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医療経営で知っておくべき知識
税理士
9/30/2015
田添 正寿
1
Ⅰ 病院運営実態
16年6月中の1病院当たり外来患者数
(出典:全国公私病院連盟)
図 1 6月中の1病院当たり患者数、入院・外来別の年次推移
15,000
単位:人
13,000
14,603
13,425 13,185
13,729 13,963 13,988
14,184
12,699 12,701 12,565
11,000
外来患者数
入院患者数
9,000
7,000
6,538
6,631
6,736
6,653
6,733
6,765
6,650
平7
8
9
10
11
12
13
6,975
7,161
6,970
14
15
16年
5,000
9/30/2015
2
患者1人1日当たり診療収入
(出典:全国公私病院連盟)
図2 患者1人1日当たり診療収入、入院・外来別の年次推移
36,000
単位:円
28,000
27,519 28,199
29,458
32,746 33,018 32,569
31,699
30,909
34,154 34,806
入院
20,000
外来
12,000
8,797
8,960
9,113
8,757
8,755
8,480
8,480
8,647
9,043
9,097
平7
8
9
10
11
12
13
14
15
16年
4,000
9/30/2015
3
100床当たり総収支差額および医業
収支差額の状況
(出典:全国公私病院連盟)
図3
100床当たり総収支差額、医業収支差額別の年次推移
△ 4,000
単位:千円
△ 4,748
△ 6,000
△ 5,462
△ 6,449
△ 8,000
△ 7,529
△ 7,247
△ 7,906
△ 8,069
△ 9,042
△ 10,000
△ 9,784
総収支差額
医業収支差額
△ 12,000
△ 11,953
△ 14,000
平12
9/30/2015
13
14
15
16年
4
図4 100床当たり医業費用、給与費、材料費の年次推移
150,000
単位:千円
医業費用
給与費
材料費
134,510 137,086
139,823 139,279
136,906 137,943
140,197
130,255
120,000
125,946
123,091
90,000
62,184
64,531 66,386
71,902 72,314 71,981 71,461 72,043
68,621 70,552
60,000
39,075 38,572 39,579 40,101 39,889 39,880 37,973
36,472 36,906 37,601
30,000
平7
9/30/2015
8
9
10
11
12
13
14
15
16年
5
図5 100床当たり医業収入、入院収入、外来収入の年次推移
150,000
医業収益
入院収入
外来収入
単位:千円
124,619
120,000
117,257
127,365
135,075
133,817
127,122
130,696
133,748
119,827
90,000
68,951
130,673
71,508
74,361
77,567
83,854
80,662 83,710
82,299
85,467
87,070
60,000
43,680 43,649 45,163 44,395 44,451 44,900 43,864
40,182 40,634 41,727
30,000
平7
9/30/2015
8
9
10
11
12
13
14
15
16年
6
表32
(出典:全国公私病院連盟)
常勤職員1人当たり平均給与月額
(金額単位:千円)
年
(1)
(2)
総
医
数
次
師
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
看 護 師
准看護師
看護業務
薬 剤 師
その他
事務職員
補 助 者
(歯科医含)
の医療
(9)
技
能
労務員
技術員
(
平成12
総
数
)
422
995
361
373
222
396
377
363
295
13
424
998
364
373
221
405
379
362
293
14
423
995
364
368
218
404
380
365
292
15
419
975
357
367
217
404
374
357
298
417
973
356
363
214
402
367
352
288
7
16
9/30/2015
6月1カ月分の総収支差額からみた黒字
・ 赤字病院の数の割合(%)年次推移
図6
7
30.3
69.7
8
30.4
69.6
9
30.0
70.0
10
11
27.1
72.9
31.4
68.6
12
35.4
64.6
13
33.9
66.1
14
15
16
年
9/30/2015
21.9
78.1
27.6
72.4
31.6
68.4
黒字
赤字
8
Ⅱ 医療経営


