少年犯罪は増えているのか

少年犯罪は増えているのか
(1) なぜ、このテーマにしたのか
ここ最近、TVや新聞で
「少年犯罪の増加」や「凶暴化する若者」といった論調が強い。
だが、自分の身のまわりでそのように感じたことはない。
せっかくだから、この機会に調べてみよう
動機の裏話
じつは、当初やろうとしてたテーマは
「ゲームは若者を凶暴化するのか」
辞めた理由
・ゲーム業界のデータが少ない
2000年以前だと驚くほどデータがない
・ゲームの定義があいまい
携帯ゲームも入れていいのかといった問題。
データはそれなりに集めていたものの、結局は無駄に。
(2) どうやって調べるか
1.
2.
仮説を立てる。
データを図書館やインターネットで集める。
(実際には、ネット上だけで十分集められた)
3.
SPSSを用いて分析
散布図を作る
(4)仮説
〈1〉「平成元年からの20年間で少子化は進んでいる」
〈2〉「検挙された数と犯罪少年の数は関係がある」
〈3〉「凶悪犯の数と凶悪犯罪を犯した犯罪少年の数は関係ある」
必要だと思われるデー
タ
・人口統計
未成年人口や人口総数といったデータ
・犯罪発生率
少年犯罪の発生率や犯罪総数といったデー
タ
(3) 収集したデータ
・1989年~2008年(平成元年~平成20年)のデータ
・データの項目について
人口総数 … 総務省が統計的に推計した日本国内の人口総数。
未成年人口… 人口総数のうち、0歳から19歳までの人口。
刑法犯(認知) … 警察で認知した犯罪件数。
刑法犯(検挙) … 警察に検挙された数。
刑法犯(凶悪犯) … 警察に検挙されたうち、殺人・強盗・放火・強姦等を犯した者。
犯罪少年 … 警察に検挙・補導された0歳から19歳までの者。
犯罪少年(凶悪犯) … 警察に検挙・補導された犯罪少年のうち凶悪犯罪を犯した者。
仮説の検証
〈1〉「平成元年からの20年間で少子化は進んでいる」
モデル集計
モデル
R
1
R2 乗
.994a
.987
調整済み R2 乗
.987
推定値の標準誤差
359.878
0
a. 予測値: (定数)、人口総数。
分散分析b
モデル
平方和 (分散成分)
1
回帰
1.827E8
残差 (分散分析)
2331219.241
合計 (ピボットテーブル)
1.851E8
a. 予測値: (定数)、人口総数。
b. 従属変数 未成年人口
有意確
率
自由度
平均平方
F 値
1
1.827E8 1410.863
.000a
18 129512.180
19
係数a
モデル
1
(定数)
人口総数
a. 従属変数 未成年人口
標準化されていない係数
標準化係数
B
標準誤差
ベータ
283270.221
6814.617
-2.028
.054
-.994
t 値
有意確率
41.568
.000
-37.561
.000
〈1〉「平成元年からの20年間で少子化は進んでいる」
決定係数(R2乗値)が0.987であり、よって寄与値が98.7%である。
回帰方程式はy = −2.028x + 283270.221
(y:未成年人口、x:人口総数)
F値の有意確率が0.00であり、0.05以下なので成立する。
この回帰モデルは妥当だと判断し、
「平成元年からの20年間で少子化は進んでいる」は成立する。
仮説の検証
〈2〉「検挙された数と犯罪少年の数は関係がある」
モデル集計
モデル
R
R2 乗
.502a
1
.252
調整済み R2 乗
.210
推定値の標準誤差
100541.687
0
a. 予測値: (定数)、犯罪少年。
分散分析b
モデル
1
平方和 (分散成分) 自由度 平均平方
6.119E10
1 6.119E10
回帰
残差 (分散分析)
1.820E11
18 1.011E10
合計 (ピボットテーブル)
2.431E11
19
F 値
有意確率
6.053
.024a
a. 予測値: (定数)、犯罪少年。
b. 従属変数 刑法犯(検挙)
係数a
モデル
1
標準化されていない係数
(定数)
犯罪少年
a. 従属変数 刑法犯(検挙)
B
931407.754
標準誤差
171401.888
2.643
1.074
標準化係数
ベータ
.502
t 値
有意確率
5.434
.000
2.460
.024
〈2〉「検挙された数と犯罪少年の数は関係がある」
決定係数(R2乗値)が0.252であり、よって寄与値が25.2%である。
回帰方程式はy = −2.643x + 931407.754
(y:刑法犯、x:犯罪少年)
F値の有意確率が0.024であり、0.05以下なので成立する。
この回帰モデルは妥当だと判断し、
「検挙された数と犯罪少年の数は関係がある」は成立する。
仮説の検証
〈3〉「凶悪犯の数と凶悪犯罪を犯した犯罪少年の数は関係ある」
モデル集計
モデル
R
0
1
R2 乗
.764a
.584
調整済み R2 乗
.561
推定値の標準誤差
648.816
a. 予測値: (定数)、犯罪少年(凶悪犯)。
分散分析b
モデル
平方和 (分散成分)
1
回帰
1.064E7
残差 (分散分析)
7577310.745
合計 (ピボットテーブル)
1.822E7
a. 予測値: (定数)、犯罪少年(凶悪犯)。
b. 従属変数 刑法犯(凶悪犯・検挙)
自由度
平均平方
1
1.064E7
18 420961.708
19
係数a
モデル
標準化されていない係
数
標準化係数
B
標準誤差
ベータ
1
(定数)
3795.833
548.430
1.533
.305
.764
犯罪少年(凶悪
犯)
a. 従属変数 刑法犯(凶悪犯・検挙)
有意確
率
F 値
25.274
.000a
t 値
有意確率
6.921
.000
5.027
.000
〈3〉「凶悪犯の数と凶悪犯罪を犯した犯罪少年の数は関係ある」
決定係数(R2乗値)が0.584であり、よって寄与値が58.4%である。
回帰方程式はy = −1.533x + 3795.833
(y:刑法犯(凶悪犯)、x:犯罪少年(凶悪犯))
F値の有意確率が0.000であり、0.05以下なので成立する。
この回帰モデルは妥当だと判断し、
「凶悪犯の数と凶悪犯罪を犯した犯罪少年の数は関係ある」
は成立する。
(5)データの推移について
(5)考察
仮説
〈1〉「平成元年からの20年間で少子化は進んでいる」
〈2〉「検挙された数と犯罪少年の数は関係がある」
〈3〉「凶悪犯の数と凶悪犯罪を犯した犯罪少年の数は関係ある」
いずれも成立した。
(1)より、成年人口は減少している。
これは、少年犯罪の数は減少しなければならない。
だが、(6)のグラフを見ると、有意な減少は見受けられない。
しかし、(2)(3)より犯罪総数と少年犯罪の数は相関性が見受けられる。
犯罪総数の中で少年犯罪は一定の割合を占めているといえる。
よって、少年犯罪だけが急増しているわけではない。
(7)結論
少年犯罪だけが増加したという事実は見られなかった。
ただし、少子化によって未成年の人口が減少しているにもかかわらず、
少年犯罪の総数に変化がみられなかった。
これらの分析から、「少年犯罪の増加」や「凶暴化する若者」といった
論調は誇張であり誤りである。
ただ、少年犯罪も少子化に反して減少がみられないため、そういった論
調が生まれる土壌があるのも事実だと思われる。
参考データ
総務省統計局ホームページ
(http://www.stat.go.jp/)
人口推計・警察庁の統計