第5回ビジネスデスクレポート 「台湾市場へのアプローチ」

台湾市場へのアプローチ
2010. 8
台湾市場を捉えるには、まず、台湾と中国大陸との経済関係が昨今大きく変化している
点に注目すべきであると考えます。
今年 6 月、台中間の経済協力枠組協議(ECFA)が調印され、台湾側 267 品目、中国側 539
品目 合計 806 品目の早期の実施項目が決定し、2011 年 1 月から関税引き下げが段階的
に実施されることになりました。いわば台中間の FTA 実施であり、総額170億米ドル規
模を対象としており、ASEAN との FTA を超える規模になっています。
これは台湾側の高度化した産業基盤と、中国のコスト競争力・内需拡大が組み合わされた
両岸をまたぐ形のビジネスモデルが、更に ECFA により台中物流サービスが緊密化するこ
とで双方の経済的メリットは計り知れないものになることを示しています。
昨今の中国の労働コスト上昇問題は、電子産業分野などにおいても無視できない状況です
が、ECFA により、高度化した産業分野において台中協力体制での国際競争力とその存在
感はますます増大するものと考えらえます。
一部では、台湾製造業の空洞化及び失業率の増加を心配する声もありますが、諸外国と同
様に経済が高度化した台湾では、もはや後戻りできない時代の流れであると言えそうです。
この様な環境下において、日本から台湾市場へのアプローチはどのような視点から注意
して検討すべきなのでしょうか。以下の三点を挙げてみました。
(1)台湾と中国を同時に視野に入れること
(2)台湾系の多国籍型大企業との取り組み方法・つながりについて
例えば、鴻海グループ(FOXCONN)のような大企業は、台中の生産拠点で企画・設計
を継続しています。また、製造に関してもキー部品や精密部品製造は台湾で、労働コスト
のかかる組立ては中国で行うという使い分けをしながら競争力を高めています。更にベト
ナム等のより労働コストの安い国への工場進出を既に開始している動きも含め、このよう
な多国籍企業とのつながりを持つことで、彼らの進出先国へのアプローチが比較的容易に
行えることにもなります。
(3)高度化した先端技術、精密部品製造機械、精密部品・原料、精密検査機器等の商材提供
物作り技術の卓越した台湾メーカーへは、彼らが絶対に作らない・作ろうとしない技術・
製品の販売を検討することが重要なキーと言えるでしょう。