KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL Milk of calciumを伴う腎盂腎杯憩室内移行上皮癌の1例 吉村, 耕治; 吉田, 浩士; 河瀬, 紀夫; 瀧, 洋二 泌尿器科紀要 (1998), 44(9): 649-652 1998-09 http://hdl.handle.net/2433/116254 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 泌 尿 紀 要44;649-652,1998 649 Milkofcalciumを 伴 う腎盂 腎杯 憩 室 内 移 行 上 皮 癌 の1例 公 立 豊 岡病 院 泌尿 器 科(部 長:瀧 吉村 A CASE OF OF 耕 治,吉 田 浩 士,河 TRANSITIONAL CALCIUM IN 瀬 CELL 洋 二) 紀 夫,瀧 洋二 CARCINOMA AND A PYELOCALYCEAL MILK DIVERTICULUM Koji YOSHIMURA,Hiroshi YOSHIDA, Norio KAWASE and Yoji TAKI From the Department of Urology, Toyooka Hospital A 66-year-old man presented with right flank pain and macroscopic hematuria. Abdominal radiographs and computed tomography revealed a right pyelocalyceal diverticulum with milk of calcium and a soft tissue mass inside it. Other examinations, including positive urine cytology and negative random bladder biopsies, suggested a malignant tumor of the pyelocalyceal diverticulum. The patient underwent right nephroureterectomy. Histopathological examination revealed grade 3 transitional cell carcinoma. This is the first case of transitional cell carcinoma and milk of calcium coexisting in the same pyelocalyceal diverticulum. (Acta Urol. Jpn. 44: 649-652, 1998) Key words : Transitional cell carcinoma, Milk of calcium, Pyelocalyceal diverticulum 既 往 歴:60歳,腰 緒 言 腎 孟 腎杯 憩 室 内 に移 行 上 皮癌 が 合 併す る こ とは比 較 的 稀 で あ る.今 ciumを 回,同 一 憩 室 内 に さ ら にmilkofcal- も合 併 した きわ め て 珍 しい症 例 を経 験 した の で 報 告 す る. 現 病 歴:1996年7月21日 認 め 翌22日 mmの 家 族 歴:特 て 右 腎 上 部 に20×18 は 同 部 の 石 灰 化 陰 影 はmilkofcalciumに 典 型 的 な 水 平 面 を 呈 した(Fig.lb).腹 症 主 訴:右 右側 腹 部 痛 と肉眼 的 血尿 を 当 科 初 診.IVPに 類 円 形 穎 粒 状 石 灰 化 陰 影 を 認 め(Fig.la),立 位KUBで 29×21mmの 患 者:66歳,男 椎 圧 迫 骨 折 と診 断 さ れ た. 例 性 側 腹 部 痛,肉 眼 的血 尿 記す べ き こ とな し Fig 1. (a) supine position, a round density at the upper portion of the right kidney, (b) upright position, a crescent-shaped shadow with a horizontal border at the same portion. 部CTで は, 右 腎 に嚢 胞 様 の 部 位 を 認 め そ の 底 部 に 水 平 面 を有 す る 石 灰 化 陰 影 を,ま た別 の部 位 に内腔 へ 突 出 す る腫 瘤 を 認 め た(Fig。2).右 側 腹 部 痛 は小結 石 の 下 降 に伴 う もの と考 え ら れ,そ の 後 も度 々 痂 痛 発 作 を お こ し結 石 の 自 排 を 認 め た.尿 細 胞 診 に てclass3 Fig 2. Abdominal computed tomography showed a cystic lesion with milk of calcium (large arrows) and soft tissue mass (small arrows) inside it, at the upper portion of the right kidney. 