ようこそ物性物理科学の世界へ! 「物性物理学」ってなんだろう? 「物性」という言葉は聞き慣れないかも知れません が、実は「物性物理学」は素粒子・原子核物理学と 並ぶ物理学の2大分野の一つです。 超高速光通信・スーパーコンピューター・環境保護 型新素材など最新の科学技術を根底から支えてい るのが物質科学ですが、その中でも「物質の成り立 ち、現象、機能」などを量子力学・電磁気学や統計 力学などの物理的考え方、手法に立脚して研究す るのが「物性物理学」です。 例えばみんなが日頃利用している携帯電話の 基地局や衛星放送アンテナの中を覗いてみると 、そこには非常に微弱な電波を受信するための 極めて高性能な増幅用デバイス(高電子移動度 トランジスタ:HEMT)が用いられています。こ れは半導体中の電子の運動を「物性物理学」的 に研究することにより誕生しました。もしこの 発明がなければ、いまのように誰もが携帯電話 を持ち歩くような世の中にならなかったかも知 れません。 また極めて高画質なDVD-RAM は最近急速に普 及しています。この技術には安定性の高い高密 度記憶材料が不可欠ですが、GeSbTeという特殊 な物質の特性を「物性物理学」の手法で解明す ることにより、これを得ることができました。 これら以外にも、私達が日常的に使っているパ ソコン、通信、マルチメディアなどの技術に用い られている大容量ハードディスク、液晶ディスプ レイ、半導体メモリ、半導体レーザーなど、「物性 物理学」を基礎にした研究から生まれた製品が 私達の生活を取り囲んでいます。 このように、現在の私達の暮らしを支えている技 術の多くは、その源をたどれば物性物理学的な発 見が出発点となっています。基礎に立ち戻って解 明された科学的知見は私達の自然観を豊かにし、 真に独創的な技術の源となって産業における大き な流れを作り出します。 21世紀の技術の種を育てる、まさに真に独創的、 創造的な科学技術の源(ゆりかご)となるのが物 性物理学なのです。 物性物理コース ホームページ http://www.mp.es.osaka-u.ac.jp/ 物性物理工学領域(大学院)ホームページ http://www.mp.es.osaka-u.ac.jp/gschool/ (mpは Material Physics の、es は Engineering Science の略です) 確かな物理的基礎力を身につけた技術・研究者は、自ら新しい流れ を創り出し、まだ誰も見ぬ未来の技術を創出することができます。 物性物理科学コースの学習内容と技術との関わり 量子力学 統計力学 超伝導物理 半導体物理 物質構造論 力 非線形光学 半導体レーザ 光スイッチ素子 携帯通信機器 光通信 電磁気学 光物性物理 磁性物理 固体電子論 超微細加工技術 超高周波トランジスタ 学 マルチメディア 磁気共鳴 磁気記憶材料 超LSI(CPU,RAM) コンピュータ 先端医療機器 バイオ材料 超伝導 北岡研究室(核磁気共鳴法を用いた物質科学の先端研究) 藤本研究室 (強相関電子系の理論的研究) 清水研究室(超高圧/極低温/強磁場下の極限物性研究 ) スピントロニクス 鈴木研究室(ナノおよび量子スピントロニクスの研究) 分子エレクトロニクス 多田研究室(分子エレクトロニクス、界面工学) 関山研究室(放射光分光(バルク敏感・角度分解光電子分光 ) 先端光技術による 物質の理解 量子情報・量子光学 木村研究室 (多機能マテリアルの物性研究) 芦田研究室 (レーザー光と物質の相互作用の研 究) 井元研究室 (量子情報処理および量子光学の研究) 吉田研究室 (コンピュータによるマテリアルデザイン) 計算機による 物質設計・物性予測 草部研究室 (量子的相関現象の精密計算手法の開発) 産業科学研究所ナノテクノロジセンター4研究室 超伝導 160 発見から100年目の超伝導 超伝導体による磁石の浮上 銅酸化物 臨界温度(K) 140 TlCaBaCuO TlCaBaCuO 120 BiCaSrCuO YBaCuO 100 BCS理論 80 HgCaBaCuO (高圧下) HgCaBaCuO (高圧下) HgCaBaCuO 鉄系超伝導 物質群 20 0 Onnes (朝日新聞より転載) SmFeAsO0.9F0.1 60 40 リニアモーターカー Bardeen Cooper Schrieffer NbN Pb NbC Nb Hg LaSrCuO MgB2 V3Si Nb3Ge LaFeAsO0.89F0.11 LaBaCuO Nb-Al-Ge PuCoGa5 Nb3Sn CeCu2Si2 1910 1930 1950 1970 1990 重い電子系 LaFePO 年 2014年度に着工。