3 - 犯罪心理学を研究するゼミ

非行心理学
Oct.18
2012
少年犯罪の動向
教科書販売について
 「犯罪心理学研究法」
福村出版
 基礎から学ぶ 犯罪心理学研究法
桐生 正幸 (著) 2520円
 2000円で本日、
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本日の学習目標
 少年犯罪の件数の推移について知る
 少年事件の再犯と再犯率について知る
 更正事例から少年非行の原因を学ぶ
少年による刑法犯の検挙人員の推移には,
3つのピーク(1951,1964,1983年)
2004年以降は毎年低下
配付資料のグラフに、ピークを示す赤い矢印を書き込んでください
少年犯罪の3つのピーク(配付資料1(1))
 ① 1951年(昭和26年) の16万6,433人
 ②

1964年(昭和39年) の23万8,830人
③ 1983年(昭和58年) の31万7,438人
 1984年以降、1995年まで減少傾向
2004年(平成16年) から毎年減少
 人口比についても,2004-2010年まで毎年低
下
1955年前後
 2010年の検挙人員は,127188人 で
(昭和30年)
と同程度の水準(人口比で見ると,第二の
波があった1964年(昭和38年)ころと同水
準)黄色の矢印で示す。

刑法犯と一般刑法犯の違い
刑法犯
道路交通法違反を含む
2010年:127,188件
一般刑法犯
道路交通法違反を除く
2010年:103,627件
配付資料1(2) 一般刑法犯による触法少
年の補導人員も減少傾向
 ( 1951年、1962年、1981年
)の3
回のピークを経て,その後は減少
傾向
• ( 1999年
)以降は2万~2万
2千人台
• ( 2006年
)に初めて2万人を
下回る
配付資料1(3) 2010年一般刑法犯の検挙人員は少年
が約3割
少年事件を抑制することは、犯罪の検挙率アップにつな
がる
配付資料1(4) 2010年の一般刑法犯検挙人員
多いのは窃盗62% 横領19% 傷害5%
横領:遺失物等横領で、大半は放置自転車の乗り逃げ
少年の年齢ごとの分類
年少少年(14一15歳)
中間少年(15-16歳)
年長少年(18-19歳)
若年者(25歳未満)
窃盗
横領
傷害
暴行が多い
2010年の少年事件の罪種別検挙人員
どの年齢でも窃盗が多いが、年齢が上がると窃盗の比率は下がる
少年の窃盗事件の手口と年齢分布
いずれの年齢層においても、(非侵入窃盗)の構成比が
高く,中でも,(万引き)の構成比が特に高い。年齢層が
上がるに従い,万引き以外の手口の構成比が上昇して
手口が多様化し,さらに,侵入窃盗の構成比が上昇する
(配付資料1(6))
配付資料1(7):毒劇法(シンナー遊び)は1982年頃をピーク
とし、1990年頃から減少 薬物犯罪もほぼ同様の動きで
あったが、2006年頃から上昇傾向
配付資料1(8):暴走族の構成員数及びグループ数は,1982年の
4万2,510人をピークとして減少(2010年は7,850人)。グループ
数は,1989年頃から増加傾向にあったが,2002年をピークとし
て減少。グループの規模は,小規模化傾向(30人未満のものが
98.7%)。
配付資料1(9):ぐ犯の終局処理人員 1984年からおおむ
ね減少傾向が続いており,2010年は,411人(前年比
28.5%減)であった。女子比は,1976年以降50~60%台
前半で推移していたが,2010年は46.0%。
LITEの実施:少年犯罪の動向
 少年事件の発生件数(刑法犯)
ピークがあったのは何回?
何年頃におよそ何件くらい
2010年の発生件数は?
少年事件で多い犯罪は?
その手口は?
触法少年とぐ犯の人員数
配付資料1(10):少年による家庭内暴力事件の件数は,
1990年代の初め頃には,700~800件前後で推移してい
たが,2000年に急増して以降は,1,000件を超える状態が
続き,2010年は1,484件(前年比25.7%増)。いずれの年
でも,最も高い比率を占めるのは中学生で,2010年は
46.1%(684件)。
いじめ事件
 いじめは,その態様が様々であり,必ずしも全て
が刑事司法手続の対象とされるわけではない。ま
た,行為の性質上,実態を把握しにくいのが実情
である。
 警察において取り扱ったいじめに起因する事件の
