禁煙支援・治療は面白い-その方法と実際 - 大阪がん循環器病予防

1.主催者名:大阪府八尾保健所・八尾市保健センター・八尾市立病院(2012年3月15日)
2.研修会: 禁煙指導者講習会
3.講演会タイトル: 禁煙支援・治療は面白い禁その方法と実際
4.講師名: 中村正和(大阪府立健康科学センター健康生活推進部長)
八尾保健所管内 禁煙指導者講習会 (2012年3月15日、八尾市)
禁煙支援・治療は面白い
ーその方法と実際ー
禁煙治療の現状と課題
1.禁煙治療の現状と課題
2.禁煙支援・治療の意義
3.日常診療等の場での禁煙勧奨と治療の実際
大阪府立健康科学センター
健康生活推進部 中村正和
ニコチン依存症のメカニズム
禁煙治療に対する保険適用
「ニコチン依存症管理料」の新設(2006年4月)
脳内報酬回路
●ニコチン依存症と診断された患者のうち、直ちに禁煙することを希望す
る者に対しては、一定期間(12週間、5回)の指導に対して、診療報
酬上の評価を行う。5回分合計の保険点数は962点。
●指導内容はカウンセリングと薬物療法。
●ニコチンパッチとバレニクリンが禁煙補助剤として薬価収載
●入院前に外来で治療を開始すれば、入院中も保険薬として処方でき
る。
禁煙開始日
ニコチン受容体
再診
初回診察
2週後 4週後
8週後
12週後
ニコチン
側坐核
ドーパミン
腹側被蓋野
大阪府における届出医療機関の割合
大阪府における病院の禁煙化の実態
-病院・診療所別-
病院
診療所
25.1
%
全国* 23.5%
(大阪府健康増進計画、2008/大阪府がん対策推進計画、2008)
調査年度(回答病院)
11.7
%
(N=537)
【参考】
 目標:すべての医療機関の禁煙化
2005年度(560) ←
(N=8,231)
全国* 11.3%
* 日本禁煙学会ホームページ 「禁煙治療に保険が使える医療機関数と総計」(平成23年12月21日現在)より引用
敷地内禁煙
建物内禁煙
7.5%
55.2%
2006年度(546)
19.2%
49.6%
2007年度(545)
27.0%
44.8%
2008年度(540)
31.5%
43.7%
2009年度(538)
36.6%
43.7%
2010年度(539)
42.1%
41.6%
保健所による医療監視の機会等を活用した調査
←
病院機能評価ver5(全館禁煙)2005年7月導入
(大阪府「医療機関における分煙・禁煙化対策及び禁煙サポート調査」)
1
病院機能評価 統合版評価項目V6.0
◆「環境、サービス」から「運営」に関わる項目として位置付け
Ver.5.0「3 療養環境と患者サービス」
↓
Ver.6.0「1 病院組織の運営と地域における役割」
◆「禁煙に取り組んでいる」→「禁煙が徹底されている」
禁煙に取り組んでいる」→ 禁煙が徹底されている」
Ver.6.0
1.7.2 禁煙が徹底されている
☆ 敷地内禁煙を高く評価(前回より継続)
1.7.2.1 全館禁煙が遵守されている
①全館禁煙の方針が明確にされ、禁煙が徹底されている
1.7.2.2 患者ならびに職員の禁煙を積極的に推進している
①患者や職員に対して、禁煙の啓発や教育を行っている
☆禁煙外来の実施を明記
朝日新聞、2012年1月29日
平成24年度診療報酬改定
ニコチン依存症治療の状況別にみた
指導終了9ヶ月後の状況
たばこ対策への評価
平成19年度調査(第1回調査)
(平成24年度診療報酬改定説明会資料、2012年3月5日)
平成21年度調査
(注)灰色の網掛け部分は、5%水準で有意と認められたオッズ比である。
40
モデル3
推定値 標準誤差
5%有意
オッズ比
-3.399
0.3
11.33
0.01
-0.013
-0.39
-0.964
0.578
0.003
0.004
0.121
0.228
0.035
(第1回調査; 中医協 総会資料, 2008年7月 / 第2回調査; 中医協総会資料, 2010年6月)
禁煙者の禁煙行動の実態
マルチレベル分析結果
定数項
患者変数
年齢
1日あたりの喫煙本数
保険再算定あり
合併症_精神疾患あり
算定回数
禁煙補助薬の使用状況
ニコチンパッチのみ(ref)
バレニクリンのみ
ニコチンパッチ・バレニクリン(切替使用)
ニコチンパッチとニコチンガム
その他
いずれも使用せず
施設変数
禁煙指導の実施者(医師+その他の職種)
独自手順書あり
医師1回あたりの平均指導時間(初回)
禁煙治療に従事する医師の禁煙治療に携わっている年数(平均値)
残差
平成21年度調査(第2回調査)
3.333
3.25
3.223
4.228
16.514
1.010
0.987
0.677
0.381
1.782
30
