術前評価と周術期管理 麻酔前の患者評価 医師‐患者関係を確立する 合併する内科的疾患を把握 周術期の麻酔管理戦略を立てる 麻酔計画についてのインフォームドコンセントを得る ↓ 周術期の合併症発生率低下と患者の不安を和らげる Ⅰ 病 歴 病 歴 原疾患の状態 合併する内科的疾患 使用している薬の把握 アレルギーと薬物反応 麻酔歴 家族歴 嗜好 器官ごとの評価 原疾患の状態 進行性の出血の有無 消化管狭窄(通過障害)の有無 頭蓋内圧の程度 肝予備能 心機能 NYHA 合併する内科的疾患 状態により周術期経過を複雑にすることがある 症状や兆候および最近の治療を把握し、器官ごとに 系統だてて評価(後述) 治療が不十分な場合、専門医にコンサルテーション 使用している薬の把握 原疾患や合併疾患の治療に用いられている薬物の 投与量や投与スケジュールを確認 降圧薬、抗狭心症薬、抗不整脈薬 抗凝固薬 抗痙攣薬 糖尿病薬 気管支拡張薬 ほとんどの薬物は手術時まで継続(抗凝固薬は止める) メ モ 心臓手術後、脳梗塞予防以外にも最近では深部静 脈血栓予防に抗凝固薬が使用されている症例が多 い 術前抗凝固薬はヘパリンに変更し、手術6時間前ま で投与する アレルギーと薬物反応 不快な反応、非アレルギー性有害反応、副作用と真 のアレルギー反応と区別 1. 2. 3. 4. 抗菌薬:サルファ剤、ペニシリン、セファロスポリンが起こし やすい 大豆油、卵黄抽出物に対するアレルギーがあれば、プロポ フォールは使用しない ハロタンやスキサメトニウムに対するアレルギー歴は悪性 高熱症やハロタン肝炎のリスクを示唆 リドカインなどのアミド型局所麻酔薬に対するアレルギーは 稀、プロカインのようなエステル型はアナフィラキシーをおこ しうる アレルギーと薬物反応 異常な薬物反応、副作用と真のアレルギーを区別 周術期に投与される多くの薬物により、不快な効果 (麻薬投与後の悪心・嘔吐、掻痒など)が起こりうる 麻酔歴 過去の麻酔記録をもとに情報を得る 1. 挿管困難はなかったか 2. 3. 4. 5. 6. 挿管に要した時間、気管チューブのサイズ 異常な薬物反応の有無 異常な発熱、循環動態の異常な変動 術中覚醒の有無 覚醒遅延の有無 術後長引く悪心・嘔吐(PONV) メ モ 術中覚醒のリスクファクター 患者側の因子: 心機能低下 薬剤耐性あるいはベンゾジアゼピン、アルコール、 コカインなどへの依存 気道確保困難、術中覚醒既往 術式 心臓外科、全身麻酔科の帝王切開、外傷、筋弛緩 薬を併用する手術 家族歴 麻酔合併症をおこした家族の病歴を評価 血縁者で、麻酔に対して異常な反応(発熱)を起こし た方はいらっしゃいますか? 嗜 好 喫煙 喀痰が多い場合は要注意 周術期肺合併症の可能性(無気肺など) 予定手術前の6~8週間の禁煙により、気道過敏性 の改善、術後肺合併症の減少 常習薬物とアルコール 麻薬、ベンゾジアゼピン系薬常用:麻酔薬、術後鎮 痛薬必要量の増加 アルコール禁断症状:重症高血圧、振戦、譫妄、て んかんを起こしやすく、麻酔必要量の著しい増加 器官ごとの評価 1. 最近の上気道感染症、喘息発作の既往 全身麻酔導入、覚醒時の気管支攣縮(喘息発作)、喉頭痙 攣 2. 冠動脈疾患 手術、麻酔のストレスによる心筋虚血、心不全、場合によ り心筋梗塞 3. 糖尿病 特に自律神経機能障害を伴う場合、無症候性心筋虚血、 胃不全麻痺、胃食道逆流 顎関節や頸椎の関節炎(滑膜のグルコシル化に起因)によ る挿管困難 器官ごとの評価 4. 未治療の高血圧 麻酔中の血圧不安定性 左室肥大があると、術後脳卒中、心筋梗塞などの発症頻 度の増加 5. 