イミダゾリウム 系イオン液体(3)ー CH3OH(2)溶液へのC

イミダゾリウム系イオン液体(3)ー
CH3OH(2)溶液へのCO2(1)溶解度と
溶解度モデル
法政大学 西海 英雄
化学工学会第46回秋季大会
九州大学 伊都キャンパス 2014.9.18
イミダゾリウム系イオン液体(IL)
(1-butyl-3-methylimidazolium
bis(trifluoromethanesulfony)amide)
溶解度の表現1 (P-x 図)
14
12
P {MPa]
10
IL=0
8
IL=.025
IL=0.074
6
IL=0.2
IL=1
Expon. (IL=1)
4
2
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
x1 [-]
0.5
0.6
0.7
0.8
モル基準では
イオン液体IL
がCO2の吸収
溶媒として適し
ているように見
える
溶解度の表現2 (P-C 図)
14
12
P [MPa]
10
IL=0(CH3OH)、 C10~P
8
IL=0.025, C1~P
I=0.074, C1~P
IL=.2, C1~P
6
IL=1
Poly. (IL=0(CH3OH)、 C10~P)
4
Poly. (IL=1)
2
0
0
2
4
6
8
C 1[mol/L]
10
12
14
濃度基準では
CH3OHがCO2の
吸収溶媒として
適しているよう
に見える
C[mol/L] と x[-]
x1 M 1
c1  solution [g/L]
 xi M i [g/mol]
i
• CO2がCH3OHのように似たサイズの溶媒に溶
けるときはほぼ C∝x
溶媒がILのように分子量(∝分子のサイズ)
が極端に異なるとxi ベースとCi では異なる傾向
を示すようになる。
CH3OHーIL溶液へのCO2溶解(x1-C1)
14
12
10
C1 [,mol/L]
IL=0 (CH3OH)
8
IL=0.025
IL=.074
IL=0.2
6
IL=1
Poly. (IL=0 (CH3OH))
4
Expon. (IL=1)
2
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
x1
0.5
0.6
0.7
0.8
溶解度の評価基準
• ガスを液で吸収する吸収液の評価基準:
気体吸収量 (溶解度)が大きい吸収剤が望まし
い。
• 溶解度表示は溶液単位体積当たりのモル数
[mol/L], あるいは質量[g/L] C1が大きい方が望
ましい。特に分子量の差が大きい場合は不可欠
である。
• P-x図より P-C図のほうが有用である。
→ 吸収液の開発には 溶液密度ρ [kg/mol] の測
定データが不可欠
塩析効果 Salting-out effect
発表者はすでに電解質を含む系三成分 ([3]FPE,2014)
の相平衡に関するモデルを提案した。本系では
1.溶解物質 (1:CO2類)
2.溶媒 (2:CH3OH)
3. 電解質 (3:イオン液体 IL )
において 電解質(3)の添加により(1)の(2)に対する溶
解度が減少することを観測した (Salting-out effect)。
これをモデル上で検証することが本発表の目的であ
る。
Solvation model
●
●
●
●
●
●
●
P● y1 (CO
2)
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
○
○
C1
○
○
○
○
○
○
○
C3 (IL)
○
C2
○
○
○
○
○
○
1.塩(IL:3)は不揮
発性で蒸発しない
2.CH3OH(2)は,IL
(3)に配位する
3. 溶解度は1(CO2)と
フリーCH3OH (1)
[会合したものを除く]
でのみ決まる.
そのため溶解度が
減少する.
溶解度 Sは次の2式で表すことができる
C10
S
C2
S
よって
C1
C2  N S C3
NS
C1
1 
C3
0
C1
C2
(2)
(3)
(4)
実験からのC1/C10 vs. C3の関係
1.1
◆: experimental
C1
 exp  h12 C3  (1)
0
C1
1.0
h12  0.271 [L/mol]
0
cCO2/cCO2
0.9
圧力によらず同じ
曲線上にのる
→ 塩析定数 h12 は
系に固有な定数のように
見える
0.8
CIL がわかれば任意圧
力における無次元溶
解度 C 1/C10がわかる
0.7
0.6
0.5
0.0
1.0
2.0
-3
cIL /mol・dm
3.0
4.0
配位数 Solvation number Ns
溶解度 モデルから
 NS 
C1  C 1 
C3 
 C2

