1. 序章 - 農林水産省

平成 22 年度
1.
日中韓の自由貿易協定の調査・分析
農林水産省委託事業 自由貿易協定等情報調査分析検討事業
プロマーコンサルティング 2011 年 3 月
序章
1.1. 事業の背景と目的
1999 年の日中韓三国首脳会談における合意に基づき、2001 年より日中韓 FTA に関する三国
の研究機関よる共同研究が開始された。共同研究は 2008 年に第一フェーズを終了し報告書を提
出、その後 2009 年より第二フェーズとしてさらに貿易円滑化の問題等のより深い研究テーマを
掲げて共同研究を継続している。また、この成果を受けて EPA に係る産官学共同研究が開始さ
れ、2010 年 5 月に第 1 回会合開催、2012 年中にはそのとりまとめを行うことが想定されてい
る。今後の共同研究及び将来的な交渉に資するため、幅広く関連する情報の収集と整理、三国の
農業に対する影響分析を行うことを目的に、本事業の実施が企画された。
三国はいずれも FTA 締結に向けて積極的な姿勢を打ち出しており、日韓 EPA は交渉再開に
向けた協議に入っている。また、中韓 FTA は産官学研究が終了しており、今後交渉が開始され
る見通しである。EU、NAFTA、ASEAN 等の巨大経済圏が形成される中、今後アジア太平洋自
由貿易圏(FTAAP)の構築に向けた広域経済連携として、ASEAN+3(日・中・韓)
、ASEAN
+6(日・中・韓・印・豪・ニュージーランド)など域内経済統合に向けた動きが加速している。
経済関係の深い日中韓の FTA は実際の貿易や投資に直結することから、日本の産業界からもで
きる限りの早期妥結を目指すべきとの声が上がっている。
日本の 2009 年農林水産物輸入実績において、中国は米国に次ぐ 2 位で、日本の大幅な輸入超
過、しかも食肉や水産物調整品等の有税品目が多い。韓国からの輸入は 13 位であるが、同じく
大幅な入超で、有税品目が大半を占める。さらに 3 国は補完的というよりは、似た農業品目を
持って互いに競合しており、特にコメの問題が大きく立ちはだかる。また一方で、日本の平均的
な関税率は比較的低く抑えられており、特に鉱工業品の分野の関税は中韓に比べても低い。この
ことから、中韓両国と日本の貿易においては農産物のシェアが低いにも関わらず、中韓両国は日
本との EPA 交渉において農業分野で成果を得ることへ大きな興味を抱いている。日本の EPA
交渉においては多くの場合で農林水産物分野が焦点の一つであったが、日中韓では一層難しい課
題になることは間違いなく、締結の是非の判断には慎重な態度が必要であり、また仮に交渉開始
となった場合には仔細な品目別の検討を行わなくてはならない。
また反面、日本の 2009 年農林水産物等輸出実績においても中国は 4 位、韓国は 5 位につけて
いるが、特に韓国はこれらの輸入に対して比較的高い関税を課している。日中韓 FTA の締結が、
将来的な日本の農林水産物等の輸出促進、そしてそれによる業界の発展に対して利益を与えるこ
とも考えられる。
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平成 22 年度
日中韓の自由貿易協定の調査・分析
農林水産省委託事業 自由貿易協定等情報調査分析検討事業
プロマーコンサルティング 2011 年 3 月
本事業においては、今後の三国共同研究及び将来的な交渉に係る検討に資するため、日中韓
FTA が日本の農林水産業に与える影響について、中韓の農林水産業の実態と政策、日中韓の貿
易実態と将来性、中韓の貿易政策と FTA 戦略、日中韓 FTA に係る定量的なシミュレーションの
比較、関税やその他の国境措置等について、多角的な観点から調査し、検討を行った。
1.2. 事業の調査・分析内容
上記背景と目的を踏まえて、事業の調査・内容を以下の 9 点とした。
①
日本、中国及び韓国の農林水産業及び農林水産政策、並びにこれらの比較分析(主要農
林水産物の卸売価格の比較を含む)
②
日本、中国及び韓国の産業構造、貿易状況及び貿易政策、並びにこれらの比較分析
③
日中韓 FTA を検討するに当たっての各国のセンシティビティ
④
中国及び韓国市場における日本農林水産物・食品のマーケティング調査及びその結果を
踏まえた需要予測
⑤
日本、中国及び韓国の EPA/FTA をめぐる状況、政策・戦略、並びに比較分析(既結 EPA/FTA
の内容や効果、交渉中及び共同研究中の EPA/FTA の状況等を含む。)
⑥
日中韓を 1 つの自由貿易圏とする日中韓 FTA を締結した場合の域内・域外の産業・貿易
への影響(日本の農林水産業等に与える影響の分析を含む)
⑦
⑥の場合と、日韓・日中・韓中で個別に EPA/FTA を締結した場合の域内・域外の産業・貿
易への影響との比較分析(日本の農林水産業等に与える影響の分析を含む)
⑧
日中韓 FTA に係るモノの貿易以外の観点についての分析・把握(農業投資や経済協力、
食料安全保障等)
⑨
日中韓 FTA に係る産官学共同研究及び将来的な交渉に向けた政策的インプリケーション
1.3. 報告書の構成
本報告書は以下のように構成されている。
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序章
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平成 22 年度
日中韓の自由貿易協定の調査・分析
農林水産省委託事業 自由貿易協定等情報調査分析検討事業
プロマーコンサルティング 2011 年 3 月
2.
中国の農林水産業と農林水産業政策
3.
韓国の農林水産業と農林水産業政策
4.
日中韓の農林水産業指標の比較
5.
日中韓の産業構造と貿易における農林水産業
6.
中韓の貿易政策、FTA 政策と農林水産業
7.
日中韓の農林水産物貿易に対する関税
8.
日本産農林水産物等の市場としての中国・韓国と日中韓 FTA
9.
日中韓、日韓、日中、中韓 FTA に係る計量分析のレビュー
10. 日中韓 FTA に向けた政策的インプリケーション
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