Shinshu University Institutional Repository SOAR-IR Title Author(s) Citation Issue Date URL Rights 水制工のまわりの流動・水質特性I−流動特性− 富所, 五郎; 松本, 明人 環境科学年報17:99-104(1995) 1995-03-31 http://hdl.handle.net/10091/12401 環 境 科 学 年 報 信 州 大 学 ー 第1 7巻 , 1 9 9 5 ( A n n .E n v i r o n .S c i .,S h i n s h uU n i v1 水制工のまわりの流動・水質特性 I 一一流動特性一一 富所五郎・松本明人 信州大学工学部 FlowandWaterQ u a l i t yC h a r a c t e r i s t i c saroundS p u r d i k e s GoroTOMIDOKOROandA k i t oM ATSUMOTO F a c u l t y0 1E n g i n e e r i n g ,S h i n s h uU n i v e r s i か Keywords:S p u r d i k e s,Flowi nR i v e r s,WaterQ u a l i t y 水制,河川の流れ,水質 iJ. i J ただし ,L=ui ; ; . v ーァ J x+ ' i Jv 1.はじめに V 水制は,昔から多く設置され,災害を通じて徐々に i Jr A一 i Ji, i Jr A i Ji θ rA i Ji D=+ Il A 一 1 + 一 +j I,+i + Ai │ i J x "h i J xj ,一 i J yI l "Ah i J y J zI l " J zj >n >n η >V 改良されてきたが,水理的検討の難しさ,設計の標準 ここに 化の難しさ,護岸・根固め工法の進歩や施工の簡潔さ 方向の平均勾配 に平行に水面付近にとり,また z軸 等のため,一時期ほど用いられなくなっていた。しか はxy平面に直角に,鉛直上方を正としている。また, x軸はx方向の平均勾配 I xに平行に,y軸 はy ι し,最近護岸・根固めに対して景観や河川内の生態系 U, V, ωはそれぞれ x, y, z軸方向の流速成分, t は時間, の保全の面から種々の批判がなされるようになり,多 ρは水の密度,Pは圧力,g は重力加速度,A h,A vは 自然型河川工法の試みとして,伝統工法や水制工が見 それぞれ水平,鉛直渦動粘性係数である。 直されるようになってきている。 z そこでここでは,水制工周辺の流動特性を明らかに するために,流れと拡散の二次元数値解析を行う。こ のため,先ず流れと拡散の基礎式の誘導し,その空間 変数と時間変数の離散化法を示し,最後に流れと拡散 の数値解析結果を示す。 に つ また,水制工周辺の水質特性は別報に報告する。 z 2 . 流れの基礎式 開水路の流れを支配する基礎式は,図- 1の座標を 用いると以下である。 1i J P u+η z=ga t '+Lι = ; ; å~ + D -u ( 1 ) 1i J P+D-v = g I y θt十 L-v+w~一 o z5y ρ '":-,~. i J y ( 2 ) I .LJ V I LV . L = : - 1i J P+D-ω i Jw 一 一 L-~w+ 一 一一 一一 一 i J t+ ,~ ,ω ~一 i J z=g ρ i J z ( 3 ) i Ju , i Jv , i Jw 一 一+ 一 一 一i 一 i J x ' i J y+ , J z=0 ( 4 ) 図 - 1 座標の定義 ここで,式( 3 )は,一般の開水路の場合では ωが水平 流速 u, vに比べて小さく,右辺の第一項,第二項以外 は無視され次式のようになる。 1i J P ^ g+: , , " _ =0 ρ i J z V ( 5 ) V 9 9 富所五郎・松本明人 この式( 5 )をz方向に z=zから s( sはxy面から自由水 3"流れの基礎式の離散化 1) 面までの高さ〉まで積分し,水面 z=sで, p=九 =0 ここでは,前節で求めた基礎式の離散化を行う。ま とすると, p=ρ' g ( z + ! ; ) ( 6 ) るG a 1 e r k i n有限要素法を用いて離散化を行い,時間 となれこれより圧力は静水圧分布する。 