医療理念・経営理念
理念がなければ経営は衰退する。理念は組織
の要
理念 = 目的
医療理念 = 院長の医療に対する信条
= 院長の人間感、社会感を具現化したもの
例 ① 高齢化社会における老人医療への貢献
② 地球環境の悪化するなかでの健康問題
③治療から予防、そして健康増進へ
等々
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9
医療経営戦略
地域医療における自院の位置付け(ポジショニング)を明確に打ち出す。

競争に勝つための法則

ランチェスターの法則

戦略には強者の戦略と弱者の戦略がある

戦いは局地戦と確率戦とを区別してやらなければならない

一点集中攻撃こそが最大の成果をあげること

勝負は敵と味方の力関係で決まる

敵との差別化が勝負を決める要因になる



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ナンバーワン主義
勝ちやすきに勝つ
一点集中主義
10
競争戦略の種類
競争戦略の種類 ポーター
 差別化戦略
 低コスト戦略
 集中戦略
具体的戦略を打ち出す。
 顧客管理体制の強化
 PR・広報活動
 地域活動への参画
 医療講習会の開催
 小児向けの母親教室の開催
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等々
11
Ⅲ 収支計画

収支計画
 年度始めの計画において、入院件数、外来件数、外来延
患者数をどの程度見込み、診療収入を確保できるの
か?
 人件費にどの程度の資金を費やすのか
 減価償却は、定額法か定率法か
 借入れ返済は、元金均等返済か元利金等返済か
 固定費はどのくらいあるのか
 資金繰りにつまらないための自己資金がどの程度確保さ
れているのか
 税法上の措置法の適用方法をあやまらないように。
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12
減価償却費









建物、車両、機械などの資産を取得するために支払った費用(取得価
額)は、そのまま必要経費にするのではなく、これらの資産の種類、構
造、用途などの別に耐用年数を基として計算した減価償却費をその年
分の必要経費にします。
計算方法
定額法
取得価額X90%X耐用年数に応ずる償却率X事業に使用した月数
/ 12
例 取得価額 5、000、000円 耐用年数 5年 償却率 0.200 事
業に使用した月数 12ヶ月
5、000、000円 X 90% X 0.200 X 12 / 12 = 900、000円
定率法
(取得価額―平成16年末までの減価償却費の累積額) X 耐用年
数に応ずる償却率 X 事業に使用した月数 / 12 = 減価償却費
例 取得価額 5、000、000円 耐用年数 5年 償却率 0.369 事
業に使用した月数 12ヶ月
5、000、000円 X 0.369 X 12 / 12 = 1、845、000円
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13
繰延資産の償却費

開業費や試験研究費、開発費等の費用は、繰延資産とし
てその支出の金額をその効果の及ぶ年数で除した金額を
必要経費にします。
計算方法
繰延資産の支出額 ∻償却期間の年数 X 償却期間の月
数 / 12 = 償却費

(注)開業費、試験研究費、開発費等特定の繰延資産につ
いては、上記算式によらず、その支出した金額のうち任意
の金額を償却費としてその年分の必要経費にすることもで
きます。
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14
よきパートナーの存在


パートナーとなるべき専門家は?



法的トラブル、契約書の整備 弁護士
会計・税務・経営指導
税理士
雇用管理指導
社会保険労務士
等のパートナーがいるか?
医療分野に十分精通している者か?
いつでも相談しやすい体制にあるか?
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Ⅳ 収支改善のポイント
1.病院事業の分析
外部環境分析
・規制環境
・病院の診療圏の医療需要
・競合先、提携先の医療・介護機関につい
て調査、分析
↓
調査結果に基づき、病院の診療圏における将
来のポジショニングを明確にする
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2.内部環境の分析
病院の内部評価分析
・診療科毎に外来、入院別の患者数や診
療単価の調査
・人的資源の調査
医療法による配置基準を満たしているか
社会保険診療報酬上の各種届出を満た
しているか
各職種別の職員数が業務量と比較して適当な
配置になっているかどうか
↓
統計データと比較
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病院財務の分析
1.正常収益力の把握
・過去の財務諸表等の分析
異常な会計処理
特殊な原因に基づく一時的な収入増減
異常な外部との取引等
を把握する
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2.実態貸借対照表の作成
・退職給付債務の積立不足
・故障したままの医療機器等の遊休資産
・回収困難な長期売掛金等
・診療報酬の不正請求等による払い戻しの
可能性のあるもの
・過去の税務申告で追徴課税の可能性のあ
るもの
等を把握する
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経営者及び経営陣の資質の見極め
経営者、院長の経営能力の不足はないか?
↓
・事業計画を実行する能力があるのか
・医師の調達やコントロールが可能か
・病院のマネジメントが有効に機能してい
るのか
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20
病院分析結果の整理
経営不振に陥った原因を明らかにする
↓
・病院の将来の事業機会
・健在化・潜在化しているリスク
・病院の事業面での強み・弱み
・財務面から見た正常な実力
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Ⅴ 資金調達
企業間信用