20
10
0.096
0.352
0.502
0.202
0.301
2.208
1.196
0.209
1.495
1.963
1.236
0.656
1.111
0.739
1.806
-0.112
0.053
0.006
0.128
0.027
0.098
0.121
0.004
0.059
0.027
1.143
0.438
1.5
2.169
1
1.054
1.006
1.137
1.027
2005.6
15
27.8
24.9
28.8
28.3
P<0.01
2006.6
2007.6
2008.6
2009.6
喫煙者全体における年間禁煙率(7日間断面)
2010.6
1.7倍
13.3
10
5.9
7.1
7.7
2005.6
2006.6
2007.6
8.4
77
7.7
2008.6
2009.6
P<0.001
0
40
30
(中医協 総会資料, 2010年6月)
1.3倍
35.8
23.0
0
5
0.212
-0.421
0.105
-0.302
0.591
2005年→2011年
年間禁煙試行率
20
禁煙試行者における禁煙率
25.6
13.5
10
25.5
30.9
17.4
29.3
18.0
27.2
11.0
禁煙治療やOTC薬を用いた割合
2006.6
37.3
1.4倍
16.6
11.1
0
2005.6
2010.6
P<0.05
2007.6
2008.6
P<0.01
2009.6
2010.6
(注) 年間禁煙試行率、年間禁煙率、禁煙試行者における禁煙率と禁煙治療やOTC薬を用いた割合は、それぞれの起点から1年後の割合を算出して計算した。
(平成23年度 厚労科学 第3次対がん研究 中村班)
2
禁煙行動に関する国別の比較
年間禁煙
試行率
禁煙試行者の禁煙継続率-禁煙方法別
禁煙試行者における各種禁煙支援の利用割合
禁煙補助薬の
使用割合
専門的な禁煙治療の
利用割合*
クイットラインの
利用割合*
アメリカ
38.2%
40.5%
12.3%
9.3%
カナダ
33.8%
46.3%
14.8%
7.2%
イギリス
30.5%
47.2%
17.2%
6.2%
フランス
23.9%
-
8.2%
2.8%
ドイツ
19.7%
7.9%
3.3%
3 2%
3.2%
日本
28.3%
16.6%
7.4%
-
韓国
49.0%
24.3%
12.3%
3.9%
3.9%
中国
18.3%
9.5%
-
オーストラリア
34.8%
43.4%
3.9%
9.9%
ニュージーランド
36.9%
25.2%
6.2%
12.2%
(注) 日本以外のデータはInternational Tobacco Control Policy Evaluation Project: FCTC Article 14 Tobacco Dependence and Cessation Evidence
from the ITC Project, 2010. http://www.itcproject.org/keyfindi/itccessationreportpdfより引用 (数値はDr.Borlandとのpersonal communication
により入手)
日本のデータは、厚労科学第3次対がん研究(中村班)による喫煙者コホート調査(2010年6月実施分)による。
*印で示した項目については、ドイツ、フランスは最近6ヵ月間の状況把握に基づく。
調査期間中(2005.6~2009.6)に禁煙試行を実施した668名の禁煙継続率の推移
- カプランマイヤー法による分析 (平均追跡調査 2.7年) -
100
(%)
禁煙治療の補正再喫煙オッズ比(自力との比較)
0.50 (95%CI: 0.26-0.99) DTSA法による解析
(注) 年齢、禁煙経験の有無、医療機関の受診と医師のアドバイスで補正
80
*
(一般化ウイルコクスン検定)
48.5 禁煙治療
(N=33)
40
31.0
39.7
1.保険適用の範囲や条件の拡大
・入院患者、若年者
・再治療、長期治療(特に精神疾患など禁煙困難症例)
・歯科の新設、施設要件の見直し(看護師の専任など)
2 健診と医療が連携した禁煙の推進
2.健診と医療が連携した禁煙の推進
・健診での禁煙勧奨の制度化→薬局・医療機関への紹介
・電話による無料禁煙相談(Quitline)
3.届出医療機関数の量的拡大と治療の質の確保
・インセンティブ(病院機能評価や診療報酬上の評価)
・指導者トレーニングの体制づくり;J-STOP
39.7
17.8
16.7
(N=572)
OTC(ガム)
20
39.7
自力
21.2
*
(N=53)
16.9
0
禁煙試行
直後の追跡調査
**
*
