情報教育の中核としての プログラミング

リテラシーとしての
プログラミング
情報教育論2004
大岩 元([email protected])
慶應義塾大学 環境情報学部
プログラミング教育の問題点
(レポートより)
•
•
•
•
一般人はプログラミングは必要ない
文法教育だけで、どう作るかを教えない
宣言と命令の区別がつかなかった
「コンピュータはプログラム通りに動く」こと
が分った
• 困難にぶつかると、どう進めたらよいか分
らない
日本語プログラミング
(レポートより)
• 日本語は16ビットコードが必要で効率が
悪くなる
• 日本語の入力は変換があって面倒
• 日本語はあいまいで習得がむずかしい
• 日本語だと、世界に通用しない
日本語プログラミング
(レポートより)
• 文法の習得が不要となるので、構成に集中でき
る
• 論理のすじ道をたどり易い
• 習得や利用の効率がよければ価値がある
• 人工言語との互換性が必要である
• 数学における論理の扱いは不徹底だったので、
日本語プログラミングは論理の教育になり得る
日本の教育問題
• 入試にコンピュータを導入した(1979)
• コンピュータで測れる物だけで競争しだし
た
– データベースの充実と正確な計算
– 即ち、人間をコンピュータにする教育
• 覚えるだけで、考えない人間が育つ
– 分数が計算できなくても困らない
大学入試の数学
• 解法を約1000覚える
• 問題を見たら、どの解法を使うか決める
– データベースの充実
• 素早く正確な計算を行なう
– 文字通りコンピュータ
• 人間をコンピュータにする
– 情報化時代には不要な人材
日本の教育の問題
• 初等幾何学が教えられなくなった
– 公理と定理の違いが分らない
• 覚える数学しか教えられない
– 入試が考えること禁止する
• 哲学が教えられていない
– フランスでは理系でも必習
フランスの哲学教育
「エリートのつくり方」柏倉康夫 ちくま新書058
• 中等教育の最後に哲学教育を行なう
• 文学は週8時間、社会科学で5時間、理科
系でも3時間の授業がある
• 内容は「意識とは何か」、「情熱とは何か」、
「他人とは」、「時間とは」、「言葉とは何か」
• ベルグソン、アラン、サルトル、シモーヌ・
ヴェーユは哲学教師だった
哲学教育の目的
哲学教育指導要項(1925)
•
•
•
•
学んできた理科系・文科系の学習自体の有効性と価値
を、知的努力を通じて把握させ、それらの総合を可能に
する
思索の方法及び知的・道徳的生活の基本原理を身につ
ける
自らの職をこえて事物を考察する職業人を育成し、自主
的判断力をもつ市民を育成する(思索の訓練を通じて自
由を学ぶ)
教師は、日常生活で使われることば、法律・歴史・実証
科学で使われることばを用いて哲学を表現する
哲学教育の内容
哲学教育指導要項(1925~)
• 心理学、論理学、倫理学、形而上学(192
5)
• 認識、行動(1960)
• 人間と世界、認識と理性、実践と目的、人
類学・形而上学・哲学(1974)
哲学教育の方法
哲学教育指導要項(1925)
• 教師の職務は、自らの力で判断を積極的に下せ
て、社会および人類全体と一体のなりうるような
物の見方を授けることにある
• 教師は意見において自由であると同様、教育方
法においても自由である
• 講義を筆記させることを禁止
• 教科書の使用は不適切、読書が不可欠
• 作文は思想を練り、秩序立てて表現し、構想し、
書き表わすように鍛えるもの
ヴェーユの哲学講義 ちくま学芸文庫
• 第一部
–
心理学で用いられる方法、反射、本能、行為における身体の
役割、感情における身体の役割、思考における身体の役割、
精神を求めて
• 第二部
– 第一編 精神の発見ののちに
• 精神、意識、人格、判断、推論
– 第二編 社会学
• 社会学をいかに考えるか、社会的抑圧とその理論、経済
生活の動き、現在の状況、国家について、国際関係、個人
と社会の関係
• 第三部
–
倫理のよりどころ、審美的感情の心理学、自己認識・真実へ
の愛・犠牲・哲学と形而上学・認識の相対性・誤謬・時間、直
観と演繹法………についてのメモ
哲学の試験問題(3題中1題選択)
•
社会科学
–
–
–
•
文学
–
–
–
•
人間の歴史を一人の人間の歴史に対比できるか
正しい先入観というものはあるか
ヒュームの正義に関するテキストについて注釈せよ
幻想のない情熱というのはありうるか
すべてのことは正当化できるか
ベルグソンの言語の機能に関するテキストについて注釈せよ
理科系
–
–
–
想像力は必ず誤ると言えるか
人は真実にたいして無関心でいられるか
アリストテレスの責任に関するテキストを注釈せよ
英国14-16歳の
「情報」の問題(レベル4)
• オーストラリアでの休日の費用を分析する
のに表計算ソフトを使うとする。
– 出力したい情報を1項目書け(1行)
– 表計算に入力するデータの項目を二つ書け
(各2行)
– 結果が妥当かどうかをテストするために使用
するデータ項目を二つ書け(各2行)
英国14-16歳の
「情報」の問題(レベル10)
• 体育の日の結果を処理するための情報
処理システムを開発するのにどのように
するか述べよ(7行)。
• もし失業が起こるとして、政府はどの程度
まで工場に情報技術を利用することを奨
励すべきかについて論ぜよ(7行)。
• POS端末導入によって、店員は何が困る
か、また、雇用の変化を二つ述べよ。
学習におけるストックとフロー
知
識
フロー(取り込んだ知識)
ストック(知識の体系)
時間
ブートストラッピング
コンピュータに最初のプログラムをどうやって書きこむか?
• 小さなブーターが次々と大きなプログラム
を読みこんでいく
• ブートストラッピングは汎用概念
– 言語学、素粒子物理、ベンチャー起業
• 情報処理能力のブーターは何か
– タイピング、プログラミング、図解力
情報処理能力のブーター
• 身体軸
– タッチタイピング
• 論理軸
– プログラミング
• 感性軸
– 図解力(発想力)
情報教育のブーターとしてのプ
ログラミング
• 情報教育において「プログラミング」の学習は、
「ブーターの読み込み」の過程に相当する
– 「ブーター」とは、コンピュータが起動(ブート)する際に
一番最初に読み込まれる最小限の命令群
– ブーターは、その後に読み込まれる、より複雑なプロ
グラム(ひいてはシステム全体)の基礎となる
– ここでは、「応用的な知識を生み出すために必要な最
小限の基盤」を表す比喩
コンピュータの本質
• コンピュータの本質はプログラム
• コンピュータのあらゆる動作はプログラム
によって規定される
• 「コンピュータの何たるか」を理解するため
には、「プログラムの何たるか」を学ばなけ
ればならない