日本におけるヒト血清中ペルフルオロオクタン酸と ペルフルオロオクタンスルホン酸の 経年的、地域的評価 原田浩二、齋藤憲光、井上佳代子、井上純子、 小泉昭夫、生体試料バンク研究班 PFOA・PFOSとは 化審法第2種監視化学物質(2002年指定) 塗料・インキの湿潤・浸透・レベリング剤 洗浄剤添加助剤、膜形成型泡消火剤 フッ素樹脂の重合乳化剤 半導体リソグラフィのフォトレジスト 紙や衣服の防汚・撥水処理剤 PFOA・PFOSの拡散 難分解性 ペルフルオロ化合物の環境汚染の懸念が指摘 (Keyら, 1997) 2000年、PFOS製造大手3M社は環境汚染のた め製造中止を決定 全国の河川、湾からPFOA・PFOSが検出されて いる(Saitoら, 2004) PFOA・PFOSの毒性(1) PFOS 動物実験:肝臓がん(Seacatら2002) 甲状腺濾胞状細胞腫瘍(Thomfordら2002) 疫学研究:膀胱がん死亡(Alexander2003) PFOA 動物実験:甲状腺ホルモン異常(Butenhoffら 2002) 疫学研究:前立腺がん死亡(Gillilandら1993) PFOA・PFOSの毒性(2) L型Ca電流動態変化(Harada 2005) Gap Junctional Intercellular Communication 阻 害(Upham 1998) HMG CoA還元酵素阻害 (Haughom 1992) PPARaアゴニスト(Abdellatif 1990) PFOA・PFOSのヒト曝露(1) 米国: (Olsenら, 2003) PFOS 34.9ng/mL PFOA 4.6ng/mL 日本:(Haradaら, 2004) PFOS 13.8-28.1ng/mL PFOA 7.1-12.4ng/mL PFOA・PFOSのヒト曝露(2) 1990年代から2000年代にかけての経年変化 日本(秋田)(Harada et al., 2004) PFOA:増加傾向 PFOS:増加傾向無し 米国(Maryland)(Olsen et al., 2005) いずれも増加傾向無し 目的 日本におけるPFOA・PFOSのヒト曝露の経年傾 向をより詳細に評価する 国内複数地域においてPFOA・PFOSヒト曝露を比 較し、環境汚染との関連を検討する 調査対象 血清試料: 京都大学病院外来患者由来、1983年から1999年ま での5時点、男女各10検体、計100検体 (試料は連結不可能匿名化されて京大病院より譲渡) 国内10地域、健診由来、男女各10検体、計200検体 (試料は書面による同意を得て採取された) 本研究計画は京都大学医の倫理委員会の承認を得ている Study area and study population 化学分析 Ion pair extraction (Hansen et al. 2001) 血清(0.5mL)をポリプロピレン製遠心取し、 内部標準[1,2-13C2]-PFOA (1ng)、 0.5M tetrabutylammonium hydrogen sulfate (1mL) 、 0.25M 炭酸ナトリウム緩衝液(2mL) の順に加えて混和し、methyl tert-butyl ether (5mL) で2 回の抽出を行った。MTBE層を窒素パージして乾固後、 90%メタノールに再溶解し、ナイロンメッシュフィルター (0.2μm)でろ過した検液をLC/MSで分析した。 LOQ : 0.1 ng/mL for PFOA and PFOS Serum levels of PFOS and PFOA in current samples 血漿中PFOA濃度 幾何平均+幾何標準偏差 20 18 16 14 ng/ml 12 男性 女性 10 8 6 4 2 0 秋田 福井 兵庫 高知 京都 宮城 沖縄 大阪 岐阜 山口 血漿中PFOS濃度 幾何平均+幾何標準偏差 50 45 40 35 ng/ml 30 男性 女性 25 20 15 10 5 0 秋田 福井 兵庫 高知 京都 宮城 沖縄 大阪 岐阜 山口 Time trends in PFOA and PFOS serum levels in Kyoto 考察 PFOAは近畿地方で特に高く、米国での平均レベ ルよりも高かった。 近畿地方で水質、大気中でPFOAが他地域より高 く検出されることとの関連が示唆される。 経年変化でもPFOAが16年間で高い伸びを示した 日本ではPFOAの汚染が米国と異なるシナリオで 進行していると考えられる。
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