化学入門

化学入門
足利裕人
物質が何ででき,どのような構造を持ち,どのよ
うに変化していくかを解き明かそうとした先人達に
学び,化学の基本原理や法則が産まれた歴史的過程
や,現代の科学技術の根底となった経緯を学びます。
また,簡単な実験やシミュレーションを行い,日常
経験する内容を中心に問題解決を行います。
このプレゼンの場所

Googleで”ashi”→ashiさんの部屋
化学ってどんなイメージ

まさか!?
◦ 化学超男子(Chinese)
◦ 케미스트리(韓国語)
化学の化
 化ける
 化粧
 化合(ばけあい)
 化学(ばけがく)→どのような仕組み
で化けるのか

授業計画
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第1回 人間生活と化学とのかかわり
第2回 物質の構成粒子と周期表
第3回 物質と化学結合
第4回 物質量と化学反応式
第5回 酸・塩基と中和
第6回 酸化と還元
第7回 溶液の性質
第8回 物質の状態と平衡
第9回 化学反応とエネルギー
第10回 化学反応と化学平衡
第11回 無機物質と人間生活
第12回 有機化合物の性質
第13回 有機化合物と人間生活
第14回 高分子化合物の性質
第15回 高分子化合物と人間生活
第16回 試験
到達目標と評価
物質を構成する成分組成や構造を理解
し,原子や分子,電子等の微視的視野
で,物質の生成と分解の反応のしくみ
や,他物質との間に起こす反応のしく
みを理解することを目指します。
 毎回のコミュニケーションシート(理
解度,講義コメント,感想等)、課題
レポート,学習態度等で40%,定期
試験で60%の合計で評価します。

あなたの化学知識はいかほど?
○×を付けましょう。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
蜂の毒は蟻酸。アンモニア水で中和する
西瓜は冷やすと甘さが減る
50円玉はニッケルなので磁石につく
銅はダイヤモンドより4倍多く熱を伝える
胃液の塩酸は胃を溶かすほど強くない
魚に酢やレモン汁をかけると臭みが消える
マイナスイオンは水が分解したOH-の気体だ
コラーゲンを食べるとコラーゲンが増える
ジャガイモの新芽の毒は迷信だ
アルカリ性食品はアルカリ性だ















11
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15
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20
21
22
23
24
25
アルカリイオン飲料はアルカリ性だ
スノーガンで水を撒いて雪を作ると気温が下がる
凍結道路に塩を撒くと,凝固点降下でさらに凍る
ゴムを温めると伸びる
伸ばした輪ゴムを急に縮めると冷たくなる
酸化とは酸素と化合することだ
洗濯糊(PVA)はプラスチックだ
アルコールの氷は液体のアルコールの上に浮く
アルカリイオン水はダイエット効果がある
ゲルマニウムローラーは皮膚を活性化する
チタンブレスレットは電流効果で肩こりが直る
花火は水中で燃える
バナナの匂いと人工のバナナエキスとは同じ成分
ナメクジに塩をかけると体重が半分になる
アイソトニック飲料は胃での吸収が速い
コラーゲン
タンパク質は、胃で消
化酵素(ペプシン)が
働き、ペプトンに分解、
小腸で消化酵素(ペプ
チターゼ)で、アミノ
酸に分解、毛細血管に
入って肝臓に集まり、
一部はタンパク質、一
部は、アミノ酸のまま
体中へ。さまざまなタ
ンパク質合成の材料
 コラーゲンは、真皮、
靱帯、腱、骨、軟骨な
どを構成するタンパク
質のひとつ
 髪の毛食べる、脳食べ
る?

ヒアルロンサン


ごはんや芋のデン
プンは、口の中の消化酵素α-アミラーゼ
で分解され、十二指腸で膵液アミラーゼ
により再び分解され、オリゴ糖に分解さ
れます。これが小腸粘膜の消化酵素でグ
ルコース等に分解され、身体中に行きわ
たります。
ヒアルロン酸は、このグルコースから作
られます。濃度が高いのは、へその緒
(臍帯)、関節液、目の硝子体、皮膚な
どです。皮膚の保湿を保つヒアルロン酸
は真皮層と基底細胞の周辺で、また、間
接液は骨膜で作られます。
ゲルマローラー、チタンブレスレット
以下はある通販サイトの文です。
チタンは、マイナスイオン効果
で身体が元気になる、とても不思
議な金属です。「人体に装着することで電流が効果
的に発生し、疲労回復、肩こりの緩和、運動能力の
向上などの効果があると言われています。
 ゲルマニウムは、体温の接触面の温度が32℃以上
になるとマイナスの電子が飛出し、その電子的特性
により体の細胞内の電流バランスを整えてくれると
言われています。 チタンもゲルマニウムもノンアレ
ルギーなので、金属アレルギー・敏感肌の方にも安心
してお使いいただけます。
 注:チタンは酸化して表面に不動態が
でき、錆びにくい。
 ゲルマニウムは周期表で第32番目の元素