泌尿 紀 要44巻9号1998年 650 を1回,class4を3回 認 め た た め,患 者 を再 三 説 得 の 上 精 査 加 療 目 的 に て1997年1月27日 な お,外 ず,右 入 院 と な っ た. 来 で 施 行 した膀 胱 鏡 で は 異 常 所 見 は 得 られ 腎 孟 尿 管 洗 浄 細 胞 診 で はclass2で 入 院 時 現 症:胸 孟 との交 通 を認 め た.憩 室 内腔 は正 常 また は異 型 の移 行 上 皮 で 覆 わ れ,主 TCC,G3で 腫 瘤 は 一 部 壊 死 組 織 を含 む あ っ た.定 義 が な い た め病 期 は不 明で あ るが,腎 実 質 へ の 浸 潤 度 はIFN一 α に準 ず る と考 え ら あ っ た. 腹 部 理 学 的所 見 に 異常 を認 め な か っ れ た ため 術 後補 助 療 法 は施 行 しな か った, 術 後3カ 月 目に膀 胱 内 に6カ 所 の小 腫 瘍 を認 め た た た. 入 院 時 検 査 所 見:顕 微 鏡 的 血 尿 を認 め た が,血 算, 臥 位KUBで は,右 部CTで 腎上 部 の 石 灰 化 陰 影 が 二 群 に は42×38mmと 施 行 し,そ の 際 の病 理組 織 学 的 診 断 は TCC,Gl,pTaで 生 化 学 検 査 所 見 に 異 常 を認 め な か っ た. 分 か れ,腹 めTUR-Btを 初 診 時 に 比 し嚢 あ った.BCG膀 施 行 し,術 後10カ 月 経過 した現 在 再 発 の 兆候 を認 め て いな い. 胞 様 の 部 位 が 増 大 して お り,主 訴 の 右 側 腹 部 痛 と 関 連 して い る 可 能 性 も 考 え られ た.前 回 のCTと 1月30日 に施 行 した,膀 を認 め ず,同 考 同様 内 察 Milkofcalciumは1954年 部 に は 石 灰 化 陰 影 と 腫 瘤 像 を 認 め た. 胱粘 膜 生 検 に て は特 に異 常 時 に施 行 した逆 行性 右 側 腎孟 尿 管造 影 検 にHowellt)が 位 ま た は 側 臥 位 で 水 平 面 を呈 す る 石 灰 化 陰 影 を 認 め れ ば 診 断 は 比 較 的 容 易 で あ る.本 か っ た.ま 集 計 報 告 し て お り,そ たこの時の右側腎孟 尿管の尿細胞 診で は あ っ た. 以 上,1)通 2)右 は10--70歳 常 の 尿 細 胞 診 で3回 側 尿 管 尿 の 細 胞 診 でclass3で 陽 性 で あ る こ と, あ り,画 胞 様 の 部 位 内 に 腫 瘍 を認 め た こ と,3)左 路 の 形 態 が 正 常 で あ っ た こ と,4)小 像上嚢 側の上部尿 結石が度々下降 3)や の 特 徴 と し て は,1)発 や 右 側 が 多 い,4)症 の で あ る,5)腎 症 例 は偶 然 発 見 され た も 機 能 障 害 を伴 う高 度 の 水 腎 症 の 拡 張 し た 腎 杯 内 さ れ る こ と,な で あ る,6)結 ど か ら 腎 孟 腎 杯 憩 室 内 にmilkofcal右 腎尿 管 全 摘 除 お よ び 膀 胱 部 分 切 除 術 を 施 行 し た. 手 術 所 見:右 腰部 斜 切 開 お よ び下腹 部 正 中切 開 に よ り,右 側 副 腎 は 温 存 す る 形 で 腎 尿 管 お よ び右 尿 管 口 を 含 む 膀 胱 壁 の 一 部 を一 塊 に摘 出 した.周 離 は 容 易 で あ り,リ 囲組 織 との剥 ンパ 節 の 腫 大 は 認 め な か っ た. 摘 出 標 本 お よ び 病 理 組 織 学 的 所 見:憩 mm大 の 小 結 石 が 多 数 認 め ら れ(Fig.3),成 酸 カ ル シ ウ ム76%,燐 酸 カ ル シ ウ ム24%で 室 内 に はl 分 は蔭 あ っ た.腎 見年齢 差 を 認 め な い, 孟 腎 杯 憩 室 内 に 存 在 す るcystictype に 存 在 す るhydronephrotictypeと 癌 を 合 併 し た も の と 判 断 し,2月10日 を 状 と して は 尿 路 結 石 症 状 や 尿 路 感 染 症 状 の 他,約1/3の と,腎 邦 で は 林 ら2)が94例 代 で20-・CO代 に 多 い,2)性 す る こ と よ り嚢 胞 様 の 部 位 と 腎 孟 腎 杯 との 交 通 が 示 唆 ciumと 胆嚢 結 石 で の 同 様 の 病 態 に ち な ん で 命 名 し た も の で あ る が,立 査 で は嚢 胞 様 の 部 位 内 へ の 造 影 剤 の 流 入 は 認 め ら れ な class3で 胱 内注 入 療 法 を は 約4:1の 比 率 石 成 分 と して は燐 酸 カル シ ウ ムが 最 も 多 く,燐 酸 塩 を含 む 結 石 が80%以 あ り,本 症 の 成 因 と して は,感 上 を 占 め る,な どが 染 を伴 っ た尿 路 閉 塞 の た め 尿 中 に 化 学 変 化 を 生 じ結 石 が 形 成 さ れ る と す る Bergの 感 染 説3)と,憩 状 と な り,結 室 内 溶 液 が 濃 縮 して コ ロ イ ド 石 が 形 成 さ れ る と す るRudstromの コ ロ イ ド説4)が あ る 。 