2015年度機械システム応用実験 - 係数励振実験

実験のねらい
2015
• 振動現象を実験によって体感する。
– 複雑な現象も簡易モデルで代用
して大まかに振動特性をつかむ
– 振動現象(解析・実験)から
→ばね定数、減衰係数等同定
– 係数励振モードが存在すること。
→その際には、安定領域、
不安定領域があること
機械システム応用実験(F)
倒立振り子の係数励振実験
機械システム工学科
宇宙システム研究室
衛星
ロケット2段
ロケット1段
– 振動試験法、振動特性を求める
ための測定法の習得
1
2
1.実験の目的
2.線形1自由度振動系の基礎
線形微分方程式
振動系は、運動方程式の形によって以下のように分けることができる。
自律系:
自律系:
微分方程式の中に時間 t が陽に入っていない。例えば、
x  f ( x, x )
非自律系:
非自律系:
微分方程式の中に時間 t が陽に入っている。
また、非自律系には以下の2つがある。
mx  cx  kx  0
機械の動特性を数学的に表現するには、以下のモデルが用いられえるが、本実験では質量‐ばね系モデル
を扱う。
mx  cx  kx  f (t )
mx  cx  kx  F cos t
強制振動系:
強制振動系:
微分方程式の非斉次項に独立変数として時間を含む関数を持つ。
係数励振系:
係数励振系:
mx  cx  k (t ) x  0
微分方程式の係数に独立変数として時間を含む関数を持つ。例えば、ぶらんこに立って、屈伸し、重心の
位置を上下させると振動を励起できる(他にも、アメリカン・クラッカーなど)。
線形1自由度系の基本振動パラメータの同定(角振動数、減衰比)
2.
線形1自由度系の係数励振と安定性
3.
振動試験法および振動測定法の習得
•
質量‐ばね系モデル
•
リセプタンス・モデル
•
有限要素法
–
–
–
機械が集中した質量とそれを結ぶばねとで構成されていると仮定
機械が分布した質量とはり構造とからなると仮定
機械が有限個の三角あるいは四角な有限要素からなると仮定する
2.2 1自由度振動系
振動現象を理解する上で最も重要な形態に1自由度振動系がある。代表例としては図1に示す単振子があるが、複
雑な構造の振動に関しても最低次の固有振動モードを1自由度振動系に置き換えることも実際の設計ではよく行われる。
本実験は、倒立振り子のモデルの運動を対象とし、以下の項目について学ぶことを目的とする。
1.
2.1 振動モデル
質量
電気計測の応用
(データ処理、工学値変換など)
ばね
解析学の工学への応用例を学ぶ
3
図1 単振子
減衰
図2 1自由度振動系
4
2.線形1自由度振動系の基礎
2.線形1自由度振動系の基礎(続き)
2.3 運動方程式の導出
2.5 自由振動
図3に示す、1自由度振動系モデルを考え、質量mの位置をx座標によって示す。この時、質点には以下の力が作用する。
定数を係数に持つ線形1自由度振動系の式を
mx  cx  kx (k : ばね定数,c : 減衰係数)
① 質点の質量
② ばねの復元力
x  2n x  n 2 x  0
③ ばねの材料の変形によって生ずる減衰力および流体抵抗、機構摩擦等によって生ずる減衰力
④ 質点またはばねに作用する外部加振力
d 2x
 mx 
dt 2
復元力  減衰力

k
n 
: 角振動数,
m
(3) 式の解はx  e
加振力
st
c

: 減衰比
2 mk
と仮定して求める。 その時、(3) 式に代入して得られる特性方程式は
s 2  2n s  n  0
2
最も簡単な場合には、復元力は変位の関数、減衰力は速度の関数、加振力は
となる。
質量
2.4 減衰
 
減衰は以下のように分類できる
ばね
2
s  n  n  2  1  
x
........................ (1)
• 粘性減衰(Viscous damping)
速度に比例する減衰力
• 構造減衰(Structural damping)
別名履歴減衰(Hysteretic damping)
• 摩擦減衰(Coulomb damping)
• その他
……………….. (4) となり、特性根は
加振力
時間の関数になり、運動方程式は以下のように表すことができる。
mx   K ( x)  D( x )  F (t )
……………….. (3) 但し、
質点の質量はばねとの釣り合いで初期位置を変えるだけなので、運動に関係ないとし、運動方程式は以下の形になる。
m
……………….. (2) と表す。両辺をmで割って、
減衰
c
k
 c 
 