東京―名 古屋間で2027年に開業 ここ20年間、これまでのBCS理論では説明できない超伝導体が続々と発見されてき 超伝導 実験・理論の両面から新しい超伝導機構の 解明に取り組んでいます。 (北岡研、藤本研) キーワードは強い電子相関 !! ~ 新しい超伝導機構 odd-gap(けったいなギャップ)をもつ超伝導状態 ふつうの超伝導状態 y z z y s-波1重項対 x x d-波1重項対 新しい超伝導状態 z p-波1重項対 x y (クーパー対の波動関数を示す) ・ 非従来型超伝導の起こるメカニズムの解明 ・ 超伝導発現機構の多様性の統一的理解 ・ 「室温」超伝導体の探索へ 超伝導 超高圧下など極限環境下での新しい超伝導体を 続々と見つけています。 (清水研) 百万気圧以上の超高圧力や超強磁場、極低温など様々な極限環境における 新物質相を研究し、物質の成り立ちを支配する普遍的な機構に迫ります。 ダイヤモンドを使った高圧装置で 様々な物質の超伝導を研究しています。 元素の超伝導の世界記録を持っています。 ダイヤモンド 超高圧発生装置 スピントロニクス スピントロニクスって何? “スピン”と“電荷”を巧みに使う 電子の二つの顔 スピン: 電子は 小さな磁石 N極 自転 (スピン) 電荷: 電子は 電気を運ぶ スピントロニクス研究の開祖 (2007年ノーベル物理学賞) -e 電荷 S極 磁気工学 電子スピンの制御 電子工学 電荷の制御 Fert Grünberg HDD 磁気センサー 永久磁石 IC トランジスタ 半導体レーザー 融合 スピントロニクス 電子工学と磁気工学を融合した新しいエレクトロニクス ノーベル賞公式Webサイトより スピントロニクス スピン注入磁化反転 実験・理論の両面から新しいスピンの 制御方法を探っています。 (鈴木研、藤本研、木村研 平成21年1月 朝日新聞 電圧によるスピンの制御デバイス 磁化 絶縁体 平成22年8月 日刊工業新聞 磁性体におけるスピン波の ホール効果の理論 電場と磁場を使ったスピン・電荷制 電 御 導線 極 0 N スピンの流れ 磁石 磁場勾配 V 電圧計 マルチフェロイクス 磁気秩序のゆらぎ 方位 磁針 + _ 電池 N 0 A 電流計 分子エレクトロニクス 分子エレクトロニクスって何? 有機材料や究極的には1個の分子を用いた電子工学 分子スケールエレクトロニクス 単一分子デバイス 有機エレクトロニクス 有機薄膜デバイス (有機EL、有機FET) 1 m テレビディスプレイ 100 nm フレキシブルディスプレイ フレキシブルトランジスター すでに実用化 10 nm 1 nm カーボンナノチューブ トランジスター AND gate 分子トランジスター 萌芽的・挑戦的 分子エレクトロニクス 分子の個性を活かした新しいデバイス (多田研) の創成を目指しています。 1Å ナノ電気回路 単分子の伝導 1nm 分子スピントロニクス 100nm 10nm 低温走査型トンネル電子顕微鏡 S S N 100nm Light emission Source N シリコン ナノワイヤー Drain A 1μm 単一分子の 電子分光 Si-C hybridization H Gate H H 有機トランジスタの発光 有機トランジスタ における1/fノイズ Si (111) ナノスケールの表面計測や加工技術を駆使し、 有機分子を主人公とした新しい電子・光デバイスの構築と学問領域の創成を目指して ます。 特殊な光を使って物質の個性を調べる。 先端光技術 様々な種類の光 周波数(Hz) 波長 1022 10(fm) 100 1021 ガンマ線 1020 X線 1017 1(pm) 100 1(nm) 10 1016 紫外線 1015 100 可視光 1(μm) 赤外線 10 1014 1013 1010 レーザーが発する特殊な光 100 1012 1011 。 