計量経済分析入門 「古典的回帰モデルと最小二乗法」 開講時限: 第1学期・月曜7限 担当教員: 原 尚幸(経済学部・経済学科) 居室: 人文社会・教育科学系棟 C棟5階 C548室 電子メール [email protected] オフィスアワー:月曜3限(事前にメール連絡) 講義のウェブサイト http://www.econ.niigata-u.ac.jp/~hara/int-ecm/ この講義の履修に関して この講義では、パソコン演習を行う関係で、 定員を30名に設定しています。 もし定員を超えた場合は、抽選などの方法で 最大30名にしぼります。 人数の関係で履修できなかった場合は、来 年度以降に履修を希望する場合には、優先 的に履修を許可する。 この講義の履修に関して 履修を許可するには以下の要件をすべてみ たすことが必要である。例外は認めない。 今日出席していること 経済経営統計入門の単位を取得済であること 原則、毎回出席できること きちんとした受講態度で受講すること 受講態度の悪い学生がいた場合には、学期 の途中であっても履修を取り消す。 計量経済学とは? 経済データの分析手法の理論体系 もう少しフォーマルに言うと・・・ 計量経済学(Econometrics)とは 経済理論の妥当性の実データによる検証 経済現象のメカニズムの定量的な解明 を行うための統計的手法の理論体系 ケインズの消費理論 消費はGDPの約60% 消費がなければ生産もない 消費のメカニズムの解明は経済学の 中心的な問題 ケインズの消費理論 消費の量は可処分所得に影響をうける 消費は可処分所得の関数である 可処分所得 = 所得 ー 税金 所得が多ければ消費も多くなる 消費は所得の増加関数である 消 費 所得 ケインズの消費理論 所得が増えた範囲内でしか消費を増や さない 限界消費性向 所得が1円増加したときの消費の伸び 限界消費性向 < 1 消費の伸び 所得の伸び 差分=貯蓄 ケインズの消費理論 所得が増えるにつれ、そのうちで消費に 当てる割合は減少する 貯蓄にあてる割合は増加する 平均消費性向 所得に対する消費の割合 平均消費性向は所得の減少関数 貯蓄 消費 ケインズの消費理論 1. 消費は所得の増加関数 2. 0 < 限界消費性向 < 1 3. 平均消費性向は所得の減少関数 これらの理論が正しいのか、実際の消 費と所得のデータを用いて検証したい 日本の消費と所得の関係 1980年~2009年の日本の消費と可処分所得 出典:2009年度国民経済計算 350000 消 費 300000 支 出 ( 250000 1 0 億 200000 円 ) 150000 300000 400000 500000 可処分所得(10億円) 600000 日本の消費と所得の関係 消費は所得の関数 所得のどのような関数か? 消費は直線(所得の一次関数)の周りに 分布していそうだ 350000 消 300000 費 250000 支 出 200000 150000 300000 400000 500000 600000 可処分所得 ケインズ理論の定式化 Y :消費、 X :所得 消費と所得の関係を Y X という一次関数(線形関数)で定式化 Y :切片 :傾き 1 X ケインズ理論の定式化 Y X 傾き :限界消費性向 1. 消費が所得の増加関数 ⇔ 0 2. 限界消費性向<1 ⇔ 1 0 1 ケインズ理論の定式化 平均消費性向: 所得に対する消費の割合 Y Y X X X 3. 平均消費性向が所得の減少関数 ⇔ 0 ケインズの消費理論 Y X 1. 消費は所得の増加関数 2. 限界消費性向>0 0 1 3. 平均消費性向が所得の減少関数 0 これらが本当に正しいのかを検証 ケインズ理論の実証 Y X 消費と所得の関係は直線的 ぴったり直線上にのっているわけで はない 消費の要因は所得以外にも存在 物価 景気 国際情勢 etc etc… 350000 消 300000 費 250000 支 出 200000 150000 300000 400000 500000 600000 可処分所得 回帰モデル :所得以外の要因 消費と所得の関係の Y X のような定式化を(線形)回帰モデルという 直線(一次式)+誤差 350000 消 300000 費 250000 支 出 200000 150000 300000 400000 500000 600000 可処分所得 ケインズ理論の実証 Y X このモデルを用いて 0 1 0 が成り立つかを検証すればよい 350000 消 300000 費 250000 支 出 200000 150000 300000 400000 500000 600000 可処分所得 0 (傾き>0)は 成立していそうだ ケインズ理論の実証 Y X , の値はわからない データから推定する必要がある 『最小二乗法』という手法を用いて推定 が可能 350000 消 300000 費 250000 支 出 200000 150000 300000 400000 500000 600000 可処分所得 ケインズ理論の実証 Y X , の値はわからない データから推定する必要がある 『最小二乗法』という手法を用いて推定 が可能 350000 消 300000 費 250000 支 出 200000 150000 300000 400000 500000 600000 可処分所得 ケインズ理論の実証 Y X , の値はわからない データから推定する必要がある 『最小二乗法』という手法を用いて推定 が可能 350000 消 300000 費 250000 支 出 200000 150000 300000 400000 500000 600000 可処分所得 最小二乗法による推定結果 最小二乗法を用いると Y 8750.9 0.5484 X 0,0 1 だ! しかしケインズの理論が正しいと結論する のはまだ早い。 