セラミックス - 学術情報センター

セラミックス
第12回 7月8日(水)
セラミックスの物性③
ナノテクノロジー
Nanotechnology
1.ナノテクノロジーの概要
1 nm = 1/10 億 m = 1/100万 mm ( = 10-9m )
1μm(10-6 m)
100 nm(10-7 m) LSIの最小素子寸法
ナノ領域
10 nm(10-8 m) ウィルス、カーボンナノチューブ
1 nm(10-9 m) タンパク質分子、DNA二重らせんの径
1Å(オングストローム,=10-10 m) 水素原子の直径
カーボンナノチューブ
・・・0.5~10 nmの直径と1μm程度の長さの円筒構造を有する炭素の結晶
(→ 1991年、NECシステムデバイス基礎研究本部 飯島澄男 主席研究員によって発見)
【特徴】
①立体構造の違いにより、半導体/金属の両方の性質をとる
→『究極の集積度を有する新たな半導体の創製』
②高い(金属をはるかに超える)電気伝導特性
③巨大磁気抵抗
④水素吸着特性→『水素燃料エンジン、燃料電池』など
『ナノ・テクノロジー』の21世紀における応用分野
①IT,②医療・バイオ,③環境・エネルギー
◎『新材料の創製(ex.ナノ結晶・ナノ粒子、ナノ粒子分散・析出・複合)』
2.日本政府における科学技術の重点4分野
(2002年度に発表)
1. ライフサイエンス(生命科学)
2. IT(Information Technology:情報・通信技術)
3. 環境
4. ナノテクノロジー・材料
(1)次世代情報通信システム用 ナノデバイス・材料
(2)基礎技術:ナノレベルでの計測・評価・加工など
(3)革新的な物性・機能を有する物質(材料)開発
※ 日本政府のナノテクノロジー分野に対する研究費
:558億円(2001年度)
9.代表的なナノ物質およびナノ材料
1. カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube)
2. フラーレン(Fullerenes)
3. ナノ粒子(Nanoparticles)
4. ナノ高分子(Nanopolymers)
5. デンドリマー(Dendrimers)・・・規則正しく枝分かれした樹脂状高分子化合物
6. ナノクリスタル(Nanocrystals)
→分子量の制御だけでなく、
7. ナノ結晶シリコン(Silicon Nanocrystals)
分枝のサイズや形状も予想で
8. ナノメタル(Nanometals)
きる規則正しい枝分かれ構造
9. ナノ結晶合金(Nanocrystalline Alloys)
を有する
1)
10. ナノセラミックス(Nanoceramics)
「単分散樹枝状高分子」
11. ナノダイヤモンド(Nanodiamonds)
12. ナノクラスター(Nanoclusters)
13. ナノコンポジット(Nanocomposites)
14. ナノポーラス材料(NanoporousMaterials)
15. ナノワイヤ(Nanowires)
16. ナノゼオライト(Nanozeolites)
17. ナノ触媒(Nanocatalysts)
18. 自己組織化材料(Self-Assembled Materials)
19. メゾスコピック材料(Mesoscopic Materials)
20. ナノ空間(Nanospaces)
21. ナノガラス(Nanoglasses)2)
物質創製科学
現状の材料のプロセスと既存核生成機構
○ 材料(物質)の製造(現状の材料プロセス)
(ex. 金属合金,半導体,無機,有機(含 医薬品)材料)
結晶成長(Crystal Growth)
気相プロセス(ex. 半導体,薄膜材料など)
液相プロセス(ex. 単結晶材料のMelt Growth)
固相プロセス(ex. メカニカルアロイング,粉末焼結)
核生成(Nucleation)
※ 全ての材料の結晶成長の前駆段階としての
統一的現象および理論
(固相法の場合は,界面 growth が支配)
既存・核生成理論(核生成機構)
1. 均一核生成(Homogeneous Necleation)
・・・理想状態下で生じる本来の核生成現象
2. 不均一核生成(Heterogeneous Necleation)
・・・通常の材料製造・作製時における核生成現象
(ex. 基板上への薄膜作製,液相からの結晶作製(←溶融・凝固)
※ 核生成理論の推移
1926年:Volmer, Weber (Z. Phys. Chem, 119 (1926) 277.
1950年:D. Turnbull (J. Chem. Phys., 18 (1950)198.