食道裂孔ヘルニア、幽門狭窄その他消化管通過 障害 誤嚥のリスクを高くする Ⅱ 身体所見 身体所見 バイタルサイン 頭頸部 前胸部 肺 腹部 四肢 背中 神経学的検査 バイタルサイン 身長、体重 薬物投与量、輸液量および適切な尿量の推定に有用 血圧 左右差に注意.左右差が大きい場合、胸部大動脈やその主 要分岐に病変があることを意味する 脈拍 調律、かん流(強さ)、拍動数の観察 呼吸 安静時の回数、深さ、パターンを観察 頭頸部 最大の開口程度 甲状軟骨‐オトガイ間の長さを計測 抜けそうな歯、抜けた歯のチェック 開口時の咽頭所見(Mallampatiスコア) 頸部の可動域 気管の偏位 前胸部、肺、腹部、四肢 心雑音、ギャロップや心膜摩擦音 喘鳴、ラ音の聴取 呼吸様式 呼吸補助筋の使用 腹部膨満、腫瘤、腹水の存在に注意 →胃内容逆流、換気障害の危険性 四肢筋委縮、筋力低下、末梢かん流不全、チアノー ゼ、紫斑の存在 Ⅲ 検査所見 検査所見 血液検査 心電図検査 胸部X線写真 呼吸機能検査 血液検査 Ht値、Hb値 麻酔前に必要な最低限のHt値については、一致した見解が ない 個々の症例で、貧血の原因と持続時間、基礎疾患について 評価 血小板機能 歯肉や小さな傷からの出血の多さ、出血傾向の家族歴から 評価 凝固系検査 出血傾向の病歴、アスピリンや抗凝固薬の服用肝疾患、重 症全身疾患などがある場合 心電図 冠動脈疾患のリスク因子を持つ患者では施行すべ き 不整脈の安定性の評価 45歳以上の男性と55歳以上の女性で行う 安静時心電図は潜在性の心筋虚血の診断におけ る感度は低い 胸部X線写真 ルーチンでの施行は推奨されない →結果が周術期管理に与える可能性は極めて低い 適応として 1.心疾患や呼吸器疾患を有する患者 2.50歳以上でハイリスク手術を予定されている 患者 呼吸機能検査 ルーチンでの施行は推奨されないし、その結果のみ で耐術能を決めてはいけない 適応として 1.COPDや気管支喘息の重症度評価 2.COPDや心不全を示唆する症状を有する患者 3.肺切除術を行う患者 Ⅳ インフォームドコン セント インフォームドコンセント 麻酔計画、別の方法、考えられる合併症について、 一般の人にも理解できる言葉で説明 麻酔管理上必要な行為(気管挿管、人工呼吸、侵 襲的モニタリングなど)は普通は経験しないことなの で、事前にわかりやすく説明 計画通りにいかない場合、臨床上の状況が変化し た場合には別の麻酔法へ変更の可能性を説明 麻酔管理に関するリスクを明らかにする 麻酔管理に関するリスク 区域麻酔;頭痛、感染、神経障害、局所の出血、薬物副作 用、十分な麻酔効果が得られない可能性と全 身麻酔へ移行の可能性 全身麻酔;咽頭痛、さ声、歯牙損傷、悪心・嘔吐、アレル ギー性薬物反応、術中覚醒、心臓、肺その他の 臓器障害、脳梗塞、死亡、術後の挿管・人工呼吸 輸血;発熱、感染性肝炎、HIV感染、溶血反応 血管カニュレーション;末梢神経障害、血管損傷、血胸、気 胸、感染 前投薬 前投薬の目的 1. 不安の除去 2. 気道分泌抑制 3. 有害な自律神経反射の予防 4. 疼痛閾値の上昇(鎮痛) ベンゾジアゼピン系薬 γ‐アミノ酪酸(GABA)の作用を促進し、不安の治療 に有効 ミダゾラム:1~3mgを筋注あるいは静注 短時間作用性のベンゾジアゼピン系薬 で、優れた健忘作用と鎮静作用をもつ ロラゼパム:1~2mgを経口投与あるいは静注 より長く続く健忘作用と術後の鎮静作 用をもつ 抗コリン作動薬 気道分泌抑制 主としてベラドンナ薬(抗コリン薬)を使用 ケタミン,バルビツレイト,サクシニルコリンなどを使 用する場合,気道,口腔内分泌が高まるため使用 