外部金融

間接金融
借入
直接金融
医療機関債


資金調達源泉



利益留保

内部金融(自己金融)

減価償却






外部金融とは、病院外部から資金を調達することであり、それはさらに、直接金融、間接金融、
企業間信用に分類できる。
内部金融とは、自己金融ともよばれ、事業活動によって自ら生み出した資本による調達である。
利益留保と減価償却による調達。
直接金融とは、医療機関債(医療機関債)を発行して資本を調達する方法である。
内部金融とは、支払手形や買掛金による取引から生じる資金調達である。
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22




借入金
金融機関・政府系金融機関からの借入。
医療機関債発行
医療機関債は、返済義務のある資金の調達源泉である。医療機関債には、
担保の有無から、担保付医療機関債、無担保医療機関債に分類されるほか、
発行の方法から、額面発行、割引発行、割増発行に分類される。
診療報酬債権の流動化
レセプト請求から2ヵ月後に入金となる社保・国保の診療報酬債権を金融機
関等に譲渡する代わりに、現金として受取る
企業間信用
企業間信用とは、支払手形や買掛金による取引のことをいう。売買代金の
決済を行わず、一定期間経過後に行うことによって、買い手からすれば決済
資金の節約分だけ資金調達を行ったことになる。
利益留保
医療機関の決算の結果により計上された利益は、税金の支払い等の後、
次期への繰越しとなる。次期繰越利益は医療機関内に留保され、これが利
益留保による資金調達である。
減価償却
減価償却は、現金支出を伴わない費用の計上であり、減価償却相当額が病
院の内部に留保されることになる。
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1. 間接金融








政府系金融機関
・国民生活金融公庫
個人事業者や小規模法人等が対象
・小規模企業者等設備資金貸付制度
設備資金の2分の1を無利息にて貸付
・社会福祉・医療事業団
医療施設の建築費・内装費用を低利率(平成17
年4月現在1.5%程度)にて貸付

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公的融資のメリット・デメリット
メリット
 民間金融機関と比べ低金利である
 固定金利であるため資金計画が立てやすい
 比較的長期の返済である
 担保や保証人の要件が軽い
デメリット
 ・融資の決定までに時間がかかる
 ・必要書類が多く手続きが煩雑である
 ・緊急の資金手当てには不向きである

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


Ex.1
国民金融公庫の事業ローン
借入目的は、運転資金、必要資金は1,000万円







融資を引出すポイント
・運転資金は、借入決定額が少ないため、設備資金と運転資
金の併用で借入申込
・運転資金は、3ケ月分程度の人件費、薬剤仕入額等であり、
300万円から500万円程度
・設備の見積書を多めに作成してもらう
必要資金が1000万円であれば、申請は多めに1500万円
程度で申込む
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











Ex.2
創業支援融資
借入目的は、運転資金1,000万円、設備資金は1,000万円
融資を引出すポイント
・運転資金は、借入額が少ないため、設備資金と運転資金の併用で借入
申込
・運転資金は、3月分程度の人件費、仕入額等であり、300万円から500
万円程度
・設備の見積書を多めに作成してもらう
・創業支援融資事業計画書はすべてプラス的な要素を組み入れる。
・収支計画は、税引き後利益がプラスになるように。
・借入金返済計画表は、キャッシュフローが潤沢になるように記載する。

