民事訴訟法

民事訴訟法
基礎研修
(6日目)
関西大学法学部教授
栗田 隆
共同訴訟(38条)

1つの訴訟手続の当事者の一方または双方
の側に数人の者が登場している訴訟形態を
共同訴訟という。
X
貸金返還請求
保証債務履行請求
Y 共
同
被
告
Z
共同訴訟の要件

訴えの主観的併合要件(38条)
権利義務の共通
数人の連帯債務者に対す
る給付請求など
b. 同一原因
同一事故に基づく数人の被害者の
損害賠償請求など
c. 同種権利義務・同種原因
同種の売買契約に
基づき数人の買主に代金請求する場合など
a.

その他の要件
共通の管轄権があること(7条に注意)
 客観的併合の要件を充足すること(136条)

共同訴訟の関連裁判籍


現行法は、請求間の関連性を基準にして、38条前段
の場合には関連裁判籍を認め、後段の場合には認
めていない(7条) 。
しかし、請求間の関連性という考慮のみで関連裁判
籍の問題を解決することには無理がある。訴訟資料
の共通性や裁判統一の必要性、あるいは併合され
ることになる当事者の利益保護などを考慮して、弾
力的に当事者双方の利害のバランスをはかることが
必要である
手形金支払請求
裏書人
所持人
大阪 X
1000万円支払請求
Y 大阪
取立債務
B 東京
1000万円支払請求
YとZを共同被告にして
大阪地裁に訴えを提起
できるか?
A 札幌
Z 札幌
振出人
訴額の算定(9条)
共同訴訟の場合にも、9条(併合請求の場合
の訴額の算定についての特則)の適用がある。
 訴え提起の手数料は、金額が増加するに
従って増加するが、増加率は逓減するので、
手数料の節減となる

原告側合算の例


(9条1項本文)
[134]最高裁判所平成12年10月13日第2小法廷
決定(平成12年(行フ)第1号) ) ・教材判例集
378頁
開発区域の周辺住民207名が林地開発行為許
可処分の取消しを求める訴えを提起したが、訴え
で主張する利益が原告に共通であるとは言えず、
各原告の利益を合算の上で手数料額を算定す
べきであるとされた事例。
続
訴えをもって主張した利益の総額は、95万円
×207人=19665万円
 これに対する訴え提起の手数料額は、
708,600円
 この訴えを却下する判決に対する控訴提起
の手数利用額は、708,600×1.5÷2=531,450
円
 これを207名で分担すると、一人当たり、
531,450÷207=2,567円となる。

利益共通の例(9条1項但書き)
1000万円支払請求
X
1000万円支払請求


Y 連
帯
債
務
Z 者
別訴であれば手数料は57,600円+57,600円となる。
一つの訴えで請求する場合には、訴えで主張する
利益(全部で1000万円)は共通するので、手数料は
57,600円となる(9条1項但書)
通常共同訴訟(39条)

共同訴訟人が各自独立して訴訟追行をなす
権能が認められている場合を通常共同訴訟
という。必要的共同訴訟に該当しない場合に
は、通常共同訴訟となる。
 数人の不可分債権者の請求、数人の不可分債務
者に対する請求
 数人の連帯債務者に対する弁済請求
 主債務者とその保証人に対する弁済請求
通常共同訴訟人独立の原則(39
条)




共同訴訟人の一人がなした訴訟行為および
この者に対する訴訟行為の効果は、他の共
同訴訟人には及ばない。
共同訴訟人の一人に生じた中断・中止の効
果(124条・131条・132条)は、他の共同訴訟
人には及ばない。
弁論の分離・制限・一部判決ができる。
上訴不可分の原則は共同訴訟人間では適
用されない。
主張独立の原則
 事実認定の共通(証拠の共通)
事実の認
定については、自由心証主義が優先し、ある
共同訴訟人が申し出た証拠調べの結果を他
の共同訴訟人に関係する請求の判断のため
に用いることができる。

 証拠調べの結果
 弁論の全趣旨
[33]最高裁判所 昭和43年9月12日
第1小法廷 判決(昭和42年(オ)第
890号)・教材判例集48頁

通常共同訴訟人の一人のする訴訟行為は他
の共同訴訟人のため効力を生じないのであっ
て、たとえ共同訴訟人間に共通の利害関係
が存するときでも同様である。
必要的共同訴訟(40条)

