国道 229 号せたな町貝取澗海岸における高波による車両滑動の再現実験

40.国道 N 号 S 町 K 海岸における高波に
による車両滑動の再現
現実験
Hydrauulic Model Teests on Vehiclee Sliding by H
High Waves on Route 229 at Kaitorima Cooast
門
門司 嵩史(Taakashi Monji))
0, two vehiclees were damaged by wave overtopping on Route N at
a K Coast inn
ABSTRACT
T : On Januarry 31 in 1980
Hokkaido. Thhe outline of the
t damage was
w shown by the interview and researchees on newspappers. Hydraulic model testss
were perform
med on the sccale of 1/40 in
i two dimen sional wave channel.
c
Baseed on the testt results, wave forces on a
vehicle were formulated annd its applicab
bility was connfirmed by thee sliding tests.
がき
まえが
面上昇や低気
近年の海面
気圧の大型化
化に伴い,北海
海道
内の海岸道路
路における越
越波被害は増
増加している.
.越
波が車両に及
及ぼす影響と
としては,越
越波飛沫による
る視
界不良等の間接被害や,越波水との
の接触による車
車両
滑動やフロントガラスの
の破損といった直接被害が
が挙
げられる.本
本研究は,こ
このうち車両
両の直接被害に
に着
目し,写真--1 に示す越波
波による 2 台の車両滑動事
台
事故
事例をもとに,当時の越
越波状況を水
水理模型実験に
によ
り再現し,その越波特性
性および車両
両滑動特性を明
明ら
かにするとともに,これ
れらを定量的
的に評価するこ
こと
を目的としている.
2. 車両滑動事故の概要
要
1980 年 1 月 31 日,北
北海道の S 町 K 海岸(図-1 )に
おいて,高波
波による越波
波により,下
下校中のスクー
ール
バスおよび救
救助に駆け付
付けた救急車
車が滑動・転倒
倒す
る事故が発生
生した.各車
車両の運転手
手らは,高波浪
浪に
よる越波の危
危険性を感じ
じ車両を停車
車させていた際
際に
被災したと証
証言している
る.この事故
故により,中学
学生
4 名および救
救急隊員 1 名が軽傷を負
名
った.当該事
事故
H1/3
発生時の海象
象状況は,潮
潮位 h = 1.00 m,有義波高
m
1.
写真
真-1 越波に
により滑動し
した車両
図-1
滑動
動事故の発生地
地点
で
常
= 7..00 m および有義波周期 T 1/3 = 12.0 s であり,非常
に厳
厳しい海象条
条件であった.
.また,事故発
発生現場は,
消波
波ブロックの
の切れ目にあた
たる護岸直背
背後の道路で
で
あっ
った.
3. 実験方法
2 次元造波水路(長さ 24.0 m,高さ 1.0 m,幅 0.6 m))
内に
に現地の海底
底地形および護
護岸模型を縮
縮尺 1/40 で再
再
現し
した.護岸模
模型は,当該事
事故時の護岸
岸断面をもと
に図
図-2 に示す消
消波ブロック の有り・無し
しの 2 種類と
し,潮位を表中
中に示す h = 1 .00 および 0.75 m を採用
用
した
た.また,波
波浪条件は,不
不規則波を 150
1 波 1 波群
群
とし
し,有義波周
周期を事故発生
生時の T1/3 = 12.0 s,換算
算
沖波
波波高 Ho’を 3.00,4.00, 5.00,6.00 および
お
7.00 m
とし
した.
実験は,事故
実
故発生時の車両
両に対する越
越波および滑
滑
動状
状況を把握す
するため,護岸
岸模型の山側
側車線中央部
部
に波
波高計および
び流速計を設
設置し,最大
大越波水脈厚
厚
ηmaxx および最大越波流速 vma
た.また,波
波
max を計測した
圧計
計を車両模型
型側面の波向き
き直角方向お
および底面に
に
各 2 つずつ設置
置し,最大波作
作用時におけ
ける水平波力
力
PH および鉛直波
お
波力 PV の計測
測を行った.さらに,現
現
地被
被災時のスクールバス(質
質量 10 t)を模
模型縮尺 1/400
で再
再現した車両
両模型を用いて
て滑動距離 L の計測を行
行
った
た.
4. 越波特性
図-3
図 に,2 潮位および
潮
2断
断面条件に対
対する,換算
算
沖波
波波高 Ho’と最大越波水脈
脈厚 ηmax の関
関係を示す.
ηmaxx は,潮位およ
よび断面に関
関わらず Ho’の
の増大に伴い
い
増加
加しているこ
ことがわかる.
.また,事故
故発生当時は
は
消波
波無し断面で
で,潮位 h = 11.00 m,Ho’ = 7.00 m の作
作
用に
により,ηmax = 2.70m と推
推定され,車
車両高さ(スク
ール
ルバス)相当の
の越波水脈が
が作用してい
いたことがわ
わ
かる
る.