 
2m
 2m  m
……………….. (5) 2
k
 cr 

  0
 2m  m
c
c

c r 2 mk
となる減衰係数 cr を臨界減衰係数 (critical damping ) と定義する
であり、減衰比は減衰係数と臨界減衰係数との比であることが分かる。
また、m x  kx  0
の一般解が x  A sin  n t  

k
m
であることから、 n 
は無減衰角振動数と呼ぶ。(ダンパーがないなど、減衰しない振動・・・現実にはありえない)
図3 1自由度振動系モデル
5
6
2.線形1自由度振動系の基礎(続き)
2.線形1自由度振動系の基礎(続き)
2.5 自由振動(続き)
2.5 自由振動(続き)
2
式 (5) より特性根は s  n  jn 1  


式 (5) より特性根は s   n
となり、一般解は
x(t )  Ae nt cos 1   2 nt   ( A,  は初期条件によって定まる)
1 2
Ae
……………….. (7)
この振幅比は時間に関係なく ζ だけで定まり、自然対数をとると、
x(ti )
2
  ln

x(ti 1 )
1  2
0.4
 1
図6 に示すような正弦波加振力による強制振動を考える。運動方程式は
mx  cx  kx  f (t )
A cos  
x  2 n x  n 2 x   (t )
1
‐0.6
4
図5 減衰比と自由振動
f (t )
….. (13)
x(t )  e  nt ( A sin 1   2 nt  B cos 1   2 nt )  [ 特解 ]
x
m
….. (14)
以上の解において、十分に時間が経過すれば同次解は減衰し、定常解としては、特解のみ残る。
f (t )  F sin  t の場合、定常振動の解は x  X sin( t   ) と置くことができ、X と  は
(2) 臨界減衰以上の場合 ( )
  1 次のように表すことができる。
となり、一般解は
( A, B は初期条件によって定まる)
3
方程式の解は、以下のように、右辺を 0 とおいた同次解と、特解との和表すことができる。
図4 臨界減衰以下の自由振動
2
式 (5) より特性根は s  n  n   1
2
但し、
の時は、近似的に
と表すことができる。
….. (12)
0
‐0.4
これを以下のように書き直す。
……………….. (9)
(    2 1 ) n t
0
‐0.2
2.6.1 正弦波加振力による強制振動
 n t
……………….. (8)
  2
 Be
case1 :   1
0.6
0.2
x(ti )
 e n (ti ti 1)  enT  e 2 /
x(ti 1 )
x(t )  Ae
….. (11)
2.6 強制振動
であり、隣り合うピークの振幅比は
(    2 1 ) n t
case 2 :   1
1
0.8
となり、一般解は
x(t )  ( A  Bt )e  nt ( A, B は初期条件によって定まる)
……………….. (6)
式 (6) より、周期 T は、2 / n 1   2
となる。この値を対数減衰率といい、
1.2
(3) 臨界減衰以上の場合 ( )
  1 (1) 臨界減衰以下の場合 ( )
0   1
X
……………….. (10)
7
X0
2
    2     2

1       2
  n    n 

 
 2
n 

2
   
1     
  n 
  tan 1 
c
k
図6 強制振動
F
X 0  : Fが静的に加わった時の変位
k
8
2.線形1自由度振動系の基礎(続き)
2.線形1自由度振動系の基礎(続き)
2.6 強制振動(続き)
2.6 強制振動(続き)
2.6.1 正弦波加振力による強制振動(続き)
X0 / X を振幅倍率とし、Mで表すと、 M と  はともに角振動数比  / n と減衰比  によって決まり、図7 に示すようなる。
2.6.2 正弦波変位励振による強制振動
図8 に示す、車のサスペンションンのような、構成のモデルが、一定速度 V で、
振幅 Y 、波長  の正弦波形状の凸凹路面 Y sin(
2z

