欧州諸国における最近の税制改革 2007年5月30日 1.ドイツ 2.フランス 3.オランダ 1.ドイツ • • • • • マクロ経済、財政状況 メルケル大連立政権の税制改革 付加価値税の引上げ等 法人税改革 金融所得への源泉分離課税の導入 ドイツ:マクロ経済、財政状況 ドイツの実質経済成長率、財政収支対GDP比及び債務残高対GDP比の推移 90.0% 5.0% 債務残高対GDP比(一般政府) 80.0% 71.1% 2.7% 70.0% 68.8% 2.0% 債 務 残 高 対 G D P 比 ( 一 般 政 府 ) 61.5% 60.4% 62.2% 60.0% 55.7% 1.9% 1.8% 59.7% 60.4% 58.9% 1.9% 67.9% 62.1% 2.7% 1.3% 3.0% 66.7% 65.4% 2.3% 2.0% 1.1% 0.8% 1.4% 50.0% 4.0% 実質経済成長率 財政収支対GDP比(一般政府) 3.5% 1.0% 1.0% 46.2% 46.6% 0.0% 0.0% 40.0% -0.2% -1.2% -0.8% -1.0% -1.7% 30.0% -2.2% -2.3% 20.0% -1.5% -2.0% -2.6% -3.0% -3.3% -3.2% -2.8% -3.2% -3.6% -3.0% -3.7% -4.0% 10.0% -4.0% 0.0% -5.0% 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 (出所)OECD “Economic Outlook No.80” (2006年12月)、連邦財務省及び連邦経済技術省資料 実 質 経 済 成 長 率 及 び 財 政 収 支 対 G D P 比 ( 一 般 政 府 ) メルケル大連立政権の税制改革 2005年9月:連邦議会議員選挙、11月:連立合意 キリスト教民主同盟のメルケル党首を首相に、二大政党を含む 大連立政権が成立。 2002年から2005年までEUの求める財政赤字の基準値を超 過しており、財政健全化がメルケル政権の急務の課題。 税制については、 ・2007年1月:付加価値税の引上げ(16→19%) 所得税の最高税率の引上げ(42→45%) ・2008年1月以降:法人税制改革 法人実効税率引下げ、課税ベースの拡大、 金融所得への源泉分離課税の導入 等に合意。 付加価値税の引上げ等 2007年1月 背景:マーストリヒト条約に基づく財政赤字3%基準の遵守、財政健全化の要請 ・付加価値税率の引上げ(16%→19%)【増収額3.4兆円】 → 増収分の2/3は財政再建に、1/3は失業保険料の引下げに充当 ・所得税の最高税率の引上げ(42%→45%)【増収額0.2兆円】 ①財政再建のための増税項目として付加価値税が選択された理由 ・税率が他のEU諸国に比べて低かった(EU加盟国平均は約19%) ・輸出品免税であり、ドイツ製品の国際競争力に影響を及ぼさない ・薄く広く負担を求め、特定のグループに負担を負わせる税より理解が得やすい ②付加価値税引上げの影響 ・2007年の成長は減速すると見られるが、駆け込み需要の反動は一時的なも のにとどまり、同時に行う失業保険料の引下げも勘案すると、付加価値税引上げ の影響は軽微と見られる。 ・中長期的には、財政健全化がシグナルとなって国民のマインドが上昇するなど 経済にプラスの効果が生まれると見られる。 法人税改革 2008年1月(予定:現在法案審議中) 背景: ドイツ国内で利益を上げながら海外へ所得を移転する企業への対応 雇用創出、賃金上昇、所得税・社会保険料の増収の期待 ・法人実効税率の引下げ(約39%→30%) ・課税ベースの拡大等によりネット減収額を抑制(減収額の6分の5を補填) (億ユーロ) 主要な増減収項目の見積り: 増収項目 減収項目 •営業税の損金算入の否認 •国内課税基礎の強化による増収 •定率償却制度の廃止 •移転価格税制の強化 •支払利子費用の損金算入の制限 •企業買収規則の厳格化 •有価証券を利用した租税回避の制限 +114.45 +38.90 +33.65 +17.70 +14.75 +14.75 +11.80 等 •法人税率の引下げ(25→15%) •営業税率の課税指数の引下げ •所得税における営業税控除率の引上げ •人的企業に対する所得税率の軽減 等 -125.55 -72.85 -52.65 -40.45 【改革全体の減収額】 -50.15 金融所得への源泉分離課税の導入 2009年1月(予定:法人税改革法案の一部として審議中) 背景:金融商品の形を変えることによる課税逃れへの対応 ・利子、配当、株式譲渡益について、25%の源泉分離課税 ①株式譲渡益課税についての「収益に課税するが譲渡益には課税しない」という 伝統的な原則を完全に放棄。 ②配当への課税については、法人税との二重課税の調整はもはや考慮する必要 がないとの考えにより、調整措置は講じない。(法人税を引き下げるため、法人税 と合わせた負担は軽減される) 2.