各共同訴訟人に対する判決をその内容が矛
盾しないように確定させること(合一確定)が
必要な共同訴訟。
 合一確定が法律上要求される場合
共同訴訟
人の一人が受けた判決の効力(既判力)が他の
共同訴訟人にも及ぶ場合
 合一確定が論理的に(のみ)要求される場合
たとえば、主債務者と保証人が共同被告となって
いる場合
類似必要的共同訴訟

訴訟の開始にあたっては各自単独でも当事者
適格を有するが、共同訴訟となった場合には
合一確定が要請される訴訟
 株主代表訴訟(商267条)
[130]最高裁判所平成
12年7月7日第2小法廷判決(平成8年(オ)第270
号)・教材判例集355頁
 合一確定の必要性が高い共同権利関係
[160]
最高裁判所 平成14年2月22日 第2小法廷 判決
(平成13年(行ヒ)第142号)・教材判例集458頁
固有必要的共同訴訟

合一確定の必要があり、かつ、共同訴訟と
することが法律上強制される訴訟
 取締役解任の訴え
[88]最高裁判所平成10
年3月27日第2小法廷判決(平成8年(オ)第1
681号)
 遺産確認の訴え
[82]最高裁判所 平成9年3
月14日 第2小法廷 判決(平成5年(オ)第920
号)
共同提訴を拒む者がいる場合の処
理

共同提訴を拒む者を被告として訴えを提起し、これ
により共同訴訟人となるべき者全員に判決の効力を
及ぼして判決の合一的確定を図ることが一定の場
合に認められている。
 境界確定訴訟に係る土地が共有の場合に、共有
者の一部の者が確定訴訟の提起を拒む場合に
ついて、[103]最高裁判所 平成11年11月9日 第
3小法廷 判決(平成9年(オ)第873号)・教材判
例集225頁
必要的共同訴訟の審理の特則(40
条)




40条1項 共同訴訟人の一人がした有利な行為は
全員のために効力を生ずるが、不利な行為は全員
がしなければ効力を生じない。
40条2項 相手方の便宜のために、相手方の訴訟
行為は、一人に対してなされても、全員に対して効
力を生ずる。
40条3項 訴訟進行の統一を図る必要があるので、
共同訴訟人の一人について手続の中断または中止
の原因があるときは、全員について訴訟の進行が停
止される。
40条4項
他の共同訴訟人による別訴は許さ
れない
判決効の拡張がある場合なので、類似必要
的共同訴訟人となるべき者の一人が訴えを
提起した後で、他の者が同一被告に対して同
趣旨の訴えを提起すると、重複起訴の禁止の
規定(142条)が適用される。
 この場合には、後訴を提起する者は、係属中
の訴訟に共同訴訟参加すべきである(52条)

共同訴訟人の一部の者のみが上訴
した場合


固有必要的共同訴訟においては、上訴しなかった
共同訴訟人も上訴人として訴訟行為をなすことがで
きるのが原則である
類似必要的共同訴訟においては、共同訴訟人の一
部の者のみが上訴した場合に、他の者を強いて上
訴人の地位につける必要はないので、上訴しなかっ
た者は上訴人の地位に就かない 。[130]最高裁判
所 平成12年7月7日 第2小法廷 判決(平成8年
(オ)第270号)・教材判例集355頁
特許権等の共有と審決等の取消訴
訟


特許庁において出願人または特許権者等に不利
な審決等がなされた場合に、その審決等の取消訴
訟を共有者の一人が単独ですることができるか。
最高裁は、特許権等の工業所有権が設定登録に
より発生することを重視して、共同提訴が必要な場
合を限定している。
a. 設定登録前の段階では、共同提訴が必要(固有
必要的共同訴訟)
b. その後の段階では、単独提訴が可能(類似必要
的共同訴訟)
登録前の取消訴訟



[11]最高裁判所 昭和36年8月31日 第1小法廷
判決(昭和35年(オ)第684号)・教材判例集19
頁
[56]最高裁判所 昭和55年1月18日 第2小法廷
判決(昭和52年(行ツ)第28号)・教材判例集107
頁
[76]最高裁判所 平成7年3月7日 第3小法廷 判
決(平成6年(行ツ)第83号)・教材判例集152頁
登録後の取消訴訟