)
を走行する場合を考える。
ここで、z は走行距離である。 この時、 z = V t より
y (t )  Y sin(
X
2Vt

)  Y sin  t ,  
2V

….. (15)
X0
2
    2     2

1       2
  n    n 
図7 共振曲線
10
9
2.線形1自由度振動系の基礎(続き)
3.倒立振り子の基礎
2.6 強制振動(続き)
3.1 倒立振り子と静的安定性
2.6.2 正弦波変位励振による強制振動(続き)
3.1.1倒立振り子と片持はりのモデル
図9 に示す変位励振モデルの運動方程式は、 m x  c ( x  y )  k ( x  y )
すなわち、
mx  c x  kx  cy  ky
….. (16)
変位励振 y (t )  Y sin  t を受けた場合のx の定常解は x(t )  X sin( t   ) と表すことが
図11に示すような倒立振り子のモデルを考える。図11(b) に示すような端部が固定
された弾性支持はりによる倒立振り子を考えるため、まず片持ちはりの振動について
y (t )  Y sin  t
でき、振幅比 X/Y と位相差  は、それぞれ、
2
  

1   2
X
 n 

2
2
Y
        2

1       2
  n    n 
考える。図12 に示すような長さ l の片持ちはりの一端に集中荷重 P を加えた場合の
先端の変位 w とたわみ角 i は、縦弾性係数を E 、断面二次モーメントを I として、それぞれ、
3


 


2  


n 

1 
  tan 
2

2    


1
(
1
4
)



  

 n 

w
図9 変位励振モデル
Pl 3
Pl 2
, i
, (i  1)
3EI
2 EI
….. (17)
等価ばね係数 k は
k
P 3EI
 3
w
l
….. (18)
一方、図13 に示すように、自由端に集中質量を有するはりの1次モードの固有振動数
となり、図10 に共振曲線を示す
図11 倒立振り子
は以下のように与えられる。
ような共振曲線となる。
0 
3EI
k
, k  3 , m  M  0.23ms : 有効質量
l
m
….. (19)
ここで、M は、先端集中質量、ms は、はりの質量。
以上を考えて、図 11(b)の倒立振り子の運動を考える。
図10 共振曲線
11
1次モードの振動に対応した質量
(モード毎に対応した質量とばね定数があ
り、全てのモードを合計すると振動に関わ
る全質量となる)
図12 片持ちはりモデル
図13 集中質量を持つ
片持ちはりモデル
12
振動モードとモード質量・剛性
3.倒立振り子の基礎(続き)
3.1 倒立振り子と静的安定性(続き)
3.1.2 倒立振り子の運動
図11(b) から分かるように、集中質量 M は、重力加速度により、鉛直状態から倒れるに従って倒される力が大きくなる、負の
K1, M1
1st Mode
 k 
K2, M2
2nd Mode
 k  (k   0)
復元力  mg sin   mg


変位
le sin 
le
ばねの働きを受ける。そのばね定数
は
….. (20)
ここで、le は等価長さとし、片持ちはりの変形後の集中質量取り付け点における接線が変形前のはりと交わる点と、集中質量

mTotal   mn
n 1
の中心との距離とし、幾何学的に下記のように定まる。
le  i  w, le 
i Pl 3 / 3EI 2

 l
w Pl 2 / 2 EI 3
図11(b) の倒立振り子の運動を1自由度系の振動と見なし、減衰項を無視して運動方程式を立てると、
K3, M3
 k  k 
  0
 m 
  
….. (21)
k  k  の時、系としては正のばね定数を保持し、固有角振動数  n は
3rd Mode
n 
・
・
・
・
・
・
N th Mode
(k  k )
3EI g
P

