ユビキタス ビジョン テクノロジーの実用化

ユビキタス・ビジョン・テクノロジーの実用化
研究の背景と目的
東北大学大学院情報科学研究科では,これまでに,位相限定相関法
(Phase-Only Correlation: POC)と呼ばれる超高精度画像照合技術に関する研
究開発を実施し,株式会社山武ならびに松下電器産業株式会社などとの連携の
もとに,セキュリティ向け指紋照合装置,工業用スマートビジョンセンサ,リ
アルタイム画像計測 VLSI プロセッサなどを実用化するとともに,次世代画像圧
縮技術などへの応用を検討してきた.画像照合は,あらゆるビジョンシステム
の基盤技術として重要である.位相限定相関法は 1/100 ピクセル精度での画像
照合(レジストレーション)が可能であり,また,計算の規則性を生かして組
み込みマイクロプロセッサによるリアルタイム処理が可能である.来るべきユ
ビキタス情報化社会においては,さまざまな情報機器が IPv6 によるネットワー
クを介して結合されることが予想されている.その際に高い信頼性と利便性を
実現するためには,さまざまな情報機器が外界との画像インターフェース(セ
キュリティ向け認証機能,2 次元・3 次元キャプチャリング機能,映像伝送機能
など)を備えることが必須になると思われる.このような組み込み機器をター
ゲットとして,生活のすみずみに浸透させることを目的とした「ユビキタス・
ビジョン・テクノロジー」の実用化に向けた研究開発を行う.
主な研究目的は以下の3項目である.
(1) ユビキタス・ビジョン・テクノロジーの共通基盤として,位相限定相関法に
基づく超高精度・超高速画像照合技術に関する体系的な研究を行う.
(2) 上記の研究に基づき,(i)セキュリティ向け個人認証技術(バイオメトリクス
技術),(ii)高精度 2 次元および 3 次元情報取得技術,(iii)マンマシンインタ
ーフェース技術,(iv)マルチメディア情報圧縮伝送技術を開発すると共に,
それらの実用化を目指す.
(3) これらに関連する研究開発を推進する産学連携フォーラムを運営し,研究成
果の産業界への広範な普及を図る.なお,この基本的な枠組みとなる産学連
携フォーラム(Intelligent Vision Forum: IVF)については,すでに本年2
月に本研究者らによって設立され,活動を開始している.
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位相限定相関法による超高精度リアルタイム画像照合技術
(ユビキタス・ビジョン・テクノロジーの基盤技術)
位相限定相関法は,1/100 ピクセル精度での画像の位置ずれ検出と 1/100 度
精度での回転角度検出が可能でかつシグナルプロセッサでの超高速処理が可能
な画像照合技術である.
(株)山武のホームページ http://www.compoclub.com/svs/ より抜粋.
POC(Phase Only Correlation)*は、東北大学と(株)山武の共同研究により開発され
た世界初の画像処理技術。元になる登録画像と照合すべき入力画像の相関(類似性)を
算出するため、デジタル信号化された画像をフーリエ変換で数学的に処理すると、振
幅(濃淡データ)と位相(像の輪郭データ)に分解されます。この2つの情報のうち形状情
報が含まれない振幅情報は使わずに、位相情報のみを用いて相関を瞬時に画像処理す
るアルゴリズム(演算手引き)、それが POC(位相限定相関法)です。この POC テクノロ
ジーは、振幅情報を用いた従来の2次元相関法や特徴抽出法とは全く異なります。
POC は外乱に強く、大きな誤りが無いという特徴を持っています。
*現在特許申請中
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位相限定相関法のアプリケーション展開
(ユビキタス・ビジョン・テクノロジーへ向けて)
本研究グループでは,位相限定相関法に基づく超高精度リアルタイム画像照
合技術を下図のようなきわめて広範囲の分野に応用展開することを計画してい
る.図中の赤字は,すでに研究開発に着手している分野である.
来るべきユビキタス情報化社会には,家電製品などさまざまな設備や装置に
IPv6 による固有のアドレスを与えられた情報機器が組み込まれ,ネットワーク
の末端が分散的にインテリジェント化していくことが予想されている.その際
にユーザが安心して使用できる信頼性と誰でも簡単に使える利便性を実現する
ためには,さまざまな組み込み情報機器が外界との画像インターフェース(認
証機能,2 次元・3 次元環境情報取得機能,映像伝送機能など)を備えること
が必須になると思われる.本プロジェクトにより,組み込み機器をターゲット
として,生活のすみずみに浸透させることを目的とした「ユビキタス・ビジョ
ン・テクノロジー」の基盤技術の確立を目指す.
マンマシン
インターフェース
距離計測
映像情報圧縮・伝送
リモートセンシング
スマートイメージセンサ
映像ブレ補正
ロボットビジョン
自律走行車
生体画像計測
医用画像計測
超解像イメージング
顕微鏡焦点合わせ
ITS
(高度道路交通システム)
レーザースペックル計測
3次元計測
インターネット
移動物体検出・追跡
向け個人認証
半導体製造装置
監視カメラ
ラベリングマシン
入退室管理装置
テーピング装置
ログイン装置
マルチメディア
チップマウンタ
印鑑照合
個人認識
マウス
セキュリティ
(バイオメトリクス)
携帯電話
ユーザ認証
知的システム
マーキング装置
産業用画像処理
製品検査
傷・汚れ検出
指紋照合
顔画像照合
ワイヤボンダ
網膜パターン
照合
照合・認識
位置合わせ
画像レジストレーション
位相限定相関(POC)による
超高精度リアルタイム画像照合技術
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赤字はすでに研
究開発に着手し
ているもの
実用化に向けた準備状況
上記の応用分野の一部をカバーすることを目的として,すでに下記の製品の
実用化に成功している.
工業用スマートビジョンセンサ SVS シリーズ
セキュリティ向け指紋照合装置
フレンドタッチシリーズ
技術の広範な普及に向けた産学連携フォーラムの設立
ユビキタス情報化社会において優れた技術を普及させるためには,従来のよ
うに単独のグループの利益追求を優先した閉鎖的な研究開発体勢では不十分で
ある.むしろさまざまな企業や大学の垣根を取り払い,バックグラウンドの異
なる技術者・研究者が気軽に会して議論し,相乗的な研究開発効果を発揮して
いく横断的な組織を形成することが必須である.このような観点から,本研究
グループでは,すでに本年の2月に位相限定相関法の各種アプリケーションを
中心的に議論するフォーラム「インテリジェント・ビジョン・フォーラム
(Intelligent Vision Forum: IVF)
」を設立し,横断的な産学連携の活動を開始
している.詳しくは,下記のホームページを参照されたい.このような,開か
れたユビキタス情報化社会に適する横断的な産学連携の場を準備することも今
後の大学の重要な機能であると考える.
東北大学大学院情報科学研究科におけるインテリジェント・ビジョン・フォー
ラムのホームページ: http://ivf.higuchi.ecei.tohoku.ac.jp/
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