図-2
2 実験模型 の断面形状
図-4 に水脈厚計測時と同一条件下での換算沖波
波高 Ho’と最大越波流速 vmax の関係を示す.vmax も,
ηmax と同様に潮位および断面に関わらず Ho’の増大
に伴い増加しており,事故発生時における vmax =
6.20 m/s であった.
5. 波力特性
図-5 に最大水脈厚 ηmax と水平波力 PH の関係を示
す.ここで,鉛直波力 PV は,全波浪条件において
生じなかったため車両の波力特性は水平波力のみで
評価する.同図中に車両模型に設置した波圧計によ
り推定した波力分布図および波力推定式を示す.波
力分布は全実験ケースにおいて三角形分布となり,
底面における波圧係数 1.20 を用いることにより推定
を可能となる.また,式中に示す S は車両底面と路
面間のクリアランスを示し,本実験においては,バ
ス車両における標準的な S = 0.24 m を採用している.
以上より,点線で示した水平波力の推定値は,越
波水脈厚からクリアランス S を除いた値の 2 乗に比
例し,実験値を概ね良好な精度で再現していること
がわかる.また,水平波力推定式の検証のため,推
定した PH を用いて静止車両の必要安定質量を算出
し,実験値と推定値の妥当性を確認している.
6. 車両滑動特性
図-6 に最大越波流速 vmax と車両滑動距離 L の関係
を示す.ここで,消波ブロック有りの潮位 h = 0.75 m
においては,車両の滑動が生じなかったため,プロ
ットが欠損している.また,同図中に車両滑動距離
L の推定式の導出方法を示す.L の推定には,運動
エネルギー保存則を用いている.式中の μ は摩擦係
数(μ = 0.5),A は流体の受圧面積を示す.また,t は
流体の作用時間を示しており,本実験においては,
動画解析より t = 0.25 s を採用した.点線で示した推
定値(t = 0.25 s)は,越波流速の 3 乗に比例し,実験値
を概ね良好な精度で再現している. さらに,同図中
に示すように,t = 0.35 および 0.15 s とすると L の推
定値が大きく変化していることがわかる.
また,L = 0.30 m を許容滑動量とした場合,vmax =
2.0 m/s が限界流速となることから,消波無し断面の
潮位 h = 1.00 m では Ho’ = 3.00 m,h = 0.75 m では Ho’
= 4.00 m および消波有り断面の h = 1.00 m では Ho’ =
4.00 m が車両滑動における限界波高となる.
7. まとめ
本研究で得られた結論は以下の通りである.
(1) 事故当時の関係者へのヒアリング調査および新
聞記事から,事故の概要を明らかにした.
(2) 現地の越波状況の再現実験により得られた越波
水脈厚から波力の推定を行った.さらに,越波
流速を用いて車両滑動距離の推定式を提案した.
(3) 当該事故の発生箇所に対して,車両の通行規制
を講じる際の基準となる波高を示した.
40.0
3.00
1CH
( ηmax - S )
: h = 1.00 (m)
水平波力 PH (kN/m)
最大越波水脈厚 ηmax (m)
― 消波ブロック無し ー
: h = 0.75 (m)
2.00
― 消波ブロック有り ー
: h = 1.00 (m)
: h = 0.75 (m)
1.00
2CH
3
S
1.20 ρg( ηmax - S )
20.0
PH= 0.60 ρg (ηmax – S )2
― 消波ブロック無し ー
: h = 1.00 (m)
: h = 0.75 (m)
10.0
― 消波ブロック有り ー
: h = 1.00 (m)
: h = 0.75 (m)
0.0
0.00
0.00
1.00
2.00
3.00 4.00 5.00 6.00
換算沖波波高 Ho' (m)
図-3
7.00
8.00
最大越波水脈厚
0.00
0.50
図-5
最大越波水脈厚における水平波力
12.00
8.00
― 消波ブロック無し ー
: h = 0.75 (m)
― 消波ブロック有り ー
: h = 1.00 (m)
4.00
: h = 0.75 (m)
2.00
1.00
1.50
2.00
最大越波水脈厚 ηmax (m)
― 消波ブロック無し ー
: h = 1.00 (m)
10.00
: h = 1.00 (m)
6.00
車両滑動距離 L (m)
最大越波流速 vmax (m/s)
30.0
: h = 0.75 (m)
― 消波ブロック有り ー
: h = 1.00 (m)
8.00
― 越波作用時間 t ―
: t = 0.35 (s)
: t = 0.25 (s)
: t = 0.15 (s)
6.00
2.50
3.00
1
mv = F ⋅ L
2
1
( ρ ⋅ Avt )v = (μ ⋅ Mg ) ⋅ L
2
1
ρAtv = μMg ⋅ L
2
ρAt
∴L =
v
2 μMg
2
2
3
3
4.00
2.00
0.00
0.00
0.00
1.00
2.00
3.00 4.00 5.00 6.00
換算沖波波高 Ho' (m)
図-4
最大越波流速
7.00
8.00
0.0
図-6
2.0
4.0
6.0
最大越波流速 vmax (m/s)
最大越波流速における車両滑動距離
8.0