中国剰余定理 ~2000年の歴史~ 大阪大学 s.t.fake (@st_fake) 孫子算経 3~5世紀頃、中国の算術書「孫子算経」には 次の問題が描かれていた。 今有物、不知其数。 三・三数之、剰二。 五・五数之、剰三。 七・七数之、剰二。 問物幾何? 意訳: 今ここに、個数がわかっていない ものがあります。 3で割ると余りが2 5で割ると余りが3 7で割ると余りが2 さて、これは全部でいくつ? まぁ皆さん考えてみましょう。 あと10秒くらい。 あと30秒くらい。 1分くらい。 知ってるZE! という方は類題を… 7 で割ると余り6 9 で割ると余り1 11 で割ると余り1 答えは。 23です。(類題:496) …気になるのは答えじゃなくて 求め方ですよねー? 孫子算経の解法 • 3で割ると2余る→ • 5で割ると3余る→ • 7で割ると2余る→ これらを全部足す。 210を引いて… 140 63 30 93 210 23 233 孫子算経の解法 • 一般に 3で割った時のあまり × 70 5で割った時のあまり × 21 7で割った時のあまり × 15 これらをすべて足しあわせて 105 を 可能な限り引けば良い。 ポイントは、105を引くところ! 昔の人はなんとなく…でやっていたのかもしれ ませんが、これはとても重要なことなのれす! どういうこと? 105で余りの組み合わせが1周する! ちょこっと数学的に。 このことを数学的に記述しますとこうなります。 Z/105Z (Z/ 3Z) (Z/ 5Z) (Z/ 7Z) 23mod105 (2 mod3,3 mod5,2 mod7) より一般に、次のようなことも成り立ちます。 Z / nZ (Z / p Z ) (Z / pr Z ) m1 1 mr ただし n p1 pr m1 mr で、 p1 ,, prは互いに素 ここで注意! とりあえず素因数分解しても、 互いに素でなければこれは使えません。 例えば有名な例だと Z / 4Z ! ( Z / 2Z ) ( Z / 2Z ) でしょうか。 更に発展。 これだけだと数学的なありがたみが殆ど 無いわけです。まぁ暗号とかにはこのまま 使われるらしいのですが。 数学(主に代数)で使われるときには、イデアル の概念を用いて先の定理が描かれます。 中国剰余定理(イデアル版) R:単位元を持つ可換環 I,J:Rのイデアル、互いに素( I + J = R) a∈R とする。この時次の環準同型写像φ φ: R ( R / I ) ( R / J) a (a I , a J) は、次の同型を誘導する。 R / IJ ( R / I ) ( R / J) 証明 先に補題として、 I J IJ を示しておこう。ここでもイデアルが互いに素 であることが生きてくる。 I J IJ は自明なので皆さんの練習問d(ry 証明 証明 I J IJ である証明。 x I , y J s.t. x y 1 従って a a( x y) ax ay また、 ax IJ , ay IJ より a ax ay IJ 証明 証明 ② Kerφ I J ③ Imφ ( R / I ) ( R / J) 証明 ① φ : R ( R / I ) ( R / J) a (a I , a J) が準同型 証明 φ(1) (1 I ,1 J) ① φ : R ( R / I ) ( R / J ) φ(a b) (a b I , a b J) I ,(baI ,J a (a I , a(a J) b ) が準同型 J) φ(a) φ(b) φ(a b) (a b I , a b J) (a I , a J) (b I , b J) φ(a) φ(b) 証明 証明 ① φ : R ( R / I ) ( R / J) a (a I , a J) が準同型 証明 ② Kerφ I J 証明 x Kerφとしよう。φ ( x) (I , J)である。 従って x I I , x J J ゆえに x I , x J 一方 x I J とすると、 ② J) (I , J) φ( x)Ker ( xφ I ,Ix J ゆえに x Kerφ 証明 証明 ② Kerφ I J 証明 ③ Imφ ( R / I ) ( R / J) 証明 y (a I , b J) に対して、 I J Rより i j 1 なる i I , j J が存在する。 x aj bi とすれば、(中略) φ ( x) y が成立する。 ③ Imφ ( R / I ) ( R / J) 証明 証明 ③ Imφ ( R / I ) ( R / J) 証明 応用例 m, n : 互いに素な整数 とす る。この時 Z / mnZ (Z / mZ) (Z / nZ) K : 体、 K [ X:] K係数1変数多項式環とする。 K [ X ] /( X 2 1) K [ X ] /( X 1) K [ X ] /( X 1) RR 今日のまとめ。 3で割って◯余る 5で割って◯余る ←このタイプは105で一週する。 7で割って◯余る… 中国剰余定理でいう Z/105Z (Z/ 3Z) (Z/ 5Z) (Z/ 7Z) の形となる。 ご清聴、ありがとうございました。 計算用紙。いわゆる余白。
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