11.3
11.3
11.3
1年後
2年後
3年後
(厚労科学 第3次対がん研究 中村班)
(中村正和: 日本禁煙医師連盟通信. 20(1): 2-6, 2011)
禁煙支援・治療-今後の課題
p<0.05
** p<0.01
60
ニコチン依存症管理料の算定要件等の見直しならびに
「ニコチン依存症指導料」(仮称)の新設に関する要望書の提出
1.ニコチン依存症管理料の算定要件等の見直し
1)入院中の患者に対する適用拡大
2)未成年者等の若年者への適用範囲の拡大
)治療期間 延長
3)治療期間の延長
4)1年以内の再治療への保険適用拡大
5)専任看護師等の配置条件の緩和
6)歯科疾患の管理指導報酬における禁煙指導の重視
2.「ニコチン依存症指導料」(仮称)の新設
禁煙治療の意義
1.ニコチン依存症の治療
禁煙支援・治療の意義
2 たばこ病の予防
2.たばこ病の予防
3.治療中の病気の重症化予防
3
喫煙が原因として占める割合(男性の成績)
わが国の死亡原因-男女計(2007年)
循環器 33,400
がん 77,400
呼吸器 18,100
128,900
喫煙
103,900
高血圧
運動不足
高血糖
食塩摂取
飲酒
ヘリコバクターピロリ感染
高LDLコレステロール
C型肝炎ウイルス感染
多価不飽和脂肪酸の低摂取
過体重・肥満(高BMI)
循環器疾患
悪性新生物
糖尿病
その他の非感染性疾病
呼吸器系疾患
外因
B型肝炎ウイルス感染
野菜果物の低摂取
ヒト・パピローマウイルス感染
ヒトT細胞白血球ウイルス1型感染
トランス脂肪酸の高摂取
0
20
40
60
80
100
120
140
死亡数 (1000人)
* 腹部大動脈瘤は60.3%
(Katanoda K, et al: J Epidemiol, 18: 251-264, 2008)
(Ikeda N, et al: PLoS Med. 2012; 9(1): e1001160.)
禁煙による肺機能の経年変化の改善
Lung Health Study
軽・中等度のCOPDを有する喫煙者(35-60歳 5,887人、11年間追跡)
1秒率70%未満かつ1秒量(予測値の割合)55~90%
1秒量
(FEV1)
1秒率
(FEV1%)
【参考】11年後時点で1秒量が予測値の60%未満の者の割合
通常ケア群38% 特別介入群10%
(Anthonisen et al, Am J Respin Crit Care Med 166: 675-679, 2002)
PCI 施行後患者の喫煙状況と死亡・再発リスク
2.5
2.08
2.0
1.76
相対危険度
1.5
1.0
1.34
1.28
1.21
1.00
非喫煙
PCI前に禁煙
PCI後に禁煙
喫煙
1.44
喫煙による動脈硬化のメカニズム
血管内皮の 凝固・線溶能
傷害
の亢進
1.00
0.5
0.0
全死亡
心筋梗塞再発
糖代謝障害
脂質代謝障害
対象: PCI成功患者5,437例
方法: PCI施行後の死亡、心イベントにつき平均4.5年にわたり追跡し、喫煙状況との関連を調査
Hasdi D, et al.:N Engl J Med 336:755, 1997
4
喫煙状況別にみた糖尿病の発症リスク
25のコホート研究のメタアナリシスの結果
喫煙によって動脈硬化が進行するメカニズム
1.喫煙の血管内皮への直接作用
一酸化窒素やプロスタサイクリンなどの血管拡張物質の産生低下
酸化LDLコレステロールの増加
2.0
1.44
1.23 (1.31-1.58)
2.凝固・線容系障害を介する作用
血小板凝集促進、フィブリノーゲンの増加
PAI-1の上昇を介した線溶系の抑制
上昇 介し 線溶系 抑制
(1.14-1.33)
1.61
1.29
(1.43-1.80)
(1.13-1.48)
1 00
1.00
1.0
3.糖代謝障害
炎症や酸化ストレス、膵β細胞障害を介するインスリン感受性の低下
※酸化ストレス→アディポネクチンの減少やTNFαの増加
交感神経の緊張による血糖の上昇
0.0
非喫煙者 禁煙者
4.脂質代謝障害
喫煙者
20本未満 20本以上
喫煙者
脂肪組織のリポ蛋白分解酵素の低下→TGの増加やHDLの低下
(Willi C, et al. JAMA 298: 2654-2664, 2007)
喫煙と心血管死亡リスクの関係
喫煙と蛋白尿の関係
(2型糖尿病患者,コホート研究)
(2型糖尿病患者,横断研究)
Ikeda Y, et al. Diabetes Res Clin Pract. 1997; 36: 57- 61.
Al-Delaimy WK, et al. Diabetes Care. 2001; 24: 2043- 2048.
