認知症高齢者と身体拘束の克服 京都保健会盛林診療所所長 社団法人呆け老人をかかえる家族の会顧問 三宅貴夫(老年科医) 奈良県身体拘束ゼロ作戦推進セミナー2005年7月30日 Ⅰ.なぜ認知症高齢者の身体拘束の克服か Ⅱ.認知症について 1.用語について 認知症 痴呆 ぼけ 2. 認知症の診断基準(DSM-Ⅳ) 以下のすべてがそろっていること ① 記憶障害がある。 ② 失語・失認・失行・実行機能障害のひと つがある。 ③ ①と②のために生活に支障がある。 ④ ①と②の原因として脳などの身体疾患が ある。 ⑤ 意識は清明である。 3. 認知症の原因 1次要因 アルツハイマー病 脳血管障害 その他(慢性硬膜下血腫、低酸素脳症、ヤコ ブ病など) 2次要因 身体状態(脱水、熱発、貧血など) 精神状態(緊張、不安、うつ状態、混乱など) 生活・環境状態(不適切な介護、馴染めない住環 境など) 4. 認知症高齢者の心理 記憶の障害 判断の障害 総合的判断 抽象的判断 時系列的判断 過去に生きる 感情、思い、プライドは残る 5.認知症の治療 薬物療法 抗認知症薬(アリセプト) 向精神薬(抗精神病薬、抗不安剤、抗うつ剤など) その他(降圧剤、糖尿病薬、高脂血症薬など) 非薬物療法 回想法 音楽療法 バリデーション その他 外科的治療 6.認知症高齢者のケアの基本① 認知症の人を知る 認知障害の程度と内容 生活暦 生活習慣 日常生活 残存能力に働きかける 「生けている世界」を受け入れる 感情や思いやプライドに配慮する 身体状態を把握する (つづ 6.認知症高齢者のケアの基本② 身の安全を守る 周囲の理解を得る 地域のサービスを利用する 人権に配慮する 周囲の理解と協力を得る 社会的サービスを利用する 介護者を介護する 7.認知症高齢者の「問題行動」への対応 「問題行動」とは 「問題行動」別のケアの実際 8.その他の課題 認知症の告知 初期・軽度認知症の人 若年期認知症 人権擁護 成年後見制度 地域福祉権利擁護事業 身体拘束の禁止 高齢者虐待の予防 認知症の予防 Ⅲ.認知症高齢者の身体拘束の克服に向けて 1.わが国における身体拘束の克服 その経過① 1986年 上川病院で抑制廃止の取り組み 1998年 抑制廃止福岡宣言 呆け老人をかかえる家族の会の 身体拘束の実態調査 1.わが国における身体拘束の克服 その経過② 1999年 省令 厚生省令で身体拘束禁止を規定 サービスの提供にあたっては 当該利用者は他の利用者等の生命又は 身体を保護するため 緊急やむを得ない場合を除き 身体拘束その他利用者の行動を制限する行為 を行ってはならない。 1.わが国における身体拘束の克服 その経過③ 2000年 全国抑制廃止研究会発足 介護保険制度施行 厚生労働省に 身体拘束ゼロ作戦推進会議設置 都道府県に 身体拘束ゼロ作戦推進会議設置 2004年 国際アルツハイマー病協会京都 国際会議で「身体拘束と虐待の要因と 予防」をテーマにワークショップ開催 2. 身体拘束とは何か 身体拘束に関連した用語 抑制 行動制限 虐待 不適切なケア 身体拘束の範囲 物理的拘束 薬物的拘束 心理的拘束 ? 3. 身体拘束の弊害① 身体的弊害 関節拘縮 筋力低下 食欲低下 心肺機能の低下 転倒・転落事故 3.身体拘束の弊害② 精神的弊害 不安・抑うつ・怒り・屈辱 QOLの低下 認知症の悪化 家族の動揺・後悔・罪悪感 医療・看護・介護職のうしろめたさ・意欲低下 3.身体拘束の弊害③ 社会的弊害 病院、介護施設の社会的評価の低下 認知症への社会的誤解 4. 身体拘束の克服の視点 医療・看護・介護の視点 望ましい適切なケアのために 倫理の視点 その人らしい生活を送れるために 法的な視点 犯罪にならないために 人権の視点 人権を侵害しないために 尊厳の視点 尊厳ある人間のために 5. 身体拘束の克服に向けて① 医療職・看護職・介護職の役割 医師 看護師 介護職 その他の職種 病院・施設長の役割 トップの考え・方針・決断 5. 身体拘束の克服に向けて② 自治体の役割 身体拘束の実態把握と予防の指導 国の役割 身体拘束を克服できる環境づくり 家族の役割 認知症高齢者の情報提供と克服への連携 社会の役割 地域に開かれた病院・施設 ボランティアなどの協力 5. 身体拘束の克服に向けて③ 認知症高齢者と身体拘束 認知症の人への身体拘束 身体拘束に関わる家族の意思 認知症高齢者への医療・看護・介護職の誤解と 不適切な対応 6.身体拘束の克服の具体的方法① 医療・看護・介護職の認識の統一 学習 事例検討 勤務体制の検討 その他 6.身体拘束の克服の具体的方法② 認知症高齢者の行動の観察 介護の工夫 スタッフの連携 住環境の整備 安全の確保 家族の協力 事故が起きた場合の対応 6.身体拘束の克服の具体的方法③ 緊急やむを得ない場合の対応 緊急やむをえない場合とは 切迫性 非代償性 一時性 指示と観察と記録 7.病院・施設別身体拘束の克服の取り組み① 医療機関 一般病院 専門病院 ホスピス病棟 その他 7.病院・施設別身体拘束の克服の取り組み② 介護保険施設 特別養護老人ホーム 老人保健施設 療養型医療施設 グループホーム ケアハウス その他 7.病院・施設別身体拘束の克服の取り組み③ 通所施設 デイサービス デイケア 在宅 その他 7. その他の課題 在宅での身体拘束について その他 付録:認知症に関するサイト 「ぼけ」なんでもサイト(三宅貴夫編) http://www2f.biglobe.ne.jp/~boke/boke2. htm 社団法人呆け老人をかかえる家族の会 http:www.alzheimer.or.jp 認知症を知るホームページ http://www.e-65.net おわり 奈良県身体拘束ゼロ作戦推進セミナー2005年7月30日
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