  0 1 
m
ml 3 le
3EI / l 2
….. (22)
で与えられる。但し、 P  mg , 0  k / m ,   le / l
k  k  の時、系としては負のばねを有し、はりは平衡位置へ復元できない。この時、「静的不安定」といい、 k  k 
「静的安定」という。この条件は、一般に、固有角振動数 n の一つが 0 になることを意味する。
Kn, Mn
の時を
(以上の例では、k  k  と  n  0 は、同じ関係式を導く)
13
14
5.実験方法
4. 実験装置の構成
測定の準備 (1)
1)
加振器の結線を確認(教員・TA)
2) 動歪測定装置の結線を確認(教員・TA)
歪ゲージ
加速度
ピックアップ 1
ブリッジ
ボックス
動ひずみアン
プ
加速度
ピックアップ 2
3) 加速度、歪計測PCの⽴ち上げ(教員・TA)
4) 加振制御プログラムの起動(教員・TA)
⾃由振動測定
A/D変換
ユニット
1)
各班1本ずつ、はりを選ぶ
2) はりの⼨法を測定し、断⾯2次モーメント、および質量を求める(ノギス、スケール、秤による)
3) 各班、先端質量を設定する。
計測用PC
チャージアンプ
4) はりを加振器に取り付ける。
5) 測定した波形を出⼒してもらい(教員・TA)、受け取る。
チャージアンプ
加振器
加振器駆動
アンプ
6) 先端質量を取り換える際には先端質量と、全体の等価質量を求める。(ばね秤と計算による)
加振制御
装置
7) はりを振動させ、記録されたひずみ波形を確認する。
※ ひずみゲージおよびリード線が断線しないよう、⼗分に注意して取り扱うこと
※ 作業は軍⼿を着⽤して⾏い、ケガに⼗分留意すること。
加振制御用PC
※ ⽳位置、治具との固定⽅法に留意し、必要な⼨法を測定しておくこと。
15
16
数学モデルの特性を得るために必要な寸法、質量を測定する
5.実験方法(続き)
⾃由振動測定 (続き)
9) 測定した波形を出⼒してもらい(教員・TA)、受け取る。
10) 出⼒した波形から固有⾓振動数を求める。(実測値 vs. 計算値)
M
11)測定結果から等価ばね定数と、材料の縦弾性係数を求める。(計算値
や物性値と⽐較する)
12)測定結果から減衰⽐を対数減衰率から以下のように求め、減衰が⼩さ
ms
(le )
いことを確認する
 
l
d  ln
dc
4 2  d c2
an
2

an 1
1  2
 (減衰比)
c : 減衰係数,
c
c

2 k  k m c0
c0 : 臨界減衰係数
※ 不安定条件近傍での不測の事態に備え、はりの変形⽅向には⽴たないこと。
17
※ 試験装置およびはりに必要以上に顔を近づけないこと。
6. データ処理
3.倒立振り子の基礎(続き)
3.2 倒立振り子の係数励振と動的安定性
プリントアウトされた波形データの処理について
•
18
3.2.1 系の安定状態
錘組合せについて
振動の動的安定性は、系のエネルギーの時間
エネルギー空間 L
変化に依存している。時間とともにエネルギーが
– 周期から固有角振動数(周波数)を計算する
– 減衰曲線を描いて、対数減衰率を計算する
d  L  L
 
F
dt  y  y
増加すれば系は不安定であり、減少すれば安定
である。図14 にいろいろな安定状態の時間変化
を示す。
図14 系の安定状態と時間変化
3.2.2 運動方程式(Mathieu方程式)
ここでは、倒立振り子が振動系として正のばね定数を有して静的
安定の場合、図15 に示すようにベースを加振力 F で振動させたと
きの動的安定性について考える。運動エネルギー T 、ポテンシャル
エネルギー U 、仮想仕事 W はそれぞれ、

 

2
2
m 
le cos  y  le sin 
2
m 2
 le  2  2le y sin   y 2
2
kw2
U  mg le 1  cos   y
2
k
2
 mg le 1  cos   y le sin  
2
W  Fy
T
軸の単位と目盛幅

19

….. (23)
….. (24)
….. (25)
図15 倒立振り子モデル
20
3.倒立振り子の基礎(続き)
3.倒立振り子の基礎(続き)
3.2 倒立振り子の係数励振と動的安定性(続き)
3.2 倒立振り子の係数励振と動的安定性(続き)
3.2.2 運動方程式(Mathieu方程式)(続き)
3.2.2 運動方程式(Mathieu方程式)(続き)
ここで、 le  2l / 3 とし、一般化自由度を と y とし、一般化力を、V とすれば、Lagrangeの運動方程式は以下のようになる。
仮想仕事 W は
d  T  T U
d  T  T U
 

 ,

V
 
dt     
dt  y  y y
….. (26)
W    Vy
….. (27)
  0, V  F
となるから、式(25) と 式(27) より
2
     2 cos 2   0
….. (29)
  n 2  1   2 2            
….. (30)
とおいて式(36) に代入して、両辺の
….. (37)
(n  1, 2,      )
・・・の係数を等値すると、

