建材試験センター規格(JSTM)紹介 コンクリート関係 その1 −JSTM C 2101

規格基準紹介
建材試験センター規格(JSTM)紹介 コンクリート関係 その1 −JSTM C 2101−
(引抜き試験による鉄筋とコンクリートとの付着強さ試験方法)
藤巻敏之*
表1 供試体の寸法
本試験は,鉄筋の表面形状や表面処理剤の有無,
コンクリートの品質による縦ひび割れ発生時の付
着応力度を求めることを目的としたものである。
従って,ひび割れ荷重が明瞭に把握できるように,
無補強のコンクリート供試体からの引抜き試験と
したものである。
本規格は,主として異形鉄筋の付着性能を試験す
る場合について規定されているが,コンクリート材
料,配合,養生条件,エポキシ樹脂塗装鉄筋,防錆
剤の有無などが付着強さに及ぼす影響を評価する場
② コンクリートは一層の厚さを10cm以下とし
て,ほぼ相等しい層に分けて打込む。
合にも,この試験方法を準用することができる。
③ 突き棒または内部振動機によって締め固めを
引抜き試験による鉄筋とコンクリートとの
行い,必要に応じて型枠面に沿ってスページ
付着強さ試験方法(JSTM C 2101)について
ングを行い,型枠側面を軽くたたく。
〇供試体
① 供試体は,表1に示す立方体供試体とし,表
に示す以外の鉄筋を試験する場合には,一辺
の長さを鉄筋の公称直径の6倍とする。
〇型枠の取り外し及び養生
型枠は,材齢2日で取り外し,その後,試験時
まで温度20±3℃の水中で養生する。
② 引抜き試験用供試体と同時に,圧縮強度試験
〇試験方法
用供試体を作製する。
① 引抜き試験用測定装置を図に示す。引張試験
〇コンクリートの品質
機は,JIS B 7721(引張・圧縮試験機−力計測
系の校正・検証方法)に規定するものとする。
コンクリートは,粗骨材の最大寸法を20mm又
は25mmの普通骨材とし,スランプを10±2cm,
② 載荷板の穴の直径は,鉄筋の直径の2倍とす
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る。
材齢28日での圧縮強度を30±3N/mm とする。
③ 荷重は,衝撃を与えないように一様な速度で
〇コンクリートの打ち込み
加えなければならない。載荷速度は,鉄筋の
① 鉄筋の付着区間外は,コンクリートとの付着を
引張応力度が毎分49N/mm 2以下となるよう
にする。
絶つための適当な処置を施し,鉄筋が載荷面
に垂直となるように型枠内に水平に設置する。
④ 表2に従って各すべり量に対する荷重を読み
*(財)建材試験センター中央試験所 品質性能部材料グループ 技術主任
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とる。
表2 測定の間隔
⑤ すべり量が0.002Dに達したときの荷重及び最
大荷重を記録する。ここに,Dは鉄筋の直径
とする。
⑥ 試験を行うコンクリートの材齢は28日とす
る。
〇結果の計算
① 付着応力度を次の式によって,JIS Z 8401
(数値の丸め方)によって有効数字3けたに
丸め,各供試体の付着応力度−すべり曲線を
描く。
ここに,τ:付着応力度(N/mm2)
P:引張荷重(N)
D:鉄筋の直径(mm)
α:コンクリートの圧縮強度に対する
補正係数 α=30/σc
σc:同時に作製した円柱供試体材齢28
日の圧縮強度(N/mm2)
図 引抜き試験用測定装置
② すべり量が0.002Dの付着応力度を計算する。
③ 最大付着応力度は,引張荷重に最大荷重を代
入して計算する。
リートの品質などの材料特性を比較する場合でも
構造物内の応力状態にできるだけ近い状態で試験
することが望ましく,また標準試験方法としてな
〇判定
るべく簡単なものであることが要求される。この
鉄筋の付着強さは,次の事項を満足しなければ
ような観点から,付着強さ試験方法として本規格
ならない。すべり量が0.002Dの付着応力度は,
の他,JSTM C 8201(両引き試験による鉄筋コ
3N/mm2以上とする。
ンクリートのひび割れ分散性試験方法)を定め,
目的に応じて両方または片方の試験を行い,鉄筋
〇おわりに
とコンクリートの付着性能を評価することとし
鉄筋コンクリート構造物内における鉄筋とコン
た。これらの試験方法は,いずれも構造物内の応
クリートとの付着性状は多様であって,これを単
力状態や破壊状態に類似するよう配慮されている
一で簡単な試験方法によって評価することは極め
が,その試験結果が直接構造計算の資料となるも
て困難である。しかし,鉄筋の表面形状やコンク
のではない。
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