解説
1 × 蜂の毒はアミン(ヒスタミン等→腫れ)、低分子ペプチド、酵
素など。抗ヒスタミン剤、ステロイド等で治療する
2 × 西瓜の甘味は主に果糖。果糖は冷やすと甘味を増す
3 × 昭和30~33年と昭和34~41の50円玉はNi。自販機で中止 実
4 × ダイヤモンドは銅より2.5~5倍多く熱を伝える
5 × 胃壁は粘液を分泌して胃酸を防御。胃液は金属を溶かすほどの
強い塩酸と、胃袋ぐらい軽く消化しちゃうペプシンが主成分
6 ○ 酢で魚の悪臭の元、トリメチルアミンを中和。脇の下も有効
7 × マイナスイオンは実在しません
8 × コラーゲン(膠)はアミノ酸で吸収され、皮膚や髪や爪等不足
している部分へ行く
9 × 天然毒素であるソラニンやチャコニンが多く含まれている。下
痢、おう吐、腹痛、頭痛などを起こす
10 × 食物の灰を水に溶かし、その水溶液
のpHを計測する。野菜、果物、海草等。
梅干しはアルカリ性食品だが酸性
実
 11
実
 12
 13
 14
 15
×
アルカリイオン飲料やコーク等糖類も多く酸性
×
×
×
○
水→雪で空気中に凝縮熱がでて、気温が上がる
凝固点が下がって氷が溶ける
ゴムを温めると縮む 実
伸ばした輪ゴムを急に縮めると冷たくなる 実
 ゴムは常温で、分子がぶるぶる震えている→伸ばすと、分子が揃って震え
ていた運動ができなくなる→その分のエネルギーを熱として放出する
 16
×
酸化とは電子を失うこと
 酸素が化合する反応、あるいは、物質が水素を奪われる反応
 17 ○ 洗濯糊(PVA)はプラスチックだ 水に溶け
る高分子
 http://www.food.sugiyama-u.ac.jp/lab/shokuan/youki/p14.htm
 18 × アルコールの氷は液体のアルコールに沈む動画
 液体が固体になると、通常体積は減る
 19
○
→
密度が高くなる。水は例外
アルカリイオン水で胃腸を痛める
 20
 21
 22
× ゲルマニウムは何もしない
× チタンは何もしない
○ 花火は空気が無くても燃える動画
動画
 成分:硝石(酸素を出す)、イオウ、木炭、Sr(紅)やCu(青)
の塩 塩素酸カリウム KClO3 酸化剤。加熱により酸素を放出
 23
○
バナナの匂いと人工のバナナエキスとは同じ
 匂い成分は酢酸イソアミル。メロンや日本酒にも含まれる
 製法:酢酸、イソアミルアルコールを軽く混ぜ、硫酸で脱水
 24
○
 URL
ナメクジに塩をかけると体重が約半分になる
http://www42.tok2.com/home/ashi58/ashi/science/slug/osp.ht
m
 塩振り前 0.21g 後 0.10g
 塩振り前 0.32g 後 0.17g
 25 × 胃液の酸性が強くて影響は無い
化学を使った詐欺商法にかからないために

アルカリイオン水の原理
◦ Ca2+を加えて電気分解すると各極に集ま
るイオンは
◦ 陰極: H+→H2↑, Ca2+ ・・・ OH- がやってく
る → アルカリ性
◦ 陽極: OH- →O2 ↑,Cl-・・・ H+がやってくる
→ 酸性

胃の中の塩酸HClのpH=2
◦ 少々のアルカリを飲んでも
◦ 影響無し
人間生活と化学とのかかわり

「化学」で連想する言葉は?
◦ 薬、化粧品、合成、触媒、化学変化、化
学反応、分析、酸とアルカリ

化学の役割→ 物質の学問[性質・変化]
◦ 物質の正体を突き止める 分析
◦ 新しい物質を作る 工業
 例:プラスチック
 安い、軽い、割れにくい、成形しやすい(熱可塑性)
錆びない、腐らない → 環境(生分解性)
原子の電子配置