悪 性 腫 瘍 と の 合 併 は 現 在 まで 前 立 腺 癌5>,腎 孟 癌6),白 血 病7),尿 管 癌2)が 報 告 さ れ て い るが 腎 孟 腎杯 憩 室 腫 瘍 との合 併 は本 症例 が 最初 で あ る と考 え ら れ る. と こ ろ で 今 回 の 報 告 で,Middletonら が 提 唱 した L pyelocalicealdiverticulum'と い う 用 語8)を 和 訳 し た `腎 孟 腎 杯 憩 室'と い う 用 語 を 使 用 して い る が,こ れ 醜藩 轡1懲叢繰 Fig3.Grossappearanccofthespecimen . Noteatumorprotrudingintotheinner spaceofthediverticulum(large arrows)andtinystoneswithinit(small arrOW). は 従 来 の 腎 杯 憩 室 よ り も若 干 大 き な 範 疇 を示 す と考 え られ,本 症 例 の よ うに 直接 腎孟 と交 通 を示 す憩 室 を も 含 め た 概 念 だ と 考 え ら れ る. 腎 孟 腎 杯 憩 室 腫 瘍 は1960年 て 以 来,本 例 は8例 西 浦 ら9)が 初 め て 報 告 し 邦 で は 現 在 ま で7例 目 と考 え ら れ る が で あ る 【5)本 外 国 で の 報 告 は3例 邦 で の 報 告 例 をTableに (Table1),詳 て み る と,年 の 報 告 が あ り9'15)自験 のみ ま と め た 細 の判 明 して い る もの に つ い て検 討 し 齢 は42歳 か ら66歳(平 は 認 め な い が1例 室 の 部 位 は5例 均57歳) ,左 右 差 を 除 く と す べ て 男 性 で あ っ た .憩 で 腎 上 部,2例 の 発 生 が 多 か っ た.主 で腎 中 ∼ 下部 と腎 上 部 訴 は全 症 例 で 血 尿 を認 め ,治 療 と して は 術 前 診 断 が 移 行 上 皮 癌 か 腎 細 胞 癌 か に 基 づ い 吉 村,ほ か:腎 651 孟 腎 杯 憩 室 腫 瘍 ・Milkofcalcium Tablel.Carcinomainapyelocalycealdiverticulum:reportedinJapan No.報 告 者 報 告 年 年 齢 性別 患側 部位 主訴 男 左 腎 上 部 肉眼 的血 尿 不明 不明 不 明 不明 治療法 1西 浦ら 1960 56 2荻 須ら 1980 不 明 3藤 田ら 1981 42 男 左 4林 ら 1981 53 女 右 5相 馬ら 1984 58 男 右 6森 ら 1985 61 男 右 腎上部 肉眼 的 血 尿 震羅 7安 達ら 1989 63 男 左 腎上部 肉眼 的 血 尿 腎 尿 管 全摘TCC,G2-3+ 8自 験例 1998 66 男 右 腎上部 朧 鞍 ∼ 肉眼 的 血 尿 腎上部 鞍 肉眼 的 血 尿 不 明TCC不 明 腎 尿 管 全摘TCC,・2-・ 転帰 嚢糊 腎 摘TCC+ 不明 不明 不明 不明 4MNED 一 2YNED 腎 摘TCC+ ∼ 顕 微 鏡 的 血尿 腎 摘TCC,・ 矯 結石の合併 病理 ・+(C・ 蝋TCC,・ 不明 ・X) ・+(…X,・ 腎 尿 管 全摘TCC,・ 不明 6M3M,局 ・P) 不明 ・+(…X,・ 所 再発 不明 10M3M,膀 ・P) 胱 再発 TCC=transitionalcellcarcinoma,G=gradc,CaOX:calciumoxalate,CaP:caiciumphosphate,M:months,Y:years, NED:noevidenceofdisease, て 腎尿 管全 摘 術(お よび放 射 線療 法)ま た は根 治 摘 腎 文 全摘術 とな って い る が,予 後 につ い て は1例 で局 所再 発 を認 め る もの の いず れ も観 察期 間が 短 く結 論 的 な こ 1)HowellRD:Milkofcalciumrenalstone.JUro1 82:197-199,1959 とは言 えな い.病 理 組 織 は全 症例 で移 行 上皮 癌 で あ る が,悪 性 度 の 判 って い る5例 は いず れ もgrade2ま 献 2)林 真 二,岩 を 合 併 た は3と 低 分 化 で あ る ので 長期 予 後 に興 味 が もたれ る 井 謙 仁,安 本 亮 二,ほ か:尿 管 腫 瘍 し たMilkofcalciumrcnalstoneの1例.