Slide 1

日本語を考える
Introduction to Japanese
Linguistics
日本語史 (3)
日本語文法の歴史的変遷

「文語文法」(平安時代の文法) から現代日本語
文法への変化



活用体系の変化
助動詞類の入れ替わり
格助詞の規則的な使用
活用体系の変化

口語文法における用言の分類

動詞



五段活用, 上一段活用, 下一段活用, カ行変格活用, サ行変
格活用
形容詞
形容動詞

書く (五段動詞) (口語)


語幹: 書
語尾:






未然形: か, こ
連用形: き, い
終止形: く
連体形: く
仮定形: け
命令形: け
書かない, 書こう
書きます, 書いて
書く
書くとき
書けば
書け

見る (上一段動詞) (口語)


語幹: φ
語尾:






未然形: 見, 見よ
連用形: 見
終止形: 見る
連体形: 見る
仮定形: 見れ
命令形: 見よ
見ない
見ます
見る
見るとき
見れば
見よ

文語文法 (古典文法) における用言の分類

動詞


形容詞


四段活用, 上一段活用, 上二段活用, 下一段活用, 下二段
活用, カ行変格活用, サ行変格活用, ナ行変格活用, ラ行変
格活用
ク活用, シク活用
形容動詞

ナリ活用, タリ活用 (タリ活用は漢文訓読体にのみ用いられ
る)

書く (四段動詞) (文語)


語幹: 書
語尾:






未然形: か
連用形: き
終止形: く
連体形: く
已然形: け
命令形: け
書かず
書きて
書く
書くとき
書けば
書け

見る (上一段動詞)


語幹: φ
語尾:






未然形: 見
連用形: 見
終止形: 見る
連体形: 見る
已然形: 見れ
命令形: 見よ
見ず
見て
見る
見るとき
見れば
見よ

起く (上二段動詞)


語幹: 起
語尾:






未然形: き
連用形: き
終止形: く
連体形: くる
已然形: くれ
命令形: きよ
起きず
起きて
起く
起くるとき
起くれば
起きよ
(中世)
 ラ行変格動詞が四段動詞化する
 二段活用の一段化が始まる
 終止形が連体形に吸収される
 ク活用・シク活用の区別が失われる
(近世)
 四段動詞が五段動詞になる (「書こう」のような
形式が生まれたため)
 ナ行変格動詞が五段動詞化する
 二段活用の一段化が進む
 「書けば」のような形式が、確定条件ではなく仮
定条件を表すようになる (已然形 > 仮定形)



五段活用
上一段, 下一段
カ変, サ変
(子音語幹動詞)
(母音語幹動詞)
(不規則動詞)
助動詞体系の変化
(文語文法における助動詞 (主要な語形・用法))
 受身: る・らる
 使役: す・さす, しむ
 断定: なり1・たり1
 打消: ず
 過去: き, けり
 完了: つ, ぬ, たり2, り
 推量: む, らむ, けむ, べし, めり, らし
 打消推量: じ, まじ
 伝聞・推定: なり2
 反実仮想: まし
 希望: たし, まほし
 比況: ごとし

変化が比較的小さかったもの




る・らる > れる・られる
す・さす > せる・させる
まじ > まい
たし > たい

連続しているが、語形・意味等が大きく変化した
もの





なり1 , たり1 > だ, である
たり2 > た
ず > ん, ない
む > う, よう
べし > べき(だ)

消失したもの








しむ (使役)
き, つ, ぬ, り (過去)
けり (完了)
らむ, けむ, めり, らし (推量)
なり2 (伝聞)
まし (反実仮想)
じ (打消推量)
まほし (希望)

新たに生まれたもの




らしい, ようだ (推量)
そうだ1 (伝聞)
です・ます (丁寧)
そうだ2 (様態)

現代の日本語は、平安時代の日本語と比較して
分析的な言い方 (複数の表現を組み合わせた
言い方) を多用する傾向がある。
(例)
 読まじ vs. 読まないだろう
 読みけむ vs. 読んだだろう
 読むべし vs. 読まなければならない