喫煙とCKDの発症リスク
喫煙によるメタボリックシンドロームの発症リスク
(2型糖尿病患者,横断研究)
-追跡調査成績-
35-59歳職場健診受診者、男性 2,994名
2
* 統計学的に有意(p for trendも有意)
1.45*
1
1.00
1.59*
1 14
1.14
0
注1) 推定糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2をCKDと定義
注2) 糖尿病の罹病期間,グリコヘモグロビン(HbA1c),アルブミン尿,脂質異常で調整
De Cosmo S, et al. Diabetes Care. 2006; 29: 2467-2470.より一部改変
非喫煙者
1-20本/日
21-30本/日
※メタボリックシンドロームの定義はNCEP-ATPⅢによる
31本以上/日
(Nakanishi, 2005)
5
喫煙とメタボの組み合わせによる循環器疾患のリスク
特定保健指導における体重4%減少に対する喫煙の影響
6ヵ月後(N=2977)
4.84*
7.1
%
3.56*
2.07*
特性
11.9
%
2.09*
2.67*
※日本人40-74歳男女3,911例:12年間の追跡調査
多変量解析(年齢、飲酒、GFR、nonHDLコレステロールで補正)
☆メタボリック・シンドロームの定義はNCEP/ATPⅢによる
1.01(0.99-1.02)
BMI
26.1±2.6kg/m2
0.99(0.96-1.03)
1 94(1 45 2 60)**
1.94(1.45-2.60)
喫煙なし/あり
47.1%
1.28(1.05-1.55)*
飲酒なし/あり
25.1%
1.28(1.05-1.55)*
完了あり/なし
65.7%
1.43(1.19-1.73)**
支援レベル
81.2%
1.25(0.97-1.61)
(積極的/動機づけ)
* 統計学的に有意
(注) 完了ありとは動機づけ支援では6ヵ月評価ができた者、積極的支援では支援ポイントがA160以上、B20以上を満たした者
減量ステージの無関心期:「6ヵ月以内に改善するつもりはない」、その他:関心期「6ヵ月以内に改善しようと思う」、準備期
「1ヵ月以内に改善しようと思う」、実行期「すでにできてると思う」 **P<0.01、*P<0.05
現在喫煙および禁煙年数別にみた各習慣ありのオッズ比-男性
飲酒
1.00(0.83-1.22)
7 9%
7.9%
血液検査告知あり/なし
Higashiyama A, et al. Circ J 2009; 73: 2258-63
栄養バランス
27.5%
(無関心・関心期/その他)
66.7
7
%
1.00
1.00
49.3±6.2歳
減量ステージ
2.33*
多変量調整オッズ比(95%CI)
年齢
(平成23年度 厚労科学 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 津下班)
現在喫煙および禁煙年数別にみた各習慣ありのオッズ比-男性
N=4009
身体活動
N=4009
栄養バランス
栄養バランス
塩分
油脂
解析対象:現在喫煙N=1348、禁煙3年未満N=249、禁煙3~5年未満N=168、禁煙5年以上N=889、非喫煙N=1355
調整因子:『栄養バランス、塩分』;年齢、職業、身体活動、飲酒、『身体活動』;年齢、職業、食事スコア、飲酒、『飲酒』;年齢、職業、身体活動、食事スコア
p for trendの検定においては、現在喫煙者および過去喫煙者を解析対象とした
(Nakashita Y, et al: Japanese Journal of Health Education and Promotion. 19(3): 204-216, 2011)
エネルギー
解析対象:現在喫煙N=1348、禁煙3年未満N=249、禁煙3~5年未満N=168、禁煙5年以上N=889、非喫煙N=1355
調整因子:『栄養バランス、油脂、エネルギー』;年齢、職業、身体活動、飲酒
p for trendの検定においては、現在喫煙者および過去喫煙者を解析対象とした
(Nakashita Y, et al: Japanese Journal of Health Education and Promotion. 19(3): 204-216, 2011)
喫煙者において生活習慣の偏りが考えられる理由
生活習慣改善のドミノ倒し
ー健康生活への扉を開くー
1.健康意識が低いことの影響
2.ニコチン依存症の影響
健診の未受診
ストレス
ニコチンを補給するための喫煙行動を優先
→運動不足、食事の質の低下
依存性薬物の相互作用
→飲酒頻度や飲酒量の増加
3.喫煙による味覚・嗅覚への影響
→塩分摂取の増加、野菜・果物の摂取不足など
4.喫煙による抑うつ作用
→運動不足、食事の偏り