次に,式( 4 )の第三項を,水底から水面の範囲でz方 向に積分して,水面と水底の運動学的条件を用いると, r ο4 弘 =w( S )-w ( h)= 笠+バ)笠 C a J h ( ) zゐ u.,.<;,.-IA/\.~/ fN ¥.J et (.1,\.~/ o x+vV\.~/ ν fl J / - I I o (-h ) .~ "o(-h ) . J "oC-h ) 一一一一 〉 -37--u〔-h 〉 -7 子 一 ( 7 ) o t -u(-h となる。また,残りの項も同様に積分して, L e i b n i t z の定理を用いると : 1[叫〕ゐ= ! Lω £ +fcd-u(C hlax'avJ ←乎 -h) -u(!; 匂位 〉去十以 -h) aV.!-h 同 が得られる。 ( 9 ) , ここで,上式において鉛直平均流速を,次式のように おくと, 五 = をl ; u d,E=よ をu ;ゐ Lax-Wendroff法を用いて離散化する。 ω 仰を Galerkin有 先ず上で求めた流れの基礎式 限要素法により離散化する。このために,水平方向の 三角形一次要素の形状関数Ni と総和規約を用いると, 平均流速と水面上昇量の近似関数は, U=N ,' U i,v=Ni"Vi,S=Ni"Si (i=i, j, k ) 凶 と表される。ここに, i=i , j , kは三角形一次要素の ω 帥に代入し,重み 式(14)で定義した近似関数を式 関数として N, をかけ,重み関数の定義域内で積分す ると,単一要素の場合,離散化方程式は, つまり o (-h)/ot= 0とすると,式 ( 7 ),( 8 )から次式 主 ! f ' o t+if 'o xJ hu "-dz十 O V J hv・ゐ=0 変数に対しては,陽的差分法の一種である t w o s t e p 頂点である。 となる。式 ( 7 )において,水底が時間的に変化しない, U,k ず,空間変数に対しては,重み付き残差法の一種であ ( 1 0 ) 式( 9 )は , M i j "Uj+( R X i j k "U j + R Y i j k 'v JU k =g'ι "Di -g 'E X i j 'S j + ( K X i j十 KYij)"Uj+FX ( 1 5 ) M i j "Vj+( R X i j k "U j + R Y i j k "VJVk ' D i -g "E X i j 'S j +(KXij+K Y i j )・ vj+FX ( 1 6 ) =g'ι M i j 'S j +CXij"Uj+C九 " V j ( 1 7 ) (j=i, j ,k,k=i , j ,k ) となる。ここに, U j,V j,S jの上付きく・〉は時間微分を 意味し , i=i , j ,kで あ る 。 以 上 の 式 は, U j, V j,S jを f ι+ J -' G -d 〉 + 」 ー o t ' o x ' ' ' ' ,o y(IJ.d)= 0 ( 1U u,/ となる。ここに, d=h+sである。また同様にして, 式( 6 )を式 ( 1 ),( 2 )に代入し,水底から水面の範囲で z方 向に積分して,前述と同様に水底の運動学的条件及び, 。 要素が多数存在場合には,上式の各項を各要素ごとに 求め,重み関数にしたがって重ね合わせると,上式と 同様の式が得られる。以下に上式の各係数を示す。 r " " r"" o 凡λ j ・ ゐ , RXuktNzN ず・ゐ, Mij=J sN i N L e i b n i t zの定理を用いると, U ,- OU ,- OU o : l 一 一 一 どL o t+U '"一 o x+v 'vでァ O ν=glx-g " o ・ゐ r" EXij=r , Di =人民・ゐ, 人N 入T , 。 u hHUF O(A ouI, O(A ouI v + 一 一 IAh 一 一 1 + 一 IAh 一 一 I-T o xl no x) ,一 o yl no y) ' y ", 未知量とする連立常微分連立方程式である。