「実際に自分で使えるお金、可処分所得とは」 (2015年9月1日)

FP通信
実際に自分で使えるお金「可処分所得」とは
vol.32( 2015.9)
いつもFP通信をご覧いただきありがとうございます。家計を正確に管理していく上で、「可処分所 得」の把
握は非常に重要です。可処分所得とは、給与の中から所得税や住民税などの税金の他、厚生年金・健康
保険・介護保険・雇用保険などの社会保険料を差し引いた自分が実際に使えるお金です。そこで今回は、
家計管理をする上で知っておくことが大切な「可処分所得」をテーマでお伝えをしてきます。
可処分所得の仕組みを知る
まずは、この機会にご自分がどのくらい社会保険料や税金を支払っているのか確認してみましょう。
年収や社会保険料、所得税は年末にもらう源泉徴収票で確認できます。住民税は毎年 5 月にもらう住民
税 決 定 通知 書 で確 認をしましょう。実際にどのような計 算の流 れになっているのか、ご参 考 までに以 下 に
概算での計算例も記載いたしました。
■可処分所得=年収-(所得税及び住民税+社会保険料)
可処分所得
(手取り額)
484 万円(81%)
年収 600 万円
(A)所得税及び住民税 32 万円(5%)
(B)社会保険料
84 万円(14%)
■可処分所得の計算
給与収入が 600 万円で、扶養家族構成が、配偶者及び特定扶養親族(19~23 歳の子供)
1 人と仮定します。又、生命保険料は、生命保険・年金保険・介護医療保険でそれぞれ満額
控除の対象となる保険料を負担していると仮定します。
(A) 社会保険料:この方の社会保険料は、概ね年収の 14%程度になります。
600 万円×14%=84 万円
(B) 所得税及び住民税:
所得税・住民税は、実際の年収(額面)から、各種の所得控除を差し引いた額(課税総所得金額)
に、それぞれの税率を乗じて計算しますので、若干複雑に成ります。
① 給与所得控除額:600 万円×20%+54 万円
② 給与所得:給与収入-給与所得控除額
174 万円
426 万円
③ 人的控除:所得税と住民税で控除額が異なります。
所得税分=基礎控除(38 万円)+配偶者控除(38 万円)+特定扶養控除(63 万円)139 万円
住民税分=基礎控除(33 万円)+配偶者控除(33 万円)+特定扶養控除(45 万円)111 万円
④ 生命保険料控除:所得税と住民税で控除額が異なります。
所得税分=生命保険料・年金保険料・介護医療保険料各 4 万円で合計 12 万円
住民税分=生命保険料・年金保険料・介護医療保険料各 2.8 万円で合計 8.4 万円
⑤ 所得税課税総所得:給与所得(426 万円)―所得控除(139 万円+84 万円+12 万円)=191 万円
⑥ 住民税課税総所得:給与所得(426 万円)―所得控除(111 万円+84 万円+8.4 万円)=222.6 万円
⑦ 所得税:191 万円×5%=9.6 万円
⑧ 住民税:222.6 万円×10%=22.3 万円
■可処分所得
給与収入(600 万円)-公的負担(84 万円+9.6 万円+22.3 万円)=
484.1 万円
おおまかには、年収の約 80%が可処分所得ということになります。そこから食費や通信費、水道光熱費や
住宅費などを支払っていくわけですから、しっかりとした家計管理が大切です。
生活費などを考慮すると自由に使えるお金は少ない
<家計の収入に占める消費支出の割合>
収入
支出
単身世帯
夫婦のみ
夫婦と子供のみ
301,587
195,223
446,088
304,121
497,090
326,794
総 務 庁 統 計 局 「全 国 消 費 実 態 調 査 」(最 新 平 成 21 年)よりエフピー研 究 所 にて試 算 ・作 成
上記の表は、単身世帯、夫婦のみ世帯、夫婦と子供世帯の平均的な月収と 1 カ月あたりの支出を算出し
たものです。支 出 の内訳 としては、食 費 、住 居費 、光 熱 ・水 道 費 、被 服及 び履 物 費 、医 療 費 、交 通 ・通 信
費、娯楽費、教育費、交際費などが入っています。
この平均的な数値から算出される収入に対する支出の割合は、64%~68%です。先ほど計算したように、
税金と社会保険料で約 20%が別途差し引かれますので、実際に自由に使えるお金は少ないと感じる方も
多いのではないでしょうか。このようなデータからも、資産を増やしていくことが簡単ではないこともおわかり
いただけると思います。
今後、物価の上昇も考えられます。また、2017 年 4 月には消費増税(10%)も予定されています。今以上
にしっかりとした家計管理が必要になりますので、この機会にご自分の現状を把握してみてはいかがでしょ
うか。
執筆
エフピー研究所