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


Ex.3
雇用創出支援資金
借入目的は、運転資金1,000万円





融資を引出すポイント
・決算書は、絶対にプラスにしておく。
・優遇利率(長期2.0%以内、短期1.1%以内)が
適用されているため、銀行側の利益を確保できな
いため融資については後ろ向き。
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





Ex.4
自治体利子補給制度
中小企業の振興を図るため、中小企業者の事業経営の安定向上を目的
とした融資あっせん制度を設けている。
自治体及び(財)中小病院センターが定める条件の範囲内で中小企業者
の方々に融資する。(財)中小病院センターが利子の一部を負担するため、
低利の融資を受けることができる。
借入目的は、設備資金。必要資金1,000万円
利子補給制度の利用を行う。自治体の補給率1%。






融資を引出すポイント
自治体または中小病院センターにて斡旋書の交付を受ける。
斡旋書さえあればほぼ融資の実行はOK。
役所であるため、丁重に。
指定金融機関へ。
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29

民間金融機関融資


借入金利
借入金の金利は、病院規模・取引内容・病院の業績・市場金利・借入期間
の長短・借入の形態等によってさまざまな要因によって決定される。


金利交渉・・・・・銀行の言いなりになりがちであるが、必ず交渉の余地あり

借入の種類
銀行の通常金利幅及び基準
当座借越
短プラ+0.125%~0.75%
短期資金
短プラ+0.125%~1.25%
長期資金1~3年
短プラ+0.3%
長期資金3~5年
短プラ+0.5%
長期資金5~7年
短プラ+0.75%
長期資金7年
超短プラ+1.0%






交渉の目安
短プラ+0.50%
短プラ+0.25%~0.50%
短プラ+0.30%~0.50
短プラ+0.50%~0.75%
短プラ+0.75%~1.00%
短プラ+1.00%前後


* プライムレートとは、銀行がもっとも信用度の高い優良企業に対しての貸
出金利をいう。短期プライムレートは、1年未満の貸出金利。


あくまで上記表は目安であるが、赤字でない限り、交渉すべきである。
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30
2. 医療機関債




1.医療機関債とは
「医療機関債」発行のガイドライン(平成16年10月25
日:厚生労働省医政局長)によると、医療機関を開設
する医療法人が、民法上の消費貸借として行う金銭の
借入に際し、金銭を借入れたことを証する目的で作成
する証拠証券をいいます。
↓
債券=資金調達をしようとする発行者がお金を借り
た証拠として利息の支払いや元本返済を約束して発行
する有価証券のことをいい、発行体の違いによって、
公共債(国債、地方債、特別債)、民間債(金融債、社
債等)、外国債に分類される。
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発行要件



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・発行に当たっては出資法、医療法その他法定に抵
触しないようにすること
・発行年度の前年度から遡って3年度以上税引き前
損益が黒字であるなど経営成績が堅実であること
が望ましい
・①負債総額100億円以上②1回あたりの発行価額
が1億円以上③購入人数が50人以上の場合は公
認会計士または監査法人による監査を受ける
32











9/30/2015
発行目的
資産の取得に限る
内部手続
・理事会、社員総会、評議員会の議決を得るこ
と
・自己資本比率20%以上を保つこと(特別医
療法人は30%以上)
発行時の情報開示
発行時点において発行要領、財産目録、貸借対照表、
損益計算書、事業報告書等を購入申込者に対して開示す
ること
33
発行条件