ここで, ", v a ; ' 九T ,, r r r od , o iゐ " " " ゐ , Xij=J FX 一 +v~. i T x i・ YJ一 =Js~'Z"Xt IN N i l i ' " ' ,,C I s " " l LN; s x dJ・ o x , oN o N r A i r A "oN v~'J ー : . . . ! . L. ゐ +nx Xij=-) A h N z ・ dl I A ho I s . . n ) 1. . " " "O X x o x , . . . . . . . . " " . J . 1 . . ] V ,-O V o : l O V ,- O 一 一 一 =gI y-g 手 ν ' V o t+u '"一 o x+V 'vでO ) l ( 。 + 一 一 q4d ( A o v I+ , O(A o v I-Tv 1 A . , :x v 1 一 1 A . , :y v 1 o xl . . no ),一 o yl . . no ) ' y x, y方向 Z " y, z " yは の底面せん断応力を ρdで割ったものである。式(1U ω )は,云 ,IJ,s を未知量とする開水路の流れの基礎式 である。ここでは,この流れの基礎式の非定常解析を 行い,収束解を定常解とする。 以下において,忌 , vの(づは簡単のために省略する。 1 0 0 I lN 1 λ yは要素の境界に外向 n x,n y成分である。た きに立てた単位法線ベクトルの x, n yを含む項は,解析領域内部で打ち消し合 だし n x, ここに , 1 は要素の辺長 が得られる。ここで,流速の鉛直方向変化に対する補 正係数を全て1.0としている。なお .L うので,解析境界のみで考慮すればよい。 d, T T x, yは , う Cと同じように近似する。また,RYijk,EYij,F} EXij, Xij,C X i jにおける ; ,C Y i jは , R X i j k, ; ,K KY FX にかえた式で、ある。さらに,各係 x y 仙の を o / o x,T X i, 数は,次の公式により簡単に計算できる。 水制工のまわりの流動・水質特性 I lN ' fN lm ゐ =G!b!c!.2S 1 ( 8 ) α ( +b十 c+2)1 j シ r μ κ 川 N : V 机 昨 ' 打 ! f 勺l 1 α 乱流拡散の基礎式邸)の空間変数に対する離散化は, Ca+b+1 )1 上で求めた時間変数に対する離散化式Q5)~(17) は,時間 微分項とその他の項に分けることができる。即ち,左 辺の時間微分項以外をすべて右辺に移行して,要素全 伽) となる。ここに,MはM i j等を成分とする質量行列, Vは め , Vj, S Jの未知量を成分とする列行列,Fは V の関数の列行列である。式。0)は tに関する常微分方程 式であり,種々の時間微分方程式を用いて解くことが できる。本研究では,陽的時間積分法の一種である t w o . s t e p Lax-Wendroff法を用いて,これを解くこ ととする。以下にこの概要を示す。 ω K1=M-・ F t,Vt+~t!2= Vt +. 1t / 2・ K1 K2 =M- ・ Ft+~t/2 , Vt+~t = Vt +. 1t. K2 ( 2 2 ) である,ここに,. 1tは時間刻み幅である。上式を与 t e p -bys t e pに えられた境界条件,初期条件のもとに s 1 1 解けば,すべての時刻における未知量の値が決定でき, 方程式は解けたことになる。 C=Ni.C , C i = i, j, k). 扮 式仰の濃度 C には上式を,流速 U , Vには式帥で定 義した近似関数を代入し,重み関数として N,を掛け, 要素内で積分すると,単一要素の場合, M' o 'Cj+(RX J i k 'U k十 R Y / ; k・ V k )・ Cj = (KX J i+K Y/;+R A ( ; )・Cj十 , F (j=i , j,k ,k=i , j, k ) ( 2 6 ) i =i , j , kであり , Cの上付きく・〉は時間微分 j を意味する。以下に上式の各係数を示す。 f f . a λT , Mi J = N,N j'ゐ , RXLktNzNq 旦 ・ ゐ , s J 1 l .T 1 I .T 1l."TlI.,. RAL=-4lNλ ・ ゐ F,=~ ( N i・ゐ μ. Is P. ls r" a 入T 入T ; r , _O 九 「 i O KX J i=-) 1 I D x N zV~Vj ・ dl Xo sDx~ームー:...:L・政十 x ox." " ",nx " X ) l '-'x"" o x r. .L/ また,R Y / ; k, KY よ ,は,R X J i k , KX J iにおける o / o x, n x 4 . 