No3 暗礁に乗り上げた商品開発

No.3
暗礁に乗り上げた商品開発
平成 27 年 9 月 10 日
本日の就業時間はロゴマーク選定から始まった。各社員が持ち寄ったアイ
デアを黒板に並べ、品評会。多数決の結果、谷内倖音の作品が採択された。
続いて、中垣社長は販売商品のアイデアを社員に募った。授業担当者は「本
校 SCP10 年目なので、目先の利益に走る安直な商品ではなく、じっくりと商
品検討してください。
」と思いを語った。
社員たちは『安直な商品』に引っかかったのか、なかなかアイデアが出てこ
ない。中垣社長は「とりあえず、思い浮かんだアイデアを出してみてくださ
い!」社員たちは思いつくままにアイデアを出してみた。
採用されたロゴ(一番下)
マスコット・再生紙を使ったボールペン・エコバッグ・ブックカバー・リサイクルブックカ
バー・洗剤・石けん・牛乳パックで作る再生紙
「環境に優しい商品を。
」
「古着を集めてエコバッグやブックカバーは?」
「学校の生徒に呼びかけて古着を持ち寄ってもらおう!」
「全校生徒に呼びかければ、古着は集まるだろう。生徒会だったので、先生に頼んでみよう。
」
「T シャツを使ってバックを作ったことがあります。約 1 時間でできます!」
「参考書用のブックカバーを作ろう」
「エコバッグとブックカバーでいこう!」
おのおのが思いついたことを発言し、議論が盛り上がってきたところで、じっと
成り行きを見つめていた山本社外取締役が一言。
「今の議論を見ていると、クラス
会のようですね。商品を検討する際は、誰に、いつ、どこで販売するのか、なぜエ
コバッグやブックカバーなのか、他社商品と比較して価格や品質にどのような違い、付加価値をど
うするのかを念頭に議論してください。ところで、この会社の組織は決まっているのですか?各社
員の所属は決まっているのですか?クラス会のような討論は、普通の会社ではあり得ません。
」
中垣社長は忠告を受けて、すぐに組織作りに着手。社員は 5 名なので、すぐ決着が付いた。
生産部…渡邊健太郎・芳賀清楓
営業部…土田純平・谷内 倖音 人事部…坂口和輝
経理部は濱田経理部長一人でまかなうようだ。
公認会計士でいらっしゃる、山本社外取締役は濱田経理部長を呼び、会計処理について特別レク
チャーをしてくださった。
「貸借対照表」や「損益計算書」の勘定項目な
どは、簿記を学習していない濱田にとって、はじめて聞く言葉ばかりだ。
山本社外取締役は丁寧に解説してくださり、濱田は聞き漏らさないよう
に必死にメモをとった。濱田の保護者が仕事で帳簿をつけているのを横
で見ていて、大変さは分かっているようだが、
『親の助けを借りずにやっ
てみたい』という決意で食らいついていた。
山本社外取締役は社長以下 5 名の役員を呼んで、
「取締役会」について
重要ポイントのアドバイスをしてくださった。
「この『取締役会』は会
社の方針など重要な事項の意思決定をする場です。会社内のルールや
給与や労務管理の方法、販売場所や売上目標、生産スケジュールやコ
ストなど、各部署からの提案を取締役会で最終意思決定します。今、
こうしてクラス会のような議論をしている間にも人件費という費用
が発生しているのです。早急に会社のルールを決めた方が良いと思い
ます。
」
賃金をいくらにするのか。残業をする場合、どのように把握するの
か。遅刻や勤務態度などの査定をどうするのか。など、まだまだ会社としての問題が山積している。
一番の問題はこの「LAUREL」は何を主力商品として経営していくのか。引き続き濱田経理部長が帳
簿管理のレクチャーを受けている間、就業時間の残された時間、中垣社長をはじめとして真剣な表
情で議論が続いた。
就業終了のチャイムが鳴ったが、中垣社長は浮かない表情をしていた。どうも商品が決まらなか
ったようだ。当初は学校の全校生から古着の提供を受けて材料を確保し、エコバッグやブックカバ
ーを作成する方向で話が進んでいたが、問題が浮上したようだ。
「本当に全校生から古着が集まるの
か?」
「エコバッグは相当大きな布地を必要とする」
「何百個も大量生産できるのか?」
「布地が集ま
らなかったら、どうするのか?購入するのか?」
「代替商品は?」結局時間切れとなり、エコバッグ
は白紙に戻り、商品決定は次回に繰り越し。中垣社長は「来週月曜日までには決めます!」と意気
込んだが、表情はさえなかった。
(文責 坂本 好明)
落選したロゴデザイン
エコバッグは布地がたくさん必要