フランス • マクロ経済、財政状況 • 国際競争力の強化と社会保障財源 • その他税制上の課題 フランス:マクロ経済、財政状況 フランスの実質経済成長率、財政収支対GDP比及び債務残高対GDP比の推移 90% 5.0% 債務残高対GDP比(一般政府) 4.0% 3.5% 80% 2.2% 2.2% 1.1% 60% 55.1% 50% 45.7% 40% 57.6% 1.0% 58.5% 58.7% 58.2% 56.7% 56.3% 2.5% 2.3% 1.9% 2.0% 70% 債 務 残 高 対 G D P 比 ( 一 般 政 府 ) 実質経済成長率 財政収支対GDP比(一般政府) 3.2% 58.2% 62.4% 64.4% 66.6% 2.0% 2.0% 64.6% 1.2% 1.1% 3.0% 63.6% 1.0% 46.9% -1.7% -1.1% -2.6% 30% -1.5% -1.0% -1.6% -3.2% -2.9% -3.5% -4.1% -4.2% -2.7% -2.5% -3.7% -3.0% 20% -5.9% -5.5% -5.5% -5.0% 10% 0% -7.0% 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 (出所)予算法案付属資料 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 実 質 経 済 成 長 率 及 び 財 政 収 支 対 G D P 比 ( 一 般 政 府 ) 国際競争力の強化と社会保障財源 サルコジ新大統領の選挙中の提案 背景:欧州統合に伴い、仏企業の国際競争力の強化が必要 高齢化に伴い社会保障支出の伸びが予見される中、中長期的に安定 的な財源確保が必要であるが、一般社会税(注)の負担は既に高く、更な る引上げは困難 (注)社会保障目的の個人所得課税。1991年に税率1.2%で導入されたが、そ の後段階的に税率が引き上げられ、現在では給与所得等については7.5% (その他関連諸税も合わせると8%)。所得の水準によらず定率。 ・社会保険料の企業負担分の引下げ ・代替の社会保障財源として、付加価値税率 (19.6%)の引上げ その他税制上の課題 (いずれも、実現可能性は不明) 一般社会税の所得税との統合 ・課税ベースの調整(一般社会税の課税ベースは所得税より広範) ・所得税への源泉徴収制度の導入 法人税の引下げ ・法人実効税率(33.33%)の引下げ 富裕税の引下げ タックス・シールド(注)の拡大 ・上限の引下げ(所得の6割→5割) ・対象税目に、一般社会税を追加 (注)所得税、富裕税等の合計の納税額に上限を設ける制度 3.オランダ • • • • マクロ経済、財政状況 2001年改革①ボックス・タックスの導入 2001年改革②諸控除の改革 2007年法人税改革 オランダ:マクロ経済、財政状況 オランダの実質経済成長率、財政収支対GDP比及び債務残高対GDP比の推移 100.0% 5.0% 93.7% 4.0% 90.0% 86.8% 83.8% 85.7% 3.8% 80.9% 80.0% 2.9% 債 務 残 高 対 G D P 比 ( 一 般 政 府 ) 債務残高対GDP比(一般政府) 4.3% 3.0% 4.0% 実質経済成長率 財政収支対GDP比(一般政府) 3.5% 79.3% 3.0% 3.1% 3.0% 70.9% 70.0% 1.4% 59.4% 2.0% 1.5% 63.7% 60.0% 3.0% 2.0% 2.0% 60.3% 61.4% 61.9% 61.4% 59.4% 57.3% 1.0% 0.7% 50.0% 0.4% -0.9% -0.4% -0.2% -2.0% 0.0% -0.3% -1.3% 40.0% 30.0% 0.1% -0.3% 0.3% -1.0% -1.8% -2.0% -2.0% -2.7% -3.1% 20.0% -3.0% -3.3% 10.0% -4.0% -4.3% 0.0% -5.0% 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 (出所)OECD “Economic Outlook No.80” (2006年12月) 実 質 経 済 成 長 率 及 び 財 政 収 支 対 G D P 比 ( 一 般 政 府 ) 2001年改革①ボックス・タックスの導入 背景:住宅ローン利子控除等による課税ベースの浸食、高い所得税の最 高税率(60%) ・富裕税による高所得者の国外移住等が問題となって いた。 ・勤労性所得と資産性所得を分離して課税 ・勤労及び事業所得の最高税率の引き下げ(ボックス1) ・富裕税に代わるものとして、資産からの収益率を一定 (4%)とみなし、資産価格の1.2%を税額とする制度を導 入(ボックス3) ボックス1 勤労及び事業、居住用住宅からの所得(33.65%~52%) ボックス2 株式・出資金の大口所有者の持分所得(25%) ボックス3 資産からのみなし収益(30%) 2001年改革②諸控除の改革 背景:所得税の税率を引き下げる(33.9~60%→32.35~52%)に 際して、全体としての減収額を抑制するため、低所得者に配慮した形 の控除の見直しにより、増収をはかる必要があった ・基礎控除等の人的控除(所得控除)を税額控除に変更 ・基礎税額控除の他に、児童税額控除や勤労税額控除等 の税額控除を創設 (注)各種税額控除の合計額が、算出税額(社会保険料を含む)を上回 る場合、その差額を給付する仕組みにはなっていない。 2007年法人税改革 背景:投資受入れ国として、他のEU諸国との競争のため、法人税を引 き下げる必要 税率の引下げ等の負担軽減と課税ベースの拡大 ・ 法人税率の引下げ(29.6%→25.5%) ・ 配当の源泉税率の引下げ(25%→15%) ・ グループ利子ボックス、特許ボックスを創設し、 それぞれ5%、10%の税率を適用する。 ・ 資本参加免税制度の適用条件を緩和 ・ 欠損金の繰越し・繰戻しの期間を制限 (参考)所得税が課税される自営業者についても、所得税のボックス1 の課税ベースを利益の9割とすることで、法人税の引下げにあわせ て軽減。
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