化学反応 → 最外殻電子の授受
元素は変わらず C+O2→CO2
◦ While 核反応 → 原子核(元素)が変化

ボーアの原子模型
◦ 電子は一定半径の球殻面
→
◦ 閉殻:最大の電子数。安定 →
電子殻
反応しない
元素の周期表

H He Li Be B C N O F Ne Na Mg Al Si P S Cl
Ar K Ca 水兵リーベ僕の船 七曲がりシップ
スクラークか

Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se
Br Kr スコッチ暴露マン、徹子にどうも会え
んが、ゲルマン斡旋ブローカー

http://www.popsci.com/files/periodic_popup.ht
ml
元素はどこで生まれるか

140億年前のビッグバン
◦ 陽子と中性子の誕生
◦ 以後,水素 77% ヘリウム22%の世界

星の誕生
◦ 重水素→ヘリウム(核融合)→炭素

巨星内部
◦ 炭素→ネオン→酸素→ケイ素→鉄

数億~数十億後
◦ 超新星爆発 鉄より重い元素
→ 宇宙へ
化学の歩み

元素概念 タレス 前640頃-546頃
◦ あらゆる根源(アルケー)は水
◦ プラトン 4元素説を改訂 前427-322
◦ アリストテレス 冷、熱、乾、湿 前384-322
 熱+寒=火、湿+熱=空気、冷+湿=水、乾+冷=土
 気化:水の加熱の説明 水+熱=(冷+湿)+熱=湿+熱=空気

原子概念 デモクリトス 前460頃-370頃
◦ 世界は分割できない原子(atom)と空虚な空間からでき
ている。いっさいの変化は原子の集合と離散に帰着する。
原子は非常に硬くて分割できない(Quark)。
◦ 無からは何物も生じないし、存在するものはすべて消滅
しない → 2千年後「質量保存の法則」

錬金術(Chymeia) ヘレニズム文化 紀元前1世紀より
◦ 母体:エジプトの科学技術、ギリシアの4元素転化説

アラビアの錬金術
◦ バグダッド電池? サザン朝5~6世紀頃
◦ 金属←硫黄+水銀
◦ 硝酸の発明

西欧錬金術
◦ 1144年「錬金術の構成の書」→14,5世紀全盛
◦ 「賢者の石」卑金属→貴金属、万病の秘薬
◦ ホムンクルス(Homunculus)人工生命体
 ゲーテ戯曲『ファウスト』で登場
◦ 蒸留法と化学物質の知識に貢献
ルネッサンスの化学

医療化学 パラケルスス 1493-1541
◦ 錬金術→医療品製造、医薬品の効能
 秘術・魔術からの脱却 水銀軟膏、エーテルの鎮静作用

鉱山冶金
◦ ピリングッチオ「火工場について」
 化学工業、ガラス細工

◦ アグリコラ「鉱山の書」鉱物と金属、採鉱と経済
機械論の登場 機械仕掛けの世界 数学で記述
◦ ダ・ヴィンチ→ガリレイ、ベーコン、デカルト
我思う故に我あり
(元素は火・空気・土)
自分の存在を考えるこ
とが自分の存在の証明
◦ 原子論の復活(ガッサンディー) 物質は微粒子の集合
 カトリック教会による弾圧→対策
 原子は均質粒子で神の与えた内的動力で運動する
化学の自立と燃焼理論

ボイル 1627-1691 自然科学としての化学
◦ ボイルの法則
気体の体積Vは圧力pに反比例(温度一定)
pV=一定
◦ 元素:物質の分解の究極的要素、今後の進歩で分解されるかも
→20世紀に証明された

フロギストン(燃素:可燃性の元素)説 17世紀
◦ 化学の最初の統一理論 炭(燃える物=フロギストン+灰)

気体の発見 18世紀 二酸化炭素、酸素、水素
◦ (アリストテレス:自然界には気体は空気のみ → 否定)
◦ 水素=フロギストン+水 キャヴェンディッシュ
◦ 熱=酸素+フロギストン シューレ
独
ラボアジェによる化学革命

1
フロギストン説の追放:燃焼=酸化
◦ 燃焼で灰の質量が増える → 酸素と化合したから
◦ 空気=窒素+酸素(燃焼を支持)

2 近代的な元素概念の確立
◦ 化学反応を元素の粒子モクレル(原子、分子)+親和
力 で説明
◦ 最初の単体表光、カロリック(熱素)、酸素、窒素、
水素、硫黄、リン、炭素、塩酸のラディカル、ホウ酸
のラディカル等33の元素
 (ラディカル+酸素=酸 と考えた)
 酸素ガス=酸素+カロリック、窒素ガス=窒素+カロリック 保存:時間
◦ 質量保存法則:dm/dt=0
m:mass t:time
 d/dt:時間微分 ショ糖のアルコール発酵前後の質量精密測定
がたっても
変化無し

