に
することに対しては保護者は賛成、教
員は慎重な姿勢を見せている。
フィンランドの教育
学校・学級
国家・政府・制度
カリキュラム・授業
○平等な義務教育
○少人数制と個人・グループ作業
○偏差値編制や能力別クラスなどがない
○落ちこぼれ、学力差を出さない
○多様な生徒で構成されるクラス集団
○「国家カリキュラム大綱」は
大きな枠組みを定めるのみで、
学習すべき知識について国の
定めはない
○社会的文脈、社会的人間関係において構成
されるものとしての知識
○テスト競争がない
○制服・校則がない
教師
○高い学歴(大学院終了は必須)と質の高さ
○社会的地位の高さ
○教師は「子供の学びを支援する専門家」
○煩雑な事務仕事がない
○多様な進路と学び直しを奨
励・促進する学校制度体系・試
験制度
○教科書や教える内容は、教
師が自由に選択し、組み替え
ることができる
参考資料
• 内閣府ホームページ
http://www.cao.go.jp/
• 文部科学省ホームページ
http://www.mext.go.jp/
• OECDホームページ
http://www.oecd.org/home/0,2987,en_2649_20
1185_1_1_1_1_1,00.html
• 久冨善之、長谷川裕、山崎鎮親編
『図解 教育の論点』 旬報社、2010年。
• 黒上晴夫編 『教育改革の流れを読む』 関西大学
出版部 2004年
• 下村哲夫 『「教育の課題」を見直す』 学陽書房
2003年
• 市川伸一 『学力低下論争』 築摩書房 2002年
論点
• ゆとり教育の功罪は?
• 本当に学力は低下していると言えるのか?
• 学力低下は日本にとってどのような影響を
及ぼすのか?
• これから進めていくべき教育改革とは?(今
日発表した改革に賛成・反対、その理由を
述べてもらってもいいです)
―学校選択性、学校評価、少人数学級、小
学生の英語必修化
• フィンランドの教育をどのようにして日本に
反映させればいいと思うか。