(Nakashita Y, et al: Japanese Society of Health Education and Promotion. 19(3): 204-216, 2011)
6
以上をまとめると、
1.喫煙は多くの病気と関係があり、
禁煙は健康の大前提といえる
2.喫煙していると、減量指導の効果など、他の生活習慣
の改善にも悪影響を与える可能性がある。
3 禁煙すると他の生活習慣の改善への波及効果
3.禁煙すると他の生活習慣の改善への波及効果
も期待できる。
特定健康診査における禁煙の勧奨・支援のための制度化に
関する要望書の提出
健診の場での短時間(1-2分間)の
禁煙介入の効果-断面禁煙率-
特定健診における禁煙介入の経済効果(累積)
したがって、禁煙を先送りせずに、まず禁煙から
取り組むことが大切である。
キーワードは 「禁煙ファースト」
高血圧者、喫煙者に対する特定保健指導について
健康改善の効果
(第3回健診・保健指導の在り方に関する検討会資料、2012年2月6日)
(朝日新聞、2010年9月29日)
(健保連: けんぽフォトニュース、第421号、2011年)
7
妊婦の喫煙と影響
★は妊婦本人が喫煙しなくても
周囲の喫煙だけでもリスクが
上昇することが明らかにされている。
日常診療等の場での
禁煙勧奨と治療の実際
(アメリカ公衆衛生長官報告書, 2004および2006)
日常診療や健診等の場
における禁煙推進
禁煙の効果的な声かけ
Brief advice(簡易なアドバイス)
1.禁煙の重要性を伝える
禁煙外来
禁煙の声かけ
薬局・薬店
※禁煙すべきであることを「はっきり」と伝える
※禁煙が「重要かつ優先順位が高い健康課題である」ことを強調する
※喫煙の健康影響、禁煙の効果について「個別的に」情報提供する
2.禁煙のソリューションを提案する
Ask (喫煙状況の把握)
Brief advice(簡易なアドバイス)
Refer (医療機関や薬局
の紹介)
Cessation support
(禁煙支援の実施)
禁煙の重要性を伝えるー健診の場
※自力で禁煙するよりも、禁煙補助剤や禁煙外来を利用した方が
「楽に」「より確実に」「費用もあまりかからずに」禁煙できる
ことを伝える
身近な情報を提供し、やる気にさせよう
たばこを吸うのはもったいない
•病歴:喫煙関連疾患
糖尿病、脳血管障害(脳梗塞、SAH)、虚血性心疾患
(異型狭心症を含む)、消化性潰瘍、COPDなど
•検査異常
脂質系(HDL↓、LDL↑、TG↑)、糖代謝(血糖↑)
脂質系(HDL↓
LDL↑ TG↑) 糖代謝(血糖↑)
多血症(RBC↑、Hb↑)、白血球増多(WBC↑)
※メタボリック・シンドローム
•自覚症状
呼吸器系(咳、痰、息切れ)など、喫煙関連症状
(注)何も該当しない場合の対応
(中村正和、他: 禁煙ファースト通信 No.1、:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、2010年)
8
身近な情報を提供し、やる気にさせよう
たばこを吸うのはもったいない
(中村正和、他: 禁煙ファースト通信 No.1、:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、2010年)
禁煙の補助剤や治療を受けると
①比較的楽にやめられる
■ 禁煙しようと思っている、または関心がある場合
「禁煙するなら禁煙の薬を使うと結構楽に、しかも確実に禁煙ができますよ。
私達は水曜日午後に禁煙外来を実施していますが、皆さん禁煙の薬を使っ
てうまく禁煙されています。しかも保険で禁煙治療が受けられるようになって
1-2ヵ月分程度のたばこ代で治療が受けられるようになりました。お知り合い
の医療機関や産業医の先生に相談して処方してもらって下さい。」
■ 禁煙に関心がない場合
「今のところ、禁煙に関心をお持ちでないようですが、今後禁煙しようと思われ
た場合に、これからお話しすることを覚えておかれるときっと役にたつと思い
ますよ。それは、禁煙する際には自力でなく、禁煙の薬を使うと、結構楽に禁
煙できるということなんです。私達は水曜日午後に禁煙外来を実施していま
すが、皆さん禁煙の薬を使ってうまく禁煙されています。しかも保険で禁煙治
療が受けられるようになって1-2ヵ月分程度のたばこ代で治療が受けられる
ようになりました。今後禁煙する時のために覚えておかれるといいですよ。」
健診の場での短時間(1分間)の禁煙介入の効果-断面禁煙率- 1年後断面禁煙率 -
②より確実にやめられる
禁断症状の強さ
つらい禁煙
禁煙の可能性が
禁煙補助剤で2~3倍アップ
指導を受けるとその内容に応じて3倍近くまでアップ
無理なく禁煙
(出典: U.S, Department of Health and Human Services.
Treating Tobacco Use and Dependence, 2008.)
(day)
2~3日
禁煙を手助けする薬剤の情報提供が重要!
