朝の法話第八回六月十二日全校のみなさん、おはようございます。さて、今朝も釈尊の伝記について放送します。苦からの解放を目指したシッダールタは、この様な修行を続けていても駄目だと悟り、修行をやめました。そして、近くを流れるネーランジャラー河で身を清め、川のほとりで、ウルベーラー村の村娘スジャーターから乳粥の供養を受けました。三十五歳になったシッダールタは、苦行をやめた後、ガヤーの町の郊外の菩提樹の木の下で静かに瞑想しました。すると、心の中の悪魔がいたわりの言葉をもって話しかけてきました。「あなたはやせ細ってしまって、顔色も悪い。そんな辛く苦しい修行を続けていると死んでしまいます。こんな苦しいことは早くやめて、楽しくやろうではないか」そう言って、悪魔は、美女となったり、金銀財宝をもって誘惑するお金持ちの姿になったり、手に武器をもって襲ってくる悪魔の大群となったりして、シッダールタの邪魔をしたのです。これに対し、シッダールタは「悪魔よ。おまえの求めるものは見せかけの楽しみであって、苦しみの原因となるものでしかない。真の勇者はこれに打ち勝って本当の楽しみを得ることができるのだ」こう言って、悪魔との戦いに勝利を納め、やがて永遠の真理に目覚めて、正覚（さとり）に達したのでした。私たちの生活においては、誘惑や嫌がらせ、脅かしなどが私を取り巻いています。嫌いなものの誘惑に負けることはありませんが、好きといった心や欲しいといった心には負けてしまうことがあります。シッダールタが戦った悪魔の正体とは自分自身の心のことです。この悪魔は、時に本当に大切なことに眼を向けさせないはたらきをします。楽をしたい、あれが欲しい、ほめられたいなど、そういう自分の思いが満たされることによってもたらされる事柄のみが幸せと思い込んでしまうところに間違いがあります。シッダールタは真実に目を向けることを妨げる悪魔の正体を見抜いてさとりを得られたのです。皆さん、来週からテストもありますね。辛いとき、悪魔に誘われてフッと楽な方へ流れることはありませんか。これで朝の法話を終わります。