 0    n 2  0     1    n 2 1    1  2 cos 2  0   2        0

 0    n  0    0
 に関する恒等式とすれば、
….. (33)
2
1    n 2 1    1  2 cos 2  0
と求めることができ、非自律系の運動方程式を以下のように求めることができる
 k g A 2

    
cos t   0
le
 m le

, 

….. (32)
と仮定すれば、式(31) から、式(32) の運動を起こすために必要な加振力を
F  m( g  A cos t )
, 
 0    1     2  2        n 2  1   2 2      2 cos 2  0    1     2  2         0
….. (31)
2
….. (36)
     0    1     2  2              
微小振動とすれば、角度線形化と、水平方向の力が垂直方向に比較して無視できることから、式は以下のようにできる。
ベースの運動を調和振動とし、 y  A cos t
  1
3.2.3 解の安定性
Mathieu 方程式は数学の分野において解の安定性が. よく調べられている。2つのパラメータ  および  で定まる平面上のど
こで安定な解が存在し、どこで不安定な解が存在するかを調べるため、安定な解の存在する領域と不安定な解の存在する領
域との境界には周期解が存在する、という仮定に基づき、境界曲線を求める。(が微小という仮定でLindstedt の摂動法に従
う) まず、式(36) の解  と  を  に関するべき級数に展開し、
e
 y g k 
        0
 le le m 
m( y  g )  F
….. (35)
と置き、 d  / d    と表せば、 式(34) は次のMathieu方程式の標準系に帰する。
ここで、式(23)、式(24)、式(27) を式(26) に代入して微分演算を行うと、
e
k g 2
4A
  /    ,
 2 ,   
le
 m le 
2
….. (28)
2
2
mle   mle y sin   mgle sin   kle sin  cos  0
 ml sin   ml  2 cos  my  mg  F
2A
 2 n 
 , 
le



 
t  2 , 4
さらに
ωn:式(22)参照
2
 2    n 2  2    1  2 cos 2 1   2  0
….. (34)
….. (38)

21
3.倒立振り子の基礎(続き)
22
3.倒立振り子の基礎(続き)
  n 2  1   2 2            
(n  1, 2,      )
3.2 倒立振り子の係数励振と動的安定性(続き)
3.2 倒立振り子の係数励振と動的安定性(続き)
3.2.3 解の安定性(続き)

2
以上の式を逐次解く必要がある。第0 次近似解  は、 0    n  0    0 より
3.2.3 解の安定性(続き)
 2 が周期解となるためには、 cos  の係数が 0 でなければならず、 2 = ‐ 1 / 8 。  0 = cos  に対応する境界曲線は
cos n
(n  0,1, 2,      )
….. (39)
 sin n
と与えられるので、これを式(38)に代入し、  i   (i  1, 2,      ) の解が周期的になることを仮定することで求めることができ
0  
る。
はじめに、 0 = 1, n = 0 の場合を考える。この時、式 (38) の第2式は
1  1  2 cos 2
式(40) において、 1 が周期解になるためには 1 = 0 でなければならず、式(40) の解は
となり、式(38) の第3式は
1
2
1  cos 2
….. (40)
….. (41)
 1

1
1
 2   2 cos 2  cos 2    2     2   cos 4
….. (42)
 2

2
2
2 が周期解になるためには、式 (42) の定数項が 0 でなければならないので、 2 = ‐1/2 であり、 n =0 のときはただ一つの境界
1
曲線
….. (43)
    2  
2
が存在する。この曲線は–  平面の原点を通る曲線となる。

次に、n = 1 の場合を考える。 0 = cos  に対して、式(38) の第2式は
1  1  1  2 cos 2  cos  1  1 cos  cos 3
周期解を得るため、右辺第1項 を0 とおくと、 1 = ‐1 、ゆえに
1
8
1  cos 3
1
 1  2 cos 2  cos 3   2 cos   1   2  cos  1 cos 3  1 cos 5
8
8
8
8

….. (47)
 0 = sin  に対して式(38) の第2式は
1  1  1  2 cos 2 sin   1  1sin   sin 3
1
1 = 1 ならば、  1 は周期解となり、 1  sin 3
8
….. (48)
….. (49)
したがって式(38) の第3式は
1
8


 2   2   1  2 cos 2  cos 3   2 sin      2  sin   sin 3  sin 5
1
8
ゆえに、 2 = ‐ 1 / 8 となり、境界曲線は、
1
8
1
8
1
8
  1    2  
….. (50)
….. (51)
同様にして、  0 = cos 2 に対しては、
….. (44)
  4
….. (45)
5 2
  
12
….. (52)
さらに、  0 = sin 2 に対しては
0,  1 , 1 を式 (38) に代入すると、式 (38) の第3式は n = 1 に対して
 2   2  
1
8
  1    2  
  4
….. (46)
1 2
  