既存「核生成理論」(Nucleation Theory)
均一核生成,不均一核生成ともに;
安定(平衡)結晶の成長のみを仮定した統一的理論
21世紀の材料科学(物質科学:Materials Science)
における新たな展開
1. 従来の安定平衡物質(製造,材料物性)の延長でよいか?
2. 既存概念にない新たな構造と物性を発現する.
⇒ 新物質創製(≡非平衡相,非平衡物質)の探索
既存核生成理論に変わる
新たな『非平衡相の核生成理論』構築の必要性
材料科学研究に対する宇宙環境の利点・特徴
無対流
熱による対流が起きない
ため、物質のわずかな荷
電状態を利用した分離・
精製などが効率的に行え
ます。また、結晶成長で
も拡散特性のみによる良
質な結晶ができ、エレクト
ロニクスや医療品、バイ
オテクノロジーなどの分
野で応用が期待されます。
無浮力・無沈降
軽いものや重いものを均一
に混合することができ、軽く
て強い耐熱合金や複合材
料などの新材料などをつく
ることができます。
熱対流が起きないので、
効率的な分離・精製が
可能になる。
重い物質と軽い物質が
均一に混合する。
・電気泳動分離の向上
・拡散支配による良質な
結晶成長
・比重差を無視した
均一混合状態の形成
無静圧
無接触・浮遊
試料の自重によるひずみ
無容器プロセス
や電子配列の乱れが生
じないため、欠陥のない 超音波や電磁波・静電気を利
優れた大型結晶がつくれ、 用して、物体を空間に保持し
画期的な半導体やセンサ たまま溶解や凝固を行うこと
で容器との接触による不純
材料などの製造が可能
物の混入を防ぐことができ、
になります。
光学用の超高純度ガラスを
作ることができます。
格子欠陥のない単結
晶製造。
・欠陥のない単結晶作製
(材料の変形、歪みがない)
空間に浮いて真球となる。
・材料の浮遊現象に起因
した非接触溶解及び凝固
永山研究室の概要と研究紹介
-浮遊実験と宇宙環境を利用した材料科学研究の意義-
国際宇宙ステーション(ISS)
日本実験モジュール「きぼう」
電気・電子・磁気的特性
(1)サ-ミスタ(thermistor)*)[:図4.7参照]特性
[定義]:温度により材料の電気抵抗値が変化する性質
(温度調整、測定用の温度センサー用素子)
①CTRサ-ミスタ(critical temperature controler):臨界温度サ-ミスタ
②NTCサ-ミスタ(negative temperature controler)
③PTCサ-ミスタ(positive temperature control thermistor)
*) thermistor
(:thermally sensitive resistor)
電気抵抗の特異な温度依存性を利用して、
材料の電気抵抗を測定することにより温度
を検出するセンサー素子
図4.7 3種類の代表的サ-ミスタ
の電気抵抗の温度依存性
①CTRサ-ミスタ:結晶の構造変化が生じる相転移点で抵抗が急激に低下する材料
V2O5:80℃以下(単斜晶系)では抵抗が負の温度係数を持った半導体
80℃以上(ルチル構造:正方晶系)では電気伝導度が2ケタ以上増加
(抵抗が急激に減少)し、金属的挙動[温度の増加につれ抵抗は増加する
・・・抵抗:正の温度係数]を示す
応用:温度スイッチなどの各種センサ材料
②NTCサ-ミスタ:抵抗が温度上昇に伴って単調(指数関数的)に減少する材料
(CTRサ-ミスタとは異なり、相転移には無関係)
不純物注入型遷移金属酸化物(Fe2O3-Ti系,NiO-Li系),
ZrO2-Y2O3系,SiCなど
応用:ダイオ-ド,ヒュ-ズ,各種温度スイッチ類など
③PTCサ-ミスタ:相転移点で抵抗が急激に上昇する材料(NTCサ-ミスタとは
異なって、抵抗は温度上昇に伴って増加し、かつCTRサ-ミスタ同様,
結晶の相変化に起因する)
・・・正方晶-立方晶変態に伴う抵抗変化
応用:電圧異常と回路の短絡保護材料・・・大電流が流れると、サ-ミスタの温度
が上昇し,抵抗値が増加し電流量を低下させる
サーミスタ(Thermistor, Thermally sensitive
resistor)の種類
