数理論理学 第2回

数理論理学 第8回
茨城大学工学部情報工学科
佐々木 稔
前回までのあらすじ
 命題論理と推論




三段論法
論理的帰結
背理法
クラスによる三段論法の表現
 配布資料は以下からダウンロードできます
http://sas.cis.ibaraki.ac.jp/sasaki/Logic/
前回の問題1





以下の前提から命題変数を記号で表し、論理式を導きなさい。
また、これらの前提から得られる結論を導き出しなさい.
 死刑を怖れる者がいるならば、死刑に犯罪抑止力がある。
 死刑に犯罪抑止力があるならば、死刑は正義である。
 誤審が防止できていないならば、死刑は正義ではない。
P:「死者を怖れる者がいる」
Q:「死刑に犯罪抑止力がある」
R:「死刑は正義である」
S:「誤審は防止できている」
 死刑を怖れる者がいるならば、死刑に犯罪抑止力がある。
 P⇒Q
 死刑に犯罪抑止力があるならば、死刑は正義である。
 Q⇒R
 誤審が防止できていないならば、死刑は正義ではない。
 ~S⇒~R
 対偶を取って、R⇒S
 三段論法により、
 P⇒S
 「死者を怖れる者がいるならば、誤審は防止できてい
る」
前回の問題2
 次の論証から命題変数を抜き出し、ベン図を用いて関係
を図示せよ。また、この論証が妥当かどうか判定せよ。

「彼の言うことはすべてナンセンスだ。ナンセンス
はすべて卑劣だ。彼の言うことはすべて卑劣だ。」
 P:「彼の言うこと」
 Q:「ナンセンスである」
 R:「卑劣である」
P
R
Q
妥当である
今週のお題
 述語論理
命題論理の復習
 命題を記号として表現
 ブール代数と同様の演算が可能
 演算を繰り返して推論を行う




肯定式
否定式
三段論法
背理法
三段論法の復習
 前提1:「人間はいつか死ぬ」
 前提2:「ソクラテスは人間である」
 結論:「ソクラテスはいつか死ぬ」
命題記号での記述
 命題 P :「人間はいつか死ぬ」
 命題 Q :「ソクラテスは人間である」
 結論 R :「ソクラテスはいつか死ぬ」
 すべて基本命題(原子命題)で表すしかない
 (P∧Q)⇒R
 恒真式ではないが、論証は正しい
命題論理の問題点
 「ソクラテス」以外でも論証は正しい
 命題:「X は Y である」
 命題:「Y は Z である」
 結論:「X は Z である」
 命題論理の問題点
 妥当な論証をすべて表記できない
 命題の内部構造をより詳細に分析する
述語論理
 命題にある固体に着目
 「固体について何を述べているか」
例
 「すべての日本人は人間である。」
 「すべての固体について、その固体が日本人なら
ば人間である。」
 「何を述べるか」の部分を固定する
 述語
述語
 述語
 個体間の関係や性質を表す
 例
 「太陽は西に沈む」
 「太陽」と「西」が「沈む」という関係で結ばれる
 「6は素数である」
 「素数である」という性質が「6」に含まれる
 関数の形で表記し、真偽を返す
 沈む(太陽, 西)、素数(6)、人間(日本人)
述語の変数
 固体定数
 述語の引数が特定の値
 a, b, c, ・・・
 固体変数
 述語の引数が任意の固体定数の代表
 x, y, z, ・・・
固体定数と固体変数
 沈む(太陽, 西)
 a:「太陽」、b:「西」
 沈む(a, b)
 沈む(x, y)
2項述語
 素数(6)
 c:「6」
 素数( c )
 素数( x )
1項述語
述語記号
 述語記号
 述語そのものを記号で表現
 P, Q, R, ・・・
例
 沈む(太陽, 西)
 P:「沈む」、a:「太陽」、b:「西」
 P (a, b)
 引数が任意の値の場合、
 P (x, y)
述語論理と命題論理の違い
 文の内部構造を表現できる
例
 「鯨は哺乳類である」
 「鯨は水棲動物である」
 「鯨は水棲の哺乳類である」
命題論理
述語論理
鯨⇒哺乳類
哺乳類(鯨)
鯨⇒水棲動物
水棲動物(鯨)
鯨⇒哺乳類∧水棲動物
哺乳類(鯨)∧水棲動物(鯨)
高階述語
 変数は述語であってもよい
 引数に述語がない述語論理
 第1階述語論理
 引数に述語が1つ存在する述語論理
 第2階述語論理
 引数に述語が(n-1)個存在する述語論理
 第n階述語論理
 この授業では第1階述語論理を対象とする
高階述語の例
 「x は y の父親である」
 父親(x, y)
 「z は w を知っている」
 知っている(z, w)
 「z は x が y の父親であることを知っている」
 知っている(z, 父親(x, y))
中間アンケート
 学籍番号と氏名は書かなくても構いません
 意見、感想を書いてもらえると嬉しいです。