オピオイド 疼痛閾値の上昇(鎮痛) 骨折などですでに痛みのある場合や麻酔維持の補 助的作用を期待する場合などに適応 患者が強い痛みを持っている場合を除き、前投薬と しては通常は用いられない 制吐薬 麻酔導入前や手術中に、術後悪心・嘔吐(PONV) を予防するために投与することがある PONVのリスク因子には女性、PONVや乗り物酔い の既往歴、非喫煙者、術後のオピオイド投与など これらリスク因子を少なくとも二つ持つ場合には、予 防的な投与を考慮する 胃分泌抑制薬 胃内容物の誤嚥のリスクが高い場合に用いる 誤嚥のリスクとは、手術直前の摂食、外傷、腸閉塞、 妊婦、胃の手術歴、腹腔内圧の上昇など リスク因子がない患者にルーチンに投与することは 推奨されない 麻酔中の諸問題 低血圧 高血圧 不整脈 低酸素症 低体温 高体温 喉頭痙攣・気管支痙攣 誤嚥 心筋虚血 肺塞栓 アナフィラキシー 低血圧 心収縮能、体血管抵抗、静脈還流の低下や不整脈 多くの麻酔薬は用量依存性の直接的な心筋抑制作用があ る。 麻酔中に用いられる多くの薬物は、体血管抵抗を低下する。 他、脊髄麻酔、硬膜外麻酔、敗血症、アレルギー反応も血管 抵抗低下の原因になる 不十分な静脈還流は、循環血液量減少、下大静脈圧迫、静 脈容量の増加、胸腔内圧の上昇などでおこる 高血圧 不十分な麻酔、低酸素症、高二酸化炭素症等に伴 うカテコールアミン過剰 既存疾患(本態性高血圧、褐色細胞腫) 頭蓋内圧亢進 血管収縮薬 大動脈遮断 β遮断薬中止による反跳性高血圧 膀胱充満 インジゴカルミン色素の使用(α刺激作用) 不整脈 1 洞性徐脈 心拍数60bpm未満の洞調律. 徐脈に伴い、心房や心室の異所性補充収縮、調律が生じ得る 病因:低酸素、内因性心疾患、迷走神経反射、頭蓋内圧亢進 など 洞性頻拍 心拍数が100bpm以上の洞調律. 調律は規則的で160bpmを超すことはまれ. 病因:カテコラミン過剰、痛み、浅麻酔、高CO2、低O2、循環血 液量減少、悪性高熱、褐色細胞腫など 不整脈 2 心ブロック Ⅰ度房室ブロック: PR間隔が0.2秒以上に延長したものをさす. すべての心房刺激が心室に伝えられる Ⅱ度房室ブロック: Mobitz Ⅰ型は通常、伝導障害が房室結節に存在場合に生 じ、段階的なPR間隔の延長の結果として、非伝導性のP波 を生じる Mobitz Ⅱ型は伝導障害が房室結節内かその遠位に存在し、 PR間隔は一定だが、ランダムな非伝導性P波を伴う Ⅲ度房室ブロックに移行しやすい Ⅲ度房室ブロック: His側より遠位の病変に伴う 房室伝導の欠如により特徴づ けられる.P波は規則的でQRS群とは独立(房室解離) 不整脈 3 上室性頻拍 His束またはその上位に由来 1.心房性期外収縮(APC) 洞結節から次の刺激が到達する以前に、心房内異所性 発火が生じる.P波の形、PR間隔が異なる 2.接合部調律、房室結節調律 P波の消失あるいは異常なP波と正常なQRS群を特徴と する.虚血性疾患を示唆する場合があるが、正常な患者 にも認める 3.心房細動 350~600bpmの不規則な心房調律、心室の反応は様々 4.心房粗動 250~350bpmの規則的な心房調律、鋸歯状波形が特徴 リウマチ性心疾患、MSに伴ってしばしば認められる 不整脈 4 心室性不整脈 1.心室性期外収縮 次の刺激が到達する前に、心室内異所性発火が生じるこ とによる.幅広いQRS群を特徴とする. カテコラミン過剰、低O2、高CO2に伴って認められる.心 筋虚血、ジギタリス中毒や低K血症を意味する場合もある 2.心室頻拍(VT) 心拍数が150~250bpmの幅広いQRS群を伴う頻脈性不 整脈.