環境社会学 2. 人間社会と環境を考える Shichi festival at Sonai village: an agricultural ritual for ancestral and rice god that designated as national intangible cultural assets. November 2004 1 練習問題1 環境保護と環境保全はどう違うか？ • 先週説明した20世紀初頭のアメリカにおける自然保護派と資源管理派の対立，1960年代のEhrlichとCommonerの論争を参考に，両者の違いを簡潔に述べなさい。 → 教科書 pp.19-20 2 草原の減少？（教科書pp.10-12）日本では草原は，人間の手を排除すると，森林になってしまう．しかし，草原には，草原でしか生きていけないような貴重な生物がたくさん存在する．草原は，人間が手を加えることで維持されてきた生態系である． 3 青森県種差海岸のサクラソウ • 馬産地としての芝の草原からクロマツの林へ，明るい牧場から暗い林への変化によって絶滅の危機へ • ISOフォーラムでの名久井農業高校受賞講演 https://www.youtube.com/watch?v=xsDdFm0 Jepo 4 熊本県阿蘇の草千里 • 放牧のための草原を野焼きによって維持してきた． • RKK熊本放送 http://rkk.jp/mmeye/vr02b.php • 阿蘇草原再生（環境省プロジェクト） http://www.aso-sougen.com/ 5 社会学は環境保護ではなく環境保全を目指す（教科書 p.3） • 自然と社会が相互作用する場が環境社会学の対象領域である． • 自然と社会の相互作用は，歴史的・文化的・社会的に多様． • 一つの現場（フィールド）でも，そこに参加する主体の歴史的・文化的・社会的背景によって，アプローチの仕方が様々である． • そこに主体間の対立とともに，新たな連帯の可能性が生じる．環境問題は，社会によって引き起こされた問題であると同時に，新しい社会を形成するきっかけにもなり得る． 6 「公害」から「環境問題」へ「人間」と「自然」の関係性 • しかし，個々の「人間」の選択や責任には限界がある． • 社会を離れた「人間」は存在しない． • 問題は社会である． 7 「環境問題」の発見（教科書 pp.6-8）公害環境問題 • 例：水俣病，イタイイタイ病，四日市大気汚染 • 例：生活環境問題や地球環境問題 • 「労災問題」の外部化としての問題であり，私企業の責任問題として捉えることができた． • 特定の企業だけでなくあらゆる人間の活動が引き起こす問題 • 「人間」と「自然」の関係性の問題として捉えられるようになった． 8 環境問題が社会問題であるとはどういうことか？ 1. 人間の手の加わらない自然はない． 2. 人間の行為によって起こる． 3. 文化や歴史に影響される． 4. 「環境問題」という社会的認知が環境問題をつくる． 9 人間の行為によって起こる  加害者と被害者が存在し，両者には非対称的な関係がある．  加害者の主体的行為  加害を生み出す社会構造  被害者の主体的行為  被害を生み出す社会構造行政大企業加害の社会構造サービス業農民漁民 10 文化や歴史に影響される 環境問題の起こり方は社会によって異なる．その文化的・歴史的背景を考えよう．     なぜこの社会で？なぜこの時代に？他の社会では？他の時代では？ 11 環境問題の認知は社会的である 人間（集団）が問題を発見し，他の社会集団に訴える．だが，問題の認知は集団によって異なる．     社会 → レポート課題被害者：公害科学者：「気候変動」のような客観的事実後世代：? 12 自然環境の認知も社会的である  「自然」は人間が作った概念．  人間は「社会」というフィルターを通してしか自然と触れ合えない． 例えば，動植物や自然現象の名前，自然科学，マスメディア，農林水産業，鉱業など 13 社会構築主義は社会的につくられているつまり・・・ – は当たり前の事実として多くの人々に思われている – しかし，そのようながある（と私は思う）の信じられかたには問題は権力やマスメディアや知識人によって（あるいは普通の人々の思わざる相互作用の結果として）作り上げられたものである 14 環境社会学とは何か？ 人間社会が自然環境に与える諸作用と，その結果として自然環境が人間社会に及ぼす諸影響など，自然環境と人間社会の相互関係を，その社会的側面に注目して，実証的かつ理論的に研究する社会学分野である．（飯島（1998）に基づく） 15 練習問題2 環境問題を定義してみよう • 社会のなかで共有されているいわゆる「環境問題」＝人びとの相互作用によって言葉の定義がつくられている。 • 当たり前と思われている定義をいったん解体して，考えなおすことが重要である。 • 実際に起きている個々の「環境問題」から，ボトムアップ的に定義を考えてみよう。 → 配布問題 16