20120317 e-シンポ 大気中有機フッ素化合物の 一斉調査について 東條俊樹(大阪市立環境科学研究所) 竹峰秀祐(兵庫県環境研究センター) 背景 ◆ PFOS/PFOA 極めて高い残留性を示し、且つ、脂肪組織に多く偏在する他の POPsの旧来のパターンと異なり、血液や肝臓中のタンパク質と 結合するといった生物蓄積性および生物濃縮性をもつ(PFOS) 2009年5月POPs条約の第4回締約国会議において製造・使用, 輸出入を禁止とする規制対象に指定(PFOS) USEPAによる排出量等に係る自主的削減プログラム(PFOA) ◆ 商業的に生産されたPFAS/PFCA製品 主要な成分として直鎖で炭素数が8である物質(PFOS/PFOA) を含む混合物 合成過程や未処理の原料にもよるが、PFAS/PFCA製品には、 炭素数が4から13の同族体が存在 ◆ 他の有機フッ素化合物 PFOS/PFOAの前駆物質(スルホンアミド類(PFSAs)やテロマー アルコール類(FTOHs)) 目的 – 大気中PFSAsやFTOHsに関する報告は、多く存在 – PFOS/PFOAを含むPFASs/PFCAsに関するものは? ◆ PFOS/PFOA以外のPFASs/PFCAsやPFSAs,FTOHs以外のテロマー 類に関する情報が皆無である大気環境についても調査を実施できる 体制を構築する →大気中PFOS/PFOAおよび類縁化合物の同時分析法の 開発 ☆環境省「平成16年度化学物質環境汚染実態調査」 (1)分析法概要 大気試料を石英濾紙に一定流量で通してPFOS及びPFOAを同時に捕集 する。目的物質を捕集した濾紙を高速溶媒抽出装置で抽出し、その抽出液 を固相抽出し、固相からの溶離液を濃縮後LC/MS-SIMで定量をする。 ブレークスルー実験 100 PFOA PFOS 線形 (PFOA) 線形 (PFOS) 90 80 Recovery efficiency(%) • PFOS/PFOAの回収率(≒ろ紙 への残存率)の範囲は、1088% • 夏季調査時のPFOSおよび PFOAの回収率の平均値はそ れぞれ44%,20%,冬季は 69%,71% • 調査期間中の平均(最高)気温 は、5.1(7.6)から27(32)℃の範 囲 • PFOS/PFOAの回収率と気温 が逆相関の関係 70 60 y = -1.5869x + 81.376 R2 = 0.56 50 40 30 20 y = -2.8638x + 91.12 R2 = 0.90 10 0 0 5 10 15 20 25 30 Temperature(℃) Fig. Relationship between average air temperature and recovery efficiency of PFOA from breakthrough experiment 大気中PFOSおよびPFOAを含むPFASs/PFCAs濃度の変動は、 大気採取期間中の気温に大きく影響を受ける エアサンプラーおよび捕集材 ハイボリウムエアサンプラー、石英もしくはガラス繊維ろ紙 (QFF or GFF;粒子態を捕集)、ポリウレタンフォーム (PUF;ガス態を捕集)、活性炭素繊維ろ紙(ACF;テロ マー類を捕集) QFFもしくは GFF PUF ACF PUF ホルダー Fig. Example of High-Volume Air Sampler Ref. 「Manual on Determination of Dioxin in Ambient Air」, Ministry of the Environment 添加回収試験 Fig. Results of breakthrough experiment for PFASs/PFCAs in ambient air samples (n=2) Fig. Results of Recovery Experiment for PFASs/PFCAs in QFF and PUF 180 100 QFF(n=3) PUF(n=4) 140 90 120 80 100 70 Recovery rate(%) Recovery efficiency(%) 160 80 60 40 20 60 50 40 30 0 MPFBA MPFHxA MPFOA MPFNA • PUF-second PUF-first QFF MPFDA MPFUdA MPFDoA MPFHxS MPFOS 20 MPFOS/MPFOAやMPFHxA,MPFNAそ してMPFDAなどはQFF、PUFともに良好 な回収率(74-100%) 10 0 MP • FB A MP FH xA MP FO A MP FN A MP FD A F