禁煙
③あまりお金をかけずにやめられる
保険による禁煙治療とタバコ代の比較 (いずれも12週分の費用)
ニコチンパッチ (貼り薬)
12,820円
バレニクリン (のみ薬)
タバコ代 (1箱400円、1日1箱)
33,600円
VS
19,050円
(注1) 保険による禁煙治療の自己負担は3割として計算
(注2) ニコチンパッチは8週間、バレニクリンは12週間の標準使用期間として費用を算出
粗オッズ比(95%信頼区間)
1.53(0.62-3.78)
1.45(0.46-4.54)
補正オッズ比(95%信頼区間)
1.51(0.57-3.97)
1.30(0.40-4.19)
(出典: 禁煙治療のための標準手順書 第4版、2010)
やめたい人への
禁煙支援のポイント
Refer/Cessation support
【ポイント】
1.禁煙開始日を話し合って決める
2.禁煙実行にむけての問題解決カウンセリング
※禁煙にあたっての不安や心配事を聞き出して
解決策を一緒に考える(「傾向と対策」)
3.禁煙治療のための医療機関の受診や禁煙補
助薬の使用を勧める
※禁煙治療が受けられる医療機関のリストの提供
2.50(0.45-13.94)
3.17(0.43-23.69)
(注) 補正オッズ比は、年齢・喫煙本数で補正
(中村ら、平成21年度厚労省がん研究助成金 望月班)
AHRQ「たばこ使用・依存の治療ガイドライン」 (2008年)
禁煙カウンセリングの効果
【レビュー方法】
 1975~2007年の8700編の英文論文を対象
 一定の条件(*)を満たした論文について、35以上のテーマで
メタアナリシスを行い、ガイドラインの作成の基礎資料とした。
*選定条件:比例対照研究、禁煙開始日以降5ヵ月以上の
フォロ アップ、ピアレビュ の雑誌に掲載
フォローアップ、ピアレビューの雑誌に掲載
【結果】
2008年 Update
3分以内の禁煙アドバイスで禁煙率が1.3倍有意に増加する。 (第3版)
治療の1回あたりの時間、治療を行った総時間、治療に関わるスタッフの数に
それぞれ比例して禁煙率が2-3倍近くまで増加する。
有効なカウンセリング内容は、問題解決カウンセリングとスキルトレーング、
治療の一環としてのソーシャルサポート(医療者からの励ましや賞賛)である。
薬物治療と禁煙カウンセリングを組み合わせると、それぞれ単独に比べて効
果が高く、単独の場合に比べて禁煙率が1.4-1.7倍増加する。
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AHRQ「たばこ使用・依存の治療ガイドライン」 (2008年)
禁煙のための薬剤
禁煙の薬物療法の推奨
【レビュー方法】
 1975~2007年の8700編の英文論文を対象
 一定の条件(*)を満たした論文について、35以上のテーマで
メタアナリシスを行い、ガイドラインの作成の基礎資料とした。
*選定条件:比例対照研究、禁煙開始日以降5ヵ月以上の
フォローアップ、ピアレビューの雑誌に掲載
【結果】
医療用ニコチンパッチ
2008年 Update
第1選択薬
ニコチン製剤(1.5~2.3倍)、ブプロピオン(2.0倍)、バレニクリン(3.1倍)
第2選択薬
※有効性はあるが、副作用やFDA非承認
クロニジン(2.1倍)、ノルトリプチン(3.2倍)
併用療法
ニコチンパッチの長期治療+ニコチンガムまたは鼻腔スプレー(3.6倍)、ニコチンパッチ
+ニコチン吸入薬(2.2倍)、ニコチンパッチ+ブプロピオン(2.5倍)など
ニコチネルパッチ
ニコレットパッチ
入手場所
特徴
ニコチン依存症
ニコチンガム
薬局、薬店
短時間で禁断症状が抑えら
れる。間違ったかみ方をする
と胃の不快感が出やすい。
低~中依存の人向き
市販のニコチンパッチ
薬局、薬店
パッチを貼るだけで簡単。突 低~中依存の人向き
然の欲求に対処できない。皮
膚がかぶれることもある。
医療用ニコチンパッチ
医療機関
中~高依存の人向き
高用量のものが使え、24時
間貼るので、起床時も含めて
禁煙症状をより抑える。
内服薬
医療機関
ニコチンを含まない。服用中 中~高依存の人向き
に喫煙しても満足感が少なく
再喫煙しにくい。
(中村正和、日本経済新聞 夕刊、2010年2月6日掲載、取材記事より)
シガノンCQ
OTC用ニコチンパッチ
ニコチンガム
禁煙治療の薬剤の有効性- AHRQ 2008
禁煙補助薬の種類の特徴
名称
バレニクリン
ニコチンパッチ単独の効果との比較
→
→
→
(AHRQ,Treating Tobacco Use and Dependence 2008 Update)
添付文書改訂に対する解釈
1. 今回の改訂は、市販後の国内報告症例の集積に基
づいたものであり、コントロール群がないため、現在の
ところ因果関係は明らかではない。
2. 分母が特定できないので、正確な発生率も算定でき
ないが、これまでの国内の服用者総数は85万人と推
