液状化地点の砂地盤から採取した Gel-Pushサンプリング試料の品質評価 梅原 由貴、Gabriele CHIARO Geo-disaster Mitigation Engineering Gel-Push サンプリング 砂地盤の乱さない試料の採取は非常に困難であり、そ の乱れが実験結果に影響を及ぼすことが従来指摘されて きた。昨今開発されたGel-Pushサンプリング(GP, 図1, 2) は、ジェルが試料表面を覆いサンプラーとの摩擦を減らす ジェル 図2 GP サンプラー先端部 ことで、高品質試料を採取できると期待されている。 本研究では、2011年東北地方太平洋沖地震で液状化し た千葉市美浜区(図3)の砂質地盤から採取したGP試料 と、従来手法であるトリプルチューブサンプリング(TP)試 料を用いて、各試料の品質評価を行った。本研究は基礎 地盤コンサルタンツ株式会社との共同研究である。 図1 GP サンプラー*1 図3 試料採取場所 弾性波速度の計測と三軸液状化試験 試料の品質評価は、以下のパラメータについて原地盤と採取試 料での計測値を比較することにより実施した。室内試験は三軸試 験機(図4)を用い、弾性波速度計測はTA法(図5)を採用した。 (i) 間隙比(e):密度の変化を表す (ii) せん断波速度(Vs):土粒子構造(かみ合わせ)の変化を表す その後、試料の液状化強度を測定するために、応力振幅一定の 非排水繰り返し三軸試験(液状化試験)を行った。 図4 三軸試験機 図5 Vs測定模式図 試料の品質評価と非排水繰り返し三軸試験結果 埋立層 深度: GL-2.5~-3.5m Vsの変化 Vs*lab / Vs*field 1.8 1.6 TP GP 1.4 0.6 TP GP 0.5 繰り返し応力比, s'd/2s'c 2.0 0.4 1.2 GPはTPと比較して、密度と構造両方の面で乱れの 0.3 1.0 0.8 0.6 e ±10%, Vs±20% e ±20%, Vs±40% e ±30%, Vs±60% 0.2 0.0 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 eの変化 e / e lab 1.2 少ない試料を採取できたといえる。しかし、GP, TP共 0.2 試料の品質 0.4 埋立層 (図6, N値=4) 1.3 1.4 0.1 0.1 1.5 field に液状化強度RL20 は0.3~0.4程度であり、実際に深 埋立層 深度: GL -2.5~-3.5m 1 刻な液状化が生じた非常に緩い地盤としては、やや 軸ひずみ DA=5% 10 100 繰り返し載荷回数, Nc (回) @ 1000 大きな強度を示した。 図6 埋立層から採取した試料の品質評価と液状化強度曲線 Vsの変化 Vs*lab / Vs*field 1.8 1.6 沖積層 深度: GL-15.0~-18.53m TP GP 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 試料の品質 e ±10%, Vs±20% e ±20%, Vs±40% e ±30%, Vs±60% 0.4 0.2 0.0 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 eの変化 e / e lab 1.2 field 1.3 1.4 1.5 0.6 繰り返し応力比, s'd/2s'c 2.0 0.5 沖積層 (図7, N値=8~11) 沖積層 深度: GL -15.0~-18.53m TP GP 0.4 採取できたといえる。しかし、この品質の違いは液状 0.3 化強度RL20に影響を与えるほど大きいものではなか 0.2 った。GP, TP共に、N値=8~11の沖積層においては 0.1 軸ひずみ DA=5% 0.1 GPはTPと比較して、構造面で乱れの少ない試料を 1 10 100 適切な試料採取ができたと考えられる。 1000 繰り返し載荷回数, Nc (回) @ 図7 沖積層から採取した試料の品質評価と液状化強度曲線 *1:島田ら, 全国地質調査業協会, 「技術フォーラム 2013」長野, No.100, 2013. KIYOTA Lab., Institute of Industrial Science, University of Tokyo 2015
© Copyright 2024 ExpyDoc