拡散の基礎式 のxをyにかえた式である。 乱流の拡散,混合現象を支配する方程式は次のよう i c kの乱流拡散方程式である。 なF , . . " ( 2 3 ) θ r "一o i十 , or" oi, or" oi ただし ,R= 一 一 ID 一 │ 一 一 ID h+ 一 IDv一 一 l o xL ho x j, O yL ho yl j+ ,一 o . il a , z j .L/ よで得られた空間変数に対する離散化方程式仰を, 要素全体について重ね合わせると,以下のような時間 変数に関する連立一次微分方程式が得られる。 oC , oC K', . , ,Q +L.C十 W3Z=R・C 7 C + す ここに, 方向の流速成分は,流れの解析に依って得た定常解を, ここに この解法は,二段階よりなり, .L/ を用いて行う。但し,前に述べたように,式(2~ の水平 関数は以下である。 ι M.- V=F d t t a a l e r k i n有限要素法 流れの基礎式の離散化と同様に G 近似式 Q~ で与えるものとする。また,濃度 C の近似 体について重ね合わせると, T 5 . 拡散の基礎式の離散化 .L/ Cは拡散物質濃度,K'は物質の減衰定数, Qは単位体積当たりの物質流入量,D h,Dvはそれぞ れ水平,鉛直乱流拡散係数である。上式は,流れの場 M--ZLC+K・C=F d t 。 ) 7 ここに,M は質量行列 . Kは式( 2 6 )の括弧内の各項を 成分とする行列, Cは Cj を成分とする行列,FはFi を成分とする列行列である。 式(幻)は,種々の時間積分法を用いて離散化されるが, r a n k ここでは拡散解析に広く用いられている C 合と同様にして, 。+U N i c h o i s o n法を示す。この方法は陰的な時間積分法の C , oC+ , o C V 一一 o t '~ ~~~ o x' v o y=R.C 一つで, orθC i+ , or " o Ci K 'C+Q 十o IDhV,,~ 1 一y 一l D h 一 一 一一 一 xl ho xj' a U ho y│ j ρ ρ , . . " 1 .L/ (2~ となる。式仰が本研究で用いる乱流拡散の基礎式であ る。但し,解くに当たっては,次の仮定を設ける。 [ 1+ィ 1 + . 1tM " ",2 . J Ct+~t r~"M1 = 1 l. 1t"" 'K 1 i ~ .1~ .1 ~Kj 卜' C ~F ~ Ft+~t t+ 2 ' t '2 ~ t t+ ,2 TT H ( 2 8 ) 1 ) 流体の密度は,物質に関係なく一定である。 である。上式を与えられた境界条件,初期条件のもと 2 ) 乱流拡散係数は,座標軸方向の値のみである。 t e p -bys t e pに解けばよい。また,定常解は質量行 にs 本研究では,先ず流れの基礎式の非定常解析を行い, 列の項を除いた式を解くことによっても求めることが 得られた流速を拡散解析に用いて解析を行う。 できる。 1 0 1 富所五郎・松本明人 6 . 解析対象河動及び解析条件 解析対象は,長野市松代町清野地区の千曲川の低水 路部である。ここに,図- 2に示す総節点数5 3 3,総 要素数9 6 8の二次元有限要素メッシュを切った。図に おいて破線は不透過水制で,中央の大きな水制が亀腹 水制である。この解析で使用した解析条件を以下に示 す 。 流れの解析では,上流端の流速は実測結果に従い, また下流端の流速は,指定された流量の条件のもとに, ない。そこでここでは R eynoldsの相似仮定を用い, E l d e rに従って次式で定めた。 Ax=Knu、 rg.d5/6,Ay=Kn 判官 .d5/6 また,底面せんだん応力は摩擦応力を Manning式 より評価して次式より定めた。 べ 。 =gnv/e矛芋 v rx=gn2u ' ;CU2+ V2)/d4 2 43 2 )/ / d 拡散係数は,渦動粘性係数と同様の式より求めるべ きであるが,物理的に見て妥当な解が得られなかった 川の中心に向かい大きな値となるよう指定した。