次世代育成支援対策推進法 がもたらしたもの (社)地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター 理事 藤 内 修 二 次世代育成支援対策推進法制定の背景 • エンゼルプラン,新エンゼルプランと少子化対策 に取り組んできたが,少子化は更に進行 合計特殊出生率 1.29 (2003年) 年金改革の前提である1.39を下回っている! • 保育サービスは数値目標に沿って,順調に整備 • 「健やか親子21」や健全育成などそれぞれの領域 でも取り組まれてきたが・・ • 虐待など子どもや親をめぐる課題はさらに深刻化 • 更なる総合的な取り組みが必要になってきた (平成15年7月9日成立) 次世代育成支援対策推進法の概要 我が国における急速な少子化の進行等を踏まえ, 次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ,かつ, 育成される環境の整備を図るため,次世代育成支 援対策について,基本理念を定めるとともに,国に よる行動計画策定指針並びに地方公共団体及び 事業主による行動計画の策定等の次世代育成支 援対策を迅速かつ重点的に推進するために必要な 措置を講ずる。 地域行動計画の策定プロセス(1) • 目標事業量(各種保育サービス)を算出するため のニーズ調査をコンサルタントに依頼して実施 国のモデル調査票通りにした 32.5% 母子保健担当と一緒に調査票を考えた 21.1% • 母子保健の「ニーズ」が把握できた自治体は一部 の自治体に限られる 地域行動計画の策定プロセス (2) • 計画策定の目的を確認するための議論をスタッフ間 で十分行った 13.1% • 母子保健担当と児童福祉担当がニーズ調査からの プロセスを協働で進めている 35.1% • 策定委員会(既存の組織を含む)を設置 84.5% • 作業部会(既存の組織を含む)を設置 47.8% 作業部会に育児サークル代表などが参加 13.9% • 母子保健計画の進捗状況の課題を検討した 32.1% • 策定において,重要視したことは・・ 保育サービスの充実 65.4% 親子のエンパワー 15.9% 地域行動計画の策定プロセス (3) • 14項目の目標事業量を国に報告 通常保育,延長保育 夜間保育,休日保育 子育て短期支援事業(トワイライトスティ) 放課後児童健全育成事業(学童保育) 乳幼児健康支援一時預かり事業(病後児保育) (派遣型,施設型) 子育て短期支援事業(ショートスティ) 一時保育事業,特定保育事業 ファミリーサポートセンター事業 地域子育て支援センター事業 つどいの広場事業 • 目標事業量だけでなく,アウトカムの指標を盛り込 む予定にしていたのは 14.1% 地域行動計画の策定プロセス (4) • 計画の基本目標の構成 策定指針通りの7つの柱 49.9% 住民の声や作業部会の意見に基づく柱 20.5% • 計画書の素案をコンサルが作成 71.4%の自治体がコンサルを活用 その8割は素案作りを依頼 • コンサルの素案や事務局案を策定委員会で承認 次世代育成支援対策交付金 • 平成17年度より,ほとんどの子育て支援に関する 補助金がこの交付金に移行 延長保育促進事業 保育所地域活動事業 乳幼児健康支援一次預かり事業・・・・ 各種の保育サービス 育児支援家庭訪問事業 育児等健康支援事業 食育等推進事業 思春期における保健福祉体験事業 交付金の算定基礎 • 8つの特定事業について,事業量や取り組み内容に 応じたポイントを設定して,交付金を算定 例:集いの広場事業 週3,4日実施の場合 1か所あたり 17.0ポイント 例:乳幼児健康支援一時預かり事業(定員4人以上) 1か所あたり 38.0ポイント 例:ファミリーサポートセンター事業 会員数300人相当 11.0ポイント 例:育児支援家庭訪問事業 年間延べ件数250~500件の場合 8.0ポイント 母子保健事業の位置づけ • 母子保健の取り組みは,「その他,創意工夫のある 取り組み」として算定される • この取り組みについてのポイントは児童人口(18歳 未満人口)で基礎点数が決められている 児童人口3000未満 3.0ポイント 児童人口1万人未満 (児童人口/1000)ポイント 児童人口1万人以上 10.0+(児童人口/1500) 「その他の取り組み」で,評価される事業 • 4/8以上実施すると,ポイントが加算(1.5倍まで) ①子育て支援について,地域住民や関係者がともに 考える機会の提供 ②老若男女の地域住民の主体的な子育て支援活動, 交流の促進 ③虐待防止ネットワークの設置 ④乳児健診未受診児など生後4ヶ月までに全乳児の 状況の把握 ⑤食育の推進 ⑥家庭内等における子どもの事故防止対策の推進 ⑦思春期保健対策等の推進 ⑧子育てバリアフリーの意識啓発等の推進 事後評価の結果も交付金の算定に反映 (18年度以降) • 実施計画どおりに適切に実施されたかどうかを 検証し,不十分な場合には減算 • 次世代育成支援対策推進協議会における協議 などにより,取り組みの評価を行い,改善すべき 点を翌年度の事業計画に反映させている場合に は,加算 交付金の落とし穴 • 交付金の算定につながる事業が優先される 算定ポイントの高い事業が最優先に • メニューにある事業だけやっていればいいの? • 地域のニーズではなく,国の意向に沿った取り組み しかできなくなってしまう • 交付金も過渡的な制度でしかない • 一般財源化されたときに,自治体の中で予算を獲 得できるようにしておくこと! 地域行動計画の推進に向けて • 住民と一緒に考える機会の提供 周知を兼ねた子育てフォーラムの開催 → 住民との「協働」を促す仕組みの検討 次世代育成支援対策地域協議会の活性化 • 保健,福祉,教育などとの連携を促す仕組みづくり 「次世代育成」という新しい概念が希求する 「総合性」を担保しよう • アウトカム指標を設定して,進行管理をしよう 成果(アウトカム)が何かを住民や関係者と確認 する作業が重要
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