・利率等の条件は、1回の発行にあたり同一であ
るものとすることとし、一般の購入者と医療法人の
役員及びその役員の同族関係者との間で、差異
を設けてはならない
・購入者の範囲は医療法人の役員及びその役員
の同族関係者をはじめとする相互に特殊な関係
をもつ特定の同族グループに限定しない
・医療機関債の譲渡を制限する場合は、制限の
内容、制限下において譲渡する際に必要な手続
き等について、あらかじめ定めておくものとするこ
と
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利率
標準利率×2または標準利率+2%のいずれ
か低い方を上限利率とする(標準利率=
発行予定日2ヶ月前後の新発長期国債利回り
+1%)
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債券購入者との関係
・債券購入者に対して医療保険適用の診療
でメリットを与えてはならない
 ・債券購入者はその購入をもって法的に医療
法人の経営に影響を及ぼす立場にたつもの
ではない

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決算期ごとの情報開示
・債券購入者より財産目録、貸借対照表、損
益計算書、事業計画書、事業報告書等につ
いて閲覧を求められた場合、医療法人は閲
覧に応じなければならない
 ・開示の方法はホームページ等で公開するこ
とも認められる

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37
医療機関債発行のメリット

医療機関側










後払いの利払い形式で実質金利はぐんと低くなる
銀行借入等と異なり、毎月一定額を分割返済することなく償還期限ま
で全額を設備投資資金として活用することができる
支払利息は税務上で経費扱いになる
不動産などの物的担保がなくても募集できる
自己資本のように使え、さらに借り換えも可能
銀行借入と違い拘束預金は必要としない
金融機関からの格付け評価が上がる
利息は年1回(又は2回)なので、キャッシュフロー上も有利である。
金融機関が関わらないため、融資審査を受ける必要がない。また、手
数料や委託料がかからず、投資家に支払う金利負担だけで、発行可能
である。
公募債と異なり、有価証券報告書の作成を必要としないため、財務の
ディスクローズ面でなじみにくい病院でああっても発行可能である。
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医療機関債発行のメリット
債券購入者側
 銀行預金金利に比較して、一般的に金利が高く、投資と
して有利である
 自分の生命や健康を守ってくれる病院・病棟の建築に参
加、社会的貢献が目に見える
 病院長を始め、医師、看護師などの職員が身近におり、
投資によりその人々の雇用、就業にも役立つ
 債券購入者にとって、元本割れリスクは少ない
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医療機関債発行のデメリット

医療機関側





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債券の保全に不安が伴うので、応募する投資家がみつかるか不明
である。
元本返済不能になった際の保証がない
・担保付き医療機関債にするか
・信用保証協会の保証をつけるか
投資家誘引による債権保全のために保証制度を取入れると、保証に
よりコスト高が採算性を圧迫する
設備投資資金需要は長期であるが、医療機関債の償還期限は5年
であるので、5年目に償還資金が全額用意できるかどうか不明である。
償還資金が用意できない場合、借り換えが必要となるが、再度医療
機関債を発行して投資家が購入するかどうか不明である。投資家に
不安心理をおこさせないよう、5年間の十分なディスクローズが必要
である。
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医療機関債発行のデメリット

債券購入者側
会社が莫大な利益を出しても、株式配当や株
式譲渡益のようなハイリターンはない
 債務保証はなく、投資は自己責任である
 償還期間が長期であり、原則として譲渡制限の
ため長期間の保有が必要である

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3.診療報酬債権の譲渡による資金調達
医療機関
②診療報酬請求
①債権買取依頼
③買取金額支払
国保・社保
債権買取機関
④診療報酬振込
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診療報酬債権の譲渡による資金調達
システムの特徴
・報酬請求から支払いまで数日で現金化
通常請求から約2ヶ月かかる診療報酬の支払いを請求から数
日間で現金化することが可能
・負債を増やさず手元資金を増やす
このシステムは借入ではないため、貸借対照表の「負債」を増
やすことなく、手元の資金を増やすことが可能
・物的・人的担保不要
担保が不要なため、大切な担保は、銀行等からの借入が必
要になったときのために温存しておくことが可能
・低コストで資金調達
必要な資金は、報酬債権額に合わせて1.0%から5.0%程度
の買取手数料のため低コスト
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診療報酬債権の譲渡による資金調達
の留意点
・メインバンクの理解を得る必要
メインバンクに何も説明せずに独断でサービス
を利用した場合、関係悪化の原因になる可能
性あり
・契約内容の確認
債権買取機関が信用できるか、あるいは契約
内容に問題がないか、専門家の判断を仰ぐ
必要がある
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Ⅵ 設備の導入
買取かリースか?
リースとは、病院に必要な医療設備、コン
ピューターや車両等の設備をリース会社よ
り長期間に渡って賃貸すること。高価な設
備でも、月額のリース料の支払として分割
できれば、導入することが可能である。
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リース取引のメリット



