TPPの概要① *TPPとは、環太平洋戦略的経済連携協定のこと。 ①当初TPPに参加していた国はニュージーランド・シンガポール・チリ・ブルネ イの4カ国。 つまり、もともとTPPはこれら4カ国が2006年に締結したEPAであった! →現在ではオーストラリア・マレーシア・ベトナム・ペルー・(カナダ・コロンビア …*)アメリカが参加交渉中、もしくは参加を表明。 ②「非関税障壁」を含む原則100%の開放 →ⅰ.例外なしの関税の撤廃(→FTA, EPAとの違いにつながる) ⅱ. 各国の様々なルールや仕組みの統一 *カナダ・コロンビアは資料によって記載されているものと記載されていな いものに分かれるので、ここでは()を付けました。 TPPの概要② ③TPPにおいて扱われる24分野 1.主席交渉官協議 2.市場アクセス(工業) 3.市場アクセス(繊維・衣料品) 5.原産地規制 7.SPS 6.貿易円滑化 8.TBT 11.知的財産権 4.市場アクセス(農業) 9.貿易救済措置 12.競争政策 10.政府調達 13.サービス(クロスボーダー) 14.サービス(電気通信) 15.サービス(一時入国) 16.サービス(金融) 17.サービス(e-commerce) 19.環境 20.労働 21.制度的事項 23.協力 24.横断的事項特別部会 18.投資 22.紛争解決 TPPの経緯と今後の予定 2006年:シンガポール、チリ、ニュージーランド、ブルネイによる 経済連携協定(P4)が発効 2010年3月:4カ国に米国、豪州、ベトナム、ペルーを加えた8カ国で P4を発展させたTPPの交渉を開始 10月:マレーシアが交渉に参加し9カ国に 2011年6月:日本が参加の最終判断(を下すものと見られていたが、3月11日の東日 本大震災の影響により、話し合いが一旦中断し、先送りとなっていた) 2011年11月:米ハワイAPEC首脳会議で交渉妥結 2012年6月:参加国による正式な合意 なぜ今TPPが取りざたされるのか 2010年6月:菅首相が鳩山首相の後任に選出 日中FTAを推進しようと試みる 2010年9月:尖閣諸島沖での中国漁船による衝突事件 →日中関係の悪化(国連総会での「廊下外交」「立ち話外交」) 2010年10月:菅首相の所信表明演説で登場(=日中FTAの代替案?) このころから徐々にTPPについての議論が盛んになっていく 2011年3月11日:東日本大地震 現在 2011年11月:米ハワイAPEC首脳会議での交渉妥結予定を目指す (もし日本が参加することが決定すればAPEC総会で野田首相がTPP参加を表明?) TPP以外に日本は貿易面で どのようなつながりを持っているか? *発効済みの協定 日本・メキシコ経済連携協定(2005年) 日本・チリ経済連携協定(2007年) 日本・ASEAN包括的経済連携協定(2008年) 日本・スイス経済連携協定(2009年) *交渉中の協定 日本・ペルー経済連携協定(交渉は完了) 日本・インド経済連携協定(交渉は完了) 日本・韓国経済連携協定 日本・GCC(湾岸協力会議)自由貿易協定 日本・オーストラリア経済連携協定 TPPとEPA, FTAとの違い① *FTA(自由貿易協定) =2国間で行われる関税撤廃・ルール統一交渉 *EPA(経済連携協定) =複数国間で行われる関税撤廃・ルール統一交渉 さらにFTAよりも広範なレベルでの連携を目指す (知的財産の保護・投資など) TPPはEPAの拡大版 ともいうべき多国間協定 TPPとEPA、FTAとの違い② 具体的に違う部分として挙げられるのは 1.例外なき関税撤廃 FTA、EPAでは自国にとって重要な生産品に関しては関税を撤廃しない(e.g. 日本の農産物) という例外の制定が認められていた →TPPでは原則として例外を設けずに、すべての関税が撤廃される方針 2.制度・分野のルール統一 →FTA、EPAで議論されていた制度よりも大きな枠組みでのルール統一がな される。 (e.g. 政府調達、知的財産についてのルールなど) TPPの功罪 ①TPPに加入することで得られるメリット ②TPPに加入することで被るデメリット ③TPPに加入しないことで被るデメリット ①TPPに加入することで得られるメリット *大手製造業 1.原材料の輸入、商品の輸出にかかる関税をはじめとするコストの低減 2.TPP加盟国へ進出する際のカントリーリスクの低減 3.工業製品の分業化が可能に *商社 1.関税撤廃と手続き簡素化によるTPP加盟国貿易の事実上の内国化 2.TPP加盟国との取引のカントリーリスクの低減 3.手続き簡素化に伴う取扱品目の増加及び物流にかかる時間の短縮 *大手小売業 1.域内雇用の流動により外国人の顧客が増える 2.TPP加盟国との取引でカントリーリスクが低減 3.手続き簡素化に伴う取扱品目の増加および物流にかかる時間が短縮 4.関税撤廃に伴う商品コストの減少 内閣府の試算 ー個別EPAの経済効果から見るTPP参加の効果ー 内閣府の資料では、 もし日本がTPPに 参加すれば、 10年間で0.48~0.65%、 実質GDP増加率に好影響を 与えるとしている。 ②TPPに加入することで被るデメリット *政府・地方自治体の取引企業 1.政府調達解放により、地方の公共事業などに海外企業が参加する 2.海外企業が労働者を自国から連れてきた場合、国内の雇用は減少する *農業 1.海外からの安い農産物輸入による自国農業の破たん 2.食糧安保、食の安全の危機 *労働者 1.外国人雇用の自由化による失業の危機 農林水産省の試算 ーもしTPPに 参加したらー *生産減少額で約4兆 5000億円の損失が発 生する(試算対象が、関 税率が10%以上かつ 生産額が10億円以上 の33品目の場合) *食糧自給率がカロ リーベースで40%から 13%まで減少する ③TPPに参加しないことで被るデメリット *韓国に後れをとる? 1.韓国は欧米諸国とのEPAを積極的に推進している →日本の産業に影響を与える? *アメリカとの関係の悪化? 1.アメリカは日本のTPP参加を強く要請している →アメリカにとってのTPPの目的の中心は日本? (現在参加を表明している9か国にもし日本が加わった際、 TPP参加国の中でアメリカに次いで2番目に経済規模の大きい国ということにな る) 経済産業省の試算 ーもしTPPに参加しなかったらー 経済産業省の試算 では、損失額は農 水省の試算よりも 大きくなっている →計算前提に注目 TPPに関する世論-推進派1.経済・貿易分野 *日本は人口減で内需拡大には期待できない →経済全体に占める輸出の割合をさらに高める必要がある。 *共通ルールの下での経済圏形成に中国を引き込むことが可能 *関税が撤廃されれば、消費者はメリットを享受できる *「ドーハラウンド」の枠組みによる話し合いでは各国の利害が対立し、 前進を図るのが難しい→EPAやTPPを進めるのが現実的な対応 *日本がTPPに参加しなければ、欧米とのEPAなどを積極的に推進する 韓国に後れを取るばかりになる TPPに関する世論-慎重派1.経済・貿易分野 *世界規模の自由貿易推進はWTO(世界貿易機関)の枠組みで進め るのが筋である。TPPはブロック主義的な流れを助長する *関税が撤廃されれば、北海道や沖縄の農業、周辺産業など地域 経済に壊滅的な打撃を与える *TPPに関する関税以外の分野の情報が政府やメディアから十分に 発信されていない *関税が撤廃されればデフレが深刻化する TPPに関する世論-慎重派-② 2.例外品目 *日本が各国・地域と個々に締結したEPAでは、例外品目が設けられている。 →TPPでは例外なし、ということになれば「二枚舌外交」になってしまう 3.農業 *農耕面積が米豪に比べると小さい・中間山地が多いため、大規模化・効率化 を進めても限界がある。→他国と同列に論じることはできない *関税を撤廃すれば、食糧自給率は現在の40パーセントから10パーセント台 に低下 →食糧自給率向上を掲げる政府の方針に逆行する。 4.デフレ *関税が撤廃されれば、デフレが深刻化する これらの議論を踏まえて、 現在の世論は? *2011年10月17日付 日本経済新聞・オンライン調査より 日本以外の国の選択-韓国*全世界へネットワークを広げている チリ・ASEAN・EFTA・シンガポール・インド・コロンビア・・・発行済み EU・アメリカ・ペルー・・・署名・妥結 カナダ・メキシコ・オーストラリア・ニュージーランド・トルコ・GCC(湾岸協力会議:オ マーン・サウジアラビア・UAE・バーレーン・カタール・クウェート)・・・交渉中 このように、韓国はFTA・EPAに非常に積極的である!!!また、FTA・EPAは小国間もしく は大国+小国で締結されるのが主流であったのが、大国間同士の交渉へと変化し てきている。 *2011年10月 アメリカとのFTA締結 →日本でのTPP参加の声が高まる要因の一つに 参考文献 *関岡英之 「国家の存亡-『平成の開国が日本を亡ぼす』-」 2011年5月 PHP新書 *広宮孝信 「TPPが日本を壊す」 2011年3月 扶桑社 *「週刊東洋経済3月12日号 TPP全解明」 東洋経済新報社 2011年 *TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク 「考えてみよう!TPPのこと」 http://www.think-tpp.jp/ *日本経済新聞HP http://www.nikkei.com/ *日本経済新聞 10月日号 日本経済新聞出版社 *論点 1. 日本はTPPに今加入すべきか? 2. 日本がもしTPPに加入しなかった場合、 生じると考えられるデメリットをどのように解決できるか? 3. 日本がもしTPPに加入した場合、 生じると考えられるデメリットをどのように解決できるか? 4. 将来的にTPPは経済協定からEUのような地域共同体に発展しうるか? 5.TPP交渉を通じてアメリカにはどのような思惑が見られるか?
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