(1)NTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient)
:温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少する
(2)PTCサーミスタ(Positive Temperature Coefficient)
:温度が上昇すると特定の温度以上で抵抗値が
急激に増加するサーミスタ
(3)CTRサーミスタ(Critical Temperature Thermistor)
:温度が上昇すると抵抗値が急激に減少する
※NTCサーミスタ(温度制御用センター素子として多用)の
温度と抵抗値の関係式
1 1
B(  )
T T0
R  R0 exp
R:温度Tにおける抵抗値
T:温度(K)
R0:基準温度T0における抵抗値
T0:基準温度(K) (一般に25℃(=298K)を使用)
B:定数
[身近な用途] 電子体温計、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンの制御用温度センサー
(その他:OA機器、カーエアコン、自動車エンジン用温度計(センサー)
(2)バリスタ(variable resister)特性
[定義]:電流-電圧特性が非直線的なセラミックス半導体材料
※V=IRに従わない
(電圧が増加すると抵抗が急減し、非オ-ム則を示す材料)
[:図4.8,図4.9参照]
・・・低電圧ではバリスタは温度依存性が小
さいが、ある臨界降伏電圧VBで突然
抵抗値が消失し電流が急激に増加する
図4.8 ZnOバリスタの
典型的なI-V特性
(電流はVBで急速に増加)
図4.9 ZnOとSiCのバリスタ特性
用途:①整流器で発生する異常電圧から、回路素子を保護
②落雷,高電圧の流入による電気回路の破壊防止用
(3)誘電体特性[:図4.10参照]
:絶縁体と同等な挙動をとるが、電界を印加した場合に定常電流は流れないが、
電荷を蓄積できる特性(コンデンサー特性)を有する材料[:図4.11,図4.12参照]
①常誘電体:誘電率の低い物質[:BaTiO3の高温相(立方晶型)]
②強誘電体:外部電界によって双極子モ-メントが整列することによって自発分極が
発生し、かつ自発分極の方向が変化できる物質
[:BaTiO3の低温相(正方晶型)]
③反強誘電体:自発的な双極子の配列が結晶内で平行になるよりも、反平行になる方が
安定な物質[:ジルコン酸鉛(PbZrO3)]
図4.10 電界を印加した時の誘電体の分極モデル
A
C    F 
t
 :誘電率
A:電極面積
t :電極間距離(誘電体の厚さ)
図4.11 BaTiO3の結晶構造
図4.12 BaTiO3の誘電率の
温度依存性(εa:a軸方向の誘電率,
εc:c軸方向の誘電率)
補足: BaTiO3,SrTiO3セラミックス
高誘電率材料,強誘電体材料の代表・・・小型大容量のセラミックスコンデンサの開発
[:図1,図2,表1参照]
図1 BaTiO3,SrTiO3セラミックス材料の応用分野
図2 BaTiO3セラミックスの比誘電率ε/ε0と誘電損失tanδ
の温度特性
・・・コンデンサの静電容量C : C=ε・A/t[F]
εs:比誘電率(εs=ε/ε0,ε:誘電率)
ε0:真空中の誘電率(8.854×10-12[F/m])
A:電極面積[m2],
t:セラミックス素子の厚さ[m]
比誘電率が大きいほど、同一形状での大容量のコンデンサとなる
(→同一容量のコンデンサを小型化できる)
表1 アルミナ,ジルコニア,チタニア(TiO2)とBaTiO3,
SrTiO3セラミックスの結晶構造
(4) PZTセラミックス
Pb(Zr,Ti)O3セラミックス[:図4.13参照]
・・・圧電性セラミックスの代表的材料
基本機能(・・・電気-機械変換素子)[:図4.14,表4.4参照]
:①圧力→電気
②電気→振動・変位
③電気→振動→電気
図4.13 Pb(Zr,Ti)O3セラミックス
[:PZT]の応用例
図4.14 圧電セラミックスの3種類の基本的機能
表4.4 PZTとBaTiO3セラミックスの圧電特性の比較
B aTiO 3
