医療に関する法について 何にも知らないでいいのか? 医師は犯罪集団???? • 何年か前に某JK医科大学AOT病院での事件 では3人もの医師が殺人罪で逮捕されまし た。 • 最近医療事故(とくに手術)で医師の犯罪 が取りだたされていますが・・ • みなさん、自分には関係のない話とおもっ てませんか・・・ 近年医師が医療行為を問われて 逮捕されることがあたりまえに なってきました しかし、事件を起こす医師の中には本当にと んでもない人達もいますが、多くはみなさ んが通常接している通常の仕事をしている 人たちです。 裏を返せば、我々みんな事件予備軍であり犯 罪予備軍なのです。 ようするに・・ 事件を起こす医師が「悪い医 師」なのではなく 「医師免許」を持った、われわれ医師とい う集団そのものが社会にとっては危険な 集団とということなのでしょう。 ちょと待て!! いくら何でも治療行為を行って、たまた まうまくいかなかったからといって 「殺人」とはひどいじゃないか? と思うむきもいらっしゃると思われます が・・・・ その疑問は本当に正しいのでしょうか? 法では・・・ 刑法第26章 殺人の罪 第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若 しくは5年以上の懲役に処する。 となっており、医療行為といえども人を殺せ ば殺人罪に問われること自体に問題はあ りません。 医師が起こす事故に2種類あり ます(悪意のあるものは別として) 1.専門性への興味が患者さんへの興味を上回ってし まった場合 →全国で多発している腹腔鏡裁判 (患者さんの治療より自身の技術向上しか頭にない。医の道に外れた人 が起こす問題) 2.専門以外あるいは未熟ゆえの無知が引き起こすケー ス →典型例を診断できず/抗がん剤過剰使用 など (「自分に何か出来ないのか」を把握するという医者としてもっとも大 事な資質が欠けている人が起こす問題) ちょと自問してみてください • 治療方針を決めるとき、「自分の興味分野で行いたい」と いう思考がはさまることが本当にないと言えますか? • 患者さんが担当科以外の訴えをしてきたとき、自らは殆ど 診ようとせずに他科へコンサルテーションしてませんか? • 逆に、自分がよく知らないにも関わらずしたり顔でアン チョコ片手に治療を行なったりしていませんか? • 不慣れな手技に手を出したり、作用機序を熟知してない薬 を使ったことはありませんか? • 上記に自身をもって「No!」と言えない人 と、手錠をかけられた人の違いはあるのです か? 医療行為は基本的に刑法の傷 害罪に該当します。 刑法第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以 下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 ここで言う医療行為とは? 体に傷をつける処置(手術・穿刺・注射等) および薬剤の使用を含みます。 これらの医療行為を完全に合法化する条文は 刑法にも医師法にも存在しません! すなわち我々が日常行っている行為 はすべて犯罪ということになります じゃあなぜ罰せられないかというと・・・ 刑法の犯罪の不成立および刑の減免という項目に 第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰し ない。 とあります つまり「本来違法行為ではあるが、正当業務の範囲で 行えば罰はありませんよ」といってるのです。 ようするに • 我々が行っている、手術したり、穿刺し たり、薬を処方したりする行為はいった ん犯罪に足を踏み入れた行為なのです。 • ただし、その行為が「正しい医療行為」 であるかぎり罰せられることはない。 • ということになります。 それでは「正しくない医療行 為」とは何でしょう? • これを言葉で説明するのは難しい。 • 予想される合併症の範囲を超えて傷害を与 えたとき • 医学的に Consensus を得ておらず担当医の 独自判断による治療 • 患者さんの了承を得ていない治療 • というところでしょうか? それでは経験が浅い医師が行う医療 行為は犯罪なのでしょうか? それが「単独診療」であれば法的には「犯罪」が成立す る可能性があります。 罰せられるかどうかはまた話しがかわりますが・・・ • まあ耳の痛い話しですが、我々の置かれた立場が 如何に危ういものか理解してください。 • 法ではありませんが、厚労省では卒後1年目の医 師による単独診療を禁じています。 ちょっと判例を見てみましょ う。 • もちろんフィクションです。 • 判決はかなり偏った内容です。 CASE1 78歳男性 ERに急性腎不全にて来院。1年目研修医が初診 を担当したが、アシドーシス強く心不全あり、緊急透析 が必要と判断した。当直スタッフに電話すると「それは 透析だなあ〜むにゃむにゃ」と夜中のため眠そうであっ た。 担当研修医は1度だけ内頸静脈穿刺をしたことがあるため、右 内頸静脈から透析用カテーテル挿入を試みたが、動脈誤穿刺 をしてしまいしかも途中で気づかずカテーテル挿入してしまった。 