校長挨拶

“共生”
“信頼”
校
長
“連携”
伊
藤
順
一
本校は,明治7年「八鍬学校」「谷沢学校」として開校した歴史と伝統に輝く学校です。
児童数は126名,「かしこく
明るく
たくましい
高松っ子の育成」をめざし,21名の教職員が,保護者・地域に信頼
され支持される「ぬくもりのある学校」をめざしています。
昨年度は、総務省委嘱「フューチャースクール推進事業」最終年度としての公開研究発表会やJRC活動報告
会に常陸宮妃殿下華子様が御来校になるなど、充実した教育活動を展開することができました。
本年度は、昨年度の学校評価や「さがえっこ育みアクションプラン」の重点事項にもとづき、さらなる前進を図りた
いと考えております。また、文部科学省委嘱「学びのイノペーション事業」、「(仮称)楯岡特別支援学校寒河江分校
設置」については、「共生・信頼・連携」を基盤とした対応に努めていく所存です。
体罰やいじめ、教職員の不祥事等、教育に対する信用が損なわれるような事件が相次ぐ中、改めて襟を正すと
ともに、全教職員のベクトルを同じにして知徳体の調和のとれた子どもたちの育成をめざした教育活動を推進して
まいりますので本年度もどうぞよろしくお願いいたします。
1
めざす子ども像
かしこく
めざす学校像
ぬくもりのある学校
めざす教職員像
同僚性を大切にした教職員
明るく
たくましい
子ども
【めざす子ども像(学校教育目標)】【めざす学校像】【めざす教職員像】具現化のために
学校教育目標等の具現化のための学校経営の基底として「共生」「信頼」「連携」を掲げます。
「基底」とは,「基底をなす精神」などと使われるように,ものごとの基礎となるもの,おおもと,根底といった意味で
す。
学校は組織体ですから,校長には校長の,担任には担任の,教職員には教職員のそれぞれの役割があります。
-1-
大まかには,校長は目的地を,教頭は針路を,教務主任は調整を,そして担任が子どもと一緒に進み,それを支え
るのが教職員ととらえています。そこで最も大切にしたいのは,高松小学校の教職員全体が同じ方向性で進むと
いうことです。
126名の子どもが「かしこく 明るく たくましい」高松っ子になるよう,ぜひ,これから述べさせていただくことについ
ての共通理解をよろしくお願いいたします。
まず「共生」とは,社会が変化し人間の価値観が多様化していくことや集団は異質な人々の集まりであることを
前提に,おたがいの存在そのものを尊重しかかわりをもって生きていくこと,そしてこのかかわりによっておたがいに
高まっていくことをめざすものととらえています。他者との共生を図る過程で,自分の考えを主張することや相手の
立場になって聴くことの大切さが身につき,意志決定をするための「自律」や「自己変革」が促され,ひいては本県
教育の目標である「知徳体が調和しいのち輝く人間の育成」並びに本市の学校教育目標「かかわりの中で 心と
体を育み 学び伸びていく児童生徒の育成」につながっていくと考えます。共生教育のねらいは,何でも相手に合わ
せることができるようにすることではありません。おたがいに主張し,おたがいに聴き合うことによってよりよいものを
創り上げていこうとする人間教育の一つと私はとらえています。
次に「信頼」です。学校における「信頼」の対象は様々です。「子どもどうし」「子どもと教職員」「教職員と保護
者」「教職員どうし」「学校と地域」等々。私たちは,将来を担う子どもの人格形成に寄与するという崇高な使命を持
っています。そのためには,子どもや保護者,地域との信頼関係を構築することがなによりも大切です。
信頼関係があれば,子ども・保護者・地域は,学校にそして教職員の思いに心を寄せてくれます。同じ土俵で話し
合うことができます。それがなければ,どんなにすばらしい理念や方針に基づいた指導や教育活動を行っても相手
は受け止めてくれません。受け止めてもらえない指導は,何の役にも立ちません。その信頼関係を構築するために
