フライアッシュの活性度改善に関する基礎的研究 - 岐阜工業高等専門学校

日本建築学会大会学術講演梗概集
(関東) 2011 年 8 月
1340
フライアッシュの活性度改善に関する基礎的研究
(その6:安定的な活性度の改善手法に関する実験結果および考察)
準会員
同
正会員
フライアッシュ
活性化
混和材
改善手法
○ 古田 将大*1
栃元 紗弥*2
犬飼 利嗣*3
微粉砕
添加剤
1. はじめに
果を再現する以上の,安定的かつ著しい活性度の改善効
前報(その5)では,安定的な活性度の改善手法に関す
果が得られると考えられる。なお,Ca(OH)2 の添加量が
る実験概要について報告した。本報(その6)では,安定
0.15%を超えると活性度指数は低下する傾向がみられる
的な活性度の改善手法に関する実験結果および考察につ
が,これは,明らかではないが,Ca(OH)2の溶解度に関連
いて報告する。
することが一因として考えられる。
2.2 NaOHとCaSO4(2H2O)の組合せが活性度に及ぼす影響(実
験2)
2. 実験結果および考察
2.1 NaOHとCa(OH)2の組合せが活性度に及ぼす影響(実験1)
図-2に,NaOHとCaSO4(2H2O)が活性度に及ぼす影響を示
図-1に,NaOHとCa(OH)2が活性度に及ぼす影響を示す。
す。図から分かるように,NaOHを添加せずCaSO4(2H2O)の
図から分かるように,NaOHを添加せずCa(OH)2のみを添加
みを添加した供試体の活性度の改善効果は,実験1で示し
した供試体は,いずれも活性度の改善効果はまったくみ
たCa(OH)2のみを添加した供試体と同様の傾向を示してお
られず,Ca(OH)2の添加量が増加すると活性度指数が低下
り,活性度の改善効果はほとんどみられない。一方,
する傾向にある。一方,Ca(OH)2に加え,NaOHを添加する
Ca(OH)2に加え,NaOHとCaSO4(2H2O)を組み合わせて添加し
と活性度の改善効果は著しく大きくなり,供試体F7-NH-
た供試体の改善効果は,一様な傾向は示さないものの,
005C , F7-NH-010C お よ び F7-NH-015C で は 活 性 度 指 数 が
F7-NH-20Sでは,活性度指数が6%程度改善されている。
10%程度改善されている。とくに,F7-NH-015Cの活性度
したがって,初期材齢の段階から与えられたCaSO4(2H2O)
の改善効果は著しく,活性度指数は15%以上改善されて
による影響は,その添加量にもよるが,NaOHの活性度の
1)
いる。これは,既報 の実験結果を踏まえて考察すれば,
改善効果を促す可能性が若干あると考えられる。しか
初期材齢の段階から与えられたCa(OH)2による影響と考え
し,2.1節で述べたNaOHとCa(OH)2の組合せによる活性度指
られ,Ca(OH)2の存在により,NaOHの添加による活性度の
数と比較すると,活性度の改善効果が小さいこと,
CaSO4(2H2O)の添加量によって活性度が大幅に変動するこ
の添加量が0.05~0.15%の範囲であれば,NaOHとCa(OH)2
となどを踏まえると,活性度の改善手法としては有効的
を組み合わせて添加することで,既報2)で得られた実験結
であるとは考えにくい。
120
120
110
110
110
100
100
100
90
80
70
○
90
80
70
●
0
0.05
0.10
0.15
Ca(OH)2の添加量 (%)
0.20
図-1 NaOHとCa(OH)2が活性度
に及ぼす影響(実験1)
͌
60
60
○
0
OPC
FA
F7
NaOH なし
NaOH あり
16
20
24
CaSO4(2H2O)の添加量 (%)
90
80
○
△
□
◇
70
60
28
図-2 NaOHとCaSO4(2H2O)が活性度
に及ぼす影響(実験2)
͌
●
OPC
FA
F7
NaOH なし
NaOH あり
活性度指数 (%)
120
活性度指数 (%)
活性度指数 (%)
改善効果が促されたと考えられる。したがって,Ca(OH)2
0
OPC
FA
F7
2
Ca(OH)2
2
Ca(OH)2
2
Ca(OH)2
2
Ca(OH)2
0.05%
0.10%
0.15%
0.20%
16
20
24
CaSO4(2H2O)の添加量 (%)
28
図-3 NaOHとCa(OH)2・CaSO4(2H2O)が
活性度に及ぼす影響(実験3)
Fundamental Study on Improvement in Activity of Fly ash
(Part 6: Results and Discussion of Examination Concerning the Improvement Method of the Stable Activity)
FURUTA Yukihiro, TOCHIMOTO Saya and INUKAI Toshitsugu
― 679 ―
2.3 NaOHとCa(OH)2およびCaSO4(2H2O)の組合せが活性度に
80
が活性度に及ぼす影響を示す。図から分かるように,
NaOHとCaSO4(2H2O)およびCaSO4(2H2O)の組合せによる活性
度の改善効果は,いずれも一様な傾向を示さず異なる傾
圧縮強さ (N/mm2)
及ぼす影響(実験3)
図-3に,NaOHとCaSO4(2H2O)およびCaSO4(2H2O)の組合せ
60
40
OPC
FA
F7
F7-NH-015C
20
向を示している。このような傾向は,既報3)においても確