設備調達の簡易化・迅速化
リースであれば、通常担保も必要なく迅速に設備の導入が
できる。
事務負担の軽減
減価償却費の計算、固定資産税の納付、利息の算定等事
務負担が軽減できる。
金利に左右されない
リース期間中のリース料は固定のため、借入金を変動金
利で借りたときのリスクを回避できる。低金利の時期にリー
スをすると効果大。
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リース取引のデメリット



借入に比べて割高である。
リースでは、借入による購入と比べて固定資産税、保険料、手数料等
が別途かかるため一般的には割高となる。
物件の所有権を取得できない
リース期間満了時に物件は所有者であるリース会社に返還される。再
リース料を支払い再リース可能。中途解約は原則として認められず、中
途解約する場合には、ほぼ全額に相当する解約金を支払う必要がある。
特別償却の恩恵が受けられない
リース物件のユーザーは、物件の所有者ではないため、所有者に認め
られている特別償却の税務上のメリットが受けられない。
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Ⅶ 節税策
節税策
資産の購入




10万円未満資産の購入
(小規模事業者に対する特例=30万円未満一括経費)

耐用年数の短い資産の購入
中古資産の購入

耐用年数






合理的に見積もった耐用年数
簡便法による耐用年数
法定耐用年数を全部経過したもの
法定耐用年数 X 20%
法定耐用年数の一部を経過したもの
(法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 X 20%

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退職金の積み立て





養老保険の加入により損金、1/2積み立て。
一定の年数経過満期返戻金受取り
長期平準定期保険の加入により損金、1/2積み立て。
一定の年数経過解約返戻金受取り






中小企業退職金共済の利用
従業員の退職金の準備資金として、国の共済である制度
を利用
掛金の1/3を契約月の翌月から2年間国が助成
退職金支給額は付加退職金が加算される


生命保険金の利用
小規模企業共済制度の利用
個人事業主及び会社の役員のための退職金制度
掛け金は全額所得控除のため、個人の所得税・住民税の
税率に応じた額だけ節税効果あり
退職金支給額は、積立額に付加退職金が加算される
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生命保険の活用



役員の生命・疾病等に対するリスクを会社
として生命保険契約をする。
個人であれば、生命保険控除には限度額
あり 法人は掛捨部分全額損金算入
保険受取時に、見舞い金または、弔慰金と
して損金に
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引当金の利用



貸倒引当金
期末債権の数%を経費に算入
法人の場合
個人の場合
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6/1000
55/1000
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理事報酬の改定



法人利益にかかる税金と、個人税金(所得税・法
人税)とを考慮した最低税額予測を試算
理事報酬額は、税務上の限度額の範囲内で


常勤理事の場合
非常勤理事の場合
非常勤の場合税務上の限度額が低いため、理事
の増加が可能であれば、理事追加登記を

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Ⅷ MS法人(メデイカルサービス法人)




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


MS法人とは、医療と経営の分離を目的とした診療業務以外の業務をす
べて担う法人を言います。しかしながら、実際には節税を手段として合法
的に目的を達成していくための法人であるといえます。
MS法人と医療法人(個人医院)との取引条件は、一般には次に示す範
囲内が相当であるといわれています。
リース取引
月あたりのリース料 = (原価 × 1.20~1.30)÷ (リース期間月数)
薬品
売価 = 原価 × 1.16~1.20
保険請求
手数料 = 請求額 × 2.8~3.0%



人材派遣(受託業務)
委託費 = 人件費 × 1.5~1.8%
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