MP Ud A F MP Do A MP FH xS MP FO S QFFからのブレークスルーは生じていた が、PUFに比較的鎖長の短い化合物は 効果的に吸着・保持されていた ◎ガス態および粒子態を合わせたPFASs/PFCAs濃度の算出(特に鎖長 の短い化合物に対して)には、QFFとPUFを併せた手法が有効 分析法の概要(PFSAs/PFCAs) 石英もしくはガラス繊維ろ紙 ポリウレタンフォーム(PUF) 3 大気試料(粒子態) 1000m ハイボリウムエアサンプラー (700L/ min)で24h捕集 3 大気試料(ガス態) 1000m サロゲートMPFAC- MXA(Wellingt on製) 2ng添加 メタノール溶液150 mL , 1 5min 超音波抽出 超音波抽出 ハイボリウムエアサンプラー (700L/ min)で24h捕集 サロゲートMPFAC- MXA(Wellingt on製) 2ng添加 0.1%アンモニア/メタノール100 mL , 15min 2回繰り返す ロータリーエバポレーター 2~3mL程度まで 濃縮 固相カートリッジ OasisW AXカートリッジ への通液 コンディショニング方法: 0.1% ア ン モ ニ ア /メ タノ ール 5mL→メタノール 5mL ガラス器具およびカートリッジ 洗浄 メタノール 5~10 mL カートリッジ溶出 0.1%アンモニア水/メタノール 4 mL 濃縮 N2ガス 13 3回繰り返す 固相カートリッジ OasisW AXカートリッジ への通液 コンディショニング方法: 0.1% ア ン モ ニ ア /メ タノ ール 5mL→メタノール 5mL ガラス器具およびカートリッジ 洗浄 メタノール 5~10 mL カートリッジ溶出 0.1%アンモニア水/メタノール 4 mL 濃縮 13 1 mLに定量 N2ガス 13 シリンジス パイク( C8PFOA、13C8PFOS)各2ng添加 シリンジス パイク( C8PFOA、 C8PFOS)各2ng添加 LC/MS/ MS 測定 ロータリーエバポレーター 2~3mL程度まで 濃縮 LC/MS/ MS 測定 1 mLに定量 分析法の概要(テロマー類) 活性炭繊維フェルト (ACF) 大気試料 1000m3 ハイボリウムエアサンプラー(700L/min)で 24h 捕集 高速溶媒抽出装置(ASE200) 抽出 抽出溶媒:酢酸エチル、22mL セル サ ロ ゲ ー ト (M4:2FTOH 、 M6:2FTOH 、 M8:2FTOH 、 M10:2FTOH) 各 100ng 添加 濃縮 1mL 程度まで濃縮 Supelclean LC-Florisil/LC-Silica 使用 固相クリーンアップ 1:1=ジクロロメタン:酢酸エチル 10mL で溶 出 濃縮 1mL に濃縮 シリンジスパイク(8:1FA)1000ng 添加 GC/MS 大気中PFCs全国一斉調査概要 【対象物質】 PFOS/PFOA。分析可能であれば、関連化合物(テロマー類など)も。 【参加機関】 関東(7機関):東京都、群馬県、神奈川県、千葉県、埼玉県、川崎市、 (国環研) 中部(1機関):(名古屋市) 関西(7機関):兵庫県、大阪府、滋賀県、京都府、奈良県、大阪市、 (神戸市) 九州(1機関):福岡県 ※()は、夏季調査からの参加機関 【実施期間】 冬季:2011年2/22-25の連続3日間 夏季:2011年9/5-8の連続3日間 まとめ ◆ 大気中有機フッ素化合物の一斉分析法を構築するために、大気中 ダイオキシン類やPCBsの捕集に用いられるポリウレタンフォーム (PUF)をQFFと併せて使用することにより、安定的にそれらの物質の 大気中濃度が評価できる(=良好な回収率が得られる)ことを期待し、 分析手法を再検討した ◆ QFFとPUFへの大気中PFASs/PFCAsの分配を見てみると、大気採 取期間(平均気温26.6℃)においてQFFからのブレークスルーは生じ ていたが、PUFに比較的鎖長の短い化合物は効果的に吸着・保持さ れていた。従って、ガス態および粒子態を合わせたPFASs/PFCAs濃 度の算出(特に鎖長の短い化合物に対して)には、QFFとPUFを併せ た本手法が有効であることが分かった ◆ H22年度冬季大気中PFCs調査におけるPFASs/PFCAs濃度は、 9.0~100pg/m3(平均35pg/m3)であり、中でもPFOSおよびPFOA濃度 の平均値は、環境省「平成16年度暴露量調査結果」と比較して同程 度であった ◆ 組成は、PFSAs/PFCAs、テロマー類ともに地点間で類似しており、 発生源プロファイルを反映している可能性が示唆された
© Copyright 2024 ExpyDoc