材 質
P ZT
P ZT
材 料 名
M T-107*
67
71
2000
M T-18*
55
65
1400
1900
-213
-104
-79
450
300
191
g31
-12.7
-8.4
-4.7
g33
25
24
11.4
ヤング率
Y 11E
6.3
8.1
9.3
[1010N /m 2]
機械的品質係数
キュリー点
密 度
Y 33E
電気機械結合係数
圧
電
定
数
k p[%]
k t[%]
比誘電率 ε33T/ε0
d31
-12
[10 m /V ]
d33
-3
[10 V m /N ]
Qm
[℃]
[g/cm 3]
主 な 特 徴
主 な 用 途
35.4
4.7
6.3
9.2
100
1000
430
354
300
120
7.7
7.6
5.7
高い圧電特性 高い圧電特性
低いQ m
高いQ m
ソフトな材料
ハードな材料
ガス点火器
超音波振動子 魚探用振動子
(5) 磁性体セラミックス
フェライト,酸化鉄セラミックス[:図4.15,表4.5参照]
軟磁性材料(ソフト)
(ex.磁気ヘッド材料)
半硬磁性材料
(セミハード)
(ex.磁気記録材料)
硬磁性材料(ハード)
(ex.永久磁石)
図4.15 磁性体セラミックス
(フェライト,酸化鉄セラミックス)の用途
表4.5 代表的な鉄酸化物系化合物
物 質
結晶系
系 性
色 相
α-Fe2O 3
γ-Fe2O 3
α-FeO O H
(α-Fe2O 3・
H 2O )
Fe3O 4 Fe(Fe2O4)
M nFe2O 4
C oFe2O 4
N iFe2O 4
ZnFe2O 4
六方晶
立方晶
直方晶
非磁性
強磁性
非磁性
赤褐色
茶 色
黄 色
X線密度
[g/cm 3]
5.29
5.07
4.28
立方晶
立方晶
立方晶
立方晶
立方晶
強磁性
強磁性
強磁性
強磁性
非磁性
黒 色
黒 色
黒 色
黒 色
赤褐色
5.24
5.00
5.29
5.38
5.33
六方晶
六方晶
強磁性
強磁性
黒 色
黒 色
5.28
5.15
特性良好
(永久磁石)
B aFe12O 19
SrFe12O 19
BaO・6Fe2O3
SrO・6Fe2O3
鉱物名
備 考
Hα-Hematite
eam atite
Mγ-Hematite
aghem ite
G oethite
赤鉄鉱,ベンガラ
ガンマ
針鉄鉱,黄鉄
M agnetite
(Jacobisite)
磁鉄鉱,黒鉄
磁鉄鉱,鉄黒
マンガンフェライト
コバルトフェライト
ニッケルフェライト
亜鉛フェライト,タン
(顔料)
バリウムフェライト
ストロンチウムフェライト
(Trevorite)
(Flanklinite)
フェライトの一般式:M・Fe2O4・・・M:2価の金属イオン
(M = Mn, Ni, Zn, Ba, Sr,・・・)
**酸化鉄、(磁性体酸化鉄)・・・Fe3O4:マグネタイト
「主な用途」: ①ビデオテープ用磁性体
磁気記録用磁性体粉末
②音声録音(カセットテープ)用磁性体
③モータ回転用マグネット(ex.PC用ハードディスクドライブモーター)
④スピーカー用マグネット
現在:CD,MO,MD(光磁気記録用メディア材料
(※ ビデオテープ、フロッピーディスクは全てγ-Fe2O3粉末を使用)
・磁性材料
1 各種磁性材料の現状と概要
1.1 ソフト磁性材料
定義:透磁率の高い材料
(cf.ハ-ド磁性材料・・・永久磁石:残留磁化,保磁力の大きい磁性材料)
ソフト磁性材料の必要条件
(1)高透磁率を持つこと:非常に磁化されやすいこと
・・・地球磁場程度の磁場(0.3~0.5Oe)でも簡単に磁化される
(2)保磁力が小さいこと
(3)飽和磁化が大きいこと
(4)鉄損が少ないこと(電気抵抗が大きいこと)
実用材料:方向性ケイ素鋼板,パ-マロイ,センダスト,フェライト,アモルファ
ス合金
用途:トランス用磁心,インダクタ,リレ-スイッチ類,磁気ヘッド
【磁性の基礎】
(1)磁性の分類[:表3参照]
:原子固有の不対電子*)のスピン(電子の自転)による磁気モ-メントの配列の
仕方で、磁性は分類される
*)不対電子を有する原子・・・遷移金属[:表4参照]