0
1
(4)
一方実験式(1)をMaclaurin展開し、(4)式と比較すると
C1  C10 1  h12 C3 ・ ・ ・  (5)
すなわち
N S  h12 C2
(6)
配位数は溶媒(CH3OH)の濃度に比例する
C2=25 mol/L, h12=0.271 L/mol なので
Ns= 6.8
すなわち IL1つに7個のCH3OHが配位していることになる
C基準のh12は系固有の定数か
圧力依存性に
ついて
8
P [MPa]
6
ある圧力での成分比が
同じならば h12 は系固有
の定数となる
→
NS
C1
1 
C3
0
C1
C2
4
2
→配位はC2濃度のみに
よって定まる
0
0
2
4
6
8
C 1[mol/L]
10
12
14
モル分率基準ではh12は決められない
C1
 exp  h12 x3 
0
C1
は不可。Tejaは
溶解度の小さな
水系については
xベースで記述
したが
h12の温度依存性(フロン溶解度)
温度依存性は少なく
h12は系固有の定数と
みなせる
→配位数NsはC2濃度
のみによって定まる
N S  h12 C2
したがって、配位数は
溶媒濃度C2にのみ
比例し、温度あるいは
圧力の影響は受けない
とみなせる
Solvation numberとh12の関係
NaOH(3)存在下で
のフロン(1)のアル
コール(2)
への溶解度
大気圧下
溶媒(2)が同じならば
配位数はh12に比例する
3. 本モデルの適用可能な系への展開
1 (溶解ガス)
2 (溶媒)
3(電解質)
CO2
Diglyme あるいは
CH3OH
イオン化液体 IL
フロン類(CFC12,HFC-125,
HFC-32, HFC-134a)
アルコール類
(CH3OH,
C2H5OH, C3H7OH)
NaOH
VOCガス(アルコー 水(極性溶媒)
ル類、ケトン類、
芳香族炭化水素、
硫黄化物、塩化物)
Na2SO4, NaCl(h12 >0)
TEAB, TMAB(アンモ
ニウム塩: h12 <0)
Diglyme
ある圧力での成分比が
同じならば h12は系固有
の定数となる
diglyme
(diethylene
glycol dimethyl
ether)
Diglyme
1.2
C1
 exp  h12 C3 
0
C1
C2=0.5~2 mol/L
なので
Ns= 0.1~0.5 程度
0
CCO2/C CO2[mol/L]
1.0
h12  0.271 [L/mol]
0.8
0.6
◆: experimental
0.4
0
1
2
CIL [mol/L]
3
グループ寄与法によるh12の推算
下表は、フロンのアルコール-NaoHへの溶解度をグループ寄与法により
推算できることを示したものである。気体の水-塩への溶解度も推算可能である
(Nishiumi,Kodama, 2014, FPE参照)
Table 1 Setchenov coefficients for fluorocarbons in methanol-NaOH or ethanol-NaOH solution at
atmospheric pressure of a solute gas
contribution
solute
0.0449
C-Cl
0.0635
C-F
0.0657
C-H
-0.0962
0.0585
C-C solvent C-Hn*
-0.1195
C-C*
h [4]
[L/mol]
CFC12
2
2
0
0
1
0
0.267
0.275
3.2
HFC125
0
5
1
1
1
0
0.356
0.346
2.9
HFC32
0
2
2
0
1
0
0.300
0.317
5.7
HFC134a
0
4
2
1
1
0
0.362
0.348
3.9
CFC12
2
2
0
0
2
1
0.223
0.215
3.9
HFC125
0
5
1
1
2
1
0.276
0.285
3.1
HFC32
0
2
2
0
2
1
0.273
0.256
6.3
HFC134a
0
4
2
1
2
1
0.270
0.287
6.4
MeOH
EtOH
h from a literature [4]; hpred estimated by the group contribution method
* C-Hn : CH2= or CH3- number of alcohol, C-C: for alcohol
hpred
dev [%]
[L/mol]
なぜ本モデルが広い範囲に適用できるか
• (1)塩析定数h12は温度・圧力に寄らない。
0
C

C
• (2)数学的には 1 1 exp  h12 C3 
C1= (1の2に対する溶解度)
x(3による溶解度の減少)
と 分離関数になっている
→ 独立な現象
• 配位が単純な現象であることを示している。
• salting-in (溶解度の増加)では、電解質(3)と
液中の(1) あるいは(2)を含めた相互作用を
考慮する必要があろう。
ご清聴を感謝します
結び
• 塩析現象:不揮発性電解質IL(3)を含む液へ溶媒
CH3OH(2)の分子が配位する(吸着か)ことにより
引き起こされる溶解度CO2(1)の減少を本モデル
は説明できる.濃度C基準の本モデルは本系ば
かりでなく広い領域で適用できることが示された.
C1
 exp  h12 C3 
0
C1
NS  h12 C2
• 推算にはグループ寄与法が有効であり,イオン
液体での溶解度データの蓄積が望まれる.