どうすればよいか。荒木教育長さんは,次のように述べています。
『まず,子ども,保護者,地域の声に「耳を傾ける」「心を寄せる」教職員であってほしい。謙虚な姿勢が,子どもや
保護者,地域の信頼を得る。次に,わたくしたち教職員それぞれの力を高め合う「同僚性」を大切にしてほしい。そし
て,教育に携わる者として,信頼に値する教職員であってほしい。』
教師だからといって,「いつも自分が正しい」「保護者は,私の言うことをきくのが当たり前」といった“上から目線”は
厳に慎みたいものです。確かに私たちは教育のプロです。しかし,それを振りかざしても物事は解決しません。子ど
も・保護者・地域といった相手の立場に立つ,即ち相手の言いたいことをきちんと聴くことを肝に銘じ,そのうえで,より
よい方向性を導き出していきたいものです。
3つ目は「連携」です。
子どもを育てるのは学校だけでできることではありません,特に、保護者と連携して進める必要があります。
本
年度も、知徳体の調和のとれた子どもをめざし「さがえっこの育み10か条」の中から,寒河江市全体で取り組む重
-2-
点事項を含め、知では,学びの連続性という観点から「学力を支える家庭の学習」を,徳では,「さわやかなあいさつ
心が通う」と豊かな心を育む読書習慣を育成するための「絵本や本
寝
早起き
読んで広がる心と世界」を,体では,「早
家族で朝ごはん」を重点事項として取り上げました。また,総合的な学習の時間では,学年総合とし
て本地区の自然や文化,歴史,産業などの教育財産を取り上げ高松地区を愛する子どもを育てたいという願いを
もっています。
そうしたとき,家庭や地域との連携が欠かせません。教職員の皆様には,校長の思いを受け止めていただき,担
任としてあるいは各指導部の一員として,学級経営や担当する校務分掌にこの「連携」を意識した視点をぜひ取り
入れていただきたいと思います。
家庭の実態はそれぞれ異なります。可能な限り,その子の家庭に応じた連携のあり方を模索したいものです。
目指す目的地は,共有しましょう。例えば,東京に行くとします。飛行機は,所要時間から考えると便利です。新幹
線は,搭乗までのタイムロスや費用の面では飛行機よりも便利です。自動車は,時間がかかりますが,途中好きなと
ころで立ち寄ることができます。
このように,目的地は同じでも手段は様々あるはずです。どの手段で目的地に向かうかは,その時々の条件で
異なります。家庭との連携も同じではないでしょうか。家庭の実態に思いをはせた連携でありたいものです。
このように,本年度も「共生」「信頼」「連携」を「経営の基底」に据えた学校経営を推進していきます。全教職員の
ベクトルを同じにして教育活動を推進していきましょう。
2
めざす学校像について
めざす学校像は,「共生」「信頼」「連携」を基盤とした「ぬくもりのある学校」です。
「ぬくもりのある学校」に必要な環境は四つあると考えています。
一つめは,周りの人(友だち,教職員,保護者,家庭,地域)が自分を温かく包み込んでくれ,わかってもらえている
と実感できる環境です。二つめは,所属感が感じられ,自分をかけがえのない存在と認めることができる環境で
す。三つめは,「できるよ」という励ましがあり,また,失敗が許されるだけでなく再チャレンジでき,結果だけではなく
取り組みの過程が大切にされる環境です。四つめは,まさに共生教育のねらいそのものである,他者受容の環境
です。
このような環境が醸成されれば,高松小学校の子どもたちは、心はずませて意欲的に学び,私たち教職員はやり
がいをもって勤務し,家庭や地域は安心して子どもたちを預けてくれるはずです。
ある文集に,こんな作品が掲載されていました。
『雨に降られ,お母さんに迎えに来てと電話したら,「濡れて帰りなさい。」と冷たい返事。
-3-
「くそう!にくたらしい!」
わざと濡れて帰ったら,あったかいお風呂がわいていた。』