事件数及び検挙・補導人員は,1985年をピーク(
638件,1,950人)として長期的には減少傾向にあり
,2010年は,133件(いじめによる事件が130件,い
じめの仕返しによる事件が3件)(前年比30件減)
,281人(前年比32人減)
配付資料1(11):児童相談所の対応件数は年々増加
し,2010年度においては,児童虐待防止法施行前の
1999年度に比べ4.7倍となり,過去最多を記録,児童
虐待に係る事件の検挙件数・人員も増加傾向
少年事件の再犯
配付資料2(1):少年院入院者数は,16歳から19歳ま
での各年齢ではおおむね700人前後 再入者数は,年
齢が高いほど多くなっており,少年院入院者人員に占
める再入者の人員の比率は,年少少年では2.6%,中
間少年では15.4%,年長少年では30.6%
配付資料2(2):少年院入院者の人員は1996年以降増加
傾向にあったが,2000年(6,052人)をピークとして,減少
に転じ,2010年における少年院入院者の人員は,3,619
人(初入者2,938人,再入者681人) 再入者率は,1999
年以降上昇傾向にあり,2005年の19.6%をピークとし,以
降は低下を続けていたが,2010年には上昇して18.8%。
配付資料2(3):再非行少年の人員は,2004年から20
10年まで毎年減少しているが,再非行少年率は,
1997年を底として翌年から毎年上昇。
 窃盗では再非行少年率は
強盗
他と比べて高くないが、
強盗は,一般刑法犯全体
と比べて,再非行少年率
が目立って高く,1996年
を除いて再非行少年率が
50%を超える水準が続い
ており,恐喝も,1996年
の37.9%から22年には
60.8%と高い水準
LITEの実施
 少年院の入所者の数は?
 年長少年の比率は?
 再非行率の動向は?
 再非行率の高い罪種は?
就労の安定と交友関係の改善が
改善更生に結び付いた事例
 小学生の頃から,両親が不仲で家に居づらい
 中学校入学前後から,喫煙や夜遊び
 高校に進学したものの,すぐに中退し,以後,不
良仲間と遊興
 窃盗事件を起こし,保護観察処分
 その後も生活を改善させることなく,多数回の補
導,家庭裁判所の試験観察
 更に不良交友を続け,夜遊び中心の生活を送る中
,友人の言動が気に食わないとして暴行事件等を
起こし,中等少年院送致
就労の安定と交友関係の改善が
改善更生に結び付いた事例
 少年院入院当初,周囲の雰囲気に流されやすい一
方,自信のなさから虚勢を張ったり,自分の考え
を押し通そうとする
 集団生活や職業補導を通して規範意識や地道に努
力する姿勢を養う
 また,アーク溶接などの資格取得を契機に,自立
に向けて,出院後の生活や仕事について具体的に
考える
 交友関係について,集団討議や課題作文に取り組
む過程で不良交友の問題に気付き,不良交友を断
つ決意。
就労の安定と交友関係の改善が
改善更生に結び付いた事例
 保護観察所で,保護観察官及び保護司が両親への働き
掛けを重ね,不仲であった両親がそろって少年を迎え
入れる態勢
 少年院を仮退院し,両親のもとに帰住
 当初,就職先が見つからず,ようやく始めた販売の仕
事も続かないなど,就労がなかなか安定せず,不良交
友も完全に断ち切ることはできず
 保護司が,就労セミナーに同行,日常的に少年や両親
の相談に乗り,指導・助言
 飲食店に就職すると,家族が店を訪れ,励ましてくれ
たこともあり,意欲的に仕事に打ち込むようになり,
生活全般が安定
考察
非行の原因
 家庭内で居心地の悪さを感じていた少年
が,その居場所を不良仲間の中に求め,
その交友を深めるうちに非行を繰り返し
 もともと,家庭教育等による規範意識の
かん養も不十分であったところ,同世代
の不良仲間と非行を繰り返す中で,不良
顕示的な態度を示し,規範意識をますま
す鈍麻させ,就学や就労面でのつまずき
もあいまって,問題性を深化
考察
 少年院での指導
交友関係の在り方など自らの問題と向き合う
自らの努力により資格を取得したという達成感などが,少
年の意識,価値観を徐々に変化
 仮退院後
必ずしも順調な経過をたどったわけではなく,当初は,交
友関係,就労面において不安定な時期
少年の意識や,保護観察官の指導の下,少年や両親を身近
に支えた保護司の存在によるところが大
少年が家庭や職場に自らの居場所を見出したことで,交友
関係も改善され,改善更生の環境が整う