泌 尿 紀 要39=1035-1038,1993 とこ ろで あ る.結 石 は7例 中6例 で合 併 して い るが, 成分 の判 明 して い る もの は3例 の み で,1例 ル シ ウ ム,2例 3)BergRA:Milkofcalciumrenaldisease;reportof が蔭酸カ casesandreviewoftheliterature.AmJ が 蔭 酸 カル シ ウム と燐 酸 カル シ ウ ムの Roentgenal101:708-713,1967 4)RudstromP:EinFallvonNierenzystemiteiner 混合 で あ った. 本症 例 で は術 前 にMRIを eigenartigerKonkremcntbildung・EurJsurg 施 行 しなか った が,も し 施行 して い れ ば確 定診 断 を得 るに い た ら ない まで も有 Suppl85:501-510,1971 slw・lkerwH,P・a・s・nREandJ・h…nNR・Milk・f 用 な情 報 が得 られ た で あ ろ う.ま た,左 腎尿 管 尿 の細 calciumrenalstone;casereport.Jurol84: 胞診 も必要 であ った か も知 れ な い が,上 部尿 路 造 影検 査 で特 に異 常 を認 め ず通 常 の 尿細 胞 診 で 陽性 で あ る場 517-520,1960 6)HaseA,YamaguchiY,UtsunomiyaK,etaL:Milk 合,そ の手 技 に よる癌 細 胞 の播 種 の可 能 性 に は十 分 に ofcalciumrenalstoneandrenalpelviccancer 留意 す る必 要 が あ る.そ の意 味 で本 症 例 の よ うに憩 室 associatedwithhydronephrosis.JpnJMedSci 内 の癌 を強 く疑 う場 合 で は憩 室 の穿 刺 を要 す る検 査 は Biol25:301-305,1986 7)MurasawaM,HayashiS,KawasakiC,etaL:Milk 厳 に慎 むべ きだ と考 え られ る.い ず れ にせ よ,術 前 に ofcalciumrenalstoneinapatientwithacute は 癌 の な い 可 能 性 に つ い て な ど の 十 分 なinformed promyelocyticleukemia.JPnJMed29:296-300, consentが 必 要 で あ ろ う.手 術 は根 治 的 に行 い え た と 判 断 し術 後 補 助 療法 を施 行 しな か っ たが,予 後 につ い 1990 8)MiddletonAWandPfisterRC:Stone-containing て は ま った く予 測不 可 能 で あ り今 後 の厳 重 な経 過 観 察 pyelocalicealdiverticulum:embryogenic,anatomic, radiologicandclinicalcharacteristics.JUrollll: が 必要 で あ る と考 え られ た. 結 2-6,1974 語 9)西 浦 常 雄,横 杯 憩 室 の1例.日 同 一 腎孟 腎杯 憩 室 内 にmilkofcalciumと 移行上皮 10)荻 須 文 一,成 山 繁 ・結 石 お よ び 腫 瘍 を 伴 っ た 腎 泌 尿 会 誌52:87-88,1961 田 晴 紀,三 矢 英 輔:Pyelogeniccyst 癌 の合 併 した1例 に若 干 の 文 献 的考 察 を加 え て報 告 し に 合 併 し た 移 行 上 皮 癌 の1例.日 た.両 疾 患 の 合 併 は 世 界 で も最 初 で あ る と考 え られ 640,1980 た. 11)藤 野 晴 好,柳 岡 正 範,ほ か:腎 杯 憩 室 泌 尿 会 誌72: 1343-1349,1981 本 論 文 の要 旨 は 第161回 日本泌 尿 器 科 学 会 関 西 地 方 会 に て 発 表 した. 田 民 夫,浅 に 発 生 し た 移 行 上 皮 癌 の1例.日 泌 尿 会 誌71: 12)林 正,瀧 洋 二,町 田 修 三:移 行 上 皮癌 お よ び 結 石 を 伴 っ た 腎 孟 腎 杯 憩 室 の1例.泌 尿 紀 要 28:199-202,1982 13)相 馬 文 彦,吉 川 和 行:結 石 を伴 った腎 杯 憩 室 腫瘍 652泌 尿 紀 要44巻 の1例.日 14)森 啓 高,西 泌 尿 会 誌75:873,1984 俊 昌,石 発 生 した 移 行 上 皮 癌 の1例.泌 川 英 二,ほ う 腎 孟 腎 杯 憩 室 腫 瘍 の1例.臨 か:結 石 を伴 泌39:759-761, 1985 15)安 達 高 久,江 崎 和 芳,船 9号1998年 井 勝 七:腎 孟 腎杯 憩 室 に 尿 紀 要35:1383- 1386,1989 (ReceivedonJanuary5,
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