お母さんの「ぬくもり」が伝わってきます。甘やかすことなく,しかしいつでもわが子を受け止め,ほんのり包み込む
あたたかさ,優しさが伝わってきます。
この「母性的教育」とともに大事にしてほしいのが「父性的教育」です。ややもすると、秩序を乱したりルールを破
ったりする子を指導することにためらいが生ずることはないでしょうか。「個性」を重んじることが悪いのではなく、間
違った個性の理解にしたがって個性を重んじることに問題があると思います。個性とは、単に他と違っていることで
はなく、集団生活をおくるうえでのルールをきちんと身につけたうえで発揮されるものだと考えます。
「ぬくもりのある学校」と「正義がとおる学校」は相反するものではありません。人間としての基本的な躾、集団が生
活するには大切なルールがあるということを、父性的な観点から指導することも大切です。
3
めざす教職員像について
めざす教職員像は,「共生」「信頼」「連携」を基盤とした「同僚性を大切にした教職員」です。
「同僚性」については,西村山小学校長会機関誌「爍」第43号の巻頭言として掲載された草苅和男前寒河江
小学校長の文を紹介します。
『教師社会には,「共同歩調主義」と「相互不干渉主義」があるといわれています。「共同歩調主義」とは,学級行
事や学級独自の取り組みなど一部のクラスだけが突出することを嫌い,極力足並みを揃えようとする考え方です。
経営という面から考えた場合,共通理解や意思統一は必要なことですが,学級の独自性や特色ある経営は認めら
れるべきであり,教師一人一人の教育理念や個性を生かしながら,ともに高め合う関係こそ大切にしなければなら
ないと思います。「相互不干渉主義」というのは,他の教師の学級経営や授業などに対して,批判的なことは極力
避けて,お互いが当たり障りのない言動に腐心している関係です。悪い意味での「学級王国」が成立し,世間の人
から見れば,なれ合い関係の「お友だち学校」などと揶揄されてしまいます。「同僚性」というのは,この二つの教師
社会の風潮を打破して,お互いが批判すべきことはきちんと言える関係,学ぶべき点はお互いが評価し合い高め
合う関係だと思います。』
この同僚性が発揮できれば,1+1が3にも4にもなり,教職員にとって働きがいのある学校につながると確信して
います。ベテランの先生はこれまで経験から培われたノウハウを,若手の先生は柔軟な発想をといったそれぞれの
持ち味を発揮し,教職員全体の「教師力」を高めていきましょう。
同僚性を高めるのは,「目的」ではなく「手段」です。では目的はなんでしょう。それは,教育の専門家としての確
かな力量を高めることです。同僚の先生のよさに学びましょう。疑問なことは聞きましょう。おかしいと思ったら,自分
-4-
の考えをぶつけましょう。教職員の資質向上は教職員集団によって大きく左右されます。また,資質や能力は固定
的なものではなく変容,深化させるものです。新しい指導方法を学び,確かな授業と学級経営,総合的な人間力,職
務に対する使命感と情熱で,子どもや保護者から信頼される教職員をめざしたいものです。
保護者にとってわが子は「1分の1」のかけがえのない存在です。子どもには,子どもなりの主張があるはずです。
まず,その声に「耳を傾け,心を寄せる」教職員でありたいものです。
また,「教師は授業で勝負する」と言われるように,この力量が「教育のプロ」のプロたる所以です。
そして,授業がうまいといわれる先生は,「学級経営」も巧みです。その先生方に共通しているのは「聴く」姿勢で
す。まず聴いて,子どもを理解しようとしています。まず聴いてから,教師の願いをからめ授業をすすめたりよりよい学
級にしようとしています。
佐藤学先生(東京大学大学院教育研究科教授)は,『教育展望』(教育調査研究所)という冊子で「聴く」ことの
大切さについて次のように述べています。
『対話的コミュニケーションが成立している教室では,どの教師も「話す」ことよりも「聴く」ことに専念しています。なぜ
