日本私法学会 第77回大会(2013年)シンポジウム 株式保有構造と経営機構:日本企業のコーポレート・ガバナンス 本シンポジウムの目的 藤田友敬(東京大学) 1 シンポジウムのねらい なぜこのテーマのシンポジウムなのか? どのような内容の報告するのか? なぜこのメンバーなのか? 2 「会社法制の見直し」とは何だったか? 2010年4月 法制審会社法制部会で検討開始 諮問91号 「会社法制について,会社が社会的,経済的 に重要な役割を果たしていることに照らして会社を取り巻く 幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から,企 業統治の在り方や親子会社に関する規律等を見直す必要があ ると思われるので,その要綱を示されたい。」 ⇒①業務執行者の内部的コントロール ②多数派株主のコントロール 3 何を報告するのか? なぜこのメンバーなのか? 「会社法制の見直し」と立法事実 -社外取締役を導入すれば企業価値は上がるのか? -少数株主が搾取されているという実態はあるのか? ※なぜ立法事実がうるさく問われたのか? 実証研究のための能力的な制約 ⇒経済学者と法学者の組み合わせで各テーマを報告 4 株式保有構造 コーポレート・ガバナンスと株式保有構造 研究アジェンダ -さまざまな株式保有構造のもたらす問題 -わが国の株式保有構造の歴史的・国際的特徴 -法制度が何かできるか/しなくてはならないか 5 わが国の上場企業の株式保有構造と会社法 わが国の上場企業の株式保有構造の特徴 支配株主による搾取の実態 cf.親子上場に関する実証等 法規制の必要性? 機関投資家の役割 機関投資家のアクティビズムをめぐる評価 6 取締役会の構成 独立性の高い取締役会による業務執行者の監督 日本企業の取締役会の独立性は低い→社外取締役選任の義務付け <前提となる発想> 独立性の高い取締役会を置いた方が企業のパフォーマンスが上が る? 独立性の高い取締役会による監督という「グローバル・スタンダー ド」に拠った方がわが国の資本市場の国際競争力に資する 後者はともかく前者は実証的に支持されるのか? 7 取締役会構成に関する実証研究 研究の多様性 取締役会の独立性と企業業績の相関関係/因果関係 取締役会の独立性と特定の機能(専門的職務) 取締役会構成の決定要因 外生的な要因による取締役会構成の変更の効果 8 わが国の取締役会の特徴 取締役会が具体的な業務執行の決定まで行う(マネジメン ト・ボード).諸外国の取締役会とは機能が違う 取締役会の外に独立性の高い監査役(会)が置かれる 取締役会の独立性が企業業績に影響を与えるメカニズムに の説明は諸外国と同じではないかも知れない 諸外国の「取締役会」と機能的に対応していないとすれば, 日本の「取締役会」だけを取り出して同じ方法で分析できる のか? 9 法制度への含意 仮に取締役会構成が企業のパフォーマンスに何らかの影響を 与えるとして,法制度が何か対応すべきか? -自発的に社外取締役を導入している企業のデータはバイアスがか かっている可能性がある -社外取締役の導入を強制した外国のデータは他の条件が異なる -取締役会構成の決定要因に関するデータは,外圧の必要性は示唆 しても適切な介入の内容ははっきりしない 介入手法の選択に関する実証研究 10 まとめ いろいろな研究があるみたいだが,具体 的な立法提案に結びつくわけではなく, 結局,この種の研究は,法律学にとって は大して役に立たないのではないか? 学問的に厳密に実証できるデータだけに基づいて立法すると いうのは幻想.それなら最初から実証データは何も見ないで, 信念に基づき語れば良いか? 11
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