精神障害者における禁煙治療保険適用後の短期治療成績

第19回日本禁煙推進医師歯科医師連盟学術総会
ポスター発表:2010年2月28日
バレニクリン保険適用後における
川合厚子1)・手塚亜都美1) ・松木五苗1)
栗田征武2)・御供正明2)・長谷川朝穂2)
1)社会医療法人公徳会
2)社会医療法人公徳会
精神障害者の禁煙治療成績
・長谷川郁子1) ・竹田明美1) ・菅野比呂実1)
・ 沼田由紀夫2) ・計見一雄2) ・佐藤忠宏2)
トータルヘルスクリニック
佐藤病院
【目的】
精神障害者の禁煙治療に関する報告
は少ない。
そこでバレニクリンが保険適用となった
2008年5月以降の精神障害者の禁煙治
療成績を検討し報告する
【方法1】
対象
2008年5月19日から11月18日までの
6ヶ月間に禁煙治療を開始した39名
禁煙補助薬
ニコチンパッチとバレニクリンの双方について説明の
上、未成年や衝動行為・自殺行動などのリスクの高
い患者にはニコチンパッチを勧め(禁忌を除く)、他
の患者にはバレニクリンを推奨し、患者の希望を入
れて選択した。
【方法2】
1.3ヶ月、1年それぞれにおける喫煙状況をカルテを
中心に調べた。
2.さらに精神障害を持つ男性において、カルテ・調査
票より禁煙関与因子をANOVAにて解析、検討した。
検討因子
年齢・ 1日喫煙本数・喫煙年数・初回喫煙年齢・
禁煙回数・起床から最初の喫煙までの時間・TDS・
FTND・KTSND・呼気中CO・3ヶ月までの指導回数
対象者の内訳
200年5月19日-同年11月18日に
禁煙治療を開始した39名(男性29名、女性10名)
12
11
10
9
8
6
4
4
3
2
1
1
0
害
な
障
し
情
症
...
感
調
ー
障
コ
他
神
ル
の
精
そ
ア
性
失
病
極
合
うつ
双
統
害
禁煙補助薬の内訳
非精神障害者
精神障害者
14
13
12
10
8
6
4
5
5
4
男性
女性
2
0
NP
→
V
リ
ン
ッ
ッ
ン
パ
ク
ン
ニ
チ
レ
コ
バ
ニ
リ
パ
ク
ン
ニ
チ
レ
コ
バ
ニ
チ
チ
精神障害者における禁煙補助薬の内訳
自ら希望してきた者 12名
他疾患で受診時に勧められて禁煙を決意したもの 13名
男性20名
ニコチン
パッチ
5
バレニクリン
13
女性5名
ニコチンパッチ
↓
バレニクリン
1
ニコチン
パッチ
2
バレニクリン
3
2008年5月19日~11月18日
【成績】禁煙成功率
非精神障害者
精神障害者
(男9名、女5名)
(男20名、女5名)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
80
40
13/20
4/5
10/20
3ヶ月
2/5
1年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
100
77.8
男性
女性
7/9
9/9
1/5
3ヶ月
1/5
1年
精神障害者男性における
1年禁煙継続群と再喫煙群の比較1
TDS
KTSND
年齢
(歳)
1日本数
(本)
喫煙年数
(年)
FTND
1年禁煙
継続群
(n=9)
51.8
28.4
29.8
6.5
8.3
14.6
再喫煙群
(n=11)
52.3
29.4
35.1
7.2
8.0
15.7
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
精神障害者男性における
1年禁煙継続群と再喫煙群の比較2
起床から最
初回喫煙 禁煙回数 初の喫煙ま
年齢(歳)
での時間
(回)
(分)
呼気CO
(ppm)
3ヶ月まで
の
指導回数
1年禁煙継続群
(n=9)
19.8
1.6
12.0
15.2
11.1回
再喫煙群(n=11)
18.1
3.5
12.6
21.6
10.2回
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
自ら禁煙を希望してきたかによる
1年禁煙継続成功率
精神障害者
非精神障害者
自ら禁煙を希望
7/12
58.3%
7/9
77.8%
アプローチに
より禁煙を決意
4/12
33.3%
2/5
40%
禁煙補助薬別
3ヶ月→1年の禁煙継続成功率
ニコチンパッチ
バレニクリン
精神障害者
非精神障害者
6/7 → 3/7
4/6 → 3/6
85.7%
33.3%
42.9%
11/16 → 7/16
68.8%
43.8%
50%
6/7 → 5/7
85.7%
71.4%
【結果】
1. 対象者のうち精神障害者は25名(男性20名、
女性5名)であり、男性では3ヶ月で64.5%(13/20)、
1年で50%(10/20)が禁煙できていたが、 女性で
は3ヶ月で4名、1年で2名の禁煙であった。
2. 非精神障害者は14名(男性9名、女性5名)で
あり、男性では3ヶ月で100%、1年で77.8%(7/9)が
禁煙できていたが、 女性では3ヶ月・1年共に禁
煙が確認できたのは5名中1名であった。
3. バレニクリンを処方した精神障害者は男性13
名、女性3名であり、重篤な有害事象は認められ
なかった。
4. 精神障害を持つ男性において、年齢・ 1日喫煙本
数・喫煙年数・初回喫煙年齢・禁煙回数・起床から
最初の喫煙までの時間・TDS・ FTND・KTSND・呼
気中CO・3ヶ月までの指導回数を、1年禁煙継続群
と再喫煙群とをANOVAで解析検討したところ、両者
間に有意差を認めなかった。
【考察】
1.精神障害者においても男性では一定の禁
煙治療効果が得られた。
2.精神障害者においても十分なインフォーム
ドコンセントをとった上でのバレニクリン処方
は可能であった