地盤工学会基準(改正案) JGS 0145 : 2008 土の収縮定数試験方法 Test method for shrinkage parameters of soils 1 適用範囲 この基準は,425μmふるいを通過した土の収縮定数を求める試験方法について規定する。 2 引用規格及び基準 次に掲げる規格は,この基準に引用されることによって,この基準の規定の一部を構成する。これらの引用 規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 JIS A 1201 土質試験のための乱した土の試料調製方法 JIS A 1203 土の含水比試験方法 3 用語及び定義 この基準で用いる主な用語及び定義は,次による。 3.1 収縮定数 収縮限界及び収縮比。 3.2 収縮限界 土の含水量をある量以下に減じてもその体積が減少しない状態の含水比。 3.3 収縮比 収縮限界以上の含水比における体穫変化と,それに対応する含水比の変化量との比。 注記 土の収縮定数は,図1の収縮曲線において,試料の乾燥段階を3段階に区分すると,収縮限界wSは, 第二段階と第三段階の境界の含水比である。収縮比は,第一段階の直線部分の勾配Rである。 4 試験器具 試験器具は,次による。 a) 収縮皿 収縮皿は,底が平らで内径約45mm,深さ約13mmで,上縁を水平に滑らかにすってあるガラス製のもの(図 2参照)。 b) パラフィン c) パラフィン溶融用容器 d) 加熱装置 e) 温度計 [WG1-49] f) ガラス板 ガラス板は,試料を練り合わせるための厚い板ガラスと,収縮皿の容積測定用の約80mm×80mm ×2mmの薄い板ガラス。 g) ワセリン又はグリ一ス h) へら i) 直ナイフ 直ナイフは,鋼製で片刃の付いた長さ25cm以上のもの。 j) 含水比測定器具 含水比測定器具は,JIS A 1203に規定するもの。 k) 水中の試料質量測定用器具 水中試料の見掛けの質量測定器具は,容器とつり皿とをはかりに取り付けて水 中試料の見掛けの質量が測定できるもの。 注記 水中試料の見掛けの質量測定の例を,図3に示す。 l) 蒸留水 m) はかり はかりは,0.01gまではかることができるもの。 5 試料 試料は,次による。 a)自然含水比状態の土を用いて,JIS A 1201に規定する試験方法によって得られた425μmふるいを通過したも のを試料とする。試料を空気乾燥しても収縮定数の試験結果に影響しない場合は,空気乾燥試料を用いても よい。 b)試料の量は,約30gとする。 c)試料を厚いガラス板の上に置き,試料の間隙を十分に満たす程度の蒸留水を加えてよく練り合わせ,収縮皿 に詰め込みやすいぺ一スト状にする。 注記 初期含水比によって収縮定数に差を生じるので,ぺーストの流動性として液性限界付近に統一する とよい。空気乾燥試料の場合,試料と水のなじみをよくするため,水を加えて練り返した後,10数 時間程度放置することが望ましい。 6 試験方法 試験方法は,次による。 a)収縮皿(以下,皿という。)の内面に,ワセリン又はグリースを薄く塗り,その質量mc (g)をはかる。 b)皿の中にペースト状の試料を気泡が含まれないように詰め込む。まず,皿の容量の約1/3のぺースト状の試料 を皿の中央に入れ,その皿を布のようなものをクッションにして硬い面に打ち付け,試料を皿の縁の方に流 動させる。次に,前と同量ぐらいの試料を入れ,気泡が表面に追い出され,試料がよく締まるまで打ち付け る。さらに,試料を入れて,皿が試料で満たされ,余分の試料が縁からあふれるまで打ち続ける。 c)余分の試料を直ナイフで切り取り,皿の外側の試料をふき取って,直ちにその質量ma(g)をはかる。 d)この皿の試料を,クラックが生じないように風の当たらない空気中で,試料が暗色から明色になるまで徐々 に乾燥させる。 e)JIS A 1203に規定する方法によって,(110士5)℃で一定質量になるまで炉乾燥した後,試料を皿から静かに取 り出し,その質量ms(g)をはかる。 f)薄いガラス板の質量mg(g)をはかる。 g)皿に蒸留水をあふれるほど入れ,ガラス板で押さえて余分な水をあふれさせ,この水と皿及びガラス板のま わりの水をふき取る。 h)水の入った皿とガラス板の質量m(g)をはかる。 [WG1-50] i)炉乾燥した試料を溶融したパラフィン液に浸して,試料表面に被膜をつくる。 j)パラフィン塗布後の試料の質量m1(g)をはかる。 k)はかりに取り付けたつり皿の水中での見掛けの質量m2(g)をはかる。 l)パラフィンを塗布した試料をつり皿にのせて水中につるし,水中での見掛けの質量m3(g)をはかる。 注記 つり皿及び試料が完全に水中に入るようにし,両者とも容器に触れないようにする。 m)水温T(℃)をはかる。 n)パラフィンの密度が既知でない場合は,パラフィンの密度ρp(g/cm3)を求める。 注記 容積が既知の容器に溶融したパラフィンをあふれるほど入れ,冷えて固まった後に余分のパラフィ ンを取り除いて質量をはかり,密度を求める。 7 計算 計算は,次による。 a)収縮皿の体積は,次の式で算出し,これを湿潤試料の体積とする。 V = ( m − mc − m g ) / ρ w ここに,V:湿潤試料の体積(cm3) m:水の入った収縮皿とガラス板の質量(g) mc:収縮皿の質量(g) mg:ガラス板の質量(g) ρw:水の密度で表1に示す値(g/cm3) b)炉乾燥試料の体積は,次の式によって算出する。 V0 = (m1 − m3 + m2 ) ρw − (m1 − m s ) ρp ここに,V0:炉乾燥試料の体積(cm3) m1:パラフィン塗布後の試料の質量(g) m2:水中でのつり皿の見掛けの質量(g) m3:水中での試料及びつり皿の見掛けの質量(g) ms:炉乾燥試料の質量(g) ρp:パラフィンの密度(g/cm3) c)収縮限界は,次の式によって算出する。 wS = w − (V − V0 ) ρ w × 100 ms ただし, w= ( ma − mc − m s ) × 100 ms ここに, ws:収縮限界(%) w:湿潤試料の含水比(%) [WG1-51] ma:湿潤試料と収縮皿の質量(g) mc:収縮皿の質量(g) d)収縮比は,次の式によって算出する。 ms V・ 0 ρw R= ここに,R:収縮比 注記1 体積収縮率は,次の式で算出する。 C = ( w1 − wS ) R ここに,C:体積収縮率(%)。体積変化率ともいい,ある含水比から収縮限界まで含水量を減じたときの 体積の変化量を,土の乾燥体積で除して,百分率で表したものをいう(図1参照)。 w1:ある含水比(%) 注記2 線収縮は,次の式によって算出する。 ⎛ 100 ⎞ ⎟ × 100 LS = ⎜⎜1 − 3 ⎟ C + 100 ⎝ ⎠ ここに,Ls:線収縮(%)。線収縮は,土の直線収縮ひずみであり,ある含水比から収縮限界まで含水量を 減じたときの線収縮量を,元の長さの百分率で表したものをいう。 8 報告 試験結果については,次の事項を報告する。 a)収縮限界 b)収縮比 c)本基準と部分的に異なる方法を用いた場合は,その内容 d)その他特記すべき事項 [WG1-52] 図1-土の収縮曲線(参考) 図 2-収縮定数試験装置の例 図 3-水中試料の見掛けの質量測定の例(参考) [WG1-53] 表1-水の密度 [WG1-54]
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