なら,子どもは,最初から教師の求めるところに玉を投げられるわけではありません。その多くは曲玉であったり外れ
玉であったりします,教師がそれらの曲玉や外れ玉を正面からキャッチするならば,子どもは受け止められた快感を
励みとして玉を投げ続け,やがて直球を教師のもとに投げ返せるようになります。しかし,いくら玉を投げても教師が
ポロポロと玉を落としたり後ろにそらしてしまうようだと,キャッチボールの楽しみは失われ,玉を投げることもしなくな
るでしょう。教室で貝のように口を閉ざしている子どものほとんどは,曲玉や外れ玉しか投げられない子どもたちで
あり,いくら投げても教師に受け止めてもらえたことのない子どもたちです。教室に対話的コミュニケーションを実現
するための最初の第一歩は,教師自身が言葉のキャッチボールの相手として,どんな曲玉や外れ玉でもまるごと正
面から受け止めることに専念することだと思います。』と。
教室は,授業をとおして子どもたちが学び育ち合う場所です。そしてその学び育ち合う関係は,他者の声を聴き
合う関係を基盤として成立していると考えます。まず,子どもの声に耳を傾けてください。子どもの声を聴いてあげ
てください。その構えが,確かな授業や学級経営に結びつくと信じています。
4
学校教育目標具現化に向けた「イメージの共有化」のために
本年度も,知徳体のめざす子ども像ごとに,3つの重点と方策,めざす子どもの姿を定めました。重点化すること
によって,あれもこれもからの脱却をめざし経営の方向性を明確し,教職員のベクトルを同じにしたいという思いがあ
ります。
学年の発達段階や子どもの実態に応じた取り組みをお願いします。
-5-
①進んで学ぶ子どもについて
[Ⅰ]学び合いを大切にした学習活動の充実について
めざしてほしい授業のイメージは,子ども同士の発言や教師と子どものやりとりが,織物の縦糸と横糸のようにな
って進む「紡ぎ合う」授業です。教師の発問に子どもが答えるといったことの繰り返しではなく,ある子どもの発言
に,他の子どもが触発され自分の考えを話したくなるような,うまく伝えきれない子どもの思いを適切な言葉で補助
してあげることによっておたがいに高まっていく,そんな授業をめざしてほしいと思っています。
言い換えれば,教師と子どもの「ピンポン型」の授業ではなく,子どもどうしの発言が繋がっていく「バレーボール
型」の授業です。
学級はもちろんこれから子どもたちが成長していくうえで所属する集団は,異質な人たちの集まりであることが多
いはずです。できる子もいればそうでない子もいるというのが普通だと思うのです。わからない子は,何がわからな
いのか,どこまでわかるのかということを伝えることができるようにする。わかる子は,わからない子の身になって教
えてあげるという,そんな場面が数多く見られるような授業を期待します。
そのための一つの手段してICT機器の有効活用に努めたいものです。私たちは、これまで3年間「フューチャース
クール推進事業」に取り組んできました。多くのことを学ぶ中で感じたことは、「ICT機器は魔法の道具ではない。授
業をデザインするのは、あくまで教師である」「ICT機器がなくとも授業はできる。しかし、機器があるとより豊かな学
び合いができる」ということです。どの場面でどう使うかという有効性を更に吟味するとともに整備していただいた
機器やソフト、教材の活用を含めて「学び合う」学習を推進していきたいものです。
さらに、先に「聴く」ことの大切さについて述べましたが、ただ聴いただけでは高まりません。聴いたならば,その発
言やつぶやきが,教材のどことつながって発せられたのか,他の子どものどの発言とつながって発せられたのか,そ
の子自身のそれ以前の考えや発言とどうつながって発せられているのかという「つなぐ」ことを大切にしてください。
そして,最後に「それ,どこに書いてある?」というように「もどす」ことが大事だと考えます。
