環境社会学 4. 「環境問題」の社会的構築 1 米軍基地は「環境問題」か? 航空機による騒音,墜落,部品落下などのほか,演習や事故によ る流弾,原野火災,そして廃油や航空燃料の流出なども日常的に 起きている。騒音も,普天間飛行場や嘉手納飛行場周辺では加重 等価平均感覚騒音レベル(WECPNL,うるささ指数)で環境省の航 空機騒音の基準である75を超える地点が増えている。 件数 航空機墜落 1972~ 2005 2004 41 0 2006 2007 2008 2009 総計 1 0 1 0 43 航空機不時着 233 57 25 32 22 8 377 他の航空機事故 54 6 6 4 5 2 77 廃油等流失 94 4 2 4 6 11 121 原野火災 443 9 8 20 18 14 512 2 環境問題の定義(2回目の授業) 40 地球温暖化 選んだ環境問題の比率(%) 35 大気汚染 30 オゾン層破壊 25 酸性雨 水質汚濁 20 森林破壊 砂漠化 15 原発事故 10 ゴミ問題 生物多様性減少 5 0 2013 水・エネルギー枯渇 2014 2015 3 環境問題の定義(皆さんの解答から) 人間が行う行動が,自然や社会に引き起こ す悪影響. 誰が=人間 誰に=自然?生物?社会? 事実 × 価値 (影響) (悪) 4 人間 生物 自 然 環 境 悪・有害 不利益 行動 温室効果ガス オゾンホール etc ポイント1:人間や生物 (被害を受ける主体)の重要性! それを価値判断する人間の重要性! 5 環境問題の定義(皆さんの解答から) 人間が自分たちの利益のための行為によっ て,自然を汚染し,その地域だけでなく世界 規模で環境に悪影響をもたらす問題 利益,利便性,幸福の追求,欲望,技術 6 人間 利便性 経済発展 幸福 悪・有害 不利益 酸性雨 温暖化 ポイント2:経済 経済発展による利益の負の側面 自己言及的な循環(サイクル) 7 環境問題の定義(昨年の解答例) 人間の行動により生態系に変化をもたらし, それによって人間が困る問題。それを人間が 問題と判断したこと。 元通りにするには,果てしない時間と人々の 協力が必要となる。 8 人間 認知 対策 利便性 経済発展 幸福 悪・有害 不利益 酸性雨 温暖化 ポイント3:人間の認識・知識 誰かが知って声を上げる=問題! 9 知らない=科学の限界! 気にしない=社会の限界 環境問題を考えるための留意点 1. 主体:誰にとっての問題か? 2. 経済:究極の原因は何か? 3. 知識:なぜ防げないのか? 10 「環境問題」の社会的認知 人間の行為 人間の行為が集積する 環境変化 「問題だ!」 「環境問題」 環境変化を誰かが認知し て声を上げる 利害関係者が「環境問 題」を定義する 「環境問題」の再解釈・再定義 11 WORK 誰が「問題だ!」と声を上げる のか? 具体例を考えよう 1. 被害者が声を上げた例 2. 専門家が声を上げた例 12 誰が「問題だ!」と声を上げるのか は,その後の展開に影響する! 1. 被害者が声を上げた場合 – 水俣病の場合 工場排水改善までに10年! – 豊島事件の場合 公害調停まで22年! 2. 専門家が声を上げた場合 – 地球温暖化の場合 • • 1988年6月米上院でのJ.ハンセンの発言 同年8月にはIPCC設立 – 生物多様性の場合 • • 1986年生物多様性フォーラムでの造語 1992年国連生物多様性会議,カルタヘナ議定書 13 問題提起の権力格差 • 政治的格差 ・経済的格差 ・文化的格差 大きな声 政治 家 独占 企業 専門 家 行政 市場 マスメ ディア 地域住民 消費者 素人 14 問題提起のフレーミング • 社会運動の参加主体が意識的・戦略的に問 題となる「状況の定義」を構成すること,ある いはそのようにして構成された問題の定義. 公害 風土 病 傷害 事件 自然 現象 成長の 代償 遠くの 事件 15 フレーミング:知床世界遺産登録 • 原生自然に近い貴重な自然の保護 • 世界遺産登録ICOMOS(国際記念物遺跡会議) • 何かが足りない!(北大の人類学者) • 先住民の歴史と生活 • 先住民エコツーリズム(北海道のNPO) http://www.shinra.or.jp/ainu_eco_tour.html 16 「環境問題」の定義と解釈 問題だ! 問題 1 問題 2 問題 3 社会運動の担い手 外部 社会 マスメ ディア 何が問題なのか? フレーミング間の闘争 公共的アリーナ:議論が行われる場 「環境問題」の再定義・再解釈 17 公共的アリーナ=議論の場 • • • • • 議会(国会,地方議会) 選挙(選挙公約,候補者座談会) マスメディア(ウェブ,テレビ,新聞,雑誌) 行政関係(審議会,委員会,フォーラム) 住民説明会,公聴会 18
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