また, ために,0 . 5 m ' / sの一定値を用いた。また,流量は3 8 岸では全て,流速を零にした。 r r f/ s,重力加速度は g=9.8m/s2, x方向の水路勾配 拡散解析では,亀腹水制より上流の部分で全て濃度 はI x=0.00057,y方 向 の そ れ は Iy=O.O,時間刻み 幅は.dt =0. 4 s,Manning粗 度 係 数 は n=O .015m-l/3 を零に拘束した。 渦動粘性系数は,現在これを決定する確かな方法は • sとした。 20M 図 - 2 解析領域と有限要素メッシュ 7 . 解析結果友び考察 図 - 3に流れの数値解析の流速ベクトル分布を示す。 (破線部は水制〉 水制に水深5 0 c m,幅 10m程の切り欠きを設けた場合の 流速ベクトル図である。主流の流れが強いために,こ の程度の切り欠きでは水制下流部の大規模な水平渦を これは境界条件を一定とした非定常解の収束解より求 解消するまでにはなっていない。しかしこれ以上の規 めた定常解である。水制により流れは大きく左岸側に 模の大きい切り欠きで・は,水制そのものの機能が損な 寄せられて,主流の剥離した右岸側の亀腹水制の上下 われることになるため,別の流況改善方法を考え出す 流にはっきりした水平渦が形成されている。この解析 必要がある。 結果は,現地観測結果 2)と観測結果に見られる亀腹水 つぎに,亀腹水制下流部の物質拡散の状況を把握す 制の右岸側の小さな渦を除き,ほぼ一致するものであ るための解析結果を示す。図-5は,水制下流部の農 り,物理的に見て妥当なものである。 業用水排水路口の濃度を 1 0 0に拘束した場合の図ー 3 上に示した亀腹水制の上下流部の水平渦により,上 の流速値を用いた場合の濃度分布を示す。水平渦のた 流部より流れ下ってくる水草等がトラップされ,堆積 めに拡散物質が閉じこめられ,亀腹水制下流部に大き する。夏期には,これが腐敗して付近の水質を悪化さ く拡がっている。この解析結果より,堆積した水草の せている。 腐敗により生じる汚染物質は,流れにより簡単にはフ 図 -4は,この流況改善の一つの試みとして,亀腹 1 0 2 ラッシュされないために,水質悪化が助長されること 水制工のまわりの流動・水質特性 I 主主三三 子 r三三三 二 、 - - ご 百 二 --・ー二一『ー一一一ーニーーー ー ー-ーー/ J、 、 一二一二了二三一一一一一ーーー一一一♂" ー も J Lヘ¥( 図 - 3 流速ベクトノレ 主主主二./ ン 川 図 - 4 流速ベクトル 図 - 5 濃度分布 1 0 3 富所五郎・松本明人 t O O 図 - 6 濃度分布 になる。 こす。 図 - 6は,流況改善をはかるための切り欠きを設け しかし,この水質改善は,平水時の流況改善によっ た場合の流速値により,図- 5と同様の境界条件を用 ては容易でない。そこで,水制工高をその機能が損な いた拡散解析結果である。濃度分布は,切り欠き部か われない程度に低下させることにより,小洪水時でも らの流れにより,図-5の場合より下流部へ偏ってい 水制を越流する流れにより,堆積物をフラッシュする るが,物質拡散の面積には大きな差は見られない。こ 等の配慮が必要である。 れは,流速ベクトル図より予測されることであるが, 切り欠き部からの流量が,拡散物質濃度を低下させる ほど大きくないためである。 8 . おわりに 以上に,松代町清野地積の千曲川の亀腹水制工周辺 参考文献 1 ) 富所五郎:有限要素法による水理解析, 1 9 9 1年度 ( 第2 7回〉水工学に関する夏期研修会講義集, p p . j\ -1-1~j\ -1-17 , 1991. 2 ) 桜井善雄,富所五郎:水制工のもつ河川水理及び の流動状況と水制下流部の物質拡散状況を示したが, 生物環境の創出効果に関する研究,河川整備基金助 解析対象とした規模の不透過水制では,水制下流部に 成事業報告書, p p . 1 8 3, 1 9 9 4 . 大きな水平渦が形成され,これにより,主流よりトラ (受付 ップされて堆積した水草などが腐敗し,水質悪化を起 1 0 4 1 9 9 5年 2月 6日 〉
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