[Ⅱ]自己学習力の育成をめざした家庭学習の充実について
通常の授業サイクルは「導入-展開-整理」と進みますが,その整理の段階における終末の工夫をお願いしま
す。その理由は2つです。
一つめは,より児童の実態に応じた指導ができると思うからです。ふつう,先生方は,授業の中で出てくる子ども
たちのつまずきにその場で対応してくれます。もし,そのつまずきを事前に把握することができたらどうでしょう。予
想されるつまずきに応じた手立てを準備することで,より適切な対応ができるのではないでしょうか。
そのために,例えば,授業の最後をいつも本時の練習(定着)問題だけで終えるのではなく,その問題に,次時の
学習課題につながる問題を入れておくのです。そのことによって,つまずきを事前に把握しやすくなりますし,もし全
-6-
員ができそうであるとすれば,学習課題の質を高めたり,どこに時間をかければいいかという学習のながれ全体を
考えることもできると考えます。次時の学習のためのレディネスが把握できれば,指導の手立て,支援のあり方など
様々な対応を事前に準備することができます。その手立てが有効であったかどうか考察し,次に生かすことが期
待できます。
二つめは,家庭学習と自己学習力の育成という観点からです。これまでの家庭学習,いわゆる宿題は,漢字練習
や計算ドリルといった復習的要素が強いものがほとんどだったと思います。学習の定着を図るという点で,その役割
を否定するものではありませんし,今後も大切にしていかなければならないと思っています。ただ,その方法で「自己
学習力」が高まるかといえば,首をひねらざるをえません。自分で課題を見つけ自分で取り組むという力を「自己
学習力」と定義すれば,予習的要素を家庭学習に取り入れることが一つの契機となるのではないでしょうか。理想
をいえば,担任が宿題を出さなくとも自ら進んで学習できる子になってほしいのですが,一足飛びにその姿を求め
ても難しいものがあると思います。であるならば,学校での学習と家庭での学習を結び付ける予習的要素の宿題
を与えるという方法があると思うのです。その際、昨年度作成していただいた「家庭学習の手引き」や「ICT機器」も
活用してください。
「自己学習力の育成」は、一朝一夕でできるものではありません。しかし,自己学習力を身につけた姿が卒業ま
でに確立されるような取り組みをぜひお願いします。
[Ⅲ]特色ある教育活動の推進について
本校には,これまでの先輩方が築いてこられた特色ある教育活動があります。さらなる充実・発展のため,するこ
とが目的ではなく,することによって何を学ばせたいのか,どんな力をつけさせたいのかという「活動の手段化」を図
ってほしいと思います。
そのためには,つけたい力を明確にする必要があります。かつ,その子に応じた評価規準を設定することが大切
ではないでしょうか。例えば,総合的な学習の時間で求められる「課題追求力」。課題を追求するための手段を広
げてあげればよいのか,深めてあげればよいのかは,その子のこれまでの学習レベルで決まってきます。「課題設
定力」についても同じことがいえます。いくつか提示された課題から選択する能力を培うのか,自ら課題を設定する
力を培うのか。いま現在の子どもの実態を把握し,課題解決をとおしてどんな力がついたのか,もっとつけさせたい
力はなんなのかを,教師は適切に把握しながら進めていく必要があると思います。そのために有効と思われる方法
は,「個人カルテ」の作成です。いわゆるお医者さんのカルテと同じように,来院日(学習した日),症状(子どもの実
態や様子),処方(つけさせたい力からくる学習方法の支援)を,個人ごとに記録してほしいと思います。そのことによ
って,総合でめざす力の育成が図られるとともに他教科・他領域への波及も期待できると思います。
また,本年度も「学年総合」に取り組みたいと思います。特に、高松地区にある様々な学習財産を有効活用して