[160]最高裁判所 平成14年2月22日 第2小法廷
判決(平成13年(行ヒ)第142号)・教材判例集458
頁
[161]最高裁判所 平成14年2月28日 第1小法廷
判決(平成13年(行ヒ)第12号)・教材判例集459頁
[163]最高裁判所 平成14年3月25日 第2小法廷
判決(平成13年(行ヒ)第154号) ・教材判例集467
頁
同時審判申出共同訴訟(41条)
甲
野
太
郎
貸金返還請求
民117条によ
る責任追及
乙
野
次
郎
乙
野
三
郎
代理権
授与?
同時審判申出共同訴訟の要件

共同被告に対する請求が法律上両立しえない場合に
適用がある(一方の請求の主要事実の一部が他方の
請求の抗弁事実となる場合)。
 代理行為の相手方が、代理権の存在を主張して、
本人に対して契約の履行を求め、代理権が存在し
ないと判断される場合に備えて、代理人に対して無
権代理人の責任(民117条)を訴求する場合。
 土地工作物により損害を受けた者が、占有者に賠
償請求するとともに、占有者が損害発生に必要な
注意義務を果たしていたと判断される場合に備え
て、所有者に対する賠償請求を併合する場合(民
717条)。
事実上併存しえないだけの場合

例:
 原告を傷害したのが共同被告のいずれかである
という場合、
 原告の契約の相手方が共同被告のいずれかで
あるという場合

41条の類推適用について、見解は分かれる
 否定説
 肯定説
多数説(立案時の見解)
現在のところ少数説
契約の相手方が判然としない場合
工事現場からの注文で商品搬入
売
主
矛盾した理由で
両負けすること
は避けたい
代金支払請求
代金支払請求
請
負
人
施
主
買主は私
ではない
買主はどちら
か?
参考事例: [153]最高裁判所 平成14年1月22日 第3
小法廷 判決(平成10年(オ)第512号)・教材判例集
427頁
申出の時期と撤回の時期

同時審判の申出は、訴え提起後でも、控訴審
の口頭弁論終結前であれば、いつでも許され
る(41条2項)。撤回は書面でする(規則19条)。
同時審判の申出の効果





この申出があれば、第一審および控訴審における
同時審判が保障される(41条1項・3項)。上告審では、
同時審判は保障されない
共同当事者の一人に中断事由・中止事由が生じた
場合に、中断・中止の効果は他の共同訴訟人には
及ばない(40条3項が準用されていない)。
一部判決は、許されない。
一方の共同訴訟人のみが請求を認諾することは、
許される。
上訴の効果の及ぶ範囲 通常共同訴訟 と同じ
補助参加(42条-46条)
実
用
新
案
権
者
X
実用新案権侵
害を理由に損
害賠償請求
[131]東京地方裁判所 平成12年7
月14日 民事第47部 判決・教材判
例集360頁
Y
メ完
ー成
カ品
ー
補助参加
Z
メ部
ー品
カ
ー
補助参加の意義
補助参加とは、他人間の訴訟の結果につい
て利害関係を有する第三者が、当事者の一
方を勝訴させることによって自己の利益を守
るために訴訟に参加することをいう。
 補助参加人は、自らの利益を守るために自ら
の名と費用において訴訟を追行するが、相手
方との間に請求が定立されているわけではな
いので、当事者ではない。

補助参加の要件(42条)
訴訟の係属 他人間に訴訟が係属中である
か、または潜在的に係属していること
 参加の利益
訴訟の結果について補助参加
を認めるのが適当な程度に利害関係を有す
ること 法律上の利害関係 。([139]最高裁
判所 平成13年1月30日 第1小法廷 決定
(平成12年(許)第17号) ・教材判例集385
頁)

補助参加のその他の事例





[153]最高裁判所平成14年1月22日第3小法廷判
決・教材判例集518頁
[148]最高裁判所平成13年6月12日第3小法廷判
決・教材判例集412頁
[142]最高裁判所 平成13年2月22日 第1小法廷
決定(平成12年(行フ)第3号) ・教材判例集389頁
[61]東京高等裁判所 昭和60年6月25日 民事第8
部 判決・教材判例集114頁
[51]東京高等裁判所昭和51年9月22日判決・教材
判例集79頁
否定事例

[170]最高裁判所平成14年9月26日第1小法廷判
決・教材判例集518頁
補助参加の手続(43条・44条)


補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らか
にして、補助参加により訴訟行為をすべき裁判所に
しなければならない(43条1項)。
 補助参加の申出は、明示的になされなければな
らない。 [33]最高裁判所 昭和43年9月12日 第
1小法廷 判決・教材判例集48頁
 補助参加の申出は、補助参加人としてすることが
できる訴訟行為とともにすることができる。
当事者は参加を阻止するために、参加申出に異議
を述べることができる。
補助参加人の訴訟上の地位(45
条)

