日米における株主総会の権限の違い ―権限が強い日本の株主権―

証券代行コンサルティング部長の眼 (第26号)
日米における株主総会の権限の違い
―権限が強い日本の株主権―
日本では、経営への監視機能について、株主総会からの直接的コントロールの性格が強く、株
主総会における株主権の行使は広範囲に亘っています。一方、米国では、監視機能について、
取締役会への権限委譲が進んでおり、株主総会に関する株主権は限定的です。例えば、配当の
決定は、株主総会の決議事項ではなく、仮に、株主総会で決議しても、法的効果はありません。ま
た基本定款*1の変更については、取締役会が株主総会の議案として上程してきた場合に拒否権
があるだけで 株主提案はできないことにな ています さらに 取締役の選解任については 株
があるだけで、株主提案はできないことになっています。さらに、取締役の選解任については、株
主が取締役会を支配しにくくする仕組みが採られていることがあります。相対多数投票制*2を採
用している場合、株主は取締役選任議案に反対できません。取締役の解任は、正当な理由なくし
てはできないと定款で定めることができ、期差任期制*3を採用している場合は、取締役を解任で
きません。
上記のほか、米国の特徴として株主提案の取扱いが挙げられます。米国の株主提案の多くは
勧告的決議であり、株主総会で可決されても法的拘束力はありません。先般、弊社は、米国の株
主総会視察を実施しましたが、実際に視察した株主総会でも3件の株主提案が提出され、うち1
件は賛成多数で可決されました。しかし、当該議案は株主総会後の取締役会で否決されたものと
思われ、特段の法的拘束力は生じなかった模様です。
このように、米国では、会社経営に関する多くの重要事項について、株主総会の承認を得るこ
となく、取締役会で決定を下すことができます。一方、日本では、株主の権限が強いことから、株
主が株主総会を通じて会社経営の重要事項の決定に関与することができる仕組みになっていま
す。この点は、コーポレートガバナンス・コードでも総会決議事項の一部を取締役会に委任するこ
とが経営の機動性・専門性の確保の観点から望ましい場合があると指摘されています*4。
このような日本の法制度の特色からも、今後、持ち合い解消が進展し、株式市場における機関
投資家 存在感が増せば増すほど 議案可決に向けた株主総会対策 重要度が増大し くる
投資家の存在感が増せば増すほど、議案可決に向けた株主総会対策の重要度が増大してくるで
しょう。
*1 主な記載内容は、会社の商号、会社の目的、授権株式数など。
*2 賛成率に関係なく1票でも多くの賛成票を獲得した取締役候補者が選任される制度。株主提案がない限り、会社提案の取締役候補者全員
が選任されることになります。
*3 米国の取締役の任期は最長で3年であり、毎年3分の1の取締役を入れ替える制度。期差任期制では、法令違反や病気などの重大な理由
、定款の定めがない限り、期中で取締役を解任できません。
*4 コーホ
コ ポレ
レートカ
トガバナンス・コ
ハ ナンス・コートド 補充原則1-1②より
補充原則1 1②より
【日本】(監査役会設置会社)
【米国】
ボード
監査役会
選解任
監査
株主総会対策
株主総会
選解任 ・ 監督
CEO
取締役会
権限委譲
株主総会
(取締役会)
監督
監督
CEO
経営会議
弊社では、毎年、海外企業(英米)の株主総会視察を実施しています。
また、株主総会における議案の可決あるいは賛成比率の向上を目的として、国内外の
機関投資家とのエンゲージメントもサポートしております。詳細につきましては、証券代行営
業担当者までお問い合わせください。
2015年4月1日発行