古代の難問と曲線 (1時間目) 筑波大学大学院 教育研究科 1年 石井寿一 1、はじめに 高速道路のカーブ →クロソイド曲線の応用 パラボラアンテナ →放物線の応用 今回は曲線がテーマです。 問、定木とコンパスだけで、これできますか? a)与えられた直線上に、その上の点において 与えられた角に等しい角を作ること。 ( できる! できない。 ) 同じ大きさの角を作成する際、 分度器の使用を認めます。 ※ただし、「角を3等分」すると きなどに、目盛りの使用は認 めない。 問、定木とコンパスだけで、これできますか? b)与えられた点を通り、与えられた直線に平 行線を引くこと。 ( できる! できない。 ) 平行線を引く際、三角定規の使用を認めます。 ※ただし、目盛りの使用は認めない。 問、定木とコンパスだけで、これできますか? c)与えられた直線図形に等しい面積の正方形 をつくること。 *「直線図形」の定義・・・線分に囲まれた図形 (『原論』第1巻:定義19より) ( できる! できない。 ) 6.54 cm 2 6.54 cm 2 問、定木とコンパスだけで、これできますか? d)与えられた角を3等分すること。 ( できる! できない。 ) 問、定木とコンパスだけで、これできますか? e)与えられた円の円周に等しい直線を作ること。 ( できる! できない。 ) 2、ユークリッドと『原論』 ● ユークリッド(Euclid) ・紀元前365年~紀元前275年 ・古代ギリシアの数学者、天文学者。 ・「ユークリッド原論」の著者 ユークリッド原論 『原論』は全部で13巻から構成され、467も の命題を含んでいるので、我々はこの本か ら、ギリシア古典期の初歩的な数学的知識 を全て見出すことができる。この中では結論 を一連の命題(証明すべき「定理」と、直線 定木とコンパスだけを用いて作図できる「問 題」)として提示している。 3、古代ギリシア時代の数学 (1)任意の角あるいは円弧を三等分すること。 (2)立方倍積問題。 2V V (3)円積問題。 8.42 cm πr2 2 8.43 cm 2 πr2 ※定木とコンパスだけを使用。 4.アルキメデスの業績 ●アルキメデス(BC287年~BC212年) ・アレクサンドリアで数年学んだ後出生地で あるシラクサに戻り終生故郷で過ごした。 ・数学だけではなく、天文学、流体力学、機 械学、工学一般など幅広い分野に関心を 持っていた。 ・主な著作『円の計測』『球の円柱について』 『螺線について』 ●『螺線について』 アルキメデスが研究した曲線「アルキメデ ス螺線」について述べている。7つの定義 と28の命題からなる。この授業のメイン テーマ。 5.アルキメデス螺線の定義 原典:アルキメデス著『螺線について』より (「Archimede」2巻より) 定義《日本語訳》 1、もし直線が平面に引かれ、その一端が固定され たまま、その直線が一様な速さで何回か回転し て、それが出発した位置に再び戻ってくるとし、そ して直線が回転すると同時に、ある点が固定され た端点から、その直線上を一様な速さで運動す るならば、その点は平面上に螺線を描くであろう。 問.定義にしたがって アルキメデス螺線の概形を描いてみよう。 問.定義2~7で定められた螺線の各名称 を当てはめてみよう。 ① 原点 ② ③ 後方 ④ 前方 原線 問.定義2~7で定められた螺線の各名称 を当てはめてみよう。 ⑤ 第1面積 ⑥ 第2面積 問.定義2~7で定められた螺線の各名称 を当てはめてみよう。 ⑦ 第2円 ⑧ 第2線分 ⑨ 第1線分 ⑩ 第1円 6.アルキメデス螺線の性質 再び定義1より 「もし直線が平面に引かれ、その一端が固定 されたまま、その直線が一様な速さで何回か 回転して、それが出発した位置に再び戻って くるとし、そして直線が回転すると同時に、 ある点が固定された端点から、その直線上を 一様な速さで運動するならば、その点は平面 上に螺線を描くであろう。」 例えば、1秒間で直線が だけ移動し、ある点 3 が端点から直線上を距離aだけ移動するならば、 2 2秒間では直線が だけ回転し、ある点は 3 端点から直線上を距離 2a だけ移動する。 00 cm 4.00 cm 6.00 cm 1秒後 結果:2.09 a 3 2秒後 ? ? 回転した角度と、直線上を運動した距離は、時間に比例。 回転した角度と、直線上を運動した距離の比は一定。 点Oを螺線の原点、線分OAを回転の原線とし、 P1 、 P2 は螺線上の点。 OP1 = r1 OP2 = r2 ∠AOP1 =θ1 ∠AOP2 =θ2 とすると、 r1 、 r2 P2 P1 θ2 θ1 O 、θ1 、θ2 の関係は r1 : r2 = θ1 : θ2 と表すことができる。 A 『螺線について』 命題12 もし任意の1回転で描かれた螺線に、そ の螺線の原点から、互いに等しい角をつく る任意個の線分が置かれるならば、それら は互いを等しいだけ凌駕する。 つまり、右図のような場合では AΓーAB=AΔーAΓ ということ。 問、アルキメデスの証明を追って空欄を 埋め、証明を完成させよう。 なぜなら、回転する線が、ABからA Γに達する時間に、その直線に沿って動 ① AB を凌駕する差 く点は、ΓAが ① を通過する。そして、AΓからAΔに達 する時間に、AΔが ② ② AΓ を凌駕す る差を通過する。 問、アルキメデスの証明を追って空欄を 埋め、証明を完成させよう。 ところで、角が等しいので、回転する線 は、ABからAΓまでとAΓから ③A ③ Δ までと、等しい時間で達する。し たがって、その直線に沿って動く点は、 ΓAがABを凌駕する差と、AΔが ④ ④ AΓ を凌駕する差を、等しい時間で通 過する。ゆえに、AΓはABを、AΔは AΓを、等しいだけ凌駕する。そして、 残りも同様である。 7. 角の3等分問題 任意の角あるいは円弧を3等分すること。 ギリシア人が直角以外の角を3等分する問題に 出くわしたのは、疑いもなく、辺が9または9の倍 数の正多角形を円に内接させようと企てたときで あった。 (T・L・ヒース著 ギリシア数学史) 7. 角の3等分問題 また、「角の2等分」「線分の2等分」「線分の3等 分」は定木とコンパスのみで作図することが可能 だったので、「角の3等分」もできるだろうと考えた のかもしれません。 しかし! O x しかし、 アルキメデス螺線を使えば、 あとは定木とコンパスだけで 角を3等分することもできます! 問.点Oは螺線の原点、直線OAは螺線の原線。点Oを 頂点とする角を作成し、その角を3等分しよう。その際 直線OAが角を構成する1辺となるように作成すること。 ※角を構成するもう1つの辺は、螺線と交点を持つように描く。 O A
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