誤穿刺に気づいて慌ててカテーテルを抜去したが、みるみる首 が腫れてきて呼吸状態が悪化した。あれよあれよという間に心 肺停止となってしまった。 患者さんはワーファリンを常用しており INR=7 だった。 判定 Guilty • Point! • 殆ど経験のない手技を単独で施行し、合併症 を作った。 • 知識不足:動脈誤穿刺したカテーテルは抜か ない。 • 指導医から「カテーテルを入れろ」とは言わ れていない。 この患者さんが亡くなったとしたら、業務上過失致死罪あるいは 殺人罪で訴えられる可能性がある。 法的解釈:死んでしまった場合 • 死んでしまったことを法的に問われると したら・・・以下の3通りがある 1)過失致死:医師が罪に問われる場合はまず該当し ない 2)業務上過失致死:注意義務を怠ったことにより 死亡してしまった場合 3)殺人:上記以外 先の症例では・・ • カテーテルが必要という判断は正しく動脈誤穿刺 は起こりうる合併症の1つでもある。誤穿刺した こと自体は医学的には確率の問題であるのだが、 一般には「上手くいかない」=「ミスをした」と いう短絡な判断がなされることが多い。 • そもそもの穿刺の技術が無いのに単独で手技を施 行したこと、凝固障害を把握していなかったこと と、誤穿刺したカテーテルを抜いたことを問われ れば「業務上過失致死罪」となる CASE2 94歳女性。肺炎にて入院中であった。難治性であり高熱 がつづいていた。高熱に対しては連日ボルタレン座薬が 使用されていた。 ある日のよる大量の吐下血にてコールを受けた。駆けつけると すでにショックであり、急いで輸血の準備をしているうちに心肺 停止となってしまった。 抗潰瘍薬は使用されていなかった。 判定 Guilty • Point! • 吐下血以降の対応には問題なかった。 • NSAIDは使用していたが、 Antiacid は使用し ていなかった。 • 文献的には発熱単独に対して NSAID は推奨 されていない。 業務上過失致死罪あるいはで訴えられる可能性がある。 この症例では • 客観的にみると”寿命”でよいような気もす るが・・家族が怒ればその限りではない。 • 抗潰瘍薬無使用と潰瘍発生の因果関係は医 学的には明らかでないが、使用していな かった点やより安全な代替薬がある点をつ かれれば業務上過失致死罪で問われる可能 性もある。 CASE3 6歳女児、父親につれられ発熱にて来院。鼻水・乾性咳嗽 ありURIが疑われた。当直医が担当し、総合感冒薬と抗生 剤を処方して帰宅させた。 その2時間後、小児のCPAにて救急車より搬送依頼がきた。 到着すると先の女児であった。帰宅後処方された薬を飲んで から15分ほどして気分が悪いと言いそのまま倒れてしまったと のことだった。 彼女の母は、肺炎で入院時に死亡しておりペニシリンアレルギー の可能性があると言われたとのことであった。 判定 Guilty • Point! • 薬剤アレルギーの病歴聴取がなされていな かった。 • URIと診断したなら抗菌薬は不要*。 業務上過失致死罪で訴えられる可能性がある。 この症例では・・ • 病歴聴取が不十分であったこと、および 治療自体も適切でなかった*ことから業務 上過失致死を問われる可能性もある。 URI に抗菌薬を使用することは医学的には適切でないが、現行 の日本医療ではかなりはびこっている手法であることと、疾患を 診断した際には適不適に関わらず薬を使用することが是でしな いことが否である風潮があることは確かであるので、実際にはこ の点は軽視されるであろう。 CASE4 78歳男性、前立腺癌の全身転移にて入院中。夜中当直医 が不眠にてコールされた。当直医は全く知らない患者さ んであったが電話にてハルシオンの経口を指示した。 その深夜、担当看護師が回診すると先の患者さんが 心肺停止していた。 すでに多発肺転移があり、酸素治療をしていた。本人は不 眠を訴えていたが、担当外の看護師の話しでは肩呼吸を していたとのことだった。 判定 Guilty • Point! • 担当以外の患者さんに対し電話指示で薬を出 したことは医師法違反に当たる。 業務上過失致死罪あるいは殺人罪で訴えられる可能性がある。 医師法第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断 書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わ ないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は 自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。 但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死 亡した場合に交付する死亡診断書については、こ の限りでない。 この症例では・・ • え〜もうターミナルなんだから勘弁してく れよ!!と思うかもしれないが、 • 家族にその状況が十分に伝わってない場合 には訴えられる可能性もある。 • その場合、呼吸状態を把握していなかった 点をつかれれば業務上過失致死致死罪だが、 医師法違反を追求されれば殺人罪を問われ るかもしれない。 我々医師が法治国家で働く以上、 これを十分に認識する必要があ ります。これは医師の倫理とは 別問題です。 • 直接的な問題としては • 刑法と医師法のなかで日常診療と関係 する部分を知っておかねばなりません。 • 要点だけおさらいしておきましょう。 まずは刑法について ・刑法第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲 役又は五十万円以下の罰金に処する。 ・第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。 ・正当性に疑問を持たれる診療は「刑法」にて罰せられる可能性 があることを認識しておきましょう。 ・実診療においては「正当性」≒EBM と考えるべきでしょう ・ただしもし裁判になればそんなものは吹っ飛んでしまいます。 患者さんが傷害をうけるあるいは死 亡した場合医師がうけるかもしれな い罪刑は・・ • 殺人:第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは 五年以上の懲役に処する。 • 傷害:第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の 懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 • 傷害致死:第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた 者は、三年以上の有期懲役に処する。 • 業務上過失致死傷等:第二百十一条 業務上必要な注意を怠 り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮 又は五十万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死 傷させた者も、同様とする。 エホバと刑法について • 輸血をしないと助からないエホバの患者さんが輸血を拒否した 場合* • 緊急避難:第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対す る現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた 害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、 その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除すること ができる。 • 従って輸血を慣行しても罰せられないか減免される可能性があ るが、最近は生命よりも本人の意志を尊重する傾向にある。 • 問題はエホバの証人の子供で本人はエホバで無い場合。 (*輸血学会のガイドラインがあります) 患者さんのプライバシーの問題 • 秘密漏示:第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助 産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、 正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知 り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万 円以下の罰金に処する。 • 本人もしくは家族以外に病状や診療内容を説明することは刑 法に違反する。相手が警察官でも例外ではない。本人家族の 承諾なしに第3者に病状を説明することに正当性はない。(家 族を介して説明させることもできるし、家族立ち会いのもとに説 明することもできるため) • 積極的に教えなくても、落としたメモを見られたり、誰でも閲覧 できる場所にカルテを置き忘れて漏れた情報についても同罪で ある。(癌・エイズなど) • 代理人からの診断書等の要求は遺族の同意書が必要! その他刑法・・ • 異状死を届け出なかった場合、変死者密葬 の共犯者とされる • 変死者密葬:第百九十二条 検視を経ないで変死者を葬った 者は、十万円以下の罰金又は科料に処する。 • 届け出義務を知らなくても同罪 • 第三十八条 3 法律を知らなかったとしても、そのことによっ て、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情 状により、その刑を減軽することができる。 その他の刑法・・ • 診断書にウソを書くと懲罰あり • 公正証書原本不実記載等:第百五十七条 公務員に対し虚偽 の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に 関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しく は義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録 に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以 下の罰金に処する。 • 死亡診断書・検案書は私文書 虚偽診断書等作成:第百六十条 医師が公務所に提出すべき 診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、三 年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。 医師法関連 • 応招義務:第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の 求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒ん ではならない。 • 正当な事由:病気・不在など • 2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会った医師は、診 断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証明書の 交付の求があった場合には正当の事由がなければ、これを 拒んではならない。 • 診断書:規定の書式はない • 死亡診断書(検案書):規定の書式あり 人が死んだとき・・・ • • • • • • • • • 医師が行う対応は基本的に3つしかない 診療中の患者さんが目の前で亡くなったとき 死亡診断書(医師・歯科医師) 診療中の患者さんが亡くなって呼ばれたとき 死体検案書(医師のみ) 診療していない方の死亡および病死以外 異状死として24時間以内に所轄警察署に届け出る。 診療の期間は問わない(1秒でもよい) 患者さんが亡くなっていても過去24時間以内に診 療行為があれば死亡診断書を発行できる 例えば・・・ 1)胃癌の患者さんが病棟で亡くなった →死亡診断書 2)大腸癌末期の患者さんが心肺停止で運ばれた(最終受診日か ら4日後) →死体検案書(法的にはこうだが、実際にはそうしてない?) 3)胸痛で受診し大動脈解離の診断となった患者さんが1時間後 に死亡した →死亡診断書(24時間以上診療してないと診断書が書けないと誤認している不勉強な管理者 がいる?) 4)心肺停止の患者さんが蘇生術を施行したが反応がなく蘇生中 止となった →異状死 5)交通事故で多発外傷の患者さんが集中治療をつづけたが状態 悪化し2ヶ月後に肺炎で死亡した →異状死 異状死の扱い • 第二十一条 医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を 検案して異常があると認めたときは、二十四時間以内に 所轄警察署に届け出なければならない • 異状死として届けられた場合 • 検察官あるいあは司法警察職員が検視を 行う • 補助行為として医師が検屍・検案を行う • 必要に応じて法医解剖を行う。 • 検案なしに死体検案書は発行できない CPA の扱い • CPAと言うと”まだ死んでいない”というイ メージを与えますが、国内でのCPAはその 殆どが事実上院外死です。仮に蘇生途中で 多少の反応があっても結果的に蘇生不能で 死亡確認となった場合も含め全例「異状 死」とすべきです。 • 異状死として届け出した場合、検察官か司 法警察職員が検視することになっています が現実的にはただの警察官が行っています。 CPAつづき • 検視の結果事件性が無いと認められた場合 に警察から検屍・検案を依頼されこれを行 えば死体検案書を作製することが可能です。 検案をせずに書類を作成することは違法で す。 • 実際には検屍・検案で死因特定できること は殆どあり得ないため依頼されても断るべ きと考えられます。 その他医師法関連・・ ・全く知らない患者に対し電話で薬を指示する のは違法です。 ・第二十条 医師は、自ら診察しないで治療を し、若しくは診断書若しくは処方せんを交付 し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若 しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をし ないで検案書を交付してはならない。但し、 診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡 した場合に交付する死亡診断書についてはこ の限りではない。 医師法そのほか・・・ • 説明義務 • 医師は、診療したときには、本人又はその 保護者に対し、療養の方法その他保険の向 上に必要な事項の指導をしなければならな い。 • カルテの記載:一言でも書かれていればそ の日診察した証明になる • 医師は、診察をしたときは、遅滞なく診療 に関する事項を診療録に記載しなければな らない。 つかれましたのでやめましょう
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