成功 ← 観察・実験を重視
原子量概念の登場

定比例の法則 ブルースト1799年
◦ 1つの化合物の成分元素の質量比は常に一定
◦
◦

酸化銅では
Cu:O=4:1
倍数比例の法則 ドルトン1802年
◦ 同じ成分元素A,Bからなる2つの化合物で、同じ質量のAを含む化
合物それぞれに含まれるBの質量は簡単な整数比をなす →原子
量概念
 例:CO 28g → C=12g, Oは16g

CO2 44g → C=12g, Oは32g
∴ 16:32=1:2
◦ 炭素原子1個に対して,酸素原子は1個,または2個結合
◦ 原子は分割できないので,必ず整数比になる
→

気体反応の法則
ゲー・リュサック1808年
◦ 気体反応では、各気体の体積は同温・同圧のもとでは
簡単な整数比を示す
◦ 水の生成
 2H2+O2→2H2O
 2:1:2
◦ アンモニアの生成
 3H2 + N2→2NH3
 3 :1: 2
◦ 当時の矛盾の解決
◦ 水素や酸素は原子1個からなる→原子数に矛盾
 2H+O→2H2O → アヴォガドロが水素H2,
酸素O2を2原子分子として提案して解決

アヴォガドロの仮説 1811年
◦ 1 同温同圧のもとにおけるすべての気体は、
同体積中に同数の分子を含む
2 単体にも分子があり、その分子は2個また
は同数個の原子からなる
 気体反応の法則を無理なく説明 元素の原子量、分子
量を計算
 1840年まで受け入れられず → 化学結合は反対符号
の電荷の引力という概念の時代(共有結合の概念が無
い)
 化学は観察 → 目に見えない原子や分子のイメージは危険という思
想の時代
 カールスルーエの国際会議で仮説が認められる
年
1860
モル
 12C の1mol=12g
◦ → 陽子や中性子の1molをほぼ1gとみる発想

なぜモルを使うか
◦ 2H2+02=2H2O
◦ 化学反応では、原子や分子・イオンの個数が
同じ物質を同じ量とみる
◦ 個数でみた物質の量 → molという単位
◦ ある重さの純物質を1molと約束 → 12Cに
なった
アヴォガドロ数
12gに含まれる12C原子の数を
アヴォガドロ数という。
アボガドロ数N=12/(1.993×10-23)
≒6.02×1023(個) 12Cの1mol=12g
アボガドロ数個の粒子の集団 → 1モル
molを単位にして表した量 → 物質量

12C
例
分子量18の水H2Oのモル質量は,1(H)×2+16(O)=18g
水H2O 2molの質量は,2×18=36[g]
1モルが1ダースだったら
新元素の発見

分光分析 光のスペクトルで微量元素を発見
◦ ブンゼン(分光器製作、バーナー発明)とキルヒホッフ
 Cs発見 1860
Rb 61年(ブンゼン)
◦ クルックス Th 61年
◦ ヤンセン He 68年

周期表
リヒター In 63年
未知元素の予言と発見へ
◦ メンデレーエフ 1869年 63種の元素を並べる
◦ 原子量の順に並べる→少しずつ異なる性質が周期的に
 周期表の空欄(未知元素)→原子量、比重、融点などを予想
 Ga 1875年, Sc 79年, Ge 86年 → メンデレーエフの予想と一致
◦ 0属(希ガス)の追加
 Ar レーリーとラムゼー 1894年,
Kr,Ne,Xe ラムゼー 98年
◦ 希土類元素の発見 1839年~1913年
 イットリウム、ネオジウム、サマリウム、・・・プロメチウム
◦ 放射性元素の発見
 ウラン鉱の放射線 ベクレル 1896年
 ポロニウム、ラジウム キュリー夫妻 1898年
物質とは(普段から意識しよう)


質量を持つ
調べ方
原子・イオン・電子
◦ 五感、水に溶かす、加熱する、電気を流す、
薬品を使う

物質の分類
◦ 金属 ・・・自由電子の働き
 光沢、電気電導、熱伝導、展性・延性
◦ 分子性物質 蝋・砂糖
例外
 融点・沸点が低い、水に溶けにくい、不導体
◦ イオン性物質 食塩
 融点が高い、電気を通さないが、水に溶かせば通す
物質を構成する粒子

元素とは物質を構成する基本的な成分。
◦ 元素は元素記号で表される。
 例:水素…H
酸素…O
アルミニウム…Al

原子
元素に固有の粒子

分子
原子がいくつか結びついたまとまった粒子
◦ 分子式:原子の種類と数を示す
 例:水素分子…H2

イオン
酸素分子…O2
水分子…H2O
原子やその集団が電気を持った粒子
◦ イオン式:原子の種類と数、電気の正負と量を示す
 例:ナトリウムイオン…Na+
化物イオン…Cl−