定されており、頻度は高くない(6人/85万人)。
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チャンピックスと同様の注意事項が添付文書に
書かれている薬剤
処方時の対応
1. 因果関係は明らかでないが、重大な事故の発生を防
ぐために、服用者に注意喚起を行うことが必要。
2. 自動車の運転等、危険を伴う機械を操作する喫煙
者には
者にはニコチン製剤等の別の方法を検討する。
チン製剤等の別の方法を検討する
3. チャンピックスを服用してどのような影響が出るか喫
煙者が理解するまで、運転および機械操作に対する
注意を与えるか、制限する(米国およびEUの添付文
書)。
PL配合顆粒 (総合感冒薬)
リン酸コデイン (鎮痛・鎮咳)
ブスコパン錠 (胃腸鎮痛鎮痙薬)
プリンペラン (胃腸薬)
インドメタシン坐剤 (鎮痛・解熱)
アタラックス-P (かゆみ、神経症に伴う不安・緊張・抑うつ)
(注) チャンピックスの場合は、標準服薬期間が12週間と比較的長いため、処方
にあたっては、その可能性を説明することが必要
禁煙後の体重増加を防ぐ-まず身体活動から始める
禁煙後の体重増加は一時的
禁煙すると、禁煙者の約8割に平均2kgの体重増加がみられます。しかし、禁煙2年目以降には体
重がさらに増加する傾向はなく、血糖や中性脂肪などの検査値の悪化も一時的であることがわかり
ました。体重が3kg以上増加した人は禁煙者の約4人に1人(27%)にみられましたが、5kg以上増加
した割合は禁煙者の7%と少数でした。体重増加の主な原因として、ニコチン離脱症状としての中枢
性の食欲亢進と、ニコチンによる基礎代謝の亢進作用がなくなることがあげられます。
図.禁煙後の体重変化-大阪府立健康科学センターの調査成績
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禁煙後の体重増加を抑制するためには、まず身体活動を増やすことから始めましょう。身体
活動の強度は中等度がおすすめです。身近にできる中等度の身体活動の具体例としては、速
歩、水中歩行、床磨き、風呂掃除、自転車に乗る、子どもと遊ぶ、庭の草むしり、ゴルフ、野球
などです。
禁煙後の体重増加を防ぐ-禁煙が安定したら食事に取り組む
禁煙開始から1ヵ月以上経過し、禁煙が安定してきたら、食生活の改善にも取り組みましょ
う。食べ過ぎないようにする、肉類や油料理などの高エネルギーの食事を減らす、間食を減ら
す 代わりに野菜や果物を増やす 飲酒量を減らす などがおすすめです 禁煙直後から食事
す、代わりに野菜や果物を増やす、飲酒量を減らす、などがおすすめです。禁煙直後から食事
制限を厳しくすると、タバコを吸いたい気持ちが強く出る場合があるので、注意が必要です。
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初年度
1年目
非喫煙者
2年目
喫煙継続者
新規禁煙者
3年目
4年目
禁煙継続者
(平成19年度 文部科学省 科学研究費補助金 中村班報告書)
(大阪府立健康科学センター、メタボリック改善プラン、テキストVer.6より作成、一部改変)
禁煙者を増やすためには
禁煙試行率 
包括的なたばこ規制の推進
•たばこ税の値上げ
•公共場所等の禁煙化
•広告禁止、警告表示強化、
•マスメディア・キャンペーンなど
+
朝日新聞、2012年1月23日
×
禁煙成功率 
有効な治療法の利用の促進
①医療従事者からの働きかけ
②クイットラインの整備
③アクセスの向上と適用拡大
•マスメディア・キャンペーン
(治療の必要性の啓発)
①医療従事者からの働きかけ
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やめたい多くの人が禁煙できるために:
保健医療としてできること
禁煙治療の面白さ
1粒で2度だけでなく何度もおいしい
命を救える
ステップ1.保健医療従事者からの禁煙の声かけ
喜ばれる
→制度としての不十分(諸外国に比べて実施率が低い)
ステップ2.気軽に利用できる無料電話相談(クイットライン)の整備
→全くなし(アジアを含めて諸外国で多くの国で整備済み)
効果がみえる
行動理論の
理解も深まる
ステップ3.禁煙保険治療へのアクセスの向上と適用拡大
→保険適用がされたが、改善必要
適用外; i)入院中の新規患者に使えない ii)若年者に使えない
iii)歯科で使えない ⅳ)12週間しか使えない、など
登録医療機関も1割と十分でない
指導技術のブラッ
シュアップにつながる
ヘルスプロモーション
のあり方もみえてくる
日本禁煙推進医師歯科医師連盟
J-STOP 指導者トレーニングプログラム
種類
参考教材
特定健診・特定保健指導における禁煙支援
脱メタバコ支援マニュアル
はじめに
第Ⅰ部 メタボリックシンドローム対策に禁煙は必須!