0,0 1 が正しいか否かの検証 には『仮説検定』を用いる ケインズモデルの実証 1. H 0 : 0, H 1 : 0 の片側検定 H1 : 0 を採択 2. H 0 : 1, H 1 : 1 の片側検定 H1 : 1 を採択 3. H 0 : 0, H 1 : 0 の両側検定 H 0 : 0 を採択 0, 0 1 ケインズ理論は誤り?? 経済理論の定量化 計量経済的手法によって、定性的な経済 理論の実証が可能になることを見た 0, 0 1?? 0, 0 1 実証結果は定量的な情報も同時に提供 0.5484 1万円所得が増えれば、平均的には5400 円余分に消費する 経済問題における定量的情報 経済、経営上の意思決定、経済政策提言、 政策評価の場面においては、定量的な情 報が必要になることが多い。 たばこ税を1%上げると喫煙者が何%減る か? 教員を余分に雇うと教育効果がどれだけ上 がるか? etc, etc… このような場面で計量経済分析は威力を 発揮する。 経済理論の実証分析の流れ 1. 経済理論 2. 理論を線形回帰モデルで定式化 直線+誤差 理論を切片、傾きの条件で記述 3. 4. 5. 6. 7. 適切なデータを集める 切片、傾きを最小二乗法で推定 仮説検定を用いて理論が正しいかを検証 推定されたモデルの経済的妥当性を評価 将来予測、政策提言、政策評価 etc 線形回帰モデルと最小二乗法 線形モデルは計量経済学に限らず、あらゆる 統計モデルの根幹をなす重要なモデル 最小二乗法はあらゆる推測手法の基礎となる 重要な統計的手法 この講義では線形モデルと最小二乗法を学習 統計科学における 計量経済学の位置づけ 情報科学 通信工学 心理学 遺伝学 生物学 脳科学 機械学習 教育学 統計科学 社会学 経済学 環境科学 品質工学 管理工学 金融工学 リスク管理 経済理論やそれに付随する経済データに固 有の問題が数多く存在し、そのための独自の 統計的手法が開発されてきた 計量経済学 情報化社会におけるデータ環境 情報化社会の発展・深化に伴い、 データ環境は劇的に変化 •データの大規模化(GB~TB~PB) Ex) 社会調査・ネットアンケート Ex) 高頻度証券取引データ •データへのアクセシビリティの飛躍的向上 Ex)官庁統計・各種統計資料の電子化 ミクロデータの公開 21世紀社会からの要請 20世紀社会: 不特定多数への大量生産・大量消費 を目指した成長指向の社会 地球環境問題の表面化 個に焦点を当てたサービス 産業の発展と地球環境の 持続可能性との調和 オーダーメイド医療 マイクロマーケティング ・地球・宇宙規模 ・企業、個人レベル 大規模なデータを用いた複雑なシステムの メカニズムの解明が求められている 本講義の到達目標 線形回帰モデルの最小二乗法の理論のお おまかな流れを理解する 実証分析の結果を正しく理解・評価できる ようになる 経済関係のさまざまなデータに親しむ Excelを用いて、自らの手で基本的な実証 分析を行えるようにする 本講義の特徴 ある程度は理系的 この点はある程度諦めて下さいm(__)m 細かいところはともかく、全体像を理解で きるように努めて下さい Excelによる計算機演習を通じて対話 的に学習を行う。 基本的に目指すは実践派 毎回Excelで様々な経済データ分析を行 いながら、身体で実証分析を覚えていく。 講義内容 Excelの基礎 簡単な記述統計解析 演習・レポート作成(1) 単回帰モデルと最小二乗法 演習・レポート作成(2) 重回帰モデルと最小二乗法 演習・レポート作成(3) 講義の進め方 スライドで進めるつもりです 3、4回レポート課題を出題する予定 講義はここ(経済調査実験室(F166))で行 います。 遅刻・欠席はしないように。 USBメモリを持参して下さい(数ギガのもので 十分です) 成績評価 成績評価 レポート課題(複数回):80点満点 0 xr 80 期末試験:40点満点 0 xe 40 最終評価: x f min(xr xe ,100) 参考図書 入門計量経済学 山本拓・竹内明香著 新世社、2013年 本体2,700円 Excelによる統計入門 縄田和満著、朝倉書店、2007年 本体2,800円 連絡事項 6、7月に1,2回休講が入る可能性があり ます。 今後のスケジュールは講義内、講義の ウェブサイトなどで、随時連絡します。 計量経済分析入門 「古典的回帰モデルと最小二乗法」 開講時限: 第1学期・月曜7限 担当教員: 原 尚幸(経済学部経済学科) 居室: 人文社会・教育科学系棟 C棟5階 C548室 電子メール [email protected] オフィスアワー:月曜3限(事前にメール連絡) 講義のウェブサイト http://www.econ.niigata-u.ac.jp/~hara/int-ecm/
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