↓
『磁性現象を示す原子』
①常磁性 :不対電子による磁気モ-メントがバラバラの方向をとるもの
②反強磁性 :2つの磁気モ-メントが、完全に正・負を打消すように配列
③フェリ磁性:反強磁性と同じ配列をするが、2つの磁気モ-メント間に大きさの
差があり、ある方向に強い磁性を示す
④強磁性 :全ての磁気モ-メントが外部磁場によって完全に1つの方向に揃い、
強い磁性を示す(→“実用的な磁性”)
表3
磁性の分類
常磁性
強磁性
常磁性
反強磁性
フェリ磁性
負(磁場よりは 磁場にかられる 常磁性の一種 常磁性の一種 強く磁場にひ
特
強磁性に似る きつけられる
じき出される) 温度係数負
性
温度係数負
温度変化なし
物質のもつ電子不対電子のもつ 磁気モーメント 磁気モーメント 物質の中に磁
の軌道運動の 磁気モーメント が相互に打ち消 が反平行に配向気モーメントを
外部磁場による の磁場による配 し合う形で配向 しているがその そろえた磁区が
起
歳差運動
向および自由電 している
モーメントに差 あり、それが磁
因
子の磁気モーメ
があり強い常磁 場で一方向に
ントの配向
性を示す
配向する
(Pauli 常磁性)
分類
モ
デ
ル
反磁性
(2)強磁性体の特徴
:外部磁場に対し、特有の磁化挙動を呈する
↓
“磁化曲線=ヒステリシス曲線”[:図5参照]
・・・強磁性体の単位体積当りの磁化の大きさMの外部磁場Hによる変化を示す
磁化M:原子の孤立電子(不対電子)によって発生する磁気モ-メントの総和
(結晶を構成する不対電子を有する全原子の和)
磁場H:外部より印加する磁場
◎強磁性体の磁化過程
①:最初の状態(H=0,M=0)
②:初磁化過程
(χr:磁化率,MS:飽和磁化)
③:外部磁場を取りさった状態
(Mr:残留磁化(H=0))
④:-HCの磁場でで強磁性体の磁化
は完全にゼロになる(Hc:保磁
力)
⑤:②とは反対方向に飽和磁化した状
態
⑥:③とは反対方向に生じた残留磁化
⑦:④とは反対方向のHc
⑧:②と同一方向への飽和磁化状態
図5 ヒステリシス曲線(M-H曲線) [・・・ヒステリシス曲線は閉じる]
注)χr:強磁性体に磁場を印加した時の最初の傾き[・・・磁化率χr=M/H]
MS:強磁性体内の全ての磁気モ-メントが印加磁場(外部磁場)方向に配列し
た時に生じる磁化[・・・飽和磁化]
Mr:飽和磁化状態にある強磁性体に逆方向の磁場を印加し、H=0で強磁性中
に残存する磁化[・・・残留磁化]
Hc:強磁性体中に残存したMrを消すために必要な過剰な磁場
(2)磁性材料(強磁性体材料)の実用的分類[:図6参照]
①軟磁性材料(ソフト磁性材料)
・・・保磁力Hcが小さく、磁化率χrが大きい(:M/Hが大きい)材料
ex.磁気ヘッド,トランス用磁芯材料
②硬磁性材料(ハ-ド磁性材料)
・・・保磁力Hcが大きく、かつ飽和磁化MS,残留磁化Mrが共に大きい材料
ex.永久磁石材料
③半硬磁性材料(セミ・ハ-ド磁性材料)
・・・①と②の中間的性質を示す磁性材料
ex.磁気記録用材料:磁気テ-プ材料,磁気ディスク材料,垂直磁気
記録材料,光磁気記録材料
B:磁束密度[単位:Gauss]
(強磁性体中の磁化の大きさMと
外部磁場Hの両者を合せた物理量)
図6 磁性材料とB-Hヒステリシス曲線
①磁芯材料,②永久磁石材料,③磁気記録材料
光学的特性
①酸化物ガラス,酸化物系セラミックス単結晶・・・透光性を有する
②酸化物系セラミックス多結晶体・・・結晶粒界での屈折,反射,散乱により透光
性は低下し、乳白色を呈する
③非酸化物系セラミックス(遷移元素のホウ化物,炭化物,窒化物)
・・・黒色を呈し、導電性を有する
④共有結合性の非酸化物セラミックス(SiC,Si3N4)やイオン結合性酸化物
セラミックス・・・自由電子を有さないため、透光性を示す
透光性セラミックスの代表的材料:SiO2(高純度石英ガラス)
・・・長距離用光通信ファイバ
透光性多結晶体(立方晶結晶体)
・・・MgO,MgO・Al2O3,ZrO2・10%Y2O3
(:高温用窓ガラス材料)
透過性単結晶Al2O3・・・高速道路用ナトリウムランプの放電管材料