当事者に準ずる面
 被参加人を勝訴させる一切の訴訟行をなすこと
ができる
 期日の呼出や送達も
 補助参加によって生じた訴訟費用の負担の裁判

非当事者の面
 参加人を尋問する場合には、証人尋問の方法に
よる。
 参加人に手続中断事由・中止事由が生じた場合
でも(124条参照)、手続は中断・中止されない。
補助参加人の従属性

次の訴訟行為はなしえない
 被参加人がすでになしえなくなった行為。
被参加人が自白した事実を否認すること、
 時機に後れた攻撃防御方法を提出すること、
 中間判決により確定された事項を争うことなど
 被参加人に不利益な行為(上訴権放棄、上訴の取下げ、
自白)
 訴訟そのものを設定・変更・消滅させる行為


参加人の行為が有効になされても、その後に被参
加人の行為と抵触したときは、効力を失う(45条2項)。
従属性についての補充説明

上訴期間
 [2]最高裁判所
昭和25年9月8日 第2小法廷 判決・
教材判例集3頁
 [12]最高裁判所 昭和37年1月19日 第2小法廷 判決
教材判例集20頁

補助参加人が相手方に対して自らが原告となっ
て提起する別訴
 [131]東京地方裁判所
平成12年7月14日 民事第47
部 判決・教材判例集360頁
補助参加人に対する判決の効力
(46条)
参加人が被参加人と共同して訴訟を追行した
以上、彼は被参加人敗訴の責任を公平に分
担すべきであり、敗訴の原因を被参加人の訴
訟追行の不十分に帰すことができないとすべ
きである。
 この思想に基づいて46条が、「補助参加に係
る訴訟の裁判は、補助参加人に対してもその
効力を有する」と定める。

実
用
新
案
権
者
X
実用新案権侵
害を理由に損
害賠償請求
Y
補助参加
Z
メ完
ー成
カ品
ー
メ部
ー品
カ
ー
Y敗訴判決が確定し、Yが賠償金を支払った後でYがZ
に対して賠償請求。
前訴での敗訴の
Z 責任を分担しな
損害賠償請求
Y
ければならない
参加的効力
被参加人敗訴の場合にのみ問題となり、しか
も被参加人・参加人間にしか及ばない。
 判決主文中の判断のみならず、判決理由中
の判断にも及ぶ。
 46条所定の除外例が認められているように、
具体的事情によって効力が左右される。
 判決効の存在は職権調査事項ではなく、当事
者の援用をまって顧慮すれば足りる。

参加的効力の例外

参加的効力は、参加人が十分な訴訟行為を
なす機会を有していたことを前提とする。46条
各号所定の場合には、この前提が満たされな
いので、その限りで参加的効力は生じない。
参加的効力に関する判例
[39]最高裁判所 昭和45年10月22日 第1小
法廷 判決・教材判例集57頁
 [61]東京高等裁判所 昭和60年6月25日 民
事第8部 判決・教材判例集114頁
 [153]最高裁判所 平成14年1月22日 第3小
法廷 判決・教材判例集427頁

共同訴訟的補助参加
明文の規定はないが、解釈上認められている
補助参加の態様である。
 補助参加の要件を充足し、かつ判決効が第
三者(参加人)に及ぶ場合に認められる。
 例: 債権者代位訴訟において被代位者が債
権者側に参加(代位訴訟について法定訴訟
担当説を前提にした場合)。

共同訴訟的補助参加人の地位

判決効が参加人にも及ぶことを考慮して、独
立性が高められている。
 被参加人の行為と抵触する行為もできる。
 参加人に生じた事由により手続が停止する。
 参加人の上訴期間は、被参加人とは独立に進行
する。
共同訴訟的補助参加の判例

[51]東京高等裁判所 昭和51年9月22日 判
決・教材判例集79頁
独立当事者参加(47条-48条)
X
所有権確認請求
所有権確認請求
Y
所有権確認請求
Z
独立当事者参加の意義


独立当事者参加は、二当事者対立訴訟に
第三者が独立の当事者として参加し、従前
の当事者に対する自己の請求と在来当事
者間の請求とについて論理的に矛盾のない
統一的審判を求める参加形態である(47条)。
目的
在来当事者間で参加人に不利な判決が確定す
ることを防止すること
 自己の請求を貫徹すること