-7-
いただきたいと思います。
【第3学年】
月1~2回程度,今回の学習指導要領の主な改善事項の一つである「伝統や文化に関する教育」の一環として
「詩吟」に取り組みたいと思います。
詩吟は,大築校長先生の時代から始まった他校には見られない活動です。指導者の渡辺美枝先生,田中輝子
先生が熱心に指導をしてくださいます。詩吟はその歴史をたどると,平安中期の漢詩や和歌の宮廷歌謡「朗詠」で
あるといわれている日本の伝統文化の一つです。学校の向かいの平野山には立派な詩吟の碑もあります。学年総
合とすることによって,この特色ある教育活動の存続も図っていきたいものです。
【第4学年】
高松地区は,寒河江市でも屈指の「さくらんぼ」栽培地区です。6月中旬ともなると,家族がなかなかわが子の世
話ができないために,腹痛や頭痛を訴えたり急に甘えっ子になる「さくらんぼ病」が流行するというくらい収穫作業に
おわれます。これまでも4年生が「さくらんぼ」の学習に取り組んできました。さらに内容の充実を図るとともに,新た
に歴史領域に力を入れてみたいと思います。幸いなことに,社会科副読本でも,「清助新田」が取り上げられていま
す。その高松堰をたどれば,日吉神社や谷沢田植踊につながります。その他にも,今は廃線となった「三山線」の始
発駅が高松駅でした。その名残を見つけることやその当時の様子を聞き取ったりすることで,本校ならではの学習
に発展させられるのではないでしょうか。さらに隣の醍醐小学校区には,国指定重要文化財の「慈恩寺」がありま
す。学校から,自転車で行ける距離です。寒河江市民として,ぜひ学ばせたい貴重な財産です。
【第5学年】
昨年度に引き続き,「米」を栽培・収穫をするのが目的ではなく,販売することを目的とした学習を仕組んでほし
いと思います。また,高松地区ならではの「谷沢梅」の梅干しづくり。そして,昨年「谷沢梅」を収穫させていただいた
「いこいの森」も学区内の施設です。高松地区でも寒河江市の補助を受け,遊歩道の整備等に取り組んでいます。
こう考えていくと,学びのステージが広がっていきます。また,「北陵果樹研究会」の皆様とのかかわりも大きなポイン
トになると思います。
【第6学年】
6年生は,社会科で「福祉」の学習をします。この「福祉」といった面から見ても,恵まれた環境にあります。まず,
「高松保育所」です。同じ敷地にあります。訪問したり,園児を学校に招待したりすることによって,情報連携から行
動連携へと発展させたいと思います。幼保連携のモデルとなるような実践が可能だと考えます。また近くに「特別
養護老人ホーム
しらいわ」があります。単発的な訪問ではなく,継続的なボランティア活動も可能ではないでしょう
か。「福祉」を窓口にして,体験をとおした思いやりの心の育成にも結びつけることが期待できます。
-8-
②心豊かな子どもについて
[Ⅰ]JRC精神の涵養
本校は,寒河江・西村山地区内の小学校では唯一「JRC」(青少年赤十字)に加盟している学校で、昨年度は、
常陸宮妃殿下華子様をお迎えし「活動報告会」を開催いたしました。
加盟校だからといって、新たな活動を計画するということではなく,今行っている教育活動をJRCの視点から見
直せればと考えています。その視点とは,JRCの3つの行動目標の「気づき・考え・実行」です。
まず,学級や学校という自分の身近なところから見つめさせてください。なにげなく生活していると気がつかなか
ったことでも,注意深く見ると気づくことができるはずです。自分の「目」で,そして聞こえない声に「耳」と「心」を傾
けさせてください。
それが見えたり心の声が聞こえたら,相手が何に困っているのか,何をしてほしいと願っているのか,相手の身に
なって考えさせてください。そして,「何とかしなくては」と考えたことを,勇気をもって実践できるようアドバイスしてくだ
さい。
ある意味では,勉強が「できる人」よりも,人として「できた人」を育てることが大切な時代かもしれません。