状態が不安定な場合、心肺蘇生とカルディオバー ジョンの適応 3.心室細動(VF) 無秩序な心室活動で、無効な心室収縮 除細動と心肺蘇生が必要 低酸素症 組織に対する酸素輸送が、その代謝需要を満たす うえで不十分な状態 低酸素症 病因: 1.不十分な酸素供給 2.低換気 3.換気血流不均等またはシャント 4.酸素運搬能の低下 5.Hb-酸素解離曲線の左方移動 低酸素症 治療: 1.100%酸素による換気 2.呼吸回路、人工呼吸器のリークチェック 3.気管チューブの閉塞、位置異常のチェック 4.分泌物除去(吸入ガスの加湿・加温、吸引) 5.PEEP 低体温 熱損失の原因(機序) 1.深部領域(心、脳など)から末梢組織(四肢、皮 膚)への熱の再分布 平均体温の維持を伴う深部温低下 2.熱放射 皮膚血流量と露出体表面積に依存 末梢血管の拡張により熱損失が増す 3.蒸発 粘膜やしょう膜の表面、皮膚、肺から水分が蒸発 するにつれて、エネルギーが失われる 露出面積と大気の相対湿度に依存 4.伝導 高温の物体から低温の物体への熱の伝達 露出面積と温度差、熱伝導率に依存 5.対流 移動している気体への熱伝導による損失 手術室内の速い空気流速は著しい熱損失をもたらす 低体温 合併症 1.心血管系 体血管抵抗の上昇、心室性不整脈、心筋 抑制 2.代謝 代謝率低下、組織かん流低下 3.血液 血液粘性上昇、Hb-酸素解離曲線の左方移動、 凝固障害、血小板機能低下 4.神経 脳血流量減少、脳血管抵抗増加、麻酔からの覚 醒遅延、傾眠、錯乱 5.薬物動態 肝血流減少、肝代謝低下、腎血流量とクリ アランス低下、MAC低下 麻酔必要量の低下 6.シバリング 熱産生を100~300%増加させるが、酸素消費 量を最大500%増加させる 低体温 治療 1.室温の維持と上昇 2.露出表面を覆う 伝導と対流による熱損失を最小限に 3.輸液、輸血の加温 4.低流量半閉鎖循環式麻酔 蒸発による水分損失を減少 5.加温加湿器(人工鼻) 肺からの蒸発により熱損失を 最小限に 6.加温ブランケット ブランケット内を循環する温水からの 熱伝導 7.洗浄液の加温 高体温 2℃/hrまたは0.5℃/15minの体温上昇をさす 高体温とそれに随伴する代謝亢進状態は、酸素消 費量、心仕事量、ブドウ糖需要の増加と代償的分時 換気量増加をもたらす 高体温 病因 1.悪性高熱症 周術期におけるすべての体温上昇に際し て考慮しなければならない 2.炎症、感染、敗血症 炎症性メディエーターの放出を伴う 3.代謝亢進状態 甲状腺中毒症、褐色細胞腫など 4.視床下部体温調節中枢の障害 無酸素症、浮腫、外傷、 腫瘍による 5.悪性症候群 まれではあるが、フェノチアジンなどの神経 遮断薬服用者は注意 6・交感神経作用薬 MAO阻害薬、コカイン、三環系抗うつ 薬などは代謝亢進をもたらす 高体温 治療 悪性高熱が疑われる場合 ・ ダントロレン治療を開始 重度の高体温に対し ・ 氷や冷却用ブランケット、室温低下などで露出 体表面の冷却 ・ 冷却した生食で体内洗浄(胃、膀胱、腸) ・ アルコールを皮膚に塗布すると蒸発による熱損 失を促進 喉頭痙攣 浅麻酔時の気道刺激により生じることが最も多い 有害刺激には分泌部や吐物、血液、刺激の強い吸 入麻酔薬、喉頭鏡操作、痛み刺激、浅麻酔時の腹 膜牽引がある 兆候:ヒューヒュー音、喘鳴 重篤例でシーソー様閉 塞性呼吸パターン 治療:100%酸素を投与しながら麻酔深度を深める 刺激を取り除く(吸引、末梢刺激を中止) 持続気道陽圧 少量のスキサメトニウム 気管支痙攣 喫煙者、慢性気管支炎患者以外にも、薬物や輸血 によるアナフィラキシー様反応でもみられる 