1. 喫煙は動脈硬化を促進する独立した要因
2. 喫煙とメタボリックシンドローム・糖尿病との密接な
関係
3. 禁煙による健康面と経済面のダブル効果
4. 禁煙後の体重増加と検査値への影響
第Ⅱ部 特定健診・特定保健指導における禁煙支援
の取り組み
1. 禁煙についての情報提供
2. 禁煙をテーマとした動機づけ支援・積極的支援
3. 減量をテーマとした動機づけ・積極的支援における
禁煙の情報提供
大阪府立健康科学センター
のホームページで公開
用途
学習内容
対象
禁煙治療版
禁煙外来
「禁煙治療標準手順書」 医師やコメディカル
に準拠した禁煙治療
禁煙治療
導入版
日常診療
短時間でできる禁煙の
動機づけや情報提供
医師やコメディカル
薬局・薬店の薬剤師
禁煙支援版
健診や人間ドック
各種保健事業
短時間でできる禁煙の
動機づけや情報提供
禁煙カウンセリング
地域や職域の保健指導者
小冊子「糖尿病の治療も予防も、
禁煙が大切です」
治療編
喫煙は糖尿病患者の治療を妨げ合併症を増やします
• 喫煙は、糖尿病患者のインスリン抵抗性を悪化させます
• 糖尿病の喫煙者では総死亡や心血管死亡のリスクが高ま
ります
• 喫煙は、腎障害をさらに悪化させます
• 喫煙はその他の糖尿病合併症も進展させます
• 海外では、すでにADAやIDFにより糖尿病治療における「禁
煙の重要性」が指摘されています
予防編
喫煙は、糖尿病発症の危険因子です
• 喫煙により、糖尿病の発症リスクが高まります
• なぜ、喫煙は糖尿病発症リスクを高めるのでしょうか?
禁煙導入編
糖尿病患者では、特に体重を増やさない工夫が必要です
• 患者さんには、禁煙の重要性が十分に認識されていない
可能性があります
• 糖尿病患者の禁煙介入にあたっての留意点は、禁煙後の
体重増加と抑うつです
• 禁煙による体重増加の原因について
• ニコチン製剤は、禁煙時の体重増加を抑制します
(中村正和 編著: 小冊子「糖尿病の治療も予防も、禁煙が大切です」、ノバルティス ファーマ株式会社、2011年)
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禁煙治療のための標準手順書
改訂第4版 (2010年4月)
禁煙外来ベストプラクティス
Ⅰ.禁煙治療の現況
【目次】
I. はじめに
Ⅱ.禁煙外来の実際 (33施設)
II. 禁煙治療を始めるにあたって
III. 禁煙治療の流れ
IV 禁煙治療の方法
IV.
禁煙治療プログラムの説明とスクリーニング
標準禁煙治療プログラム
入院患者または入院予定患者に対する
禁煙治療の留意点
V. 禁煙治療に役立つ帳票
VI. 禁煙治療に役立つ資料
本手順書は、日本循環器学会、日本肺癌学
会、日本癌学会及び日本呼吸器学会のホー
ムページでダウンロードすることができる。
妊産婦への禁煙支援教材
妊産婦用小冊子
~様々な場における禁煙治療・
禁煙支援の取り組み~
 診療所 (5施設)
 一般病院 (8施設)
 精神科 (3施設)
 小児科 (1施設)
 産婦人科 (1施設)
 健診機関 (4施設)
 職域 (9施設)
 歯科 (2施設)
Ⅲ.巻末資料
日経メディカル開発、定価3,000円+税
対象者の主体性を重視した面接方法の手順
妊産婦用マニュアル
ラポールの確立
「禁煙支援ブック」
話し合い事項の
設定
■ テーマ選択
■ 単
単一テーマ
テ マ
重要性と自信の
アセスメント
重要性の
強化
(財)母子衛生研究会発行
大阪府立健康科学センターの
ホームページで閲覧可
( Rollnickら著「健康のための行動変容」
法研、2001年)
レジスタンスの低減
情報交換
「ママと赤ちゃんとたばこ」
自信の
構築
目標設定とフォローアップ
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