cf.金属・・・自由電子を有するため光を透過せず反射する[:金属光沢]
↓
∴金属の粗い面・・・乱反射により黒色を呈する
金属の鏡面 ・・・全反射により金属光沢を示す
(1)物質の透光性
入射波→
物
体
↑
←
表面反射
透過光の強さ=入射波-(表面反射+内部吸収)
↑
←
→透過光
↓
“損失分”
透明体・・・光の反射と吸収の少ない物質
「反射」 : 空気と物体との屈折率の違いによって決まる相対量
「吸収」 : 物質の透明性を決める本質的な要素
『光の吸収』
①真の吸収(→エネルギー吸収を伴う)
・・・物質中の電子遷移による光のエネルギー吸収現象によって生じる
→物質を構成する原子の種類と配列(構造)が決まると一義的に決まる「物質固有量」
↓
可視光(λ=0.4~0.7μm)領域に上記固有吸収を示さないことが、
透明体であるための必要条件
②散乱(→エネルギー吸収を伴わない)
・・・物質によるエネルギーの吸収は起きず、単なるエネルギー損失のみが生じ、
散乱光となる
『光の散乱』
:材料の構造に敏感な現象〈構造敏感〉
「セラミックス材料の微細構造」
①結晶粒の集合体(:多結晶体構造)
②結晶粒界を有する
③析出物、機構などの内部欠陥
(②、③は構造欠陥)
↑
“不均一系媒体中を光が伝播する場合の
光の散乱の原因[:図19参照]
①焼結過程で内部に残った気孔、添加物の
偏析や析出による異相および単一相内で
の組成のずれ(濃度変調)などによる光の
散乱現象
図19 透光性セラミックス中における光の散乱中心
②空格子点、転位などの結晶構造上の不完全性の集合体とみなせる結晶粒界による散乱
③微結晶が光学異方性を有する場合、すなわち結晶粒界などの不連続界面において生ずる
反射、屈折(複屈折)による光の散乱(・・・光学的不整)
↓
「セラミックスの透光性」・・・光吸収がなく、かつ光学的異方性を有さないことが必要
↓
散乱の原因となる析出物、気孔、結晶粒界を制御することが必要
※〈光学異方性〉・・・結晶構造に依存
↑
立方晶系(等方的結晶)が最適
(cf.六方晶系:一軸異方性結晶, ex.Al2O3,BeO
(2)透光性セラミックスの用途
『代表的材料』・・・透光性Al2O3[:表14参照]
[特徴]:耐熱性と強度がガラスより高い
[用途]:①高圧放電灯の発光管(HID:High Intensity Discharge) [:図20参照]
②高温用透明容器
[透光性の意義]:ランプ効率の向上(←光の透光率の向上)
[要求される材料形態]:高純度化と緻密性
・・・光の吸収と気孔による光の散乱を減少させ、透過率を向上させる
表14 透光性セラミックス材料の種類と結晶形および製法
表15 透光性Al2O3セラミックスの微細構造と諸特性
(・・・透光性:(a)>(b)>(c))
図20 高圧ナトリウムランプと発光管
(a)大きな粒径で均一な組織
(b)小さな粒径で不均一な構造
(c)種々の粒径が混ざった組織
図21 透光性Al2O3セラミックスの微細構造
(3)光通信用ガラスファイバー[:SiO2(石英ガラス)製ファイバー]
※石英ガラス(SiO2)
・・・可視光(人間が目で見ることができる波長の光)を最も良く伝える固体
[概要]:①直径20μm
②1本の光ファイバーで電話1万本の回線を通す
③光信号(デジタル信号)により、1秒間に1億個の信号を送信する
[要求特性]:光の減衰率が1デシベル(dB)以下のSiO2
=
光がガラス中を1㎞伝播することによって、1/1に減衰するとき
1デシベル(dB)とする=“1㎞での減衰率がゼロ”
[光ファイバーの構造(:図22参照)]
・・・中心部コア:(Si(+Ge)O2
・・・外筒部クラッド:(SiO2)
↓
コアの屈折率がクラッドよりも高いため、コアに入った光はクラッドとの境界部で
全反射を繰り返し、外部に光がもれないでファイバー中を伝播する
図22 光ファイバーの光の伝わり方
[製造法]:原料ガス(SiCl4(四塩化ケイ素)+GeCl4(四塩化ゲルマニウム)+O2+H2)
を石英ガラスチューブ中で燃焼
↓
原料ガス中からSi(+Ge)O2の析出
↓
石英ガラスチューブごと加熱して引き伸ばす