三面訴訟



独立当事者参加は、論理的に合一性のある解決を
目指すものである。したがって、三者間での主張共
通・証拠共通が生じる。
独立当事者参加は、各当事者が合一確定に必要な
範囲で他人間の請求にも干渉でき、各請求について
三者が独自の立場から攻撃防御方法を提出できる
ことを意味する。
そこで、この訴訟は、通常の二当事者対立訴訟との
対比において、三面訴訟と呼ばれる。
片面的参加の許容

在来当事者の一方が参加人の権利主張を争
わない場合がある。この場合には、参加人は
その者に対する請求を定立する必要はない 。
独立参加の要件・類型(47条)
詐害訴訟防止参加 他人間の訴訟の結果に
よって権利が害されると主張する者は、その訴訟
が自己に不利な結果にならないように、その訴訟
に当事者として介入することができる。
 権利主張参加
他人間の訴訟で争われている
権利が自己に属することを主張する者は、その訴
訟に当事者として参加することができる。

独立参加の例
[43]最高裁判所 昭和48年4月24日 第3小
法廷 判決・教材判例集65頁
 [26]最高裁判所 昭和42年2月23日 第1小
法廷 判決・教材判例集39頁

債権者代位訴訟への参加
α債権
A
原
告
A
β債権
B
β債権支払請求
α債権不存在
確認請求
C
C
被
告
β債権支払請求
B
参加人
[43]最高裁判所 昭和48
年4月24日 第3小法廷
判決・教材判例集65頁
審理・判決(47条4項・40条1項-3
項)





40条1項は、3者間に牽制関係があることに着目して
の準用であるから、「2当事者間の訴訟行為は、他
の一人の不利益に於いては効力を生じない」という
意味での準用となる
一人が他の一人に対してした訴訟行為は、残りの者
に対してもその効力を生ずる(40条2項の準用。
当事者の一人について中断・中止事由が生ずると、
訴訟手続全体が停止する(40条3項の準用)。
弁論の分離・一部判決は、許されない。
判決は、すべての請求を通じて論理的に矛盾のな
いものでなければならない。
上訴審における各当事者の地位
(1)
上訴提起
Xの不服
申立て
X
Xの不服
申立て
被上訴人
認容
Y
α請求棄却
不服申立
てなし
棄却
β請求認容
棄却で
きるか
γ請求認容
Z
被上訴人
[45]最高裁判所 昭和48年7
月20日 第2小法廷 判決・教
材判例集67頁
上訴審における各当事者の地位
(2)
被上訴人
?
X
上訴提起
Y
α請求棄却
β請求認容
γ請求認容
Z
被上訴人
[48]最高裁判所 昭和50
年3月13日 第1小法廷
判決・教材判例集71頁
上告審における配慮
最高裁判所 平成11年12月16日 第1小法
廷 判決
 独立当事者参加訴訟において、被告の上告
に理由がないが原告の上告に理由があるた
め原判決を破棄して差し戻す場合に、被告の
上告について、訴訟の目的を合一に確定す
べき場合に当たるから、主文において上告棄
却の言渡しをしないとされた事例。

訴訟脱退(48条)

脱退の意味については、見解が分かれている。

伝統的な見解(兼子説・訴訟処分説1) 脱退は、
自己の立場を全面的に参加人と相手方との間の
勝敗の結果に委ね、これを条件として自己が関係
する請求について予告的に放棄または認諾する性
質をもつ訴訟行為であるとする見解。

新しい考え1(井上説・当事者権処分説) 脱退者
に関係する請求部分をこれまでに提出された訴訟
資料ならびに今後残存当事者が提出する訴訟資
料に基づいて審判することを認める訴訟行為(訴
訟追行の権利の放棄)と構成する見解。
訴訟告知(53条)

訴訟に参加するだけの利害関係を有する者に訴訟
係属を通知するために、訴訟告知の制度が用意され
ている(ここで参加は、補助参加に限らず、当事者参
加等も含む)。

訴訟告知に結びつけられた主要な効果は、参加的
効力である(53条4項)。

保証人が債権者から保証債務履行請求の訴えを提
起された場合には、保証人は、求償訴訟において主
債務者に「主債務が消滅していた」との主張をさせな
いようにする必要がある。主債務者に訴訟告知をし
ておけば、主債務者が補助参加しない場合でも、主
債務者のこの主張を封ずることができる(53条4項)。