喉頭痙攣同様、分泌物や気管挿管のような有害刺 激によって惹起される 呼気性の喘鳴がみられる 気道抵抗増大による換気困難 呼気流速低下→エアトラッピング→胸腔内圧上昇→ 静脈還流低下→血圧低下 治療:気管チューブ位置チェック、麻酔深度を深める、 薬物治療(β2刺激薬、抗コリン作動薬の吸入、静 注) 誤 嚥 全身麻酔は気道反射を抑制し、誤嚥を生じやすくさ せる 嘔吐や逆流による胃内容物の誤嚥は、気管支攣縮、 低酸素血症、無気肺、頻呼吸、頻拍の原因になる 症状の重さは誤嚥した胃内容物の量とpHに依存す る 誤嚥しやすい状態に、胃の流出路狭窄、胃食道逆 流、小腸閉塞、妊娠、重度の肥満、最近の食物摂取 がある 心筋虚血 心筋の酸素供給と消費の不均衡の結果として生じる 臨床的特徴 覚醒時:胸痛、呼吸困難、悪心・嘔吐、発汗、肩、 下顎の痛みなどで発症 全身麻酔下:血行動態の不安定性と心電図変化 心電図変化 1mm以上のST低下、急激なT波逆転は心内膜下虚血 を示唆 ST上昇は、通常貫壁性虚血に伴う 心筋虚血 治療 1.低酸素血症貧血の是正 心筋酸素供給を増加 2.β遮断薬 心拍数と心収縮性を低下させ、酸素消費量を 減少.心拍数減少により拡張時間を延長させ、冠血流量 を増加(心筋酸素供給量増加) 3.ニトログリセリン 静脈拡張により、心室拡張期圧と容積 を減少させ、結果として心筋酸素消費量を減少させる. 側副冠血流量を高め、酸素供給を改善 4.フェニレフリン、ノルアドレナリン 心筋かん流圧を改善する 5.心原性ショックではカテコラミン(陽性変力作用薬)の適応 6. アスピリン投与、ヘパリン治療、血栓溶解療法、PCI、 CABGが必要な場合もある 肺塞栓 血栓や空気、脂肪、羊水による肺血流の閉塞 血栓塞栓症は、その多くが骨盤や下肢の深部静脈 血栓に由来 血栓形成の誘因: 血流停滞、凝固亢進、血管壁異常 合併しやすい状態: 妊娠、外傷、長期臥症、癌、血管炎 肺塞栓 検査所見: 心電図(非重篤例):非特異的な頻拍 (重篤例):右軸偏位、右脚ブロック、 前壁誘導のT波変化 胸部X線写真:肺梗塞を伴わない限り特徴的でない 呼気二酸化炭素分圧低下:広範囲の塞栓 肺血管造影、高解像度胸部CT:確定診断 治療: 術中治療は支持療法のみ、酸素化の改善をはかる ヘパリン、血栓溶解療法は出血のリスクを鑑みて 重篤例でPCPS、肺塞栓摘出術 アナフィラキシー アナフィラキシーは生命に危険を及ぼすアレルギー 反応 抗原が肥満細胞や好塩基球の表面上でIgE抗体と 結合することにより惹起され、ケミカルメディエー ターの放出を生じる ケミカルメディエーター:ヒスタミン、ロイコトリエン、 キニン、プロスタグランジン、血小板活性化因子 アナフィラキシー様反応は、臨床的に類似するが、 IgEを介さず、抗原に対する先行感作を必要としな い アナフィラキシー 臨床的特徴 1.蕁麻疹と潮紅 2.呼吸不全をもたらす気管支攣縮や気道浮腫 3.末梢血管拡張や毛細血管透過性亢進による 低血圧ならびにショック 4.肺水腫 アナフィラキシー 治療 1.循環虚脱がある場合麻酔薬の投与を中止 2.100%酸素を投与 3.低血圧の治療には、血管内容量を増加させる 4.アドレナリン50~100μgを静注 明らかな心血管虚脱時は0.5~1mgを静注 低 血圧が持続する場合持続注入を行う 5.ステロイド(ヒドロコルチゾン250mg~1g、メチルプレドニゾ ロン1~2g)は、炎症反応を抑制 6.抗ヒスタミン薬は、二次選択治療として有用な場合がある
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