12
….. (53)
同じことを繰り返せば、  0 = cos n と  0 = sin n (n = 3, 4, ・・・・・)に対応する境界曲線を求めることができる。
23
24
3.倒立振り子の基礎(続き)
5.実験方法(続き)
3.2 倒立振り子の係数励振と動的安定性(続き)
3.2.3 解の安定性(続き)
以上で求めた境界曲線を –  平面にプロットしたものが図16 である。斜線部分は、他の種々の解析で、不安定領域であるこ
とが分かっており、その他の部分は安定領域である。  = 0 で、 が負の時は、3.1 で述べたように静的不安定であることは明
らかである。図16 で興味深いことは、 < 0 の領域でも安定な領域があること、横軸= 1, 4 の近傍で、をわずかでも 0 以外
の値に変えると不安定になることである。

1
2
1
8
   2
  1    2
  4
係数励振実験
1) ⾃由振動測定および計算結果により求めた振動パラメータを⽤いて係数励振
5 2

12
の不安定条件を求め、不安定になる加振周波数を予測する。
2) 教員・TAの注意に従って、配置、役割分担する。(波形確認、周波数読み

  4
1
8
  1    2
上げなど)
1 2

12
3) 加振中のはりの挙動を注意深く観測すること。
4) 加振終了後、加振波形データ、歪データをUSB経由で受け取ること。
図16 Mathieu方程式の安定不安定境界曲線
参考文献
測定の準備 (2)
1) 動歪測定装置の結線を確認(教員・TA)
2) 加振プロファイルを確認(教員・TA)
3) センサの接続を確認(教員・TA)
4) 加振台周辺の安全確認(教員・TA)
5) 電源の投⼊(教員・TA)
1. 1981年 機械工学実験教材,慶應義塾大学工学部 機械工学科
※ 不安定条件近傍での不測の事態に備え、はりの変形⽅向には⽴たないこと。
2. デン・ハルトック(谷口・藤井訳),機械振動論(改訂版),コロナ社,1956
3. 亘理 厚,機械振動,丸善,1966
※ 試験装置およびはりに必要以上に顔を近づけないこと。
4. 高橋 利衛,基礎工学セミナー,現代数学社,1974
5. 大久保 信行,機械のモーダルアナリシス,中央大学出版社,1982
26
25
振動実験 補足資料
振動実験 補足資料
2
2A
 2 
 n  , 
le
  
加振装置には性能限界があり、例えば、本実験で使用する加振装置は
周波数が 5 Hz – 8000 Hz 加速度の上限は約 30G である.また,機械寸法
から振幅が 8 mm に制限されているため,下記のような制御を行う.

1
   2
2
振幅一定(8 mm)
Log (加速度)
1
  1    2
8
  4
5 2

12
加振制御の時間方向

加速度一定(10G)(振幅減少)
1
  1    2
8
5 Hz 以上
u  A cos t
d 2u
  A 2 sin t
dt 2
加速度
振幅
d 2u
dt 2
A
  4
1 2