10 1019 1018 加速された電子が放つ光(シンクロトロン放 射光) マイクロ波 1(mm) 10 テラヘルツ時間領域分光 超高速非線形光学応答 先端光技術 超伝導、スピントロニクス、分子エレクトロニクスなど様々な物質の 個性を見分け、背後にある物理を理解し、新たな光技術を開発する。 (関山研、芦田研、清水研、木村研 光電子分光測定で 金と銀の特性の違いを理解する 平成22年4月 レーザー光照射でナノ粒子 を サイズごと選別する 日刊工業新聞 有機半導体表面の微細構造を理解する 電子密度 1 サイズ 選別 0 -13.4 0.0 13.4 26.9 z (Å) 40.3 平成22年1月 日刊工業新聞 日刊工業新聞 平成18年8月 量子情報 量子情報・量子光学って何? 「情報は、光子や電子やスピンなどの物理的実体に載っている」 「物理的実体をつかさどる法則は量子力学である」 → 「量子力学に則った情報理論を組み立てたらどうなるか?」 → 「情報処理の革命が起こる!」 → 「ではそれを物理的に実現しよう!」 「できない」ことで有名な問題 現在の情報処理/通信技術でできないこと 量子コンピューターや量子通信で可能? 無条件安全なプライバシー通信 ○(量子暗号) 選管を置かない選挙 ? 巨大整数の素因数分解 ○(量子コンピューター) 巨大有限体上の対数演算 ○(量子コンピューター) 量子情報 量子暗号、量子コンピューティング、量子テレポーテーション等を 新しい量子力学で実現すること目指しています。 (井元研、鈴木研) 量子暗号の「現実条件 下での」安全性の理論 暗 号 処 理 速 度 ( 対 数 ) 量子演算光回路提案 日本経済新聞 平成19年11月 光ファイバーの長さ スピンを使った量子計算 読売新聞 平成20年9月 ダイヤモンド中の点欠陥に 局在するスピン 個々のスピンの制御と 量子計算 計算機による 物質設計 量子力学に基づいた物質設計 量子力学という全ての物質に適用できる理論を駆使して、不思議な電子の機能を理解し 望みの機能をもつ物質の設計を行う。 ナノマテリアルデザイン・エンジン 量子シミュ レーション 新機能の検証 物理機構の解明 (20世紀の科学) (基本要素還元型研究) 実験による検証 新物質・新 物性の 予測 物理機構 物理機構の統合 (21世紀の科学) (基本要素統合型研究) 通常元素代替高機能化,太陽電池,燃料電 池, 触媒,人工光合成,生体調和物質,安全通 計算機による 物質設計 計算機で物質の機能を理解・予測し、 新しい物質をデザインする (吉田研、草部研) 物質とデバイスの理論解析に基づく設計 高機能な太陽電池材料のデザイン z1 z2 Hydrogenated nano-graphite ribbons K. Kusakabe & M. Maruyama (2003). 水素化グラフェンの磁気構造の理論設計 M. Ziatdinov et al. PRB 87 (2013) 115427. 水素化グラフェン欠陥の局在磁性の検証例 量子デバイス構造の設計へ展開中 ミクロなデバイスの構造と動作を検証・設計 超伝導 北岡研究室(核磁気共鳴法を用いた物質科学の先端研究) 藤本研究室 (強相関電子系の理論的研究) 清水研究室(超高圧/極低温/強磁場下の極限物性研究 ) スピントロニクス 鈴木研究室(ナノおよび量子スピントロニクスの研究) 分子エレクトロニクス 多田研究室(分子エレクトロニクス、界面工学) 関山研究室(放射光分光(バルク敏感・角度分解光電子分光 ) 先端光技術による 物質の理解 量子情報・量子光学 木村研究室 (多機能マテリアルの物性研究) 芦田研究室 (レーザー光と物質の相互作用の研 究) 井元研究室 (量子情報処理および量子光学の研究) 吉田研究室 (コンピュータによるマテリアルデザイン) 計算機による 物質設計・物性予測 草部研究室 (量子的相関現象の精密計算手法の開発) 産業科学研究所ナノテクノロジセンター4研究室
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