アルミニウムイオン…Al3+
イオン性物質
◦ プラスの陽イオンとマイナスの陰イオンとが
電気的引力で結びついてできている
塩
単体と化合物

純物質:一種類の物質
◦ 単体:一種類の元素
Ni100%
 同素体(構造が異なる単体)
 a. ダイヤモンド立方晶系の結晶
 b. グラファイト(黒鉛、石墨)
六方晶系の結晶:鉛筆の芯
 c.フラーレン C60
 d. 無定形炭素
非晶質:木炭や活性炭
 e. カーボンナノチューブ
◦ 化合物:二種類以上の元素の物質
 白銅:銅75% Ni25% 水:H2O、二酸化炭素:CO2

混合物:二種類以上の物質
例:海水、空気
参考:同素体と同位体

同素体
◦ 同じ元素の単体
◦ 異なる構造、性質
例:酸素
O2 無色透明 無臭
◦
オゾン O3 淡い青色 生臭い(実験)
◦ 強い酸化作用 → 消毒・殺菌・脱臭
◦ O3 → O2 +O 酸素原子

同位体 isotope 同位元素
同じ原子番号を持つ元素
中性子数が異なる
原子量の計算

塩素:原子量は35.5
◦ 質量数35(陽子17個、中性子18個)75%
◦ 質量数37 (陽子17個、中性子20個) 25%
◦ 同位体の質量数に存在比をかける
分子量・式量の計算
◦ H2O=1.0×2+16=18
これで水の性質
◦ CH3OH=12+1.0×4+16=32:メタノール

式量:分子が定義できないイオン結合性
結晶や金属に使用
◦ NaClの式量=23.0+35.5=58.5
◦ NaOH=23+16+1.0=40
◦ Ni
例題 MgOの質量はいくら?
 Mg+O→MgO
 原子量
Mg:24 O:16
 分子量
MgO:40
 Mg
gを燃やすとMgOは

g×40/24=
g
 (Mg)
(MgO)
となるはず。
炎色反応
加熱によってエネルギーを得た電子が高い軌道に
上がり、低い軌道に落ちるときに、その波長に応
じた光を発する
 NaのD線は黄色の二本の線



軌道1s 2s 2p 3s 3p
Na 2 2 8 1→遷移
電子軌道は電子雲
s軌道(n=1)は原子を中心とする球状
に電子雲が分布
 p軌道(n=2)はx,y,z方向にダンベル状に
分布

観察されるNaのD1線の波長計算

1eV:

光速度 c= 299 792 458 m/s
プランク定数 h= 6.626068 × 10-34 m2 kg / s
エネルギーE=hν ν:振動数 Hz ①
ここではE=2.103eV=2.103×1.6022× 10-34 J
ν=c/λ
②
①、②より λ=c/ν=c/(E/h)=ch/E
=5.895×10-7m
=589.5nm







1電子ボルト = 1.60217646 × 10-19 J(ジュール)
原子のスペクトル

炎色反応の暗記
◦
◦
◦
◦
リアカー 無き K村
どせ、
(Li赤)
(Na黄) (K紫) (Cu青緑)
借そうとうするも、くれない馬力
(Ca橙)
(Sr紅)
(Ba緑)
◦ カドミウム
*Mgは炎色反応を示さない
吸収スペクトル
連続スペクトルをもつ光や電磁波が物質を透過
したとき,物質に特有な波長領域が吸収されて,
一部が欠けたか弱められたスペクトル
 太陽光のフラウンフォーファー線

太陽の上層に存在するいろいろな元素や地球の大気中の酸素
などによって吸収されたスペクトル
Naの黒い炎
物質の分離
ろ過(粒の大きさ)
 蒸留(沸点の差)
 抽出(液体に溶かし出す):お茶、コー
ヒー

化学反応式
反応物を左辺 、生成物を右辺、+で結合
 両辺を変化の方向を表す矢印 → で結ぶ
 変化しない物質は、化学反応式には書かない
 同じ種類の原子の数が、左辺と右辺で等しく
なるように、係数をつける
 係数は最も簡単な整数の比となるようにし、
「1」のときは省略
 例 係数を付ける

◦ CH4 +
 完成 CH4
O2 → CO2 +
+
2O2
→
CO2
H2O
+
2H2O
◦ 鉛蓄電池 Pb+ PbO2+ H++ SO4-→ PbO4+ H2O
 完成
◦
Pb+ PbO2+ 4H++ 2SO4-→ 2PbO4+ 2H2O


