Optimal Control of Linear Quantum Systems despite Feedback Delay ○ 西尾和記, 加嶋健司, 井村順一 (東京工業大学) 発表の概要 最適フィードバック制御 制御問題 線形量子系のフィードバック制御 方程式 (1), (2) によって記述される量子系を考える.このとき,評価関数 原子の冷却 A.C.Doherty et al., PRA 60, 2700 (1999) 最適制御,最適測定 H.M.Wiseman et al., PRL 94, 070405 (2005) を最小化する因果的,線形,かつ時不変な制御器を求めよ.ただし,評価 出力は次で定義される. 問題点 以下の要因によって生じるフィードバック遅延 制御器を実装するための計算時間,信号の伝送遅延,測定に要する時間 遅延により達成可能な制御性能はどれほど劣化するのか? 遅延の影響が特に問題となるシステムとはどういうものか? 最適制御性能 ( 評価関数の最小値 ) 上記問題に対して,評価関数 の最小値は次で与えられる. (3) 研究目的 フィードバック遅延のもとでの線形量子系に対する最適制御器の導出 ここで, は のときの の最小値であり に依存する.また, は各パラメータによって定まり,後者は 最適制御性能の観点からの,システムの対遅延特性の解析 に依存する. 遅延による制御性能劣化の解析 システムモデル システムの安定性と性能劣化の関係 probe homodyne detection controlled object 式 (3) の右辺第二項により遅延による性能劣化が特徴付けられることに 注意すると, のとき であることが望ましい.すなわ ち,行列 の固有値の実部が負,i.e. システムが安定となる条件 ( quantum ) かつ ,または かつ 全遅延を集約 を満たすとき,システムは遅延の影響に対して強く,それ以外では遅延長 とともに の値は単調増加する.すなわち,上の関係を満たさないシス テムの最適制御においては,遅延の影響を十分に考慮する必要がある. controller ( classical ) に対して Example ならば安定, → 遅延の影響小 Fig. 1 Quantum feedback control with a classical controller ならば安定限界. → 遅延の影響大 システム( 制御対象+プローブ )の記述 最適量子測定と遅延による性能劣化の関係 制御対象,プローブ系の密度演算子 “Wiseman PRL 94, 070405”によると,量子系においては測定器パラメー タの僅かな違いが最適制御性能の値を大きく変化させる.以下では,数値 例により,測定パラメータと遅延による性能劣化の関係をみる. ※ 正準変数ベクトル 自由ハミルトニアン Example 1 ( 安定系 ) 制御ハミルトニアン → 図2 プローブと相互作用する演算子 Example 2 ( 安定限界系 ) プローブの生成,消滅過程 → 図3 各行列の定義 ; 対称行列 システムの時間発展 全系のユニタリ演算子はHudson-Parthasarathy方程式により記述される. このとき と定義すると,量子伊藤公式 Fig. 2 The curve in example 1 より次の線形のシステム方程式を得る. (1) ただし, ローブ光のオブザーバブル である.また,測定効率を 1 と仮定し,プ を測定するとき, とおくことで,次の出力方程式を得る. (2) Fig. 3 The curve in example 2 システムが安定でなく遅延が大きいとき,測定器パラメータの チューニングによる性能の改善は相対的にほとんど見込めない. まとめ 本研究では,フィードバック遅延のもとでの最適制御器を導出した.また, 最適制御性能の観点から,どのようなシステムであれば遅延の影響を受 けやすいかを明らかにするとともに,最適量子測定と遅延の関係を数値 例により示した.
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