0
認されている。しかし,供試体F7-NH-005C-28S,F7-NH-
養生水にCa(OH)2水溶液を使用
研究用セメントC
研究用セメントA
研究用セメントB
1 研究用セメント
2 (実験
3 4)
4 5 A 6 研究用セメント
7 (実験
8 94) 10B 11 研究用セメント
12(既往の結果
13 14 152)C) 16
20)
(実験4)
(実験4)
(既往の結果
010C-20S , F7-NH-015C-16S, お よ び F7-NH-015C-20S は 活
)
図-4 セメントの生産ロットの違いが圧縮強さに
及ぼす影響
性度の改善効果が著しく,活性度指数が10%以上改善さ
れ て い る 。 こ れ ら は , 図 -2 に 示 し た よ う に , NaOH と
る可能性がある。
CaSO4(2H2O)の組合せのみでは活性度の改善効果は小さい
が,Ca(OH)2を加えることで良好な活性度の改善効果が得
3)NaOHとCa(OH)2およびCaSO4(2H2O)の組合せは,Ca(OH)2
ら れ る こ と を 示 唆 し て い る 。 し た が っ て , CaSO4(2H2O)
とCaSO4(2H2O)の添加量によっては良好な活性度が得
は,NaOHとCa(OH)2との組合せ方によっては,著しい活性
られる可能性があるが,添加量の違いによる活性度
度の改善効果が得られると考えられる。しかし,Ca(OH)2
の改善効果の変動が大きい。
と CaSO4(2H2O)の 添 加 量 , す な わ ち , 組 合 せ 方 に よ っ て
4)セメントの生産ロットの違いが活性度の改善効果に
は,活性度指数が大幅に低下することもあり,実験2で得
及ぼす影響は小さく,NaOHとCa(OH)2の組合せは再現
られた結果と同様で,活性度の改善手法としては有効的
性のある安定した活性度の改善効果を示す。
であるとは考えにくい。
このように,実験1,2の考察や実用面をも踏まえる
また,実用面を考慮すると,安定的かつ良好な活性度
と,安定的かつ良好な活性度の改善効果が得られるNaOH
の改善効果が得られるNaOHとCa(OH)2による組合せが,最
とCa(OH)2による組合せ方が,最も有効的な改善手法であ
も有効的な改善手法であるといえる。
今後は,活性度の改善効果に関するメカニズムを明ら
ると考えられる。
2.4 セメントの生産ロットの違いが活性度の改善効果に
かにするとともに,FAの置換率を実験要因とした実験を
行い,セメント代替材とする検討を試みたいと考えてい
及ぼす影響
図-4に,セメントの生産ロットの違いが圧縮強さに及
る。
ぼす影響を示す。図から分かるように,セメントの生産
ロットの違いによりOPCの圧縮強さに違いはあるものの,
【謝辞】
活性度の改善効果には一様の傾向がみられる。これよ
本実験に際し,岩瀬裕之先生(岐阜工業高等専門学校)
り,2.1節で述べたNaOHとCa(OH)2による組合せ方は,セメ
には,実験設備を提供していただいた。また,FAの微粉
ントの生産ロットの違いによる影響は小さく再現性もあ
砕にあたっては,前川明弘氏(三重県工業研究所)のご助
り,安定的かつ良好な活性度の改善効果が得られる最も
力を得た。ここに記して謝意を申し上げます。
有効的な改善手法であるといえる。
【参考文献】
1)犬飼利嗣,湯浅幸久,三島直生,畑中重光:フライアッシュの活
3. まとめ
本研究では,FAの安定的な活性度の改善手法を得るこ
と を 目的 とし , Ca(OH)2 と CaSO4(2H2O)の添 加量 ,お よび
NaOHとの関連性に着目した実験的な検討を行った。一連
の実験結果から,以下の知見を得た。
1)NaOHとCa(OH)2を組み合わせて添加することで,既往
の研究結果2)を再現するとともに,著しい活性度の改
善効果が得られる。
性度改善に関する基礎的研究(その4:フライアッシュの品質およ
び養生水がモルタルの圧縮強さ特性に及ぼす影響),日本建築学会
大会(中国)学術講演梗概集,pp.653-654,2008.9
2)犬飼利嗣,湯浅幸久,三島直生,畑中重光,PARK Kwangmin:
フライアッシュ の活性度改善に関する基礎的研究 (その2:粒
子の改変および添加剤がモルタルの圧縮強さ特性に及ぼす影響),
日本建築学会大会(九州)学術講演梗概集,pp.401-402,2007.8
3)坂倉正浩,犬飼利嗣,岩瀬裕之:フライアッシュの活性度改善に
2)NaOHとCaSO4(2H2O)の組合せは,CaSO4(2H2O)の添加量
によっては比較的良好な活性度の改善効果が得られ
関する研究,平成21年度土木学会中部支部研究発表会講演梗概
集,pp.511-512,2010.3
*1 岐阜工業高等専門学校専攻科建設工学専攻 専攻科生
*1 Advanced Course Student, Advanced Course of Architecture, Gifu National College of
*2 株式会社カジケイ鉄工設計部
*3 岐阜工業高等専門学校建築学科 教授・博士(工学)
Technology
*2 Architectural Division, KAJIKEI TEKKO CO., LTD.
*3 Dept. of Arch., Gifu National College of Technology, Dr. Eng.
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