格子系のフェルミオンシミュレーション

物性物理学で対象となる
強相関フェルミ粒子系とボーズ粒子系
強相関量子系:粒子間の相互作用の効果の大きな系
多体フェルミ粒子系
電子系
3He
レーザー冷却された原子系
多体ボーズ粒子系
4He
レーザー冷却された原子系
フェルミ流体(金属)
電荷秩序(固体)
磁気秩序
超伝導
金属と絶縁体
超流動
ボーズ凝縮
多電子系
量子多体系の典型
身近な物質
ナノスケールやミクロンサイズの構造の自在な制
御
新しい概念
新奇な量子状態
未知の量子臨界現象
基礎物理学からの興味
相互作用による多体効果と量子力学的な効果が
絡み合って生じる物質の新しい存在形態の探索
巨視的量子現象
従来の理論で説明できない超伝導
量子ホール効果
エキゾチックな量子相
多電子系と応用
量子力学的効果の利用、応用
トランジスタの発明;1949、バーディーン・ショックレー・ブラッタン
半導体物理学と半導体産業; 集積回路、LSI
20世紀産業革命と情報革命の基礎
電気伝導度、磁性、誘電性、
光学的性質(色、透明性)、
電磁波や電場への応答
電子間相互作用の効果は
あまり重要ではなかった
電子機器
オーディオ機器
コンピュータ
携帯電話
家電製品
センサー
強い電子間クーロン相互作用の効果を生かすと?
結晶中の電子;自由電子近似、バンド理論
物質中の電子は結晶の周期ポテンシャルを感じている
バンド構造が形成される; ブロッホの定理
運動量
電子はフェルミ粒子なので
エネルギーの低い状態から
一つずつバンドを埋めていく
フェルミ
エネルギー
金属
バンドが部分的にしか
埋められていない
エ
ネ
ル
ギ
|
V ( ri )
Bloch
1905-1983
バンドギャップ
絶縁体
バンドが埋められている
電子間相互作用がないときの金属絶縁体転移
フェルミ面:
絶対零度、運動量空間で電子が
詰まっている領域の表面
フェルミ
エネルギー
ky
kx
金属:フェルミ面が存在
フェルミエネルギーが
バンドの端を横切るときに
金属から絶縁体へ転移
→フェルミ面が縮んで消える
★絶対零度でおきる量子相転移
★転移はフェルミ面があるかないかというトポロジ
ーの違いによって生じる
★転移の前後で対称性の破れが生じない
★したがってランダウの現象論は適用できない
電子の持つ自由度
電気伝導性の原因
電荷
スピン
磁性を引き起こす
電子のスピンがある方向に揃ったもの; 強磁性
軌道
原子核の近くに束縛された電子が
波として拡がろうとする零点振動を起こす結果生まれる
量子的な形の自由度
誘電性
液晶との対比
(例)z方向に伸びた軌道の波動関数;
z方向に電流を流しやすい
温度、電場、磁場、圧力による 制御可能性
スピンと軌道の絡み合い
軌道が揃う
⇔スピンが反強磁性
軌道が互い違い
⇔スピンが強磁性
反強磁性:スピンが互い違いに反対向きに並ぶ構造
スピンに生ずる秩序と軌道の向きがカップルし、
影響を与え合う
電子間相互作用を無視したバンド描像
間運
動
量
空
実
空
間
ハーフフィリング
バンド絶縁体
金属
バンド絶縁体
モット絶縁体
ー電子間相互作用の効果ー
バンド理論の予測では、
金属のはずのハーフフィリング
各原子に電子1個ずつ棲み分け;
同じ原子上のクーロン斥力の損が少ない
別の原子軌道に飛び移ろうとすると、
既に棲みついている電子から、
大きなクーロン斥力相互作用Uを感じる
→ 電子が身動きできなくなる
→ 絶縁体化
U
実際は容易に絶縁体
モット絶縁体
このままではスピンの向きが決まらない
Mott
1905-1996
モット絶縁体における交換相互作用と階層性
互いに相手のサイトに拡がることによって
運動エネルギーが下がる; 零点振動
運動エネルギー t, クーロン相互作用 U
t / Uの割合の電子が拡がる、1電子あたり利得 t
t2/U程度
パウリの排他律のために相手のサイトに
拡がることができない
反強磁性
J=t2/U≪t
のエネルギー低下
tやUより小さなエネルギー・
温度スケールによる階層性
フラストレーションによる階層構造
フラストレーション⇒
スピンの向きの決まる温度は
J=t2/U よりもさらにずっと低温
スピンの零点振動の効果
?
スピンの量子融解、
量子スピン液体状態
“フラストレーション” 電子は個々の原子に束縛されている
による新たな競合 絶縁体であるにもかかわらず
電子のスピンだけが融ける
対称性の破れの見つからない
新しいタイプの量子液体相
磁気秩序とスピン液体
強磁性
ピエール・キュリー、
ハイゼンベルク、イジング、ストーナー
反強磁性
ネール
Pierre Curie
1859-1906
共鳴原子価
ポーリング
+
Pauling =
1901-1994
Neel
1904-2000
スピン液体
アンダーソン
Anderson
1923-
モット絶縁体とドーピング
電子濃度が原子あたり1個という条件からずれると、
電子のいない原子(ホール(空孔)と呼ぶ)ができる;
キャリアドーピング
まわりの電子がその原子に容易に飛び移ることができる
→ もといた原子軌道は空孔となる
→ また別の電子がそこに飛び移れる
電子は空孔を介して動き回り
金属化することができる。
バンド絶縁体の金属化とは
異なるタイプの
金属絶縁体転移
強相関電子系の金属絶縁体間の量子相転移
通常の量子臨界点
量子臨界点
フェルミ面がある
フェルミ面がない
トポロジーの変化
限界量子臨界点
新奇な量子臨界現象
強相関電子系の量子臨界領域で見られる現象
★フェルミ液体(通常の金属)とは異なる金属状態
(非フェルミ液体)
電気抵抗の温度依存性 T2に比例しない
スピン帯磁率が温度に依存する
強いスピンや電荷のゆらぎ
★秩序間の競合
超伝導、反強磁性、電荷秩序
★高温超伝導
銅酸化物
★外場に対する巨大な応答、わずかな摂動による相転移
マンガン酸化物の巨大磁気抵抗
まとめ
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強相関量子系には電子、ヘリウム、冷却原子などの系がある
強相関電子系は新しい物質の存在形態や相を解明する基礎物理
学の舞台として、また応用の可能性の宝庫として注目されている
結晶中の電子は周期ポテンシャルによるバンド構造をもち、フェル
ミエネルギーの変化によって金属絶縁体転移する
絶対零度での金属絶縁体転移はフェルミ面のトポロジーの変化に
よって生じ、対称性の破れを生じない。ランダウの現象論でもあら
わせない
強い電子相関による金属絶縁体転移は対称性の破れとトポロジー
変化の性格を併せ持ち、限界量子臨界点を生じる
強い電子相関のためにバンド描像では金属になるはずの電子濃
度で絶縁体(モット絶縁体)になることがある
交換相互作用やそのフラストレーションは階層構造を生む
相互作用のフラストレーションで量子スピン液体相が生じる
モット絶縁体近傍に高温超伝導など未解明の新奇現象が見られる