12
Log (周波数)
を一定にすると振動数の増加に伴い、振幅
A が減少
を一定にすると振動数の増加に伴い、加速度
d 2u
が増加
dt 2
A  8 mm とすれば  
27
2 A 16

 0.08
200
le
28
6. データ処理(続き)
6. データ処理(続き)
計測データの校正(工学値変換)(1)
計測データの校正(工学値変換)(2)
 今回の実験で計測の対象となる加速度,およびひずみは,センサによって電気的
に変換され,電圧データとして計測される.
 従って,電圧データと加速度,ひずみとの関係を定義し,計測データを加速度,ひ
ずみデータに変換しなければならない.
• 加速度の単位: m/s2
• ひずみの単位: με(micro strain: 百万分の1ひずみ.ひずみは無次元)
 電圧データと加速度,ひずみとの関係を定義する値(データ)を校正値(校正デー
タ)と呼ぶ.
 例えば
• 0.1 mV/m/s2 の校正値を持つ加速度計の場合,計測された電圧データが
0.2mVならば加速度は 2 m/s2
• 加速していないのに電圧データが0.05mVを示していたら,その分を補正する
必要があり,計測された電圧データが0.2mVならば加速度は 1.5 m/s2 ( 0.2 –
0.05 /0.1 )となる.
 実験終了後にUSBで受け取るデータは下記である。
– 自由振動波形
– 校正用データ
– 係数励振波形
 数値データは時間、ひずみ、加速度に対応した電圧データである。
 時間の単位はファイル中に記載されている。
 ひずみ、加速度データは電圧(換算値はファイルに記載)
– 校正データファイルに記録されている加速度データは 0 Gに対応したデータなので、計
測値の0からのずれはこの値を用いて、補正すること。
 加速度の場合、0.96 mV/ m/s2 で計算すること。
 ひずみの場合、下記のように校正データを利用して工学値変換すること。
– 校正データファイルに0 με, ‐500 με, +500 μεに対応した電圧信号を校正値
として記録しているので、それらのデータを用いて工学値変換を行うこと。
30
29
6. データ処理(続き)
校正時には加速していないので
0 mV± α
数値データの構成と処理方法について
歪データ  
•データに時間軸を加える
•グラフ描写等を利用し、歪のピークを探す
•歪のピーク位置での加振周波数を調べる
歪データに対応した電圧 c 1000
a b
500μεに対応した電圧: a V
•歪のピーク位置での加振振幅を調べる
0μεに対応した電圧: c V
歪データ
加速度データ
時刻
時間データを作成すること(上の行+サンプル時間)
-500μεに対応した電圧: b V
31
32
加速度データ:電圧デー
タを加速度(m/s2)デー
タに変換して示すこと。
不安定点に対応した加
振周波数、加速度を
データから読み取り、
不安定条件と比較する
こと。
歪データ:電圧データを歪(με)データに変換して示すこと。
33
34
8. 実験レポート
7.考察
 計算値と実験値との相違がどのような理由で生ずるかを検討すること。
 実験中に振動現象をよく観察するとともに、不安定な現象が生ずる物
理的な意味を考察し、理論式の前提条件をよく吟味すること。
 実験方法、実験結果の整理方法、について十分に検討,考察を加える
こと。
 例えば、自由振動計測によって得られた固有角振動数から計算した等価ばね定数
をもとに材料縦弾性係数を計算した結果と、実験に用いた材料の一般的な材料定数
の値を比較し、実験結果の妥当性、あるいは誤差について論ずることは、非常に有
意義な考察と言える。
 また、得られた振動パラメータから計算した不安定条件と実際の不安定現象を比較
し、両者の相違がなぜ生ずるかを考えることが重要。
 上記、計測に伴う誤差を考慮することも有効な考察手段と言える。
35
実験レポートには最低下記の項目を含めること.
1. 実験目的(講義資料を写すのではなく、実験内容を理解し、自分の言葉で記述すること.)
2. 実験装置の構成(実験中に実験装置、計測装置の構成を確認しておくこと.)
3. 供試体(実験おける位置づけを理解して記述すること。ここでは寸法測定結果を示さないこと)
4. 実験方法(自分が行った作業内容を結果と対応させて記述すること)
5. 自由振動測定結果※
a. 測定項目と測定結果(寸法、重量,減衰率,固有角振動数等)
b. パラメータ計算結果(等価ばね定数、等価ばね定数から求まる縦弾性係数など: 資料
参照)
※必ず数値データの処理に基づいた結果であること.実験中に実施した紙データの読み取
りはレポートには用いないこと.
6. 係数励振実験結果(※数値データの処理に基づいた結果であること.)
a. 不安定領域条件の計算結果
b. 実験結果(不安定を生じた振動数と振幅等)
7. 考察(記述内容は資料参照のこと)
8. 実験への意見,提言等(任意)
講義資料を単に書き写したような内容とならないこと.
工学値変換を行うこと.
グラフを示す場合には必ず縦軸、横軸の説明(単位を含む)を示すこと.
36
レポートの提出について
•
提出
– 期日: 実験日の翌週(火曜日)12:30まで
• 遅れる場合は必ず期日前に連絡すること。正当な理由であると判断した場合に
限り遅延を許可する.
– 場所: 11号館 1F 宇宙システム研究室内(入口にある緑の箱)
•
評価結果の通知
– 原則、レポート提出の1週間後に掲示
– 場所: 11号館1F 入口にある白い箱 (必ず取りに来ること)
•
再提出
– レポート内容に明確な不備がある場合は、再提出後採点とする。
• 但し,遅延を意図した未完成のレポートは再提出を認めず採点する。(不合格の場
合あり)
– 提出期限は原則、返却後1週間以内とする(評価結果通知時に掲示)
37