係数の比=物質量の比
反応物、生成物に気体がある場合→
◦ 係数の比は同温、同圧の気体の体積比

化学反応前後で質量の総和は一定
◦ 質量保存の法則

化学反応で生成する物質の質量と体積
◦ 8.0 gのメタンを燃焼して生成する、二酸化炭素の質量と体積
1CH4 + 2O2 → 1CO2 + 2H2O
◦ ①8.0 g のメタンの物質量は、 CH4 = 16 g/mol
◦
∴8.0 g=0.50 mol
◦ ②化学式より、メタンと二酸化炭素の物質量の比は、1:1
◦ ③二酸化炭素0.50 molの質量は、0.50 mol×44 g/mol=22 g
◦
このときの二酸化炭素の体積は、
◦
0.50 mol×22.4 L/mol=11.2 L (標準状態)
◦ このとき生成する水の質量と体積(標準状態)は?
◦
◦
水の質量
0.50 mol×2×18 g/mol=18 g
水の体積 2× 0.50 mol×22.4 L/mol=22.4L
反応熱と熱化学方程式

反応式+反応熱=熱化学方程式
◦ 各辺の熱量の合計 → 等しい

化学反応
→
発熱反応と吸熱反応
◦ 1molの固体が大量の水に溶解し、25.7kJの熱エネ
ルギーを吸収する例 aq=aqua
◦ NH4NO3 + aq = NH4NO3 aq - 25.7kJ

反応熱の名称
◦ 燃焼熱:物質が完全燃焼するときの熱量
◦ 溶解熱:物質を多量の溶媒に溶かしたときの熱量
◦ 中和熱:中和反応で水が生成するときの熱量

ヘスの法則
◦ 反応の熱量は、化学変化の経路に無関係であり、
最初と最後の状態で決まる

反応熱は、化学反応が段階的に少しずつ進ん
でも、1回の反応で一気に進んでも、反応熱
は同じだけ放出(または吸収)される
◦ C(黒鉛)+O2(気体)=CO2(気体)+ 394kJ
①
◦ C(黒鉛)+1/2O2(気体)=CO(気体) + 111kJ
②
CO(気体)+1/2O2(気体)=CO2(気体) + 283kJ ③
酸・塩基と中和



酸 :水溶液中にH+を出す物質
塩基:水溶液中に OH−を出す物質
価数:1分子の酸や基からH +やOH−が水溶液
中にいくつ出てくるのかという数
◦ 塩酸HCl、酢酸CH3COOHは1価の酸
◦ 硫酸H2SO4は2価の酸
◦ 水酸化ナトリウムNaOH、アンモニアNH3は1価の
塩基
◦ 水酸化カルシウムCa(OH)2は2価の塩基


強酸・強塩基:水溶液中でほぼ100%電離
弱酸・弱塩基: 水溶液中で一部だけが電離
◦ 塩酸HCl、硫酸H2SO4は強酸、酢酸CH3COOHは弱
酸
◦ 水酸化ナトリウムNaOH、水酸化カルシウム
Ca(OH)2は強塩基、アンモニアNH3は弱塩基
純粋な水はごくわずかに電離し、水素イオン
濃度[H+]と水酸化物イオン濃度[OH−]とが等
しい関係にある。
 中性 [H +]=[OH −]
 酸性
[H +]>[OH −]
 塩基性 [H +]< [OH −]

水素イオン濃度

定義 pH=-log10[H+]
◦ 温度が一定であれば、どのような水溶液でも、
つねに、 [H+][OH-]=Kw=10-14(=一定)
◦ Kw:水のイオン積あるいは水の解離定数
純水または中性溶液においては、
◦ [H+]=[OH-]であるから
◦ [H+]=[OH-]=√(KW)=10-7 → pHは7
 pH4とpH6を比較して、pHが2しかちがわないのに、
実際は、水素イオン濃度が100倍もちがう

pH5は10-5mol/L

pH6は10-6mol/L
対数

10を底とする対数:常用対数… log10N
e=2.718… を底とする対数:自然対数…
log e N
log101=0
 log1010=1
 Log1010-1=-1
 log10102=2
 Log1010-2=-2

中和反応

HClとNaOH水溶液の反応では、塩化ナトリ
ウムNaClと水H2O が生成。生じる塩化ナト
リウムのような物質を塩(えん)という
◦ H++OH− → H2O
酸と塩基がおたがいの性質を打ち消し合う
 弱酸と強塩基の中和によって生じた塩の水溶
液は、塩基性

◦ 酢酸CH3COOHと水酸化ナトリウムから生じた酢
酸ナトリウムCH3COONa水溶液は塩基性

強酸と弱塩基の中和によって生じた塩の水溶
液は、酸性
◦ 塩酸とアンモニアNH3水から生じた塩化アンモニ
ウムNH4Cl水溶液は酸性
中和の量的関係
酸から生じるH+と塩基から生じるOH-が同じ物
質量のとき中和 →
 濃度のわからない酸や塩基の水溶液の濃度を求め
ることができる
 (H +の物質量)=(OH -の物質量)

a×c×v = b×c'×v '