一粒の種は小さくとも,大きな花を咲かせたくさんの実をつける「向日葵」のように,自ら進んで人の役に立つ「で
きた人」をJRC精神を生かして育みたいものです。
[Ⅱ]あいさつ運動の推進
一昨年度の学校評議員会で、「高松小学校の子は、あいさつをしてくれない」という指摘をいただきました。保護
者や地域の方も同様に感じていたようです。そこで、朝会で「あいさつ」についての講話をしました。感じたのは、「あ
いさつはしなければならないもの」「あいさつをすると相手がうれしくなるんだ」ということを実感している子が少なか
ったことです。担任の先生方に、学年の発達段階に応じて指導をしてもらうとともに、全教職員が同じベクトルでこち
らがわから朝夕のあいさつをするようにしたところ、昨年の学校評議員会では「あいさつがよくなってきた」という感
想を述べていただくまでになりました。
まだまだ自分から進んでする、大きな声であいさつをする、学校だけでなく家庭や地域でもあいさつをするという
点では十分とは言えません。今後とも、叱る指導ではなく励ます指導で、あいさつがいきかう学校・家庭・地域をめ
ざしていきましょう。
[Ⅲ]心を耕す読書活動の充実について
読書による大きな感動は,子どもたちの心を豊かにし,本の中で出会った他者の生き方や思いにふれることは,
そのまま私たちの生き方の指針となり,何よりも自分の姿を見つめることにつながります。本校でも,朝読書を取り入
-9-
れたり,「高松小学校絵本の会」の皆様による読み語りの実施,図書紹介やよりよい図書の購入,読破賞や多読賞
による読書の奨励等によって,本の好きな子どもたちが育ってきています。
本年度のポイントは,読書に親しむ習慣の育成です。そのためには「朝の一斉読書活動」の一層の充実とともに,
例えば,国語科で出てきた物語の作者の他の作品を陳列する,お友達にすすめたい本のコーナーの固定化を図
る,ジャンルを指定した読書などで読書量や読書領域の拡大に取り組ませる工夫をお願いします。
一昨年度から,寒河江市読書活動推進員の方が定期的に本校にもお出でいただけることになりました。計画的
なブックトークをはじめとして,子どもが行きたくなるような,居たくなるような魅力ある読書環境の整備を推進してい
きたいものです。
また,読書に親しむ習慣を育成するためには,家庭との連携もポイントになると思います。読書の大切さや楽しさ
を保護者の方にも一層わかっていただけるような投げかけが、読書好きな子どもをそだてる一助になると思いま
す。
③健康でたくましい子どもについて
[Ⅰ]体力・運動能力の向上について
わたしが小さかったときは,近所の上級生といっしょに「探検ごっこ」と称して,崖をのぼったり,高いところから飛び
降りたり,堰を飛び越えたりしていました。そのほかにも,「缶蹴り」「ビー玉」「竹馬」,女の子は「ゴム跳び」。小学校に
なると,近くの神社で毎日のように竹バットで野球ごっこ。
当時,体を鍛えようとか,投力や調整力をつけようなどとは思いませんでした。それでも,それなりの運動能力が
身についたというのは,体育の授業はもちろんですが「遊び」をとおして徐々に培われたものが多かったという気が
します。今のこどもたちは投力が弱いといわれています。私たちの世代は「野球ごっこ」や「石投げ」で,自然に投げ
る感覚が身についたのではないでしょうか。
また,体育の研究校に指定されたときの一つの課題が「運動の日常化」でした。そのために,遊具を整備したり
「ケン・ケン・パー」の丸い円を,校舎前の通路に描いたりしました。白線があると,子どもは走ります。「ケン・ケン・パ
ー」の丸い円があると,子どもたちは自然と遊びます。このことは,「遊べる」環境を教師側が仕組むことによって,子
どもたちは,無意識ながら様々な運動能力を身につけていくということが言えると思うのです。させられる運動や遊