◦ a:酸の価数、c:酸の濃度[mol/L]、v:酸の体積[mL]
◦ b:塩基の価数、c': 塩基の濃度[mol/L]、v ': 塩基の
体積[mL]
1mol/Lの塩酸10mLと中和する2mol/Lの水酸化ナト
リウム水溶液は、何mL?
 1mol/Lの硫酸10mLと中和する0.5mol/Lの水酸化ナ
トリウム水溶液は、何mL? (硫酸は2価の酸)
 中和滴定の実験:0.1mol/LHCl+0.1mol/LNaOH

酸化と還元
物質が酸素原子と結びつく反応は酸化、
物質が酸素原子を失う反応は還元
 物質が電子を失う反応は酸化、電子を受
け取る反応は還元。
 電子を失う反応と受け取る反応は、必ず
同時に起こるので酸化還元反応。

◦ 2Cu+O2→2CuO
◦ 銅 :2Cu → 2Cu2++4e-
◦ 酸素:O2 +4e- → 2O2-
酸化
還元
◦ 電子のやりとりで定義すると、酸素原子を含まない反応で
も酸化還元反応がある
酸化数

原子の酸化還元の程度を表す数値
◦ 単体の原子の酸化数は0
◦ 化合物中の水素原子の酸化数は+1、酸素原子の酸化
数は-2
◦ 化合物中の原子の酸化数の総和は0
◦ イオンの酸化数は、そのイオンの符号と価数に等しい。

反応前後で原子の
◦ 酸化数が
◦




増加した物質は酸化された
減少した物質は還元された
次の化学反応式の反応前後の銅原子の酸化数を示
せ。銅原子は酸化されたか、還元されたか?
2Cu + O2 → 2CuO
酸化数 0
0
+2 -2
酸化数増加 → 酸化
金属のイオン化傾向

金属単体が水溶液中で陽イオンになる傾向?
◦ 実験:銀樹 硝酸銀水溶液に銅板をつけておくと、銀
が析出して、銅イオンが水溶液を青くなる
◦ 理由:イオン化傾向Cu>Ag Cu+2Ag+→Cu2++2Ag

次のイオン反応式で酸化されたものは?
◦ Cu+2Ag + → Cu2++2Ag


イオン化傾向の大小
大きいほどさびやすい!
Li K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb
( H2) Cu Hg Ag Pt Au (H2はH+イオンに
なるので入れる)*K,Ca,Naの還元力に差はない

*Pt,Auの安定度の差は測れない

イオン化傾向が大きい金属 →
酸化されやすい
◦ 次のイオン反応式からZnとH2のイオン化傾向はどち
らが大きいと判断できるか?
◦
Zn+2H + → Zn2++H2
標準電極電位

単体を,そのイオンが1mol/L で
存在する溶液につけたとき,単
体と溶液の間に生じる起電力
◦ イオン化列の具体的な順序を
示す
◦ 亜鉛イオン-亜鉛対の標準電極
電位は、次の電子授受平衡を
成り立たせる電子が持つ電位
Zn2+ +2e- ⇔ Zn
E0Zn=-0.763V
 この電子は極板にいて、 -0.763V
の電位を持つ
電荷を運ぶ仕事
W=F(力)s(距離)=q(電荷)E(電界)・s=
q・Ex=qV(電位差)
 例 +1C(クーロン)の電荷を電位0Vか
ら+1.5Vの場所(電位差1.5V)へ運ぶ仕事
 W=qV= +1C×1.5V
 =1.5J

Zn2++2e-⇔Zn
 標準生成ギブスエネルギー:化合物等1molを
単体からつくるエネルギー ΔfG0
 Zn2+は ΔfG0=-147kJ
Zn=0
 電子のG(ギブスエネルギー)は電位E0Znで電子
2molが持つ電気エネルギー
 電子2molのエネルギーはファラデー定数
F=96500C/molを用いて-2F× E0Zn
 ∴-147000J-2×96500C× E0Zn=0

E0Zn=-0.76V がZn2+-Zn対の標準
電極電位 → イオン化しやすい

亜鉛の電位は負









標準電極電位:電子授受平衡(2H++2e-⇔H2)
が成り立つ電極(白金)の電位を0とし、他の物
質が電子をどれほど授受しやすいかを示す尺度
銅の場合 Cu2+-Cuの対 Cu2+ +2e-⇔ Cu
単体のCu はΔfG0=0 Cu2+のΔfG0=+65kJ/molより
-65000J-2×96500C× E0Cu=0 ∴E0Cu=+0.34V
Al3+ -485kJ
Al3++3e-⇔Al
-485000J-3×96500C=0 ∴ =-1.68V
Liは自然界最低の 値-3.04V 電子を出してイオン
になろうとする 図スキャナー
値の高いAu,Pt,Hgは,酸化されにくく天然では金
属の姿である。Agを強引にイオンにすると,酸化
力が強く抗菌作用を示す
イオン化傾向と反応性

イオン化傾向の大きい金属:K、Ca、Na など
◦ 非常に酸化されやすい。水、酸素と速やかに反応

水素よりもイオン化傾向が大:Al、Zn、Fe など
◦ 塩酸や希硫酸と反応して水素H2 を発生

水素よりもイオン化傾向が小:Cu、Hg、Ag など
◦ 酸化力の強い酸とは反応。発生する気体は水素ではな
い

イオン化傾向がきわめて小さい金属:Pt、Au
◦ 非常に安定。王水のみと反応

亜鉛が塩酸と反応して水素を発生する反応の化学
反応式は?
中高(啓林館)食塩水の電気分解
中学理科
食塩水の電気分解
陰極: 2H2O+2e-→ H2 + 2OH陽極: 2Cl- → Cl2 + 2eFe3++3OH-→ Fe (OH)3↓赤褐色沈殿
Cl2 + 2OH− → Cl − + ClO − + H2O
 Fe + 3Cl- → FeCl3 ↓黒緑色沈殿 + 3e



アクアデトックス
参考http://aquadetox-japan.com/
マイナスイオン(ニセ科学の
キーワード)
体験談「お湯の色が変わって,
身体から塩素の匂いがする。
彼女の身体から立ち上る塩素
で目がヒリヒリした」
不安をあおる
実験:自作デトックス装置
鉄(釘)を電極にして,
食塩水を5~7Vで電気
分解する
 陰極:水素の泡が盛ん
に出る,液の色が黄褐
色
 陽極:塩素の泡は見ら
れない,液は緑
 電圧を上げると塩素ガ
スは出るか?

電池





電池とは酸化還元反応から電
気エネルギーを取り出す装置
酸化反応が起こる場所→負極
還元反応が起こる場所→正極
電池から電気エネルギーを取
り出す反応→放電
ダニエル電池は銅と亜鉛のイ
オン化傾向の大小(Zu>Cu)
を利用した電池
(-)Zn|ZnSO4aq|CuSO4aq|Cu(+)
負極の反応 Zn → Zn2++2e- (酸化)
正極の反応 Cu2++2e - → Cu (還元)
電気分解
自然の法則を知ろう

自然は変化を嫌う
→
安定した世界
◦ 変化を打ち消す方向へ変化 出る杭は打たれる
◦ 物理:電磁誘導
 磁界の変化を打ち消す磁界が
発生するように電流が流れる
◦ 化学:ル・シャトリエの原理
 アンモニアの製法
 3H2+N2 = 2NH3 −92.4 kJ/mol
吸熱反応→加熱で右へ
 左辺の体積 3+1=4 > 右辺は3 圧縮で右へ
◦ 生物:生態系の捕食者と被食者
 キタキツネと野ウサギ
 野ウサギが増えると捕食者のキツネが増え、やがてウサギが減っ
てキツネも減る。するとウサギが増え、またキツネが増える。
エントロピー増大の法則
エントロピー:無秩序度
 崩れる方向(無秩序度大)へ進む

→

◦ 覆水盆に返らず
◦
→
It's no use crying over spilt milk.
→

→
拡散
粒子はバラバラになりたがる
(ひとりでに起こる変化は必ず)
エネルギーの低い方向へ変化

孫氏の兵法
◦ 水が流るる如く
ギブスの自由エネルギー

反応の方向
◦ エンタルピー(熱量H ΔH<0:Hが減る
向きに進みやすい)項とエントロピー
(T:絶対温度、S:エントロピー TΔS>0
が増える向き)項の駆け引きによる
ギブスエネルギー:G=H-TS
 自然変化の条件:ΔG=ΔH-TΔS <0
 変化はGが減る向きに進む

この人は健康指向ですか?
実験

55円電池でLEDをともそう
◦ オキシフル 標準電極電位+1.72V
実験
食塩水の電気分解
鉄(II)イオン:淡緑色
 鉄(III)オン:黄褐色

H2の発生により溶液中のH+イオンが減少
し、OH-イオンが増える
 陰極付近はOH-の濃度が大→塩基性:大

◦ リトマス、フェノールフタレイン