びではなく,子どもたちが自然と取り組むような場の工夫や学習カードの活用,挑戦意欲を大切にした自己目標の
設定,運動継続化の手立ての工夫といった指導をお願いします。
[Ⅱ]家庭と連携した健康教育の推進について
健康教育の理念や指導については,「学習指導要領総則」「健康増進法」「食育基本法」「学校保健法」等に述
- 10 -
べられていますが,本校で特に大切にしたいのは,家庭と連携した取り組みの一層の充実です。
本校ではこれまでも定期的な「保健だより」や「食育だより」の発行をとおして,学校と家庭が一体となっての取り
組みが行われてきました。また,昨年度は「早寝・早起き・朝ごはん」や「ノーテレビ・ノーゲーム」に取り組み,大きな
成果をあげ,本年度は一層の充実を図ることになっています。この活動に共通しているキーワードは「家族」です。
二つの活動によって,家族といっしょに朝ごはんを食べること,ノーテレビ・ノーゲームで生み出された時間を家族
と一緒に過ごすことがねらいです。家庭の実態は様々ですので,一概に押しつけるつもりはありません。家庭の実
態に応じた取り組みで差し支えないと思っています。家族と一緒の時間を増やそうと意識して取り組んでもらうこと
を大切にしたいと思います。家族との会話をとおして,子どもの心に安心感が生まれ,生活の安定につながり,ひい
ては自分の食習慣や生活習慣を見直し,自らの生活を律するような子どもに少しずつ近づいていってもらいたいも
のです。
平成21年版の『全国学力・学習状況調査
追加分析報告書』(文部科学省)によると,基本的生活習慣と学力
の関係について,つぎのようにまとめられています。
『「朝食を毎日食べる」「学校への持ち物を確認する」「毎日同じくらいの時刻に寝たり起きたりする」などの基本的
生活習慣と正答数との相関が比較的強いことが明らかとなった。また,基本的生活習慣は,学習習慣にも関係して
おり,規則正しい生活習慣と学習習慣の確立が,学力と関係している様が示唆される。家庭での生活・学習習慣
は,基本的には家庭において形成されるものであると想定される。』
このような基本的生活習慣は,まさに家庭と連携して育まれるものです。子どもがしたくともできないことがありま
す。養護教諭や栄養教諭を中核にした取り組みを推進していきたいと思います。
[Ⅲ]いのちを守る安全教育の推進について
安全教育には,生活安全,交通安全,災害安全(防災)に関する安全学習と安全指導があります。本年度は,特
に子どもの身近なところで予想される項目を取り上げての指導をお願いいたします。
具体的には,交通事故,地震,火災,水の事故,不審者対応です。
起こりうる場面を設定し,話だけではなく,具体的な映像資料等を使って,子どもたちの心に響く指導をお願いし
ます。また,各地で起こった事故や事件を,タイムリーに指導していただくことも大切です。この事故・事件が,もしも本
校の子どもに起きたら,起きないようにするには,という意識を常にもって各種の報道内容を受け止めてください。こ
れらの取り組みが,危険を予測し,その危険を回避する能力の育成につながると考えます。
昨年度は,大規模地震を想定した避難訓練を重点的に実施しました。東日本大震災で得た教訓を肝に銘じて,
私たち教職員の危機管理能力も高めていきたいものです。
- 11 -
昨 年 度 の 特 色 あ る 教 育 活 動 か ら
本校は、寒河江西村山地区で唯一青少年赤十字(JRC)に加盟している学校です。
昨年度、日本赤十字社山形県支部創設125周年記念山形県赤十字大会に出席されるためご来県された
日本赤十字社名誉副総裁常陸宮妃殿下華子様をお迎えし、活動報告会を行いました。
また、JRC活動の一環として、5年生が育てた米を販売したお金の一部と、毎月11日を「絆の日」として集めた募
金で、東日本大震災で被害にあわれた学校に体力測定器具を贈りました